医療機関のホームページは、集患のための大切なツールです。近年では多くの病院やクリニックが、ホームページを通して自施設の情報や紹介を発信しています。とはいえ、自由に作成できるわけではなく、医療広告ガイドラインに則ったものを作ることが求められます。
ガイドラインに違反すると罰金が課されますが、違反しても儲かってしまうというのが現状です。他社との差別化を図ることも大切ですが、医療広告ガイドラインに則ったホームページを作成していきましょう。そのために、当記事ではNG表現やOK表現を分かりやすく解説していきます。
本記事は、医療機関向けホームぺージ制作を行っているセカンドラボが執筆しています。
まずは、医療広告ガイドラインの概要や、規定の対象となる広告媒体について解説していきます。
医療広告ガイドラインの正式名称は「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」で、厚生労働省から出されている指針です。これまで、医療機関のホームページに厳しい規定はなく、「医療機関ホームページガイドライン」に基づいた自主的な取り組みを促す程度に留まっていました。
しかしながら、美容医療に関する相談が後を絶たなかったことから、消費者が内容を適切に理解し正しい選択ができるような情報を発信するホームページの作成が求められるようになったのです。2017年に医療法が改正され、ホームページを見る人に誤解を与えるような表現を使った場合は、他の広告媒体と同じく規制の対象とすることになりました。
もちろん、セカンドラボの医療機関向けホームページ制作では、医療広告ガイドラインを順守したサイトを作成可能です。
医療広告ガイドラインの規制対象となるのは、ホームページだけではありません。厚生労働省の規約によると、下記のような媒体も対象と定められています。
- チラシ、パンフレットその他これらに類似する物によるもの(ダイレクトメール、ファクシミリ等によるものを含む。)
- ポスター、看板(プラカード及び建物又は電車、自動車等に記載されたものを含む。)、ネオンサイン、アドバルーンその他これらに類似する物によるもの
- 新聞、雑誌その他の出版物、放送(有線電気通信設備による放送を含む。)、映写又は電光によるもの
- 情報処理の用に供する機器によるもの(Eメール、インターネット上の広告等)
- 不特定多数の者への説明会、相談会、キャッチセールス等において使用するスライド、ビデオ又は口頭で行われる演述によるもの
上記で分かるように集患を目的とした媒体に関しては、すべてが広告規制の対象になります。一方で、学術論文や新聞・雑誌の記事、患者さん自らの体験談や院内掲示、院内で配布するパンフレット、医療機関の職員募集に関する報告に関しては、医療広告規制の対象外です。
ただし、ホームページ内に掲載する体験談は広告の一部とみなされます。つまり、患者さんの受診を「誘引」する意図があるかどうかが、判断基準になるのです。
出典:医療広告ガイドライン
広告の規制対象となる広告表現を分かりやすく分けていくと、下記のような事例が挙げられます。
ここからは、規制対象となる広告表現について、具体的に解説していきます。
まずは「虚偽広告」です。治療内容や期間を偽った表現は、医療ガイドラインで「虚偽広告」とみなされます。どんな簡単な手術においても「絶対安全」ということはありえません。そのため「絶対安全です」「必ず成功します」「痛くありません」といった過度な表現は、虚偽広告になってしまいます。
さらに、治療後の定期的な処置が必要なケースであるにもかかわらず、「一日で治療が終わります」といった表現も虚偽広告にあたります。施術に必要な検査や診断、手術や術後のメンテナンスに必要な期間を記載していないからです。治療期間についての嘘の表現となり、罰則の対象となるので注意しましょう。
「虚偽」まではいかなくても、事実を誇張して表現している「誇大広告」も認められません。事実を誇張することで、広告を見る人が過度な期待を持ってしまう可能性があるからです。たとえ実際に誤認した人がいなくても、誤認する可能性があると常識的に判断されれば「誇大広告」になってしまうので注意しましょう。
たとえば「〇〇センター」という表現は、救命救急センターや母子医療センターなどの医療機関や地域の中核的機能を担っていると都道府県から認められた施設だけが用いることのできる表現です。そのため、それ以外の医療機関が〇〇センターと記載していた場合には誇大広告として扱われます。
また、医療広告ガイドラインを遵守していることを、過度に強調することも禁止されています。医療広告ガイドラインを遵守していることは記載するまでもなく、当然のことです。しかし、広告内それを強調することで、あたかも行政機関の保証があるような誤認を与える可能性があるからです。
科学的根拠がないにもかかわらず「比較的成功率の高い手術です」などの表現もNGです。何と比較して安全なのか、正確な比較材料を提供していません。また、テレビの健康番組で紹介されていた治療法を、科学的根拠なしに事実として引用することも誇大広告にあたります。
他の病院やクリニックと比較する「比較優良広告」もNGとされています。比較の対象となるのは、病院の規模や人員配置、提供する医療内容といったものです。たとえば「日本一」や「No.1」などといった最上級を意味する表現も、他の病院と比較していることになるため禁止されています。
ただし最上級を意味する表現については、極端な誤認を与えない客観的な事実であれば記載も可能です。しかしながら、求めがあった際には裏付けとなる根拠を示し、実証しなければなりません。
さらに、著名人との関係性を強調するような表現もNGです。他の医療機関よりも優れていると、患者さんに誤認を与え不当に誘引する可能性があるからです。比較優良広告に当てはまる表現としては、下記を参考にしてください。
手術件数を広告する場合は、該当する手術件数を計測した期間を細かく月単位で必ず記載しなければならないと定められています。たとえば「手術実績1,000件以上!」という記載だけでは、何年間で実施した手術の件数なのかが判断できません。
「対象期間:2020年4月~2022年3月」など、期間がはっきり分かるように記載する必要があるのです。また、期間だけでなく手術内容にも規定があり、診療報酬点表で認められた手術や先進医療として届出された手術などに限られます。ホームページを見る人が誤認しないよう、集計した手術件数を細かく開示するようにしましょう。
実際に治療を受けた患者さんからの口コミや体験談も、患者さんを不当に誘引する可能性があるため禁止されています。患者さんの体験や家族から聞いた主観的な体験談を紹介するのは避けるようにしましょう。
効果や感想は患者さんの状態によって異なるため、主観的な体験談を掲載することで「実際に効果を体験した人がいるなら、効果があるに違いない」という誤認を与える恐れがあるからです。ただし、口コミサイトへの掲載や患者さん個人が運営するブログなどに、体験談を掲載することは広告に該当しないため問題ありません。
治療前後の写真、つまりビフォーアフター写真の掲載も禁止されています。患者さんの状態により、同じ治療をしても結果は異なるものだからです。そのため、自分も写真と同じような結果になると誤認させるおそれがあるビフォーアフター写真は、医療広告として認められません。
ただし、通常の治療に必要な内容や治療にかかる費用、治療における主なリスクや副作用など細かな説明を付け加えればビフォーアフター写真の掲載も可能です。ただし、加工した写真の使用はNGです。効果があるかのように見せているため、虚偽広告とみなされるので注意しましょう。
上記のような表現や写真は使用が禁止されていますが、規定の条件に合う場合には「限定解除」される可能性があります。ここからは、広告可能になる「限定解除」について、具体的に解説していきます。
基本的には禁止されている内容でも、患者さんが求める情報であれば開示する必要があります。広告を見る人に対して適切な情報提供が行われると判断されれば、広告が「限定解除」することができるのです。限定解除になる具体的な要件は、下記の通りです。
- 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
- 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
- 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
- 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること
ただし、限定解除されたとしても、内容は正確でなければなりません。虚偽の内容を広告に掲載することは違反になりますので、注意しましょう。
また、問い合わせ先の掲載方法についても、患者さんに分かりやすいレイアウトであることが条件です。あまりにも小さな文字での掲載や、リンクで別のページに移動させるなどの形式はNGですので気を付けてください。
出典:医療広告ガイドライン
厚生労働省から出ている「医療広告ガイドラインQ&A」では、限定解除された場合に記載可能になる表現として下記が挙げられています。
なお、研修歴や専門性に関しては、今後広告可能になる可能性もあります。医療広告ガイドラインは定期的に検討されて内容もその都度変わってきますので、常に新しい情報を確認しておくようにしましょう。
ここからは、医療広告ガイドラインに違反した場合について解説していきます。
医療広告ガイドラインに反する内容を掲載した場合、罰則が課されるので十分に注意しなければなりません。内容が虚偽広告や医療法第6条第4項に違反する場合(麻酔科を診療科として広告するにもかかわらず、許可を受けた医師の氏名を記載しなかった場合)は、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課されます。
また、報告命令違反や立ち入り検査に対する違反の場合は、医療法第89条第2号により20万円以下の罰金が課されるので注意しましょう。罰金で支払った金額は、法人税の計算上損金としては計上できません。所得税計算の際にも適用できませんので、税務処理の際にも注意が必要です。
医療広告ガイドラインに則ったホームページの作成を心がけていても、つい抵触してしまうこともあるでしょう。違反が見つかると、評価委員会から医療機関に向けて違反通知が届きます。
厚生労働省が委託事業として「医療機関ネットパトロール」を使って監視している他、一般からの情報提供で発覚することもあります。違反通知が届いたら、1ヶ月以内に修正するようにしましょう。
1ヶ月後に再度、評価委員会が改善状況を確認します。もし改善が見られない場合は、委員会から自治体へ報告がいくことになるでしょう。行政指導に従わない場合、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が適用されることになります。
ホームページを制作した後に、医療広告ガイドラインに準じているかどうか不安になるのも無理はありません。まずは、ひとつずつ医療広告ガイドラインの内容を確認し、抵触する内容を広告に掲載していないかをチェックしましょう。
最終的な確認は、保健所に依頼するのがベストです。管轄の自治体内にある保健所に問い合わせてみましょう。全国の保健所一覧は、厚生労働省のホームページから確認することができます。万が一違反が見つかっても、すぐに修正すれば問題ないので安心して依頼しましょう。
ここからは、医療広告ガイドラインを意識する必要のある施策について解説していきます。それぞれの施策を行っている医療機関は、改めて医療広告ガイドラインに準じているか確認するようにしてください。
まずは「クリニックの看板」です。タワーサインやファサード看板、ウィンドウサイン、プレート看板などさまざまなタイプがありますが、いずれの場合も患者さんの誘引を目的としているため「広告」に該当します。「県内一」「最高」など、最上級表現を用いてないか確認しましょう。
医療機関向けの看板製作業者についてはクリニック・歯科医院での実績豊富な看板製作業者10選を徹底比較|選び方のポイントも解説!でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
「クリニックのホームページ制作」も、医療広告ガイドラインを意識する必要があります。ガイドラインに違反すると、罰則だけでなくGoogleからのペナルティを受ける可能性もあるでしょう。また、他のクリニックからの印象も悪くなり、社会的信頼の失墜にもつながりかねません。
おすすめのホームページ制作会社についてはクリニック・病院におすすめのホームページ制作会社17選でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
集患に役立つツールのひとつとして「SEO・MEO対策」も注目されています。SEO・MEO対策を行うことで、病院を探している患者さんの目に留まりやすくなるでしょう。施設の写真なども掲載できますが、ビフォーアフター写真などを載せてしまうと医療広告ガイドラインに抵触します。一般人からの情報提供で違反が発覚することもあるので注意が必要です。
クリニックSEO・MEO対策についてはクリニックのMEO対策とは?|メリットやツールを徹底解説!でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
クリニックの看板やホームページの制作、SEO・MEO対策は、集患のために必要不可欠な広告方法です。とはいえ、医療広告ガイドラインを意識し、違反のないようにすることが大切になります。
もし違反してしまうと罰則があるだけでなく、地域での評判も悪くなり経営が立ち行かなくなってしまう可能性もあるでしょう。とはいえ、違反通知がきてから修正することも可能なので、過度に心配する必要はありません。もし不安であれば、保健所に問い合わせて適切な広告を作成していきましょう。