近年では多くのクリニックが、集患を目的としたさまざまな施策を行っています。なかでも「診療圏分析」はIT技術を駆使し、周囲の環境状況と自施設が適した条件かどうかを判断してくれる重要な手段です。
診療圏分析では推定患者数と実績データを比較し、経営評価をすることができます。今回は実際に診療圏分析を行う方法や、おすすめの診療圏分析ツールをご紹介しています。診療圏分析の実施を検討中の医院は、ぜひ参考にしてください。
診療圏分析を行うと、推計患者数や周囲の医院数、人口世帯数等をレポート化して表示してくれます。周囲の人口世帯が少ない、またはその地域にある医院数が多ければ、見込まれる来院患者数も少なくなるということです。
来院患者数が見込めなければ、廃業へと追い込まれる可能性も少なくありません。廃業のリスクを避けるためにも、診療圏分析は必要不可欠といえるでしょう。診療圏分析ツールによってテキストベースのレポートから、地図上に色分けされてみられるものなど、さまざまなサービスがあります。公式ホームページで実際の画面サンプルなどを確認し、使いやすいものを選ぶようにしましょう。
診療圏分析は企業に依頼する方法と、自分で行う方法の2通りがあります。必要な数字さえ分かれば、自分で計算することもできます。推定患者数を割り出すための基本式は下記の通りです。
推定患者数=エリア人口×受療率÷(科目別競合医院数+1(自院))
また、自分でアプリやソフトを入手して、近隣の状況確認を行うこともできます。しかしながら、あくまでも情報が表示されるだけであり、その先の分析などは自力で行わなければなりません。
詳しい分析結果が知りたいのであれば、企業に依頼する方が確実でしょう。診療圏分析や調査を専門的に行っている企業もあり、分析結果まで詳しく確認することができます。その分、費用は高額になりますので、費用対効果を考えながら利用を決めるようにしましょう。
診療圏分析を導入する際は、下記の点に注意してください。
ここからは、診療圏分析を導入する際の注意点を詳しく解説していきます。
まずは「どこまでの情報を入手できるかどうか」という点です。近隣の医院の情報を入手することは、ほとんどの診療圏分析サービスで行うことができます。しかし、それ以外のサービスについてはツールによって異なるため、事前に調べておく必要があるでしょう。
たとえば、駐車場の有無や診療時間によって、競合強度は異なります。競合強度まで正確に行ってくれる事業者の方が、より精度の高いデータが得られるでしょう。技研商事インターナショナル株式会社の診療圏分析では、医院ごとに詳しい情報をデータ化して提供してくれます。
「診療圏分析サービス導入にかかる費用」も、導入する際にはチェックしておきたいポイントです。先述した通り、企業に詳細な分析までを依頼すると、それなりに費用がかかってしまいます。
サービスによっては簡易な情報だけ無料で提供してくれるところもあるので、初めての方は無料サービスから始めてみるのもおすすめです。たとえば、株式会社メディヴァやリコーリース株式会社などは、一部の機能を無料で使うことができます。
マップソリューション株式会社の診療圏分析では、算出された推計患者数と実績データを比較して経営評価に役立てることができます。
マップソリューション株式会社の比較ポイント
製品情報
主な機能 | 商圏人口分析、競合医療機関情報、見込み患者数、見込み診療収入 |
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初期費用 | 650,000円~ |
特長 | 診療圏内の人口集計では、指定地点を中心とした診療圏内の年齢階級別・男女別人口を集計します。 また、設定範囲における昼夜それぞれの人口情報の表示と、それに基づく患者数、おおよその診療収入の表示も可能です。専任のコンサルタントがついているわけではありませんが、詳しい情報を教えてくれるので自分でもある程度の分析をすることができるでしょう。 |
シャープファイナンス株式会社の診療圏分析は主に新規開業者向けのサービスですが、既に開業している場合でも経営評価に役立てることが可能です。
シャープファイナンス株式会社の比較ポイント
製品情報
主な機能 | 商圏人口調査、競合医療機関プロット、診療圏設定、見込み患者数の算出 |
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初期費用 | 要問合せ |
特長 | 予定している場所で開業した場合に、一日どれくらいの患者数が見込まれるのかを算出できます。 分析を申し込んだ後、コンサルタントが直接街を歩いて状況確認を行い、競合状況を合わせてレポートを提出してくれます。河川や幹線道路、線路などによって診療圏は異なるため、実際に歩くことでその地域に合わせた分析を行ってくれるのです。また、分析結果に基づき診療圏を設定し、見込み患者数も提示してくれるサービスです。 |
リコーリース株式会社の診療圏調査ソフトは、近隣の競合医院の情報や、国勢調査の人口統計データから算出した来院患者予測数データを短時間で作成できるツールです。
リコーリース株式会社の比較ポイント
製品情報
主な機能 | 競合医院一覧表示、来院患者数予測、昼夜人口データ(詳細版) |
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初期費用 | 0円(WEB版) |
特長 | 周囲の道路環境や周辺の建物状況から、視認性がいいかどうかなどをチェックしていきます。 ドクターサポート会員になると、無料で診療圏調査ができます。一日当たりの来院患者数予測や周辺地図、患者数予測や競合医院一覧を無料でチェックできるでしょう。昼夜間人口等データなど、より詳しいレポートが欲しい場合には「詳細版」の利用がおすすめです。 |
株式会社日本統計センターの「診療圏レポート」は、診療圏分析に特化したクラウド型のオンデマンドエリア分析サービスです。
株式会社日本統計センターの比較ポイント
製品情報
主な機能 | 商圏人口分析、競合医療機関情報、見込み患者数、見込み診療収入 |
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初期費用 | 0円 |
特長 | 精度の高い分析には最新の人口データ、競合医院・診療所データが必要不可欠ですが、クラウド型なので常に最新のデータを使った分析結果を取得できます。 初期費用は0円で、利用頻度にあわせて「従量制」と「定額制(使い放題)」の料金プランが用意されています。自院の予算に合わせたプランを選んで利用できるのも、「診療圏レポート」の特長といえるでしょう。 |
技研商事インターナショナル株式会社の「Market Analyzer」は、新規開業向けに開発された診療圏分析ツールです。
技研商事インターナショナル株式会社の比較ポイント
製品情報
主な機能 | 商圏人口分析、来院圏シミュレーション、見込み患者数 |
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初期費用 | 要問合せ |
特長 | 病院・診療所のデータはもちろん、受療率・疾病分類、統計データを利用した推計患者数レポートで経営をサポートしてくれます。 病院・診療所データは競合医院を把握するだけでなく、病診連携のための参考にもなるでしょう。また、昼夜人口の異なりや年齢別人口の活用により、医療需要の把握も可能になります。 |
株式会社MISでは、厚生労働省の「患者調査受療率統計」、総務省の「国民生活基礎調査」、市町村人口統計などの資料から顕在患者や潜在患者数の予測を行ってくれます。
株式会社MISの比較ポイント
製品情報
主な機能 | 人口分析、患者数予測、疾病別患者占有率、疾病予測 |
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初期費用 | 要問合せ |
特長 | 新規開業だけでなく、既存医院においても診療圏内の室病患者の占有率を把握するのに役立つでしょう。 また、市町村疾病率の調査や患者推計、地域の疾病特性による疾病予測といったユニークな機能も付いているのが特長です。それにより、地域医療連携体制の確立にもつながるでしょう。 |
株式会社メディヴァの「診療圏調査」は、医師や関係者向けのスマートフォンアプリです。日本全国の外来患者の簡易市場調査を、住所を入力するだけで気軽に実施できます。
株式会社メディヴァの比較ポイント
製品情報
主な機能 | 商圏人口分析、診療科ごとの推定患者数 |
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初期費用 | 0円 |
特長 | 登録不応で、料金もかからないので、初めての方にもおすすめです。 居住人口や昼間人口をもとに算出した、それぞれの時間帯の推定患者数が得られるので市街地にも郊外にも対応しています。なお、アプリ内で調査した結果は、履歴として保存されるのでいつでも見返すことが可能です。 |
大成建設の「診療圏分析技術」では、患者の施設選択の法則性と医療施設分布・交通条件から簡単に圏域分析ができます。
大成建設株式会社の比較ポイント
製品情報
主な機能 | 商圏人口分析、潜在患者数、来院予測数 |
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初期費用 | 要問合せ |
特長 | 日本全国の外来患者の簡易市場調査を、住所を入力するだけで気軽に実施できます。登録不応で、料金もかからないので、初めての方にもおすすめです。 居住人口や昼間人口をもとに算出した、それぞれの時間帯の推定患者数が得られるので市街地にも郊外にも対応しています。なお、アプリ内で調査した結果は、履歴として保存されるのでいつでも見返すことが可能です。 |
診療圏分析を導入することで、下記のようなメリットを得ることが可能です。
ここからは、それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
最初のメリットは「自院と他院の関係性が見える」という点です。診療圏分析を導入することで、自院の診療圏にある競合医院との比較を行うことができます。それにより、自院に足りないポイントや、勝っている点を客観的に判断することができるでしょう。
たとえば「駐車場があって車が停めやすい」「夜間診療も行っている」といったポイントがあれば、その医院の強みになります。地域の特性や診療科目によっても強みになるポイントは異なりますが、診療圏分析を導入することでそれらを把握し、集患につなげる施策を考案できるでしょう。
もうひとつのメリットは「潜在患者数を予測することができる」という点です。たとえば徒歩10分以内を通院圏内とすると、半径800m以内に居住する人が「患者さんになる可能性のある人」つまり潜在患者となります。
ただし、単純にエリア内の戸数を数え上げるだけでは、実際にクリニックに訪れる正確な数値は出ません。人の動線や時間帯による人口の変化なども調べたうえで、数値を出さなければならないからです。診療圏分析を導入することで抽出されたデータから、潜在患者数とその推定診療報酬までを算出できます。
クリニックを経営していくうえで、集客のための施策を行っていくのは大切なことです。周囲の環境や競合医院の情報を把握し、より優れた施策を打ち出していく必要があるでしょう。
そのためにも、常に最新の情報をもとにした診療圏分析は必要不可欠になってきます。自力での調査には限りがありますので、プロの力も借りながらクリニック経営に役立てていきましょう。