近年、医療被ばくの管理と低減に対する関心が高まっています。その要因として、医療法改正により2020年4月から放射線量の管理・記録が義務化されたことがあります。
Excelなどに手入力で記録される被ばく線量のデータは管理が煩雑になります。必要とする患者さまデータを探したり、線量データの分析には時間と労力が必要です。その課題や問題を解決できるのが、線量管理システムと呼ばれるものであり、業務簡略化や最適化が期待できます。
この記事では線量管理システムについて選ぶ際のポイントやおすすめの製品情報を紹介しています。線量管理システムの理解を深める材料としてご一読ください。
線量監視システムとは、患者さまが治療や検査によって受けた放射線量情報を管理し、グラフなどによって可視化するシステムです。従来のようにExcelなどで手作業入力してきた線量情報が、機械と連動し効率的に線量データを記録してくれます。
患者さま毎の線量やモダリティ毎の線量を記録するだけでなく、線量を可視化することで、モダリティの稼働状況や診断参考レベル(Diagnostic Reference Level : DRL)の比較等、様々な分析が可能になり注目されています。
医療法が2020年4月に改正され、線量の記録・診断参考レベル(DRL)に基づいた線量管理が義務付けられました。以下に詳細を記載しています。
新たな義務化内容 |
|
---|---|
義務化対象モダリティ |
|
線量の管理について多くの項目が義務化されています。また、患者様に対しても説明を求められた時にしっかりと説明できるよう、詳細なデータを把握しなければならず、業務負荷の増加が課題として挙げられるでしょう。過去の線量データを記録・保管することも重要であり、確実なデータ管理が求められます。
近年のCTやIVR装置にはRDSR(Radiation Dose Structured Reports)(※)が出力できる機能が備わっているため、データ取得自体は難しくありません。RDSRには各モダリティからの線量情報が含まれていて、DICOMタグ情報やRDSRから線量情報を取得できます。これらの情報が線量管理システムと同期することで、線量を取得する業務の負担軽減・簡略化につながります。
※RDSR:患者に利用した全ての照射情報を保持する構造化レポートファイルのこと
出典:DICOM Radiation Dose Structured Report を利用したCT 検査における放射線線量管理ソフトの開発
線量管理システムの導入には以下のメリットが挙げられます。導入前、導入後を比較した解説をチェックして参考にしてください。
線量管理システムを導入していない医療機関では、手入力で患者さまごとの被ばく線量や、モダリティごとの被ばく線量などの各項目を管理する必要があります。そのため管理すべき項目が多く管理担当者の大きな負担になりますし、入力でミスが発生する可能性も高まります。データを記録する患者さまの数が多いと、勤務時間内に終わらないなんてこともあるのではないでしょうか。また、「とりあえず」で入力したデータが必要になった際に素早く取り出せない可能性も考えられます。
線量管理システムを導入することで、複雑な線量データを院内で自動的に一元管理がすることが可能になります。データ入力作業が省略されるため、データ管理・データ入力といった業務が簡略化されます。コニカミノルタジャパン社製のFINO.XManage(フィノエクスマネージ)では、最適なデータを管理システムの中から可視化されたグラフによって表示することが出来ます。被ばく線量の分析や改善などが容易になるでしょう。
線量管理システムの導入前 | 線量管理システムの導入後 | |
---|---|---|
データの入力・管理 | ExcelやRIS上に手入力するため、管理担当者の負担が大きい | 各管理項目の線量データを自動的に一元管理するため、管理担当者の負担を大幅に軽減できる |
入力データの正確性 | 手入力のためヒューマンエラーが発生する可能性がある | 被ばく線量のデータを自動的に蓄積するため、ミスを防げる |
蓄積データの活用 | 記録することで手一杯となり、適切な線量の管理や分析まで手が回らない | 線量情報を可視化することで被ばく線量の最適化、分析に役立つ |
監査対策 | 入力したデータが必要になった際に素早く取り出せない可能性もあり、監査に不安が残る | ガイドラインに沿った適切な管理が出来るようになり立入検査への安心材料になる |
被ばく線量は専門性が高い内容のため、一般の患者さまにわかりやすく説明するのは難しい課題です。数字をただ伝えるだけでは、患者さまに理解されにくいでしょう。また、患者さまから被ばく相談がきたときに、常に放射線科医や放射線技師が対応出来る訳ではありません。院内で教育していても、いざという時に説明が難しく感じているもいるのではないでしょうか。
線量管理システムには、患者向け線量レポートを作成できる機能もあり、誰でも分かりやすく説明すること手助けしてくれます。東陽テクニカ社製の線量管理システム「DOSE」は、患者さま別にデータを記録・分析し、線量レポートを作成できます。これにより、専門ではない医師や看護師でも説明がしやすくなり、患者さまも自身の状態が把握しやすくなります。円滑な計画や相談の手助けをしてくれることでしょう。
株式会社ジェイマックスシステムは画像、遠隔、臨床などあらゆる分野の医療システムを開発・提供しているメーカーです。製品のDoseCheckerは、柔軟に線量データを取得できるため、分析や今後の治療計画立案が容易になります。また、診断参考レベル(DRLs)との比較により、患者さまが受けた線量が領域内か把握でき、外れ値検知により原因を追求しやすくなるのが特徴です。
DoseCheckerの比較ポイント
製品情報
価格 | 要お問い合わせ |
---|---|
機能 |
|
コニカミノルタジャパン株式会社はクラウド系サービスや業務効率化を目的とした製品の製造・提供をしているメーカーです。製品のFINO.XManageは、患者さまの個別データを条件に最適なグラフを展開でき、被ばく線量を検討する材料として管理・活用できます。ガイドラインのDRLとの比較と合わせ、施設独自のDRL設定を登録する事ができるため、患者さまの線量域把握が簡略化し安全に検査・治療ができるでしょう。
FINO.XManage(フィノエクスマネージ)の比較ポイント
製品情報
価格 | 要お問い合わせ |
---|---|
機能 |
|
株式会社東陽テクニカは、機械制御に関する高い技術力を元に医療機関にサービスや製品を提供しているメーカーです。製品の線量管理システム 『DOSE』は、考察・アクションの記録をフィードバックとして活用できるため、今後の改善が期待できます。また、患者さまの体格を考慮した自動計算機能により、これまで膨大なデータを必要としたアンギオ・IVR後のリスク管理が簡略化が可能です。
線量管理システム「DOSE」の比較ポイント
製品情報
価格 | 要お問い合わせ |
---|---|
機能 |
|
キヤノンメディカルシステムズ株式会社は、医療分野を専門とした各分野に専門性の高い製品やサービスを提供しているメーカーです。製品のDoseXrossは、6種のグラフにより、各種サマリの視認性の高いデータ把握ができます。webに対応しているため、院内・院外でも患者さまの状態を確認でき、緊急性の高いものでも素早い指示・対応が可能です。
DoseXross(ドーズクロス)の比較ポイント
製品情報
価格 | 要お問い合わせ |
---|---|
機能 |
|
株式会社アゼモトメディカルは、医療ハード・ソフトウェアの開発や医療機関のコンサルティングを提供しているメーカーです。製品のAMDSは、同期した機器からのデータ収集から1〜2秒で記録・解析ができ、プロトコルごとの線量を項目ごとにグラフ表示されます。これにより患者さまを待たせることなく説明や計画立案などが可能になり、コメント欄に記入することでデータ共有も容易です。
AMDS(アミダス)の比較ポイント
製品情報
価格 | 要お問い合わせ |
---|---|
機能 |
|
バイエル薬品株式会社は、一般向けの健康情報や新薬の研究など、多くの患者さまのために製品やサービスを提供しているメーカーです。製品のRadimetricsは、さまざまな線量情報を独自カスタマイズ登録し、素早く情報を引き出すことができます。電圧や電流などを変更した際に線量が変わるかシュミレーションを実施できます。また、自動注入器と同期することで、線量画面と合わせて参照が可能な製品です。
Radimetricsの比較ポイント
製品情報
価格 | 要お問い合わせ |
---|---|
機能 |
|
線量管理サポートプログラムの比較ポイント
製品情報
価格 | 要お問い合わせ |
---|---|
機能 |
|
GEヘルスケア・ジャパン株式会社は、世界中の患者さまや医療機関へ薬剤や医療機器を提供し医療を支えているメーカーです。製品のDoseWatchは、臓器、小児、皮膚と分解して線量を把握できるため、妊娠中の患者さまでも安心して検査・治療を受けられます。また、患者さま別の線量履歴を記録や治療計画に活用できる他、線量アラートが装備されているため、異常時にすぐ対応可能です。
DoseWatch(ドーズウォッチ)の比較ポイント
製品情報
価格 | 要お問い合わせ |
---|---|
機能 |
|
株式会社A-lineは、医療機器・器具の販売や保守、開発に関するコンサルティングや運営などのサービスを提供しているメーカーです。製品のMINCADIは、データ暗号化・メーカーの外部サーバー利用など高いセキュリティにより個人データの保護・管理ができます。また、クラウドシステムにより他施設の情報も共有できるため、患者さま情報が円滑に共有可能です。※販売は株式会社NOBORIが行っています。
MINCADIの比較ポイント
製品情報
価格 | 要お問い合わせ |
---|---|
機能 |
|
線量管理システムは医師やデータ入力担当のデータ入力業務削減になる他、グラフ表示によるデータ可視化によって線量の分析・治療計画の立案が簡略化されます。また、患者さまが被ばく説明を求めた際も、事前に登録・カスタマイズされたデータと患者さまのデータを比較した説明が可能になりました。線量管理システムの導入は、素早く業務が遂行できるとともに、安心安全を提供できるようになるでしょう。ご紹介した各メーカーを参考に、施設で最適なシステムを選択できるようお役立てください。