震災の経験からBCP対策としてクラウドPACSを導入

石巻市立病院様| 

震災の経験からBCP対策としてクラウドPACSを導入。
地域医療の拠点病院として、 再生をめざす。

石巻市立病院様

東日本大震災から5年半が経過、復興のシンボルとして石巻駅近くに開院した石巻市立病院。医療データの重要性、BCP 対策からクラウド PACS ソリューション 「XTREK F.E.S.T.A」を導入、地域医療の拠点病院として、新たな一歩を踏み出した。

東日本大震災と石巻市立病院の再建2011年3月11日、宮城県沖を震源とする大地震は石巻市にも甚大な被害をもたらした。港湾近くに立地していた旧石巻市立病院は、津波により1階部分に設置してあった電子カルテおよびPACS関連のサーバー、CT、MRI等の医療機器すべてが浸水損壊し、病院としての機能を完全に失った。

地域においても石巻市医師会所属の全医療機関が被害を受け、被災した地域住民への医療提供を維持するため、同院は1ヶ月後には仮診療所を開設、その1年後には、多くの被災者が入居している開成地区の仮設団地内に開成仮診療所を開設している。国、自治体による復興計画が進み、5年半経過した2016年9月、 沿岸部から離れた石巻駅にほど近い市有地に、住民が待ち望んでいた新病院が開院した。

機能分化・連携を進め、 急性期から慢性期まで、 地域で完結する医療体制を提供したい

石巻市立病院 名誉病院長 伊勢秀雄氏に聞く

-- 震災発生時の状況と医療データの重要性についてお聞かせください。

震災で発生した津波により3月15日の朝に救出されるまで、患者さんおよび職員を合わせた約500人が病院に取り残されたのですが、その時点で記憶を辿り、入院患者全員の患者サマリーを書くよう、医師・看護師に指示しました。 入院患者についてはそのサマリーを持たせて、 DMATのドクターヘリで搬送されました。 

その後、3月18日に済生館の平川先生にサーバーが浸水したことを連絡、同院でバックアップされている患者情報 (名前、生年月日、性別、疾患名、投薬情報、点滴有無など) を抽出、 当院への送付を依頼し、平川先生自ら救急車で届けていただきました。 病院を退去してからは市役所内に窓口を作り、 来院した患者さんの処方箋を発行していました。

元々この相互データバックアップを計画した理由として、 山形と石巻というのは海沿いと山、 奥羽山脈を挟み直線距離で約90km、 陸路約120kmという地理的条件が挙げられます。どちらかが被害を受けるような大災害が発生した場合は、バックアップデータを提供し合えるように協定を結んだという経緯があります。

その後、 済生館にあるバックアップデータを元に電子カルテサーバーを再構築、倉庫になっていた市の分庁舎を自分たちで修復、仮の診療所を開設し、近隣の医療機関へ紹介していきました。 この時に再構築した電子カルテサーバーは、 今回この新院が開院する前まで、 開成診療所で使用していました。

-- 今回、 弊社のクラウドPACSを導入されましたが、 システム導入の経緯、 留意した点についてお聞かせください。

実は今回の震災では、津波によりPACSサーバーが浸水してしまいましたが、幸いなことに損壊は免れ、 データを復旧することができました。 ただし、高額な費用と時間が必要でした。 また、肝がんなどの経時的な画像の変化を確認する必要のある疾患の患者さんも多く、 現在は石巻赤十字病院に通院しているため、 過去画像データの送付依頼もあります。 コスト面で考えると現在は、 クラウドという選択肢があります。 今日、 病院経営というのは決して楽ではない、 まして当院は開院したばかりですので、初期投資も少なく、ランニングコストも少なくということを絶えず考えています。 

そのような中で今回電子カルテベンダーから、 電子カルテと親和性の高いジェイマックシステムのクラウドPACSを紹介されました。 その後デモンストレーションを行い、クラウドということでデータの保存性やセキュリティを検討、 以前使用していたPACSと比較しても機能的な遜色もなく、使いやすい。 

それならば質が担保され、 費用も抑えることができ、いざという時のバックアップも万全ということで採用に至りました。選定については、 新病院建築という時間的な余裕がない状況でしたので、勤務している数名の医師と放射線室の技師により検討を重ね、導入を決めています。

-- 石巻医療圏における地域医療連携について、 石巻市立病院の計画や取り組みをお聞かせください。

現在開成仮診療所とはネットワークを結び、電子カルテとPACSを共有しています。 また震災の津波で被害を受け、 全壊した雄勝病院ですが、 現在は仮診療所を開設、新しく雄勝診療所として建築中で、 寄磯診療所とともに今年度中に連携する予定を立てています。 また、 石巻市立牡鹿病院とも、 ネットワーク連携を行う予定です。民間の連携としては、 宮城県で行っているMMWINという医療福祉情報ネットワークがあります。 県内全域を対象とし、ネットワーク化と電子カルテ情報のバックアップ目的と、 厚労省のSS-MIX2に準拠したシステムづくりを行っています。

 今後これらネットワークが進展し、情報共有が可能になることで、 地域での有効な情報活用が時間差なくできる体制が段々とできていくと思います。

- 遠隔画像診断とIT活用について、 院長のご意見をお聞かせください。

当院では宮城県立がんセンターの方から週に数回、 画像診断医が来ています。また東北大学とも提携を行っていますが、 複数の病院を掛け持ちし、病院を行き来する時間を考えると、 遠隔画像診断というのは非常に有用です。これは遠隔医療の最たるものとして以前からありましたが、重要なことは、 読影する医師の診断能、 信頼性の問題です。

私たちとしては、信用があり認められているところにお願いすることで一つの安心となります。 ただし放射線科医の絶対数が不足している現状、 効率的な画像診断を実現するには、 遠隔画像診断というのは必要ですし、ITを利用することでそれが容易に実現します。

またこの石巻地域は過疎地域もあり、高齢者も多く、街に出てこれない患者さんもいるため、 週に数回の訪問診療も行っています。 これは地域医療として、 若い医師も研鑽を積むべきだと思いますが、 ITを利用したリアルタイムでの相談やデータ解析なども可能となります。 若い医師が安心して過疎地域での医療施設に従事できる、そういう意味でのバックアップをITを通じてできると思います。

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