今、多くの医療機関では業務の効率化や間違い防止のためカルテの電子化が進んでおり、それに伴って診察券発行機をはじめとするさまざまな情報システムが開発されている。今回は、約1万9千人の患者を持つ「近藤泌尿器科クリニック」理事長の近藤兼安氏に、診察券発行システムおよび検体ラベル発行機導入の狙いや成果について話を伺った。
通常、尿検査を受けた場合、顕微鏡で観察した画像は記録としては残らず、検査結果の数値のみが患者に伝えられる。実際には画像で見た方が尿の変化が一目瞭然というケースも多いが、患者が画像を見る機会はまずない。近藤氏は、検査結果や治療方針をよりわかりやすく説明するため、検査結果の数値だけでなく画像データを活用したいと考えられていた。
「数値だけでは納得できないこともあるでしょうが、実際に尿の状態を見てもらうことで、さらなる検査や治療の説明がスムーズになります」と、近藤氏。
「尿を検査し、結果を画像データとして残す際に重要なのは検体のIDを間違えないこと。1つでもずれると大変なことになりますから。診察券発行システムで作成したIDを用いることでその心配もなくなり、尿の検査画像やCT画像など、さまざまな画像データを一元管理することが可能になります」
そこで、ナテックでは、医療情報管理システム「PACS」と連動できるカードソリューションを計画。診察券発行システムについては多くの実績があるものの、検尿コップ用のラベルを作成する発行機は他社を含めてまだどこにもなかった。検査会社やコンピュータソフト会社と調整を行いながら、「PACS」にうまく対応できるシステムを求めて検討を重ね、検体ラベルの発行機を独自に開発。患者IDの発行に欠かせない診察券発行システムとともにご提案し、2016年に導入が決まった。
ナテックがご提案したシステムの仕組みそのものは簡単だ。診察券発行システムで電子カルテに連動した患者IDを発行し、そのIDで検体ラベルシールを2枚印刷。1枚は検尿コップに貼って検査に回し、もう1枚は会計票に貼るようになっている。診察券の発行・受付も、検体ラベルの発行も、ひとつのパソコンでササッと手早く行える。システム導入前は、新規患者の来院時には手書きで診察券を発行しなければならず、受付業務に時間がかかっていたので、その違いは大きい。
「多い日には午前中の3時間だけで80名ほどの来院があり、受付などの業務にスピードが求められますが、このシステムは使い勝手がよく、処理も早い。混雑する時間帯でもラクになりました。また、PACSとの連動もうまく行っています。特に尿の検査画像はインパクトがありますね。検査結果を患者さんご自身の目で確認できるということが、今では当クリニックの大きな特長になっています」
医療機関はもちろん、暮らしやビジネスのさまざまな場面でカードが貢献できることは多い。既存製品に加えて、まだ世の中にないシステムの開発にも取り組んでいくのがナテックの強みだ。今後もお客様のご要望に応えて、医療ソリューションを核としたソリューションをお届けしていきたい。