PHSが終了!介護施設でインカム導入のススメ

投稿日 2021.11.01 / 更新日 2022.01.05
投稿者:横山 洋介

PHSのサービスが終了したというニュースを聞いたことがありますか?このニュースは、PHSを利用している介護施設にとっては人ごとではありません。

いままで介護施設では、利用者の方からのナースコールの受信手段や職員同士の連絡手段として、PHSが使われてきました。現在、PHSに変わる通信手段として、注目されているのがインカムです。

この記事では、介護施設におけるインカムの活用方法について説明します。


インカムはPHSとは異なった特徴や利点があります。うまく活用して、職員の業務負荷の軽減や、利用者の満足度向上につなげましょう。



介護施設で注目されているインカムとは?

インカムとは、インターコミュニケーション(相互通信式構内電話)の略称です。さらに細かく定義すると、送信者・受信者の間で一斉通信ができ、電話回線から独立した双方向通信のことをさします。電話回線を使うことなく、職員間でコミュニケーションをとることのできるツールになります。


トランシーバーとの違い

トランシーバーと同じじゃないか、と感じる方もいるかもしれません。 トランシーバーは片方ずつ会話をやり取りする機器で、同時に通話はできません。厳密にはインカムとは異なりますが、トランシーバーにイヤホンなどを付けたものをインカムとして呼ぶこともあります。


双方向通信ができればインカム

一般的には、携帯電話に接続できるヘッドセットを含めて、以下の特徴があるものを広くインカムと呼んでいます。

  • イヤホン・ヘッドセットなどを装着し、手ぶらで作業ができる
  • 無線通信である
  • 常に回線に接続している
  • 双方向の通信が可能


介護施設でのPHSサービスの終了と求められるインカム

PHS終了

なぜ、インカムの重要性が高まっているのでしょうか。そこには、介護施設で広く使われているPHSサービスが終了したことが大きく関わっています。


PHSサービスの終了

「Personal Handy-phone System(パーソナル・ハンディ・システム)」の頭文字をとったのがPHSです。PHSは携帯電話に比べ電波が微弱で、高音質であることから、医療機関や介護現場での通信手段として用いられてきました。介護施設におけるPHSは、施設内に基地局を設置することで内線電話としての使用が可能です。また、施設外では公衆無線サービスを用いたPHSとして使用できる機種も存在しました。

しかし、2021年1月31日をもって一般向けのPHSサービスが終了。院内無線などの法人向けサービスは継続していますが、古い基地局を更新しない場合はメンテナンスの対象にならないなど、不具合があっても十分なサポートを受けられなくなります。今後新しい通信機器の開発や販売がされる可能性も低いでしょう。

そのため、病院・介護施設・企業は、現在使用している構内PHSの継続利用をしながらも、次なる時代にあった通信機器の導入を検討していくことが必要です。


介護現場における双方向通信の必要性

介護現場で通信手段を導入しない場合、どのようなデメリットが生じるでしょうか?

  • 職員の居場所がわからず施設内を探し回ってしまう
  • ナースコールのような呼び出しに対して、複数の職員が対応してしまったり、逆に「誰か行くだろう」と放置してしまったりする
  • トラブルに直面した際に、連絡手段がなく孤立する など

また、PHSはあくまで電話ですので、別の機器同士で話していると話し中になり、第三者が会話に参加することはできません。二人の通話が終わるまで、他の人は通話することができない点は、注意が必要です。



介護施設においてインカムを導入するメリット

インカム導入のメリット

インカムの導入によって、介護現場にはどのような効果が出るのでしょうか?職員の業務負荷の軽減や、利用者の満足度向上など、さまざまな効果が期待できます。


①施設内での移動時間の削減

移動時間の削減が一番のメリットです。ひとり一台ずつインカムをもっていると、「○○さん」と呼びながら施設内を探し回る必要がありません。また、インカムでは常時接続と一斉通話が可能なため、何か対応が必要な案件に対し、代わりに対応できる人がすぐに対応できます。呼び出した職員が対応ができない場合、あらためて別の人を探して施設内を歩き回らないといけません。インカムの利用で時間と体力の無駄な消耗がなくなります。


②両手が自由になる

PHSの多くは電話のような形をしています。イヤホン・ヘッドセットなどを接続しハンズフリーにできますが、もともとは電話としての設計なので、他の機器との接続などを想定してつくられていません。一方でインカムは、もともとハンズフリーを意識して設計された商品が多く、Bluetoothなどで様々な機器と接続できるケースが多いです。

Bluetoothなどの無線接続が可能なイヤホンやヘッドセットを使用した場合は、ポケットなどに親機を入れ、耳元のイヤホン・ヘッドセットを使って会話ができます。最近は、骨伝導型のイヤホン・ヘッドセットも登場しました。長時間装着による耳への圧迫を軽減し、周囲の音を聞きながら作業ができます。


③一斉通話で指示待ち職員がゼロに

インカムの特徴のひとつは、双方向の一斉通信が可能であることです。PHSの場合、基本的には電話と同じように1対1のやり取りになります。一方、インカムは一斉に送信が可能なため、指示待ちや相談待ちの時間がありません。


④利用者の満足度向上

インカムを活用することで情報伝達にかかる時間を削減することができ、結果的に利用者の満足度向上にもつながるでしょう。利用者に起きたトラブルに対して速やかに対応し、余裕をもってケアに臨むことが可能です。利用者の満足度向上が施設の利用率向上にもつながり、ひいては施設の安定した運営にもつながるでしょう。


⑤職員の定着率の向上

インカムを用いることで、介護現場で職員が孤立せず、すぐにフィードバックが得られます。業務に心と時間の余裕が出ることで働きやすい職場となり、職員の定着率向上にもつながるでしょう。



インカム導入の介護施設におけるデメリット

導入にあたってのメリットが多いのがインカムです。しかし、インカムの導入にあたってはデメリットも考えておく必要があります。

①導入費用

まず、何といっても導入にかかる費用は大きいでしょう。トランシーバー型の端末代は1台5000円~30000円程度することが一般的です。また、施設が大きい場合は、施設全体に通信網を整備するための費用がかかります。携帯電話のネットワークを活用できる商品もありますが、別途月額料金が必要です。


②1対多数の会話による弊害

一斉通話が可能なことがインカムのメリットですが、逆に「誰かが対応するだろう」という判断から、呼びかけに対して職員からの反応がなくなってしまうことが考えられます。一斉通話だとしても、具体的な相手の名前を出すのか、このような内容には誰が反応するのか、といったルールを作る必要がありそうです。

③リーダーの負担増

インカムを活用する場合、司令塔にあたるリーダーを設定し、さまざまな現場からの訴えに的確な指示を出していく必要があります。情報が多く吸い上げられる分、リーダー業務にあたる職員の負担は増えそうです。一方で、入職まもない場合や夜間帯の場合など、職員の不安や負担が大きい場合にインカムは大きな助けとなります。職員はリーダーの負担に注意しながら、インカムを活用できると良いですね。

④イヤホン・ヘッドセットの装着によるトラブル

インカムにはさまざまなタイプが販売されていますが、イヤホン型の場合、一日中装着していた場合には耳の痛みや違和感を覚えることがあります。また有線タイプの場合、コードをひっかけて破損するといったことにも注意する必要があるでしょう。



介護施設における実際のインカム導入事例

三重県では試験事業として2019年10月~2020年2月、県内の特養1施設と老健2施設にインカムを導入。その結果、インカムを導入した3施設に共通して、ケアをおこないながら介護職員間で情報共有ができるようになりました。利用者の見守りを手厚くおこなえるようになったとの結果です。具体的に、インカム導入前は介護職員1人1日当たりの「見守り時間」が16分であったのに対し、導入後に106分に増加したケースがありました。

特に業務が改善した点として、次の5点があげられています。

  • 情報共有のスピードが速くなった
  • 職員間で利用者についての情報共有が容易になった
  • 入浴介助の業務が効率的におこなえるようになった
  • 多職種が連携する業務が効率的におこなえるようになった
  • 移動時間・移動距離が減ったなど勤務時間内の導線が短縮された


介護施設におすすめのインカム5選

現在販売されているインカムの中で、代表的なものを5つ紹介します。


①スマホインカム「Buddycom(バディコム)」

スマホインカムBuddycomは、インターネットを利用したインカムです。インターネット環境下であれば病院・介護施設内に限らずあらゆる場所での通話が可能になります。

施設で端末を用意してもよいですが、手持ちのスマホやタブレットにアプリをインストールすることで簡単に利用できます。また、施設にインターネット環境を整えれば利用できる手軽さも魅力です。そのほか、以下のような特徴があります。

  • グループ通話
  • マルチグループ受信
  • 強制アプリ起動
  • 通話履歴・内容の保存
  • 音声テキスト化
  • トランシーバー翻訳
  • ライブ動画を共有しながらのグループ通話

施設の需要にあわせて機能を選択できるサービスといえるでしょう。

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②アイコム

アイコムはトランシーバー型のインカムを提供しています。無線機に携帯電話用の電波を使用することで、広範囲での通信が可能。4G回線を利用するため、通話距離の制約や不感地帯を気にせず利用できる一方、端末ごとに月額料金の契約が必要です。オプション料金はかかりますが、GPS位置情報をパソコン、スマートフォン、タブレットなどで管理することができます。


③名電通株式会社「ナースエコール+インカムシステム」

ビジネスフォンやナースコールを主力製品とする明電通株式会社。インカムとして使えるだけでなく、ハンディ型ナースコールのPHS端末としても使用できるインカムシステムを提供しています。病院などの医療機関はもちろん、介護施設でも利用できます。

スタッフ間の個別・グループ通話という基本的なインカムの機能はもちろん、全スタッフのインカム端末に一斉で通知できる機能も備えています。

また、電話設備との連動にも対応。事務所が無人の時や、ケアの最中にも電話の通話を受けることができます。


④Yuiコール

Yuiコールは既存のPHS通信設備に制御システムを追加し、インカム端末として使用するサービスです。Yuiコールの介護施設向けインカム機能「インカム+ナースコールシステム」は、 現在利用しているPHS端末に必要な部品を追加することで、インカム端末として利用できます。そのため、専用のインカムを新しく導入するより低価格で導入が可能です。

⑤NDソフトウェア「ほのぼのTALK++」

iPhone、iPad、iPod touchをインカム・トランシーバーのように活用するサービスを提供しています。Wi-Fi、もしくは4G環境であればどこでも利用できることが特徴です。ヘッドセットにネックスピーカーを採用しているので、業務中に両手が自由になります。また、会話内容を自動でテキストにする音声認識機能もついています。テキストを一斉共有できるため、万が一音声を聞き逃しても指示を見落とすことがありません。


このほかにも、インカムを扱っている企業は複数あります。施設の業務効率化を実現するため、様々なメーカーの商品を比較して導入を検討しましょう。



介護施設が利用できるインカム導入にあたっての補助金

導入にあたって費用はかかりますが、さまざまな補助を活用してお得に導入しましょう。見守りセンサーの導入とあわせてインカム・Wi-Fi設備の導入をした場合、都道府県によっては、最大750万円の補助を受けることができます。

また、ICT導入支援事業費補助金を利用すると、施設規模に応じて100~260万円をタブレットやインカムの導入費用に充てることができます。

例えば京都市は、インカムなどの導入支援事業を独自にをおこなっています。(今年度分の助成金はほとんどが申請期限を過ぎています。)導入を検討している介護施設は、来年度以降に活用できる補助金がないか、自治体の担当窓口に問い合わせてみましょう。



インカムを上手に活用して介護現場を快適に

インカムの導入は、職員間の新たな連絡ツールとして介護現場を大きく変える可能性があります。介護現場が抱える問題点を洗い出し、施設に適したインカムツールを導入することが重要です。インカムを通して業務の効率化や職員間の連携を向上させ、より満足度の高いケアを実現し、職員にとっても働きやすい職場を作りましょう。



都圏の病院

泌尿器科専門医、性機能専門医、性感染症専門医、医学博士。15年以上にわたる大学・基幹病院での臨床・研究経験を生かし、一般向けのわかりやすい医療記事の執筆が得意。趣味が高じてファイナンシャルプランナー2級・福祉住環境コーディネーター3級を取得。医師向けに家計アドバイスも行っており、医師を対象とした情報発信にも自信あり。子育て奮闘中。

薬剤師として日本、シンガポールで従事。国際医療ボランティアとしてインドやボツワナ、タイに派遣される。現在は医療ライターとして執筆、コンテンツディレクター、編集長、ライティング講師、Webデザイナーとして活動。


総合病院

URL:https://twitter.com/dr_shinpaku

呼吸器専門医、指導医、総合内科専門医、研修医指導医、医学博士。総合病院勤務医として臨床または研究に従事し、若手指導にあたりながら、これまで培った経験を生かして医師ライターとしても大手医療メディアなどで多数の記事作成を行っている。また専門知識を生かして監修や編集、Webディレクターとしても活動している。
最近は予防医学、デジタルヘルス、遠隔医療、AI、美容、健康、睡眠などに関心を広げデジタルヘルス企業に関する記事の連載も行っている。
正しい医療知識の普及や啓蒙のために日本語又は英語で発信を行いながら様々な企業との連携やコンサルティングも経験し、幅広い分野での貢献に努めている。
複数の学会に所属し、論文執筆、国内・国際学会発表による研鑽を積んでいる。