近年、少子高齢化が進むにつれて介護業界の人手不足も深刻化しています。医療技術の進化で高齢者が増えているのはもちろん、介護者にかかる身体的・精神的負担の大きさなども人手不足の原因と考えられます。このような介護に携わる方々の重荷を軽減したり、介護を必要とされている方がより快適に生活を送れるように開発されたのが介護ロボットです。
今回は、外出や室内での移動、トイレなど利用者の方が自分の力で移動できるように支援する介護ロボットの概要や導入することで期待できる効果について解説していきます。また、製品を選ぶ時のポイントや代表的な機器の一覧も紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
一律に「介護ロボット」といっても、使用する環境や要介護者の身体状況によって最適な分野が異なります。ロボットとはそもそも何なのか、介護ロボットにはどんな分野があるのか見ていきましょう。
まず、ロボットとは以下の3つの要素が含まれた機械システムのことです。
そして介護機器は、加齢や事故などさまざまな理由から体を自由に動かせなくなった方の自立を支援したり、介護をする方が感じるストレスを軽減することが可能です。 上記の2つの特徴を合わせたものを、介護ロボットと呼んでいます。
介護ロボットには決められた機能や形はありません。 ロボットと聞いて想像するのは人型のものが多いかもしれませんが、介護を必要とする場で使用されるのは、体に取り付けて動きをサポートしたり、センサーで見守るなどの役割を持ったものが多いです。
経済産業省と厚生労働省では、介護ロボットの開発や普及を進めるための取り組みとして、注力して開発支援を行う分野を定めています。それが以下の6分野13項目です。
移乗動作をサポートする時にかかる負担を軽減するのに役立つ装着型の機器。1人で着けたり外したりすることが可能で、介助者が身につける
被介護者を移乗させるときに介助者の負担を軽減する、ロボット技術を使った装着不要の機器。今まで2人で行っていた移乗支援を1人で行うことができる
ロボット技術を使って歩行を支援する機器で、荷物を運んだり、外出をサポートする
利用者が自立して屋内での移動やトイレでの姿勢保持ができるように支援する、ロボット技術を使用した機器
利用者が身につけて使うための機器で、転倒を防いだり、外出を支援する。ロボット技術を使うことにより、転倒に繋がる動作を検知し知らせることが可能
排泄物を室外へ流したり密閉容器に溜めることができるトイレで、ロボット技術を使用している。室内に臭いが広がりにくくなる。設置する場所を選ぶことができる
排尿・排便のタイミングを予測し、利用者にトイレにいくように合図する機器。ロボット技術を利用している
トイレ内での立ち座りや下着類の脱ぎ着をサポートする、ロボット技術を利用した機器。排泄が終わったタイミングで、介助者に伝える機能などもある
介護施設などで使用するための装置。ロボット技術を使用しており、見守りセンサーや外部との通信機能が装備されている機器の基盤
在宅介護で使う上記と同様の装置で、転倒を発見するセンサーが搭載されており、異常があれば介護者への通知ができる。
対話や意思疎通にロボット技術を用いることで、日常生活を支援する機器。表情や会話から健康状態を判断し、運動を促したり情報伝達をすることで、活動範囲を維持・向上することができる
介護ロボットの中でも外出や屋内での移動支援に特化した「移動支援介護ロボット」について解説していきます。
屋外・屋内・装着の3つに分けられ、要介護者の身体状況やどのような環境で使うかなどによって、どの機器を利用すべきか変わってきますので参考にしてみてください。
ロボット技術を使っている、利用者が1人で使用できる歩行者やシルバーカーなどの機器です。高齢者などが買い物や通院、趣味の散歩など、長い距離を歩くときに使用することをおすすめしています。
自粛生活の影響で外出する機会が少なくなり、運動不足でお悩みの方も多いのではないでしょうか。そのような場合に活用することで健康の維持・向上が期待できます。
屋内での移動や立ち座り、トイレでの姿勢を保つなどの支援をする機器で、ロボット技術を使用しています。
トイレへの移動を1人でできるのはもちろん、排泄中も姿勢維持をサポートしてくれるので介護者の負担を軽減でき、トイレを見られるという利用者の精神的負担も解消することが可能です。
装着型のロボット技術を用いた機器で、利用者が1人で使用でき、外出を支援したり転倒を防ぐことができます。下半身の筋力に不安がある方や日常生活での転倒に不安がある方などの利用がおすすめです。
機器の着脱・使用を1人で完了することができるので、介護者にかかる負担を軽減できます。非接触なので、感染症対策にも有効です。
移動支援介護ロボットを導入することで得られる効果はどのようなものがあるのでしょうか。利用者の自立をサポートすることで自信や生活の質が向上したり、介護に携わる方々の負担を軽減できることは間違いありません。
以下では、屋外型・屋内型・装着型それぞれを導入することで期待できる効果をより詳しく解説していきます。
1人で歩くことに不安があり、普段から介助者や杖、シルバーカーなどの力を借りながら歩行を行っている方に向けたロボットです。特に下記の3点が期待できるでしょう。
トイレでの姿勢保持や屋内での移動、立ったり座ったりなどの動作を支援するロボットです。導入効果として見込まれるのは、以下の3点になります。
基本的な日常生活を自立して行えるものの、筋力の低下などによって歩行や立ち座り、転倒に対する不安などがある方の支援をするロボットです。特に次の4点が導入効果として期待できます。
移動支援介護ロボットの導入費用は屋外型・屋内型・装着型によってさまざまです。利用者の身体状況や介護ロボットを利用する環境などの違い、また、導入予算も考えながら適切な機器を選ぶ必要があります。それぞれの大まかな価格は以下の通りです。
機器本体の価格は10万〜20万円程度です。定期的なメンテナンスなどは基本的にありませんが、バッテリーが充電式のものは別途電気代が必要となります。また、GPSなどの通信機能を搭載している場合は通信費用、グリップやタイヤなどは消耗品なので交換費用も発生します。
各企業へ問い合わせをお願いします。
機器本体の費用は30万〜100万円と幅広いです。定期的なメンテナンスが必要になるため、導入後も定期的に費用がかかります。
移動支援介護ロボットに興味はあるけれど、導入するとなるとどのようなことに気をつけて選べばいいかわからない…このようにお悩みの方も多いのではないでしょうか。
ここからは、「屋外型」「屋内型」「装着型」それぞれの型別に、移動支援介護ロボットを選ぶ際のポイントを紹介します。快適な日常生活を送れるように、導入前のリサーチは徹底しておくと良いでしょう。
屋外型の移動支援介護ロボットを選ぶ際に押さえておきたいポイントは、5つあります。
いざ介護ロボットを導入したは良いものの、自宅の周辺に段差や砂利道などが多く活用することができなかった…なんてことも少なくはありません。
平地や坂道、傾斜した道では力強い味方になる屋外型の移動支援機器ですが、段差や砂利道では本来の力を発揮することは難しくなります。利用環境をしっかりと確認しておくことが大切です。
移動支援介護ロボット(屋内型)を選ぶときは、以下4つのポイントを確認しましょう。
屋内での移動支援機器の利用は、機器が通れないところや障害物がないか確認しておくことが重要です。大きな段差は利用者の負担になるので、場合によっては施設内でも利用できる場所を制限したり、段差をなくしたりと工夫が必要です。
装着型移動支援介護ロボットの選定ポイントは、下記の通りです。
利用者の方に自分で装着して使用していただく機器なので、装着方法が難しかったり設定が大変だとストレスになりかねません。まずは、介護者が装着や使用方法を練習し、理解してから利用者の方にも使ってもらうようにしましょう。
ここまで、移動支援介護ロボットの概要や導入効果などについて説明してきましたが、実際にどのような機器があるのでしょうか。移動支援介護ロボットの代表機器を、屋外型・屋内型・装着型別に紹介していきます。
まず初めに、屋外で使用できる移動支援介護ロボットの代表的な機器を紹介します。
現在開発中の「RoboCart」は歩行速度や歩幅、足の運び方などをリアルタイムで解析できる歩行解析技術を搭載した移動支援機器。
坂道や段差でも安心して歩ける電動アシストもついており、高齢者などの外出をサポートしてくれます。 折りたたみ式で、普通自動車であれば車内やトランクへの収納が可能です。
CYBERDYNE株式会社の比較ポイント
製品情報
サイズ | ー |
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最大使用者体重 | ー |
デモの有無 | ー |
レンタルの有無 | ー |
価格帯 | ー |
2017年度にグッドデザイン賞を受賞した「ロボットウォーカーRT.2」。上り坂や下り坂でも電動アシスト機能が安心で快適な歩行をサポートしてくれます。
ハンドル部分や足元に搭載されたセンサーが利用者や周囲の人の動きを感知することで、状況に合わせて瞬時にアシストすることが可能です。
万が一、坂道で手を離してしまってもセンサーが感知し、ひとりでに進んでしまうこともありません。つまずいて転んでしまいそうな場合も、急な速度変化を感知し自動ブレーキが作動します。
価格:税別118,000円(標準サイズ)税別128,000円(Tallサイズ)
屋内ロボットウォーカーの比較ポイント
製品情報
サイズ | 展開サイズ:幅550×奥行740×高さ720.5-850mm 折畳サイズ:幅300×奥行650×高さ740-860mm |
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最大使用者体重 | 100kg |
デモの有無 | ー |
レンタルの有無 | ー |
価格帯 | オープンプライス (メーカー直販価格 ¥118,000[税別]) |
「Tecpo/テクポは、安心で快適な外出をサポートしてくれる屋外移動支援モビリティーです。利用者の方に合わせて3段階でアシスト機能を切り替えることができます。
平坦な道では歩く速度に合わせて速度調節を自動で行い、上り坂ではモーターアシストが利用者の方の負担を軽減してくれます。下り坂でも適度にブレーキがかかるので安心です。
バッテリーは専用充電器を使って約3時間で連続4時間の歩行が可能となっており、取り外しも簡単にできます。
価格:要問い合わせ
Tecpo(テクポ)の比較ポイント
製品情報
サイズ | 展開サイズ:幅520×奥行650×高さ740-860mm 折畳サイズ:幅300×奥行650×高さ740-860mm |
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最大使用者体重 | 100kg |
デモの有無 | ー |
レンタルの有無 | ー |
価格帯 | 要お問い合わせ |
現在開発中の外出支援アシスト歩行者 FLAGSHIP MODEL「ES-04」。 ナブテスコは航空機や鉄道車両の制御に使われる技術を用いた介助用電動アシスト車いすや、抑速ブレーキ付きの歩行車などの福祉機器を開発しています。ES-04はその制御技術と抑速ブレーキ技術の2つを兼ね備えた屋外型の移動支援介護ロボットです。
平地・上り坂・下り坂のどの道でも快適・安全に歩行できるのはもちろん、買い物で荷物が多くなってしまっても電動アシストがサポートしてくれます。デザインもシンプルかつスタイリッシュで外出がより楽しいものとなるでしょう。
ES-04の比較ポイント
製品情報
サイズ | 全長(折り畳み)630mm450mm 全幅570㎜ 全高770~970㎜9段階 |
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最大使用者体重 | 100kg |
デモの有無 | ー |
レンタルの有無 | ー |
価格帯 | 要お問い合わせ |
次に、屋内での使用に特化した移動支援介護ロボットの代表機器一覧です。
リハビリトレーニングに最適な装着型のロボットです。転倒を感知すると自動でブレーキがかかり緩やかに床に倒れるようになるので、リハビリの際の転倒による怪我への不安を解消できます。
天井から吊るすような形で、全面的に支えるのではなく自立できるようにサポートしているので利用者の方の自信にも繋がるでしょう。
また介護者の方は、緩やかに転倒するので少し離れたところからでも安心して見守れますし、自分より体の大きな利用者の方のサポートもできるようになるので、業務の負担軽減にも繋がります。
価格:税込1,122,000円〜
寄り添いロボットの比較ポイント
製品情報
サイズ | ー |
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最大使用者体重 | ー |
デモの有無 | ー |
レンタルの有無 | 型番 SH-YR21-0001リース期間は5ヶ月より承ります。リース費用やその他のサイズはお問い合わせください。 |
価格帯 | 税込1,122,000円〜 |
株式会社モリトーが開発中の移動支援(屋内型)ロボットは、段差のない屋内での伝い歩きに不安がある方へ向けて作られています。
屋内での移動や立ち座り、トイレでの姿勢保持などさまざまな場面でのサポートが可能です。歩く速さも利用者の方に合わせて支援してくれます。
利用者の方がひとりで屋内移動やトイレができるので、介護者の方への負担も軽減できるでしょう。
移動支援(屋内型)ロボットの比較ポイント
製品情報
サイズ | ー |
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最大使用者体重 | ー |
デモの有無 | ー |
レンタルの有無 | ー |
価格帯 | 要お問い合わせ |
最後に、装着型で自宅でも利用できる移動支援介護ロボットの代表機器を紹介します。
マッスルスーツエブリィは、電気を使わず空気圧を利用してサポートしてくれるのが特徴です。電気を使わないので使用時間に制限がなく、感電などの心配もありません。屋外や水を使う場所での使用も可能です。
本体は3.8kgと軽量で、装着もリュックサックを背負うようにしてベルトを締めるだけなので簡単。難しい操作も必要ないのでだれでも使うことができます。試行錯誤を重ね、ご家庭での購入が可能なお手頃価格を実現しました。
価格:149,600円
マッスルスーツEveryの比較ポイント
製品情報
タイプ | パッシブタイプ |
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重量 | 3.8kg |
連続稼働時間 | ー |
デモの有無 | あり |
レンタルの有無 | あり |
価格帯 | メーカー希望小売価格:149,600円(税込) |
まるで衣服のように軽い「DARWING Hakoelude」は、柔軟なアシストスーツで立ち座りや、辛い中腰の姿勢維持をサポートしてくれます。
約800gとかなり軽量で、空気の力を使うため充電の必要はなく稼働時間を気にせず使用できる優れもの。場所や天気を選ばず、さまざまな場面で利用することができます。
価格:税込85,800円
DARWING Hakobeludeの比較ポイント
製品情報
タイプ・動力 | サポートタイプ |
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本体重量 | 約800g |
連続稼働時間 | ー |
デモの有無 | あり(施術院関係・医療従事者の方・法人に限る) |
レンタルの有無 | ー |
価格 | メーカー発表価格:本体(L,M)¥85,800円腕パーツ ¥16,500円 |
PROシリーズの3代目。前PROⅡの良い所を残しつつ改良・機能追加し、現場プロ用に徹した仕様にしました。追加機能は、サイドアブベルト・Bbベルト・スライド式チェストベルト・Wロックひざベルトで、装着者の身体にジャストフィットさせて効果を最大限に得られるようにしました。
介護の他、製造・物流・農業・サービス業等、様々な現場で使っていただいています。
サポートジャケットBb+PROⅢの比較ポイント
製品情報
タイプ | サポートタイプ |
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重量 | 約700g |
連続稼働時間 | ー |
デモの有無 | 各地の体験会や展示会にて |
レンタルの有無 | ー |
価格帯 | メーカー希望小売価格 ¥49,500(税込) |
年齢を重ねることで足腰が弱くなってしまったり、自粛生活による運動不足で体に不調を感じている方も多いのではないでしょうか。
HAL®︎腰タイプは、人が動作をしようとするときに脳が発する信号を読み取ることで自分の思った通りに動くことができます。自宅での利用も可能で、日常的に着用することでトレーニングにもなり、自立した快適な日常生活を送ることができるようになるでしょう。
重量は約3kgと軽量で、コンパクトで装着方法も簡単なので、高齢者の方でも気軽にご利用していただけます。利用者の方の自立度が上がるので、介護者の方の負担軽減にも役立ちます。
価格:要問い合わせ
HAL腰タイプ介護・自立支援用については世界初の装着型サイボーグ「HAL」!実際の評判・導入事例についてもご紹介!でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
HAL®︎介護用腰タイプの比較ポイント
製品情報
タイプ | アクティブ |
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重量 | 3.1kg (バッテリ含む) |
連続稼働時間 | 約180分(動作環境に応じて変動あり) |
デモの有無 | ー |
レンタルの有無 | 施設向け・個人ともレンタル可 |
価格帯 | 介護支援用 初期導入費用 100,000円 1年契約 108,000円/月 3年契約 78,000円/月 |
今回は、移動支援介護ロボットの導入をお悩みの方へ向けて、導入効果や機器を選ぶ時のポイントなどについて解説し、代表機器の紹介をさせていただきました。
介護ロボットの中でも、利用者の屋外や屋内での日常生活での移動のサポートに特化した「移動支援介護ロボット」は、使用環境や利用者の身体に合わせて選ぶ必要があります。
器を選定する際のポイントを参考に、導入予算と相談しながら最適な移動支援介護ロボットが見つかりますように。利用者の生活の質の向上や介護者の負担軽減に繋がれば幸いです。
介護ロボットについては介護ロボット徹底解説|種類やメリット、具体的な製品紹介まででも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。