「年末調整だけで終われば、どんなに楽だろう……」 1月を過ぎ、手元に届く何枚もの源泉徴収票を見て、ため息をつくことはありませんか。
勤務医の先生であれば、アルバイト先の給与を合算する手間。開業医の先生であれば、「概算経費」の判断や、仕事とプライベートの経費を分ける複雑な計算。これらは専門知識が必要なだけでなく、せっかくの休日を削って向き合うには、精神的にも負担が大きい作業です。
「自分でできるから」とこれまで頑張ってきた先生も多いはず。ですが、もし今の作業を「重荷」に感じているなら、それは専門家の力を借りる良いタイミングかもしれません。確定申告の期限が近づくほど、どの税理士事務所も忙しくなり、じっくり相談できる相手を探すのが難しくなります。
今回は、プロに任せることで、先生の資産と大切な時間がどのように守られるのか。年度末を心穏やかに終えるためのポイントを分かりやすく整理しました。
まずは、先生ご自身に申告の義務があるかどうかを整理しましょう。医師の働き方において、特に申告が必要となるのは以下の3つのケースです。
一箇所の病院勤務であっても、年収が2,000万円を超えると病院側で「年末調整」ができなくなります。そのため、ご自身での確定申告が法律上必須となります。
メインの病院以外からも給与を受け取っており、その所得が年間20万円を超える場合です。多くの先生がこのパターンに該当しますが、複数の源泉徴収票を正しく合算して申告する必要があります。
最近は製薬会社での講演、医学誌への寄稿、YouTube運営やメディア監修などの収入がある先生も増えています。これらは「経費を引いたあとの利益」が年間20万円を超えるなら、申告の準備が必要です。
申告義務がある方はもちろんですが、実は「義務ではないけれど申告した方がトクな人」や「自分でやると損をしてしまう人」も多いのが医師の確定申告の特徴です。特に損が生じやすい2つのポイントを解説します。
アルバイト先の給与からは、あらかじめ高い税率(乙欄)で税金が引かれていることが多いため、「確定申告をすればお金が戻ってくる(還付)」と考えている先生が多くいらっしゃいます。
しかし、実際にはすべての収入を合算することで全体の所得税率が跳ね上がり、「還付どころか、数十万円の追加納税が必要になった」と驚かれるケースが後を絶ちません。プロに任せることで、こうした納税額の予測や、漏れのない経費計上による対策が可能になります。
開業医の先生が知っておくべきなのが、租税特別措置法第26条、通称「概算経費」です。これは、社会保険診療の収入が年間5,000万円以下(かつ総収入7,000万円以 下)なら、実際の経費に関わらず、決まった割合を経費として計上できる制度です。
その年の状況に応じて、「概算」と「実額」のどちらか有利な方を選択します。
医療機器の購入や大きな修繕がなかった年は、実際にかかった経費(実額)が少なくなります。そんな時は「概算経費」を使うことで、実際よりも多くの金額を経費として差し引き、税金を抑えられる可能性があります。
高額な医療機器の導入やリフォームを行った年は、実際にかかった経費(実額)が膨らみます。この場合は概算を使わず、「実額の経費」をそのまま引いた方が、納税額を少なくできます。
この特例を最大限に活かすには、保険診療分と自由診療分を正確に切り分け、複雑な「按分(あんぶん)」計算を行う必要があります。ここはまさに、医療税務の経験が豊富なプロの腕の見せ所です。
どこまでを経費にしていいの?」という質問は、先生方から最も多くいただく相談の一つです。基本的には「医業を行う上で必要だったもの」であれば認められる可能性がありますが、医師の世界には特有の支出が多く、その判断にはコツが必要です。
以下のような項目は、業務との関連性が明確なため、比較的経費として認められやすい傾向にあります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 医学書・専門誌 | 診療や研究に不可欠な知識への投資です。 |
| 学会参加費・旅費 | 参加費に加え、会場までの交通費や宿泊費も含みます。 |
| 医師賠償責任保険料 | 先生自身を守るための必須経費です。 |
| 医局費・諸会費 | 医局の維持費や医師会の会費などの固定費です。 |
| 関連先への手土産代 | 紹介元への挨拶品など。交際費として認められます。 |
| 白衣・スクラブ | 購入費に加え、専門のクリーニング代も対象です。 |
プライベートと共用するものは、仕事で使用している割合(按分率)を算出して計上します。大切なのは、税務署に対して客観的な根拠を示せるかどうかです。
| 項目 | 按分の目安・対象 |
|---|---|
| 通信費(PC・スマホ) | 論文執筆、資料作成、病院との連絡に使用する割合 |
| 車両維持費 | オンコール待機や通勤、学会移動等での使用実態 |
| 家賃・光熱費 | 自宅の一部を「研究室」として使用している面積比 |
こうした細かい判断を、毎年ご自身で精査し続けるのは大変な労力です。これは勤務医の先生でも、開業医の先生でも変わりません。もし以下の状況に当てはまるなら、専門家を頼る適正なタイミングといえます。
非常勤先(バイト先)が複数になり、1月を過ぎる頃から続々と届く源泉徴収票や支払調書。これらがすべて揃っているか確認し、集計する作業だけで疲弊していませんか? 事務作業をプロに預けることで、こうした心理的な重荷から解放される価値は計り知れません。
「医局の先輩の紹介だから、今の税理士には踏み込んだ要望がしにくい」「数年前からなんとなく同じ内容で出し続けている」といった状況はありませんか? 医師の特殊な働き方を理解し、しがらみなく最適な提案をしてくれるパートナーを持つことは、大切な資産を守ることに直結します。
慣れない申告作業に時間を費やすことが、本来行うべき診療や研究、あるいは休息の時間を削る「損失」になっていないか、一度見直してみる必要があります。
もちろん可能です。特に「顧問契約をするほどではない」という勤務医の先生や、「今の税理士さんとは別に、今回の申告だけプロの意見を聞きたい」という開業医の先生も、スポット依頼を活用されています。
先生の所得の種類や、書類の量によって変わりますが、一般的な相場は以下の通りです。
| 対象者 | 料金相場 |
|---|---|
| 勤務医の先生(給与・バイト中心) | 3万〜5万円前後 |
| 副収入(講演・不動産など)がある場合 | 5万〜15万円前後 |
| 開業医の先生(申告のみ依頼) | 15万〜25万円前後 |
これらはあくまで目安です。領収書の整理まで任せる「丸投げ」の場合や、消費税の申告が必要な場合は、別途追加費用がかかるのが一般的です。
開業医の先生の場合、日々の記帳漏れが命取りになるため顧問契約が理想ですが、まずは「今の税理士との相性を確かめる」ためにスポットから始めるのも一つの方法です。
クリニックの税理士顧問料については、クリニックの税理士顧問料相場はいくら?開業医が知っておくべき妥当な料金と失敗しない選び方で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
例えば、5万円でプロに依頼したとします。 もしプロのアドバイスによって、自分では気づかなかった経費や控除が20万円分見つかり、所得税率が33%だったなら、それだけで約6.6万円の税金が安くなります。
つまり、「正しく申告することで節税になった金額」で、依頼費用が十分にまかなえるケースも少なくありません。
「費用以上の価値があるのは分かったけれど、やはり自分でやるべきか迷う……」という先生は、ぜひ次の視点で考えてみてください。お金(税金)の損得以上に大切なのは、先生自身の『時間』という資産です。
先生にとって、一番もったいないのは「時間」ではないでしょうか。確定申告をプロに任せることは、単に作業を代行してもらうだけでなく、先生の貴重な時間と心のゆとりを買うことでもあります。
例えば、慣れない申告作業に合計10時間かかったとします。その10時間を「ゆっくり休むこと」や「専門分野の研究」、あるいは「ご家族と過ごすこと」に充てられたら、そちらの方がずっと価値があると思いませんか?
「自分にしかできない仕事や生活に集中するために、専門外のことはプロに任せる」。これは、毎日忙しい先生にとって非常に合理的な考え方です。
プロに頼むメリットは、正確な計算だけではありません。万が一税務署から問い合わせがあってもプロが根拠を持って対応してくれますし、毎年変わる税制を自分で調べる手間もなくなります。
「書き方はこれで合っているかな?」という毎年の不安から解放されること。そして、本来の仕事である「診療」にしっかり集中できる環境を作れることが、プロを頼る一番のメリットです。
「誰に頼んでも同じだろう」と思われがちですが、医師の税務は特殊です。先生にとってストレスのない、長く付き合える相手を見極めるための視点を整理しました。
医師の働き方やクリニックの経営には、特有のルールが多く存在します。 一般的な税理士ではなく、「医師の確定申告」の事例を数多く扱っているかが重要です。事例に詳しい相手であれば、こちらから細かく説明しなくても、先生の状況をすぐに理解して適切な提案をしてくれます。
医療分野に強い税理士に頼るべき理由ついては、なぜ今の会計事務所に不満を感じるのか?クリニックが「医療特有の税務」に強い顧問へ乗り換えるべき理由で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
「高名な先生の紹介だから」「医局の先輩が頼んでいるから」といった理由だけで選ぶと、あとで「実はちょっと相談しにくい」と感じても、断るのが難しくなってしまいます。 一番大切なのは、先生が気兼ねなく何でも質問できるかどうかです。少しでも「話が噛み合わない」「威圧感がある」と感じるなら、相性が良いとは言えません。
勤務医として還付をしっかり受けたいのか、将来の開業を見越して資産形成の相談もしたいのか。先生が今求めていることに、親身になって伴走してくれる相手を選びましょう。
もし今の環境に少しでも「無理をしているな」と感じるなら、一度フラットな視点で他の専門家と比較してみることも、大切な資産を守るための立派な選択肢です。
先生からいただく質問をまとめました。
A. 2月に入ると、多くの税理士事務所が繁忙期に入ります。新規の受付を制限したり、特急料金が発生したりする場合もあるため、1月中など、できるだけ早めに相談を始めるのがスムーズです。
A. 基本的には、封筒に入ったままの状態や、月ごとに分けただけの状態で預けることが可能です。どこまでを税理士側で行うかは事前の打ち合わせで決まりますが、丸投げに近い形で依頼できるケースがほとんどです。
A. いいえ。まずは「自分の今の状況で、プロを頼むメリットがあるか」を確認するだけで大丈夫です。費用やサービス内容を納得した上で、正式に依頼するかどうかを判断いただけます。
A. はい、多くの事務所で1年分をまとめて処理するスポット(単発)依頼に対応しています。「普段は自分でやっているが、今年だけ忙しいので頼みたい」といったニーズも一般的です。
A. まずは手元にある「源泉徴収票」や「支払調書」を揃えるだけで十分です。足りない書類や追加で必要な情報は、プロが順を追ってヒアリングしてくれるので、最初から完璧に準備する必要はありません。
確定申告は、単なる事務作業ではありません。先生が日々、心身を削って得た「大切な資産」と、何にも代えがたい「貴重な時間」を守るための手続きです。
「副収入の処理はこれでいいのか」「今の税理士さんには聞きづらい」といった不安を、一人で抱え続ける必要はありません。自分に合った相談先を見つけることで、こうした悩みは驚くほどスムーズに解消できます。
先生が本来の仕事である「診療」に心置きなく集中できること。そして、せっかくの休日を事務作業で潰さず、心身の回復や大切な人のために使えること。そんな当たり前の日常を取り戻すために、まずは今の状況を私たちに聞かせていただけませんか。