医療の分野において業務効率化や時短が求められるなか、注目されているのがRFID(アールエフアイディ)です。RFIDを活用して理想的な環境構築をしたいとお考えの方も多いのではないでしょうか。
また、そもそもRFIDとは何か、何ができるのかを知りたい方もいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、RFIDの基礎知識や提供している企業についてわかりやすく解説していきます。医療機関でのRFID活用事例もご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
RFIDとは、「Radio Frequency Identification」の略で、電波を用いて専用タグの情報を非接触で読み書きする自動認識技術のことです。
情報が書き込まれる「RFIDタグ」と、情報の読み取りと書き込みを行う「RFIDリーダライタ」から構成されています。RFIDの特長は、電波でRFIDタグを一括スキャンできることです。
代表的な例として、ユニクロのお会計時にカゴを置くだけで金額が表示されるシステムが挙げられるでしょう。
また、RFIDでの通信可能距離は数メートルまで可能で、離れたところからでも読み取りが可能な点も特長の一つです。村田製作所では、物流センター内でRFIDを活用している事例を動画で紹介しています。
出典:村田製作所Youtube
下記の表を見てもわかる通り、RFIDはバーコードと比較しても多くの点で優れています。
種類 | RFID | バーコード |
---|---|---|
データ容量 | 数キロバイト | 数十バイト |
データ追加書き込み | ○ | × |
最大通信距離 | 数メートル | 数十センチ |
複数読み取り | ○ | × |
透過性 | ○ | × |
経年劣化・汚れ | 劣化・汚れに強い | 劣化・汚れに弱い |
費用 | 高い | 安い |
RFIDは経年劣化や汚れに強く、透過性もあるためダンボールの中から読み取りが可能というメリットがあります。
欠点は、バーコードよりもコストが高くなってしまう点にあるでしょう。
しかし、近年の技術向上により、RFIDタグの価格が低下しており、導入ハードルも下がりつつあります。
RFIDは、作業効率のUPや作業時間の短縮など多くのメリットがあることから、今後もさらに普及が進むでしょう。
矢野経済研究所の調査によると、日本国内のRFID市場は2018年の段階で383億1,000万円です。
2023年には、約516億円にまで成長すると予測されており、医療やさまざまな分野でのRFIDの活用が期待されています。
また、海外でもRFIDは成長している市場であり、今後さらなる拡大が見込まれるでしょう。
そのため、医療業界が取り残されないよう、注視していくことが重要になりそうです。
出典:株式会社 矢野経済研究所「RFIDソリューション市場に関する調査を実施(2019)」
RFIDの基礎知識について解説してきました。ここでは、特に医療機関において活用可能なソリューション例を5つご紹介します。
患者さんと検体の関連付けをRFIDタグに登録しておくことで、検体の取り違いを防ぐことが可能です。
検体採取後に登録し、搬送時や検体の検査実施時、情報の取り込み、それぞれにおいてRFIDタグを利用します。手作業で確認していた登録情報も自動で読み込まれるようになったので、作業効率が格段に良くなるようです。
また、検査システムとの連携により、どこに検体があるのか、進捗状況などをリアルタイムで把握することも可能です。
4000台の医療機器に簡易タグを取り付け、院内での機器使用状況を把握する
活用事例参考:帝人株式会社|導入事例
人間ドック検査で、受診者を誘導するためにRFIDを活用
活用事例参考:帝人株式会社|導入事例
患者さんのRFIDタグと医薬品に貼付されたRFIDタグを照合し、服薬ミスの可能性を減らす
活用事例参考:株式会社村田製作所|RFID活用事例
RFIDタグを高額医療材料に貼付し管理することで、期限切れや不良在庫の軽減につなげる
活用事例参考:トッパン・フォームズ株式会社|導入事例
RFIDタグは、ユニフォームやリネンの管理にも活用されています。
従来のバーコード運用で管理すると、スタッフが1枚ずつバーコードを読み取る必要があり、負担が大きい課題があります
RFIDタグの導入で、一括読み取りが可能になり、飛躍的な効率UPを実現することができます。
出典:『RFID技術とその応用』~医療現場での応用アイデアを中心に~
ここでは、RFIDソリューションを提供しているおすすめの企業を7社ご紹介していきます。
手術材料管理では、これまで使用した材料を都度紙で記録して数えていたのが、RFIDを用いることで瞬時に確認が完了します。
また、手術材料の管理を自動で記録することによって、スタッフの作業負担を軽減し、保険請求漏れを防止できます。
大手メーカーとして、実績や性能については申し分ないといえるでしょう。
帝人株式会社の比較ポイント
企業情報
主な提供ソリューション | 医療機器管理、受診者管理、手術材料管理 |
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特長 | 帝人が独自開発した2次元通信シートにより、高い読み取り精度を実現 |
製品にRFIDタグを貼付することで、手術の際に使用する医療材料の基本セットの一括読み取りと在庫管理を可能にしました。
セット内容を瞬時に把握できるため、導入した医院では作業時間を20分の1にまで削減しています。
また、RFIDだけでなく、他のIotソリューションと合わせて複合的な提案も行ってくれるのが凸版印刷の特長です。
凸版印刷株式会社の比較ポイント
企業情報
主な提供ソリューション | 投薬管理、医療材料管理、動態管理 |
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特長 | 調剤行程の可視化ソリューション等柔軟に様々な課題へ対してソリューション提案を行ってくれる。RFIDのみならず他のIotソリューションと合わせて複合的な提案も可能 |
病院内物流にRFID技術を用いて、ミスが許されない手術室やその他の医療用材料の管理など、あらゆる場所で活用可能です。
また、RFID技術を導入した効果例では、棚卸の作業に25時間かかっていたのが、導入後には1時間に短縮されています。
RFID技術を用いれば、一括スキャンによる棚卸も可能になるのです。
小西医療器株式会社の比較ポイント
企業情報
主な提供ソリューション | 手術器具管理、医療材料管理 |
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特長 | 病院内物流も対応しているため、手術室やその他の医療用部材の管理に対して非常に強い |
内視鏡やエネルギー処置具などの医療機器では、感染を防ぐために適切な管理が求められています。
従来のバーコード運用では、洗浄履歴や使用回数などの管理に間違いが発生することもありました。
RFIDを導入することで、使用回数や洗浄履歴などを瞬時に把握し、照合時間の短縮で効率化を図ることも可能です。また、様々な業界に対してソリューションを提供しているため、幅広い視野でソリューションを提案してもらうことができるでしょう。
株式会社村田製作所の比較ポイント
企業情報
主な提供ソリューション | 手術器具管理、医薬品照合、医療機器管理 |
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特長 | 手術器具管理においては在庫状況のみならず使用回数等も自動で算出可能なソリューションを提供 |
東北システムズ・サポートは、高額な医療機器やリネンなど院内の部材関係を効率的に管理できるよう力を入れています。
RFID技術により、クリーニングの利用時に効率よく管理することも可能です。
また、大量にあるスタッフの白衣や制服なども、瞬時に読み取り管理することで盗難・紛失防止にも役立つでしょう。
株式会社東北システムズ・サポートの比較ポイント
企業情報
主な提供ソリューション | 医療機器管理、リネン管理 |
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特長 | 医療機器やリネンなど院内の部材関係の管理に力を入れてソリューションを提供 |
サトーホールディングスでは、「Patient Happiness」を基本的な考え方とし、QOL向上に貢献するソリューションを提供しています。
また、位置情報システムと合わせて、「手指衛生モニタリングシステム」でスタッフの衛生状況を可視化することが可能です。
衛生状況を可視化することで実施率が明確になり、手指衛生の改善対策を講じられるようになります。
サトーホールディングス株式会社の比較ポイント
企業情報
主な提供ソリューション | 医療機器管理、医療部材管理、患者情報管理 |
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特長 | 医療部材のみならず患者情報についてもソリューションを提供 |
株式会社エスアールエヌでは、採血システムに特化したソリューションを提供しています。
従来の方法では、医療機関と検体検査機関との間に多大な人的工数が発生し、読み取り漏れや検体の紛失などが課題になっていました。
RFIDタグを医療用採血管に貼付することで、固有情報を一括して読み取ることが可能です。また、特許取得技術により、多数の採血管の管理を容易にすることができます。
株式会社エスアールエヌの比較ポイント
企業情報
主な提供ソリューション | 採血管管理 |
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特長 | 採血システムに特化した形でのソリューションを提供している |
RFIDのデメリットの一つに、導入コストの高さが挙げられるでしょう。
かつてはRFIDタグ1枚100円〜200円程度だった相場が、技術の発達により1枚5円〜10円程度と価格が低下してきています。
しかし、RFIDリーダライタのハンディ型や据え置き型は、20万円〜と高額になってしまいます。倉庫の搬入出に使用するゲート型でも数万円単位です。
機器単体の相場は上記の通りですが、ソリューション全体で考えると高額になるので、確認が必要です。
高額なコストが理由で、なかなか導入に踏み切れない企業や事業者のために、補助金制度があります。
RFID導入の対象となる補助金は、「IT導入補助金2023」が活用可能です。
ただし、補助金を利用するには、さまざまな条件や申請、登録が必要となるため、専門家を交えて別途確認が必要になるでしょう。
ここでは、RFID導入時に注意しておきたい点を解説します。
作業現場の環境によっては、RFIDタグの読み取り精度に大きなバラつきがあります。
例えば、タグの貼り付け先が金属面や水分を多く含む作業環境の場合、読み取り精度が悪くなることもあるようです。
万が一タグを読み取れなかった場合、在庫数が合わなくなるという大きな問題に繋がってしまうでしょう。
そのため、事前に貼り付ける先が問題ないかメーカーなどへ確認しておくことが重要です。
従来のバーコード運用では、物流管理に手間と時間がかかっていたのが、RFIDにより業務効率が向上しました。
RFIDはICタグを一括スキャンすることができ、ユニクロのレジにも採用されている技術です。
今後RFIDの市場規模はさらに拡大し、なくてはならない技術として浸透していくでしょう。
今回ご紹介した内容を参考に、物流管理をさらに効率化したい医療機関は、RFIDの導入を検討してみてはいかがでしょうか。