病院でWi-Fiの導入を考える際、セキュリティや価格が気になる方は多いのではないでしょうか。
この記事では、病院でWi-Fiを導入するメリットや導入時の注意ポイント、業者の選び方などについて詳しく解説していきます。
病院ではWi-Fi導入が進んでいますが、患者向けWi-Fiを整備している病院はまだ少数です。モバイルWi-Fiを使えるかどうかについても解説しているので、参考になれば幸いです。
目次
そもそも、病院でのWi-Fi導入率はどの程度あるのでしょうか。
施設スタッフのインターネット接続 | 71.8% |
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医療情報システム用 | 68.9% |
オンライン面会用 | 45.7% |
患者・外部訪問者のインターネット接続用 | 33.5% |
患者の無線生体情報モニタ用 | 30.8% |
音声通話・ナースコール用 | 9.9% |
「2021年度医療機関における適正な電波利用推進に関する調査」によると、病院における無線LAN(Wi-Fi)導入率は93.2%と非常に高いです。導入している病院のうち利用用途を見ると、医療情報システム用は68.9%、施設スタッフ用は71.8%となっており、スタッフ向けのWi-Fi導入は進んでいることがわかります。医療情報システムは、電子カルテや部門システムなどの情報基盤を指します。
それに対して、患者・外部訪問者のインターネット接続用は33.5%と、まだまだ普及しているとは言えません。患者用のWi-Fiを整備する場合、医療情報システムなど既存で使っているネットワークとは別のネットワークを構築する必要があります。ネットワーク回線が複雑になることで、医療情報システムや医療機器に影響が出ることを懸念して、患者向けWi-Fiの普及が進んでいない背景もあります。
病院でWi-Fiが使えないのは、患者が病院に抱く大きな不満のひとつになっています。
出典:2021年度医療機関における 適正な電波利用推進に関する調査の結果
ここでは、病院でWi-Fiを導入するメリットについて、職員側と患者側、それぞれの視点から解説していきます。
職員側の一番のメリットは、Wi-Fi導入で電子カルテや医療システムが安定して使えるようになり、業務が効率化されることです。電子カルテを効率的に運用するためには、院内ネットワークから、いつでも・どこでもカルテにアクセスできることが重要であり、Wi-Fiの利用は必須でしょう。
また、電子カルテと各種医療機器との連携も、Wi-Fiを活用することで容易になります。これらのことから、現代医療において電子カルテを活用して効率的に業務を行うためには、Wi-Fi設備が整っていることが必要条件といえるでしょう。
電子カルテシステムや高度医療機器のネットワークに悪影響が出てしまうことを気にして、病院で患者向けWi-Fiの導入が進まないケースも多いです。病院で患者向けのWi-Fiを導入していない場合、入院患者が個人でポケットWi-Fiなどを持ち込んでしまうケースも想定されます。
院内で患者向けWi-Fiが提供されていれば、電波トラブルが発生するリスクを低減でき、安全に医療行為を行うことができるでしょう。
患者側のメリット一つ目は、入院患者の退屈を軽減できる点です。入院中の患者は時間をもてあます事が多いですが、院内に患者用のWi-Fiがあれば通信料を気にすることなくインターネットを利用することができます。
患者用のWi-Fi導入は快適な入院生活を送る助けとなり、患者満足度は向上するでしょう。
通院患者の待ち時間ストレス軽減も期待できるメリットの一つです。病院の場合、外来患者の待ち時間が長いことは長年の課題となっており、患者からの不満も多く聞かれます。
これまでは、待ち時間に本を読んで暇をつぶしている方が大半でしたが、近年では多くの患者が待ち時間にスマートフォンを利用するようになりました。
患者向けWi-Fiがあれば、待ち時間に動画やアプリを通信量を気にすることなく楽しめるため、体感的待ち時間は大きく変わり、ストレスは軽減されるでしょう。
病床数やセキュリティにかける費用によりますが、一般的な病院(100床)でWi-Fiを導入するとなると、最低でも3000万円程度はかかると理解しておきましょう。
病院のWi-Fi整備、ネットワーク構築は、様々な業界の中でも難易度が高いとされています。電子カルテや多数のシステムが独自のネットワークにつながっており、管理者がすべてのネットワークを理解しきれていない場合もあるといいます。そのため、Wi-Fi導入の際は、既存のネットワークの状況を丁寧に紐解いた上で新しいネットワーク網を構築することになり、人的コストが多大に必要になってしまう背景があります。
2022年には、日本経営がコストのかかる患者用Wi-Fi導入を無料で実施すると発表し、大きな話題になった事例もあります。
では、病院でWi-Fiを導入する際には、気をつけるべきことがあるのでしょうか。Wi-Fiは導入すればいいという訳ではなく、十分な費用対効果があり、安全性や安定性が高いことが重要です。
ここでは、病院でWi-Fiを導入する場合、どのようなポイントに注意して検討していくべきかを詳しく解説していきます。
自院でフリーWi-Fiを整備する運用でなく、患者に有料でWi-Fiルータをレンタルしてもらう運用も検討できます。
Wi-Fiルーターの利用を認めているかどうかは病院によって異なりますが、インターネットがこれだけ普及した現代において、入院患者にインターネットなしで過ごしてもらうのは現実的でないでしょう。待合室ではWi-Fiの利用が禁止されていても、入院患者用の病室では利用が可能な運用をしている病院もあるので、これを機に自院の運用を見直してみましょう。
一つ目のポイントは通信が安定しているかどうかです。業務を効率的に行うためには、病院内どこでもWi-Fiにスムーズに接続でき、接続されたネットワーク自体もストレスなく使えることが必要となります。
病院内はさまざまな部屋に分かれており、安定的なWi-Fiを提供することが意外と難しいため、アクセスポイントをしっかり設けることも重要です。
安定した通信が行えるかどうかは、業務効率化に必須のため、ぜひチェックしてください。
病院のWi-Fiでは患者の個人情報をやり取りするため、高いセキュリティが求められます。以下のようなセキュリティ対策は必須でしょう。
セキュリティが脆弱なWi-Fiを使うと個人情報が流出してしまうリスクもあるため、万全なセキュリティであるかは、必ず確認してください。
また、院内でフリーWi-Fiを使うこともおすすめしません。 町中のフリーWi-Fiをつかったことのある方は多いと思いますが、フリーWi-Fiの通信はセキュリティで守られていないため、セキュリティの観点ではやや不安が残ります。フリーWi-Fiを使った患者のクレジットカード情報が流出するようなアクシデントが起こると、病院としての責任が問われる事態にもなりかねません。
また、フリーWi-Fiの電波と医療機器ネットワークの電波が干渉し、医療提供がストップしてしまうケースも考えられます。
費用が適正かどうかも重要なポイントです。Wi-Fi導入にはコストがかかりますが、必要以上にコストをかけることは避けなければなりません。あらかじめ予算を設定した上で相見積もりをとり、適正価格でサービスを導入しましょう。
適切な運用管理ができるかも検討しましょう。業務効率化のためにWi-Fiを導入しても、セキュリティ対策や運用に手間やコストがかかりすぎてしまうと本末転倒です。
運用管理が適切に行える環境や人材配置など、導入時には運用負荷の少ない管理体制を整えるようにしてください。
病院で患者用Wi-Fiの整備が済んでいない場合、「個人でポケットWi-Fiを持っていけば良い」と考える方もいるかもしれません。ポケットWi-Fiを病院で使う際の注意点などを確認しましょう。
病院にフリーWi-Fiの環境を整備している場合や、Wi-Fi利用に関する細かな規定がない場合は、問題なくポケットWi-Fiをレンタルして使うことができるでしょう。
入院期間中、病室からレンタルWi-Fiを依頼した場合、病院の窓口で受け取ることになります。個人宛の荷物を窓口で受け取ってもらえない場合は、友人や家族などに受け取りを依頼する必要があります。
ポケットWi-Fiと医療機関で使うネットワークが干渉しあうリスクを避けるため、病院全体で患者用Wi-Fiの利用を禁止している病院もあります。
また、病院で患者用Wi-Fiの利用が認められない理由として、ペースメーカーなど電場の影響を受けやすい機器があることがあげられます。
入院や通院などの際、病院でポケットWi-Fiを使いたいと思ったときは、病院のルールを確認するようにしましょう。
そもそもポケットWi-Fiを院内に持ち込んで良いのか、院内でポケットWi-Fiを利用できる場所はどこか、といった基礎的な内容を確認した上で、問題なければポケットWi-Fiを活用しましょう。
ここでは、病院でWi-Fiを導入する際にどのような判断基準で業者を選ぶべきか、ポイントを詳しく解説していきます。
導入時には価格のみではなく、下記のポイントもぜひチェックしてください。
サポート体制が充実しているかをまずチェックしてください。
電子カルテを利用している場合は、ネットワークに繋がらないと仕事にならないため、トラブル発生時にスピード感のある対応をしてくれることが重要です。
急なトラブルの際にすぐに駆けつけてもらえるか、遠隔で保守対応してもらえるかなど、どのようなサポートが受けられるかは確認しておきましょう。
医療機関への導入実績の有無も確認するとよいでしょう。
医療機関へのWi-Fi導入は、一般的な企業への導入とは異なり、医療機関特有のネットワーク構成やセキュリティ対策が必要です。
医療機関への導入実績がなければ、病院ならではの導入時の注意点やポイントを把握していない可能性があり、導入後に問題が発生するリスクがあります。
医療機関への導入実績をぜひ確認してみてください。
これまでにも述べてきたように、医療機関ではデリケートな個人情報を扱うため、セキュリティは非常に重要です。
セキュリティ対策に注力しているかどうかをあらかじめ確認しておきましょう。
ここでは、病院でWi-Fiを導入する際のおすすめの業者4選をご紹介します。
特徴やおすすめポイントもまとめていますので、業者選びの参考にしてみてください。
エレコムの病院向けWi-Fi導入サービスは、製品の選定から設置工事、運用・保守に至るまでを、ワンパッケージで提供しているサービスです。
特徴としては、このワンパッケージ化により、迅速な対応やコストパフォーマンスの最適化が可能となっていることが挙げられます。
また、製品開発からネットワークまでを担う専任スタッフが対応する、万全のサポート体制も魅力のひとつです。
エレコム株式会社の比較ポイント
製品情報
会社名 | エレコム株式会社 |
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本社住所 | 大阪市中央区伏見町4丁目1番1号明治安田生命大阪御堂筋ビル9F |
ホームページ | エレコム株式会社 | ELECOM CO.,LTD. - パソコン・スマートフォン・タブレット・デジタル周辺機器メーカー |
主力商品名 | 小型ルータープラン、無線APプラン、同軸プラン |
POPCHAT-Xはホテルや教育機関、飲食店、医療機関など、さまざまな施設に導入実績があるWi-Fiサービスです。
特徴としては、Wi-Fi認証ページを通じたアンケート実施や多言語対応コンテンツ配信など、病院経営の付加価値につながる機能が挙げられます。
また、病院型サブスクモデルでは、Wi-Fi利用にプリペイドカードを用いることで、職員に負担をかけずにWi-Fiの収益化が可能です。
POPCHAT株式会社の比較ポイント
製品情報
会社名 | POPCHAT株式会社 |
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本社住所 | 東京都豊島区東池袋3-20-3 |
ホームページ | POPCHAT株式会社|Wi-Fiセキュリティ運用管理サービス |
主力商品名 | 安定/付加価値モデル、不正利用対策モデル、サブスクモデル |
バッファローの病院・クリニックのWi-Fi整備は、高速・大容量通信と多台数接続を実現した、強固なセキュリティのWi-Fiを提供しています。
最大の特徴は事前の電波調査です。この事前の電波調査により、医療機器と干渉しないか、隅々まで電波が届くかなどを確認でき、失敗しないWi-Fi導入ができるでしょう。
調査から施工までをワンストップで対応している点や、強固なWi-FiセキュリティWPA3対応である点も魅力です。
株式会社バッファローの比較ポイント
製品情報
会社名 | 株式会社バッファロー |
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本社住所 | 愛知県名古屋市中区大須三丁目30番20号 赤門通ビル |
ホームページ | https://www.buffalo.jp |
主力商品名 | WAPM-AX8R 7、VR-U500X |
BUSINESS PLALAは、医療機関や大学・企業など、さまざまな施設での実績がある、NTTグループが展開している法人向けインターネット接続サービスです。
特徴としては、快適なインターネットを実現する大容量バックボーンや、365日24時間のネットワーク監視体制など、高品質ネットワークが挙げられます。
また、万全なセキュリティ対策やシステム構築から保守・運用までをワンストップで対応可能なところも魅力です。
株式会社NTTドコモの比較ポイント
製品情報
会社名 | 株式会社NTTドコモ |
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本社住所 | 東京都千代田区永田町2丁目11番1号 山王パークタワー |
ホームページ | https://www.docomo.ne.jp/corporate/ |
主力商品名 | フレッツ光、ひかりTV、院内向けインターネット接続など |
この記事では、病院でWi-Fiを導入するメリットや導入の際の注意ポイント、業者の選び方などを詳しく解説しました。
また、おすすめの業者4選についても、特徴やおすすめポイントとあわせて紹介していますので、業者選びの参考にしてみてください。
医療のIT化が進む昨今では、院内Wi-Fi導入率は90%以上と高く、導入することで業務の効率化や患者満足度の向上が期待できます。
自院のニーズにあう業者を選択し、快適なWi-Fi環境を整えましょう。