認知症介護基礎研修の義務化とその対応策

投稿日 2021.09.13 / 更新日 2022.01.04
投稿者:横山 洋介

2021年度の介護報酬改定により、介護に直接たずさわる職員のうち、医療・福祉関係の資格をもたない介護職員は「認知症介護基礎研修」を受講することが義務づけられました。2023年度までの経過措置期間を経て、2024年4月から完全義務化となります。
この研修はケアを受ける入居者はもちろん、職員や施設にとってもメリットの多い制度といえます。この記事では、認知症介護基礎研修受講方法などを解説します。

認知症介護基礎研修の義務化とその対応策

2021年度の介護報酬改定により、介護に直接たずさわる職員のうち、医療・福祉関係の資格をもたない介護職員は「認知症介護基礎研修」を受講することが義務づけられました。2023年度までの経過措置期間を経て、2024年4月から完全義務化となります。対象となる事業所の担当者や職員の方は、準備ができているでしょうか?

この研修はケアを受ける入居者はもちろん、職員や施設にとってもメリットの多い制度といえます。 この記事では、認知症介護基礎研修受講方法などを解説します。

認知症介護基礎研修を未受講の職員がいる事業所の責任者は、職員が受講できる環境を整え、施設全体が自信をもって業務に臨めるよう備えましょう。


認知症介護基礎研修について

今まで、認知症を患った人の介護にあたる介護職員初任者研修修了者や無資格者を対象とした基礎的な研修は存在しませんでした。そこで、認知症ケアに関する最低限の知識や技術、考え方等を広く習得できる機会として認知症介護基礎研修が創設されました。

この章では認知症介護基礎研修の導入された経緯とその必要性について説明します。

認知症介護基礎研修が創設されるまでの流れ

もともと、認知症介護を目的とした研修としては「認知症サポーター養成講座」がありました。しかし、これは一般市民を中心とした基礎知識の共有が主な目的。そのため、具体的な介護の場面が想定されているものではありませんでした。また、「認知症介護実践研修」という仕組みもありましたが、こちらも知識がある方が対象です。

初任者研修修了者や無資格者に対して創設された新しい研修が、今回の認知症介護基礎研修です。 厚生労働省は、2015年に認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)を取りまとめ、公表しました。新任の介護職員の方などが、認知症介護に最低限必要な知識・技能を習得できる研修として、認知症介護基礎研修が提案・導入されました。

認知症への対応力向上に向けた取組の推進

認知症介護基礎研修義務付けを伝える国の資料
参照:厚労省「認知症への対応力向上に向けた取組の推進」



認知症介護基礎研修の目指すもの

認知症介護基礎研修では、認知症介護にたずさわる方が業務をおこなう上での基礎的な知識・技術を学びます。そして、学んだ内容を実践する際の考え方を身につけ、認知症ケアに関わるチームの一員として活動することが目標です。

職員が研修を受講することでケアの質が向上し、入居者の満足度は高まるでしょう。入居者の満足度が高い施設は入居率も高まり、事業所・職員にとっても働きやすい職場になります。

2024年度より完全義務化

2021年度介護報酬改定では、「介護に関わる全ての者の認知症対応力を向上させていくため、介護に直接携わる職員が認知症介護基礎研修を受講するための措置を義務づける(※3年の経過措置期間を設ける)」との記述があります。つまり、認知症介護基礎研修の受講は、無資格の職員が受講する義務であると同時に、事業所が職員に受講させる義務でもあります。

2024年3月までの3年間は経過措置期間とされ、2024年4月からは研修の受講が完全に義務化される方針です。現在働いている職員の方は、経過処置期間の間に研修を受講する必要があります。

また、新規採用・中途採用を問わず、事業所が新規に採用した職員については採用後1年間の猶予期間が設けられるので、勤務開始から1年以内に研修を受講し、修了しましょう。


認知症介護基礎研修の対象となる人、ならない人

義務付けの対象とならない方は、「各資格のカリキュラム等において、認知症介護に関する基礎的な知識及び技術を習得している者」です。具体的にみていきましょう。


義務づけの対象とならない(研修免除)

【資格】
看護師、准看護師、介護福祉士、介護支援専門員、実務者研修修了者、介護職員初任者研修修了者、生活援助従事者研修修了者に加え、介護職員基礎研修課程又は訪問介護員養成研修一級課程・二級課程修了者、社会福祉士、医師、歯科医師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、精神保健福祉士、管理栄養士、栄養士、あん摩マッサージ師、はり師、きゅう師、柔道整復師、等

【研修】
認知症介護実践者研修、認知症介護実践リーダー研修、認知症介護指導者研修等の認知症の介護等に係る研修養成施設及び福祉系高校で認知症に係る科目を受講したが介護福祉士資格は有していない者

【従業員以外】
従業者の員数として算定される従業者以外の者や、直接介護に携わる可能性がない者


義務付けの対象となる(研修義務)

【研修】
認知症サポーター等養成講座修了者


認知症介護基礎研修における外国人職員の取り扱い

介護の現場では、外国人職員の方も多く働いています。厚生労働省のQ&Aでは『認知症介護に関わる外国人職員の方は基本的には受講が必要』とされているため、対応が必要です。

また、新型コロナウイルス対策や日本語対応をふまえて以下の点が示されました。

  • 入国後講習中の外国人技能実習生は研修を受講できない
  • 新型コロナウイルス感染症対策のための入国後14 日間の自宅等待機期間中であって入国後講習中ではない外国人技能実習生については、受入企業との間に雇用関係がある場合に限り、オンライン研修の受講は可能
  • 2021年度中に、日本語能力試験のN4レベルを基準としたeラーニング教材の作成をおこなうとともに、介護分野の在留資格「特定技能」に係る試験を実施している言語(フィリピン、インドネシア、モンゴル、ネパール、カンボジア、ベトナム、中国、タイ、ミャンマーの言語)を基本としたeラーニング補助教材を作成することを予定している

詳細については、実施主体である都道府県等に問い合わせるのが良いでしょう。


認知症介護基礎研修の受講の流れ

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認知症介護基礎研修には自治体・地域の事業所が会場で開催しているものと、eラーニングの2種類の受講方法があります。カリキュラムは講義3時間・演習3時間から構成。講義では認知症の人の理解や対応の基本、コミュニケーションをとる上での留意点などを学びます。演習では認知症ケアにおける理念や考え方、基礎技術、行動の背景を理解したケアなどを身に付けることが目標です。

都道府県や指定都市、および委託を受けた団体が研修を実施するので、研修を開催する時期や、定員、受講の申込方法などについては、担当部署に確認が必要です。

また、国の補助事業として設置されている認知症介護研究・研修センターでは、DCnet(認知症介護情報ネットワーク)を運営しています。DCnetでは認知症介護に関わるさまざまな情報や研究成果などを掲載しているほか、各種研修に関する情報も確認することができます。

会場開催の研修では、講師から直接指導を受けられるので、自分の習熟度合いを確かめながら進めることができます。また、分からないこともその場で講師に質問ができるので、知識の定着がはかりやすい点がメリットです。講習の費用は無料の場合が多いですが、1000円程度のテキストを購入するケースもあります。ただ、新型コロナウイルス対策から受講生の人数を制限していることも多いため、会場での受講枠を確保するのは難しいでしょう。

eラーニング研修は、web上に掲載された講義動画や確認テスト等の学習コンテンツを受講者が視聴して学習する仕組みです。パソコンやタブレット端末、スマートフォンで24時間いつでも受講可能。150分程度の講義を受講することで、研修修了となります。

今までは、3時間の講義のみがeラーニング研修の対象で、演習は実地での研修が必要でした。しかし、2021年度から演習を含めたすべての研修をeラーニングで学習できるように変更されています。

eラーニングを利用するメリットは以下です。


  • 受講人数の制限がない
  • 会場に行く必要がなく交通費・移動時間の節約になる
  • 24時間受講ができるため、日常の業務に支障が出ない
  • 動画を繰り返し視聴し、学習することができる
  • テキストはネット上で見ることができるため、購入・準備の必要がない
  • コロナ禍において、人の密集を避けることができる

認知症介護基礎研修のeラーニング利用には、事業所・受講者ともに準備が必要です。

事業所の準備は、以下の通りです。

①介護保険事業所番号を用意し、専用サイトhttps://dcnet.marutto.biz/e-learningで事業所登録をおこなう
②システムから事業所に発行・送信された事業所コードを受け取る
③事業所コードを受講希望者へ配布・通知する


その後、受講者数に応じた費用が発生します。1つの受講用IDあたり1000円~3000円です。

受講者の準備は、以下の通りです。

①事業所から事業所コードを受け取る
②専用サイトトップページ新規登録画面へ進み、操作マニュアル(認知症介護基礎研修受講者用)にそって申し込む
③事業所・受講者の準備が整い、受講が決定されると、受講者宛に受講者ID、申込確認通知、支払方法が通知される


受講料は3000円ですが、研修会によっては1000円となります。受講料を入金し、受講許可通知を受け取ると、いよいよeラーニングの受講開始です。すべての通信科目を受講し、確認テストを終了すると、システム上から受講者に修了証が発行されます。修了書は本人管理となるので、受講者自身が大切に保管しましょう。

eラーニングでは、各章の最後に確認テストが出題され、学習内容の復習をおこないます。全問正解しなければ次の章には進めませんが、間違えても正解するまで再挑戦が可能です。


認知症介護基礎研修を通じ、より質の高いケアを実現させましょう

今回は認知症介護基礎研修について説明しました。研修が義務化される2024年まではまだ時間がありますが、事業所・職員の方は余裕をもって対応しましょう。

認知症介護基礎研修は認知症介護に必要な知識を整理・共有する事ができます。研修終了後には、きっと質の高いケアが提供できるはずです。




都圏の病院

泌尿器科専門医、性機能専門医、性感染症専門医、医学博士。15年以上にわたる大学・基幹病院での臨床・研究経験を生かし、一般向けのわかりやすい医療記事の執筆が得意。趣味が高じてファイナンシャルプランナー2級・福祉住環境コーディネーター3級を取得。医師向けに家計アドバイスも行っており、医師を対象とした情報発信にも自信あり。子育て奮闘中。

薬剤師として日本、シンガポールで従事。国際医療ボランティアとしてインドやボツワナ、タイに派遣される。現在は医療ライターとして執筆、コンテンツディレクター、編集長、ライティング講師、Webデザイナーとして活動。


都内大学病院

小児科専門医、医学博士。専門は、アレルギー、免疫。大学病院および地域の基幹病院で小児科医として10数年勤務、ゲノム研究、論文執筆を行う。オンライン診療、患者サポートプログラムなどの監修。正しい医療情報を発信するためにライターとしても精力的に活動中。