現在、高齢化により骨粗鬆症有病者数は増加傾向です。
骨粗鬆症財団の2022年最新のデータでは、その数は1,590万人と発表されました。しかしながら、実際に治療を受けていらっしゃる方は約2割と言われています。そして、骨粗鬆症による骨折のために生活の質が低下したり、介護を受けたり、「寝たきり」の生活を送っている患者様もおられます。このような患者様を増やさないためには、骨粗鬆症の正確な診断と継続的な治療が大切です。
このような状況を鑑み、2022年度の診療報酬改定では『二次性骨折予防継続管理料 1,2,3』が新設されました。さらに、2024年度4月1日にスタートした「健康日本21(第三次)」では『骨粗鬆症検診受診率15%』の目標が掲げられたりと、骨粗鬆症への関心が高まっています。
骨粗鬆症の診断・治療で活躍するのが骨密度測定装置です。骨密度測定装置は測定方法や測定部位により、価格や種類も様々のため、機種の選定に迷う方も多いのではないでしょうか。今回は、目的やニーズ別に骨密度測定装置のおすすめ製品を紹介していきます。測定方法の違いや価格についても触れていきますので、ぜひ最後までご覧ください。
下の図は各社から出ている骨密度測定装置を検査部位・測定方法別に分類したものになります。各社の大まかな分類を確認したうえで、検査目的や検査ニーズ、運用方法に合った骨密度測定装置を選びましょう。
>>>骨密度測定装置の詳しい選び方は本記事の後半でご紹介しています。
それでは早速、おすすめの骨密度測定装置を紹介します。
GEヘルスケアの骨密度測定装置は長い歴史があり、そこで培われた確かな技術力、そして世界で多くの稼働実績を持っています。発売開始以来、多くのお客様に使用されているPRODIGYシリーズは、高精度、高効率、多彩な臨床ソフト搭載により、高精度で快適な診療をご提供する一翼を担います。
GE独自の鋭角ファンビーム方式は測定誤差わずか1%です(学術的資料より)。鋭角ファンビーム方式では正確なモニタリングを行い、長期的な経年変化観察を可能にします。
腰椎と大腿骨を同じポジショニングで撮影するOne Scan機能を搭載し、解析はオートで行われます。高齢者に多い人工股関節留置後の患者さんでも自動で金属除去処理が行われます。
各依頼科の医師はオート解析結果を診断レポートとして利用できます。診断レポート作成の業務負担はありません。
PRODIGY Fugaの比較ポイント
製品情報
測定部位 | 腰椎・大腿骨・前腕・全身 |
---|---|
測定方法 | DXA法(Kエッジフィルター方式) |
本体寸法・重量 | PRODIGY Fuga フルサイズテーブル
262.3(W)×109.3(D)×128.3(H), 272kg PRODIGY Fuga-C コンパクトサイズテーブル 201.0(W)×109.3(D)×128.3(H), 254kg |
Linar iDXAはGEヘルスケア社独自のナローアングルファンビームとハイディフィニション・ダイレクトデジタル検出器を組み合わせ、高精度な骨密度検査を提供するDXA装置です。現在、骨密度測定装置は従来に比べて検査の頻度や用途が広がってきています。Lunar iDXAはクラス最高レベルの高精度で高効率な検査を実現させるとともに、多彩な臨床ソフトにより各診療科の検査ニーズに対応します。
GE独自のスマートファンビーム方式や、定量目的に適したK-エッジフィルター方 式による正確な測定を行います。高画質で高い再現性を叶えます。
腰椎と大腿骨を同じポジショニングで撮影できるOne Scan機能や、オート解析に よって、高いスループットの検査をご提供します。
骨粗鬆症診療のみでなく、さまざまな臨床ニーズに対応する、多くの臨床ソフトウェアを搭載しています。
例:TBS(海綿骨構造指標ソフトウェア、非定型骨解析ソフトウェア、人工関節専用ソフトウェア、体組成計測、小児用ソフトウェア等)
Lunar iDXAの比較ポイント
製品情報
測定部位 | 腰椎・大腿骨・前腕・全身 |
---|---|
測定方法 | DXA法(Kエッジフィルター方式) |
外寸(mm) | 287(W)×132(D)×125(H) |
重量 | 353kg |
使用者のニーズに合わせて柔軟に使用でき、設置場所が限定されない省スペース設計を実現した装置です。既存のフローティング式や折りたたみタイプの撮影台など、自由に組み合わせられます。
床高55cmの撮影台でも設置できるので、シニアの方でも安心して乗降可能です。アームを上げた状態で静止させられるため、ゆっくりと体制を整えられます。独自の広角ファンビームを採用しており、従来より歪みを抑えた信頼性の高い骨密度測定値を計測できるのです。
X線骨密度測定装置 ALPHYS LFの比較ポイント
製品情報
測定方法 | DXA(デキサ)法 |
---|---|
測定時間 | 腰椎:約40秒 大腿骨:約20秒 ※標準モードの場合 |
外寸(mm) | 幅・奥行:620×1,095 高さ:1,065~1,215(アーム検査位置時)、 1,730~1,880(アーム被検者昇降位置時)、1,870~2,020(アーム最大保持位置時) |
重量 | 要問い合わせ |
スキャンモードは標準・高速・高精度の3種類を搭載しており、目的に合わせて使い分けられます。測定部にあるグリップを組み替えるだけで腕の左右を自動で認識される、簡単設定タイプです。
ガイドに沿って腕を入れるだけで自然にポジショニングできるため、素早い測定開始が可能です。無理のない姿勢で測定でき、負担を感じることなく検査を完了できるでしょう。万が一ななめの状態で撮影されても、ROIの角度を補正できるので測定し直す回数を減らせます。
X線骨密度測定装置 ALPHYS Aの比較ポイント
製品情報
測定方法 | DXA(デキサ)法 |
---|---|
測定時間 | 標準モード:約15秒 高速モード:約7.5秒 高精度モード:約30秒 |
外寸(mm) | 幅・奥行・高さ:400×479×398(標準型装置)、 430×485×940(台車(上下機構なし)搭載型装置)、 430×485×910~1040(台車(上下機構あり)搭載型装置) |
重量 | 30kg(標準型装置)、72kg(台車(上下機構なし)搭載型装置)、 75kg(台車(上下機構あり)搭載型装置) |
装置の上部にタッチパネルモニターを設置することで、どの角度からも操作ができるようになっています。カラー液晶画面を採用しており、ひと目で状況を確認できる点も特徴です。プリンター内蔵型のオールインワンタイプで、測定結果をその場で印刷できます。
測定面は足を置きやすいオープンデザインを採用。セッティングから測定までがスムーズです。温度補正機能や踵の幅を自動検知し、正確な測定結果を得られます。測定時間は約2秒で完了でき、集団検診にも最適です。
超音波骨密度測定装置 AOS-100SAの比較ポイント
製品情報
測定方法 | 超音波パルス透過法 |
---|---|
測定時間 | 約2秒 |
外寸(mm) | 幅・奥行・高さ:320×530×270 |
重量 | 約14Kg |
高速スキャン、かつ安定した精度を持っています。腰椎(L2-L4)であれば10秒で測定可能です。DXA 法を採用しており、腰椎 , 大腿骨 , 全身 , ラテラル , 前腕骨など幅広い部位で測定可能です。
セラミックディテクター、高周波 X 線管球の採用することで、体の厚みのある受診者の画像もより鮮明に描出できます。ON/OFFボタンを押すだけでベッドやアームの移動が行え、患者様の昇降を優しくサポートします。
Horizon X線骨密度測定装置の比較ポイント
製品情報
測定方法 | DXA(デキサ)法 |
---|---|
測定時間 | 腰椎(L2-L4):10秒 |
外寸(mm) | 要問い合わせ |
重量 | 要問い合わせ |
DXA方式を採用した前腕骨専用の装置。場所を取らないコンパクト設計でありながら約15秒で測定を完了でき、スムーズな検査が可能です。Windows対応パソコンを操作部として、簡単に測定が行えます。フレンドリーで温かみのあるデザインとなっており、腕や手首を動かしにくい患者様にも優しく対応します。
X線骨密度測定装置 B-Cubeの比較ポイント
製品情報
測定方法 | DXA(デキサ)法 |
---|---|
測定時間 | 約15秒 |
外寸(mm) | 要問合せ |
重量 | 要問合せ |
「超音波パルス反射法」と「超音波パルス透過法」を併用しています。X線を使用しないため、妊産婦さんや若年者の検査にも最適です。データの蓄積により幼児から大人まで幅広い年齢層の測定結果を導き出せます。
測定部に専用の抗菌フットシートを使用しており、衛生面に配慮した運用が可能です。装置は軽量で持ち運びしやすいスタンドアロンタイプと、データ管理やシステム連携ができるパソコンタイプがあります。運用状況に合わせて最適なタイプを選べるのが特徴です。
超音波骨量測定装置ビーナスの比較ポイント
製品情報
測定方法 | 超音波パルス反射法・超音波パルス透過法を併用 |
---|---|
測定時間 | 要問い合わせ |
外寸(mm) | 幅・奥行・高さ:366×494×237 |
重量 | 約8.3kg |
X線を使用しない超音波方式で持ち運びが容易なため、場所を選ばず測定ができます。骨粗しょう症の集団検診や一次スクリーニングなどの場合でも、素早くデータを取得できるでしょう。タッチ操作ができるLEDカラーパネルを採用しており、直感的に扱える装置です。
踵温度補正機能搭載で、足が冷えることにより変動しやすい測定値を安定させられます。測定時間は約10秒と短時間で完了できる点も特徴です。検査結果は内蔵されたプリンタからの排出の他に、PCへのデータ保存にも対応しています。
超音波骨密度測定装置CM-300の比較ポイント
製品情報
測定方法 | 超音波パルス透過法 |
---|---|
測定時間 | 約10秒 |
外寸(mm) | 幅・奥行・高さ:525×310×220 |
重量 | 約10kg |
骨密度測定装置は、検査目的や検査ニーズ、運用方法などにより適した装置が異なります。では、自身の施設に適した装置を選ぶ方法はあるのでしょうか。ここからは、骨密度測定装置の選定ポイントについて解説します。
骨密度の測定方法には、DXA法をはじめとして、MD法、QUS法などがあります。骨粗鬆症の診断には、他の方法よりも正確に骨密度を測定できるDXA法を用いて腰椎または大腿骨を測定した結果を用います。これらの部位の測定が困難な場合には、上腕骨や手のひらの骨(第2中手骨)の測定結果を用いるとされています。(『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン』より)
2種類のエックス線を用いて骨量を測定する方法です。腰椎や大腿骨、橈骨を測定し、骨粗しょう症の診断に使用されています。前腕骨をDXA法で測定する前腕骨専用装置もあります。
正確な測定が行えるため、ガイドラインでも推奨されています。腰椎は体を支える体幹骨であるため治療薬投与後の治療効果判定に向いています。治療を開始しても5年後には約半数の方が服薬を辞めてしまうと言われています。DXA法は治療効果を結果として示すことが出来るので、患者様のやる気を継続させることに貢献します。
全身タイプは設置するにはある程度の面積、設置場所の確保が必要です。前腕専用タイプは設置面積が狭く、金額も全身タイプより安く導入可能です。しかし、前腕骨による測定は、腰椎・大腿骨測定が不可能だった場合に用いられます。 (『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン』より)
手の横にアルミニウム板を置き、一緒にエックス線写真を撮影し、画像の濃淡の差をコンピューターに読み取らせて解析する方法です。第2中手骨を用います。
MD法は日本で開発された骨密度評価法であり、骨粗鬆症の診断のための測定方法として用いられてきた過去があります。しかし、骨粗鬆症治療薬による結果が抹消骨である第2中手骨では反映されにくいため、MDによる治療効果判定には継続性がなく困難です。 (『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン』より)
超音波の伝搬速度を用いて骨を評価する方法で、踵の骨を用いて測定します。放射線を使用しないため、被ばくをしないというメリットがあり、人間ドックや検診で多く利用されています。設置場所も取らず、安価な装置が多いです。
しかし、誤差が大きく測定条件などの影響を受けやすいことから、骨粗鬆症の診断に用いることは認められていません。検診では踵骨による測定が広く行われていますが、これは、検診が骨粗鬆症診断のプロセスを適用すべき集団を特定することを目的としているためです。(骨粗鬆症の予防と治療ガイドラインより)
骨粗鬆症装置を導入する目的や使用方法が、骨粗鬆症の診断と治療薬の効果判定の場合は、骨粗鬆症の診断にはDXA法による腰椎・大腿骨の測定が推奨されています。検診や人間ドックでは超音波法で踵骨を測定する方法が用いられていますが、骨密度そのものを測定しているわけではありませんので診断には用いられません。
骨粗鬆症の新しい治療薬が開発されても、約半数の方が1年で処方どおりに服薬しなくなり、5年後には約半数の方が服薬を辞めてしまうと言われています。この課題においては、治療効果が出にくい抹消骨である前腕骨や踵骨で測定するよりも、治療効果が出やすい体幹骨である腰椎や大腿骨で測定する方が、治療効果を結果として示すことが出来るため、患者様のやる気を継続させることに貢献できます。
骨密度測定装置の診療報酬は以下の通りです。
(厚生労働省 令和6年 医科診療報酬点数表より引用)
1 DXA法による腰椎撮影 360点
※注:同一日にDXA法により腰椎と大腿骨撮影の場合は450点(+90点)
2 MD法、SEXA法等 140点
3 超音波法 80点
ここからは、骨密度装置を導入する前に抑えておきたい基礎知識について解説します。
簡単に言うと、骨密度が減って骨が弱くなり骨折しやすくなる病気です。骨代謝のバランスが崩れ、骨形成よりも骨破壊が上回る状態が続き、骨がもろくなった状態のことです。
加齢、生活習慣(運動不足、食生活、喫煙など)、閉経後のホルモンバランスの変化、関節リウマチやステロイド薬の使用などがあります。特に加齢による骨密度の低下は、程度の差はありますが、誰にでも起こりえます。
女性の場合、閉経期を迎えると、卵巣からでる女性ホルモンである「エストロゲン」の分泌量が急激に減少します。エストロゲンは骨代謝における骨破壊の活性を抑制して、骨代謝のバランスを保ち骨密度を維持する働きを持っています。閉経後はエストロゲンの分泌量が低下し、そのため骨破壊が抑制されなくなり、急速に骨密度が減少することとなります。閉経期以降の女性4人に1人が骨粗鬆症であると言われています。
特に、背骨(椎体)、太ももの付け根(大腿骨頸部)、手首(前腕骨)が骨粗鬆症による骨折の頻度が高いところです。腰椎や大腿骨のような体幹骨の骨折は、いろいろな身体的機能に悪影響を及ぼし、死亡リスクを高めます。
現在、日本には約1,590万人の骨粗鬆症の患者様がいると推定されています。しかしながら、実際に治療を受けていらっしゃる方は約2割と言われています。
以下では、骨密度測定装置を導入する際のよくある質問をまとめています。
測定部位や測定方法により価格は異なります。踵骨測定タイプ(超音波法)は100万円前後、腰椎・大腿骨測定タイプ(DXA法)は500万円~2,000万円です。ただし、構成により異なります。メーカーによっては試算表を作ってくれますので、気になる製品については問い合わせて確認してみましょう。
設置場所の状況により可能かどうかの判断が必要になります。同室設置が可能と判断された場合は、医療機器設置の条例に基づき、使用時の切り替え照射灯の設置が必要になります。また、導入したい装置のサイズが設置場所に収まるかの検討も必要です。メーカーへ問い合わせて、専門知識を持ったスタッフによる現場調査を依頼しましょう。
各メーカーから様々なタイプの骨密度測定装置が出ていますが、操作は簡単でシンプルなものが多いです。中には、より簡単に操作するために検査手順やレポート出力においてオートマティック機能を搭載している装置もあります。自施設の状況やだれが操作するのかを考えて、各装置の操作性を確認しましょう。
骨密度測定装置とは、X線や超音波を利用して骨密度が測定できる検査機器です。測定部位や測定方法によって、機器の大きさや可価格帯も大きく変わってきます。同じ測定方法を採用している機器でも、検査時間や操作感でそれぞれのメーカーの特徴があります。導入を検討する際は類似の製品の仕様や操作感をよく比較するようにしましょう。