オンライン資格確認に必要な端末を紹介|制度詳細や運用の流れまで

更新日 2024.02.09
投稿者:豊田 裕史

医療機関や薬局において、オンライン資格確認の導入が2023年4月から義務付けられます。オンライン資格確認の導入を進めるために、「オンライン資格確認端末」と「顔認証付きカードリーダー」が必要です。

今回は、オンライン資格確認端末についてくわしく解説。メリット・デメリットや価格などを解説します。本記事を読むと、オンライン資格確認端末についての理解が深まり、価格帯や使い方などを知ることができるでしょう。

オンライン資格確認とは

クリニックの受付イメージ

オンライン資格確認はクリニックや薬局の窓口で、マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようになる仕組みです。医療機関や薬局において2023年4月からの運用が義務付けられ、各医療機関で準備をすすめるよう求められています。端末の配送に3か月~4か月程度かかるのが一般的なので、対応が完了していない医療機関は急いで対応しましょう。

これにより、医療事務が保険証の情報をレセコンに打ち込む手間がなくなり、クリニックの受付業務の軽減や、期限切れの保険証で発生する過誤請求などを減らすことが可能になります。

オンライン資格確認端末とは

ここでは、オンライン資格確認端末について詳しく解説していきます。また、運用に必要な準備も解説していますので、ぜひ参考にしてください。

オンライン資格確認に必要な機器

オンライン資格確認を運用するためは、下記の2種類が必要です。

  • 顔認証付きカードリーダー
  • オンライン資格確認端末(PC)
    • ー資格確認に必要なパソコン
    • ールーターなどのネットワーク機器
    • ー医事会計システム(レセコン)の調整

オンライン資格確認は、厚生労働省が推進する「データヘルス改革」の基盤になるとして注目されています。

次に、オンライン資格確認の運用前に必要な準備を見ていきましょう。

オンライン資格確認端末の運用前に必要な準備

オンライン資格確認端末の運用前には、下記の手続きが必要です。

1.顔認証付きカードリーダー申し込み

まずは、「顔認証付きカードリーダー」の申し込みをする必要があります。「医療機関等向けポータルサイト」で申し込みをします。2023年1月11日時点では、下記のメーカーから製品を選べます。

  • 富士通Japan株式会社
  • パナソニックコネクト株式会社
  • 株式会社アルメックス
  • キヤノンマーケティングジャパン株式会社
  • アトラス情報サービス株式会社

厚労省HPで各メーカーの事前生産数が公表されています。詳細については顔認証付きカードリーダーカタログを見てください。運用開始の4ヶ月前までに申し込みを済ませておくと、スムーズに導入ができるでしょう。

2.システムベンダーに発注

「顔認証付きカードリーダー」を申し込みした後すぐに、システムベンダーに連絡して見積もり依頼をします。システムベンダーに「オンライン資格確認端末(PC)」を導入してもらうことになります。その際に、以下の内容を相談してください。

  • 各種機器の導入・設定
  • システムの改修・運用テスト
  • ネットワーク設定・疎通確認

また、見積もり依頼にあたって、システムベンダーから下記のような確認事項が発生する場合があります。

  • 顔認証付きカードリーダーの設置する場所
  • パソコンなどを別途発注するかどうか
  • オプション機能は必要かどうか
  • オンライン請求回線を導入するかどうか

提示された見積もりを確認し、運用開始の1ヶ月前までには、システムベンダーに発注依頼をしましょう。

3.導入準備

次に、導入準備に入ります。オンライン資格確認を導入すれば、従来の受付業務とは異なる流れになるので、事前に確認しておく必要があります。システムベンダーから運用マニュアルが提供される場合は、そちらを参照してください。

医療機関等向けポータルサイトにも記載しているので、内容をスタッフに共有し、運用開始に向けて準備を行います。

また、患者様向けに提示を実施している、「個人情報保護の利用目的」の更新も忘れずに行いましょう。

4.運用開始日入力・運用開始

オンライン資格確認の利用には申請が必要となるため、下記の情報を事前に準備しておきましょう。

  • 電気通信回線種別
  • お客さまID
  • オンライン資格確認の利用予定開始日
  • 運用テスト開始予定日

医療機関等向けポータルサイトから、オンライン資格確認利用申請を行います。申請が終われば、続けて「電子証明書」を発行してください。

その後、機器受取/設定など全ての導入作業が完了すれば、運用テストに移ります。システムベンダーが運用テストを行いますが、立会いが必要になる可能性もあるため、確認しておきましょう。

5. 補助金の申請

補助金の申請は、医療機関等向けポータルサイト|オンライン資格確認関係補助金申請から行います。申請には下記の書類が必要になるので、事前に確認が必要です。

  • 領収書(写)
  • 領収書内訳書(写)
  • オンライン資格確認等事業完了報告書

システムベンダーから補助金申請に必要な領収書などの書類を受け取る必要があります。また、「オンライン資格確認等事業完了報告書」に関しては、医療機関や薬局で作成が可能です。上記の厚労省ページには、申請の流れや費用イメージについても記載してあるので、参考にしてください。

オンライン資格確認端末導入のメリット・デメリット

オンライン資格確認端末を導入することで、具体的にどういったメリットやデメリットがあるのでしょうか。それぞれ見ていきましょう。

オンライン資格確認端末導入のメリット

まずは、オンライン資格確認端末の導入で得られるメリットについて解説します。

資格過誤によるレセプト返戻の作業削減

レセプト返戻の理由で多いのが、「保険の資格過誤」です。「保険証の情報にミスがある」などの理由で、医療機関が審査支払期間に提出したレセプトが戻ってくる(返戻)と医療費を受け取ることができません。

オンライン資格確認端末を導入すれば、カードリーダーで患者情報と支払基金・国保中央会が管理するシステムを自動で照会できるので、レセプトに患者情報を打ち間違えるリスクが大きく減るでしょう。そのため、間違いが発生してもすぐに情報を確認でき、レセプト返戻の作業削減につながるでしょう。

来院・来局前に事前確認できる一括照会

当日に来院予約のある患者の保険資格が有効かどうかを一気に把握できるのが、「一括照会」機能です。事前に保険資格の有効性を確認できれば、「有効でない」患者様と初診の患者に限定して保険証を確認すればよくなるため、受付業務の大幅な効率化が期待できるでしょう。

限度額適用認定証等の連携

健康保険の加入者が高額な医療費の支払いを抑えるために利用できる「限度額適用認定証」という制度があります。従来は、加入者(患者)が保険者に申請を行う必要がありました。

オンライン資格確認を導入すれば、患者からの申請がない場合でも、医療機関で患者の限度額情報を取得することができるようになります。これにより、限度額以上の医療費を窓口で支払う必要がなくなり、患者満足度の工場にもつながるでしょう。

薬剤情報・特定健診情報の閲覧

医療機関でオンライン資格確認端末を導入すれば、患者様の診療、薬剤情報・特定健診等情報を閲覧できるようになります。

患者様の同意の意思を確認し、医師や歯科医師、薬剤師などの有資格者が閲覧します。かかりつけ医以外でも患者様の情報を確認でき、より適切な治療の実施が可能になるでしょう。

災害時における薬剤情報・特定健診情報の閲覧

薬剤情報・特定健診情報を閲覧するには、患者様がマイナンバーカードでの同意をした場合に限られています。オンライン資格確認を導入すれば特別措置として、災害時はマイナンバーカードによる本人確認がなくても情報の閲覧が可能です。

例えば、

  • 災害が発生し、避難したが家に薬を置いてきてしまった
  • 避難所に持ってきた薬を飲みきってしまった
  • 災害でかかりつけの医療機関以外で受診することになった

このような状況でも、薬剤情報・特定健診の閲覧が可能になり、適切な医療を提供できるようになります。

オンライン資格確認端末導入のデメリット

次に、オンライン資格確認端末の導入にあたって、デメリットを下記の3つ解説します。

  • オンライン資格確認の導入・運用の費用
  • 問い合わせのサポート負担
  • セキュリティ面のリスク

それでは、一つずつ見ていきましょう。

オンライン資格確認の導入・運用の費用

オンライン資格確認の導入には、様々な機器やネットワーク環境の整備などが必要になります。電子カルテや顔認証付きカードリーダー、パソコン、ネットワーク回線の整備など様々です。

また、運用時に発生する端末の修理費やメンテナンス代、ネットワーク回線の月額費用なども発生します。そのため、導入費用や運用費がかかる点はデメリットといえるでしょう。補助金などをうまく活用して、導入することが大切です。

問い合わせのサポート負担

オンライン資格確認は新しい仕組みなので、マイナンバーカードや端末の操作に慣れていない方からの問い合わせが発生します。

特に医療機関には高齢者の患者様も多いため、操作に関する問い合わせが増えることが想定できるでしょう。オンライン資格確認端末の導入で業務負担が軽減するどころか、負担が大きくなる可能性があることはデメリットです。

セキュリティ面のリスク

オンライン上で患者様の個人情報を取り扱うということは、セキュリティ面でのリスクがあります。サイバー攻撃やウイルス侵入による情報漏洩など、セキュリティ対策は徹底しなければなりません。

また、患者様が院内でマイナンバーカードを紛失してしまった場合を想定して、対応できる体制を整えておくべきでしょう。

システムベンダーについて

ここでは、オンライン資格確認端末の導入に欠かせないシステムベンダーについて解説します。

システムベンダーとは

システムベンダーとは、企業などの情報システムの構築・運用などを一括して請け負う事業者のことです。システムやソフトウェアなどの製品を開発から販売まで行う企業を「開発ベンダー」と呼びます。

オンライン資格確認においては、システムベンダーとの密な連携や相談が大切です。

主要システムベンダー

オンライン資格確認端末の導入に向けて、システムベンダーに依頼しなければなりません。主要システムベンダーは下記の通りです(一部抜粋)。

  • 東日本電信電話株式会社
  • 西日本電信電話株式会社
  • 株式会社シーエスアイ
  • 株式会社クライムソフト
  • 株式会社NTTデータ
  • 株式会社ワイズマン

医療機関等向けポータルサイトにある「オンライン資格確認導入 対応業者お問い合わせ先」を確認しましょう。以下情報を確認できるため、端末設置を依頼するベンダーを絞り込むことができるでしょう。

  • 対応可能なベンダー一覧
  • 各ベンダーの対応都道府県

クリニックでオンライン資格確認端末を導入する場合は、利用しているレセプトのベンダーに相談するとよいでしょう。ただし、システムベンダーがオンライン資格確認に詳しくないケースもあるようです。

オンライン資格確認端末導入の価格

オンライン資格確認端末を導入する際に気になるのが価格です。ここでは、オンライン資格確認端末の価格と補助金の概要を解説します。

オンライン資格確認端末の価格・内訳

既設の回線を利用する場合、パソコンやルーター、工事費用などが必要になります。30万円程度は必要になると理解しておきましょう。

では、代表的ベンダーであるNTT東日本が公開している費用イメージを見ていきましょう。

出典:オンライン資格確認導入に関わるご相談は、NTT東日本にお任せください。医療機関・薬局のみなさまへ

項目 数量 価格(デスクトップ型モニタ)
現地調査費 一式 30,000円
ルーター 1台 67,000円
パソコン 1台 130,000円
HUB 1台 4,900円
LANケーブル 3本 2,000円
基本工事費 一式 10,000円
ルーター設置費 1台 9,000円
パソコン設置設定費 1台 30,000円
顔認証付きカードリーダー 1台 3,500円
HUB設置費 1台 3,500円
LAN配線設定費 一式 15,000円
合計価格 304,900円

上記は、デスクトップ型モニターのイメージ例ですが、ノート型によっても価格は異なります。また、上記に加えオプションを追加すると、その分価格も高くなるでしょう。

補助金の概要

医療機関等向けポータルサイトから補助金の申請を行います。補助金申請の前に下記の項目を確認してください。

  • 領収書(写)は用意できているか
  • 領収書内訳書(写)は詳細に記載されているか
  • オンライン資格確認等事業完了報告書に記入漏れはないか
  • オンライン資格確認の運用開始日入力が済んでいるか

申請時に提出する書類が欠けていたり不備があったりした場合、補助金が支給されないため注意しましょう。上記の4つの項目を確認した後は、下記のような流れで補助金申請を行います。

  1. オンライン資格確認等事業の事業の設備導入が完了
  2. システムベンダーなどに支払う費用を精算
  3. 補助金申請前に用意した3つの書類を準備した上で、補助金を申請

補助金についてさらに詳しく知りたい方は、下記のページを参照してください。

出典:医療機関等向けポータルサイト|オンライン資格確認関係補助金申請について

まとめ

オンライン資格確認端末の概要やメリット・デメリット、価格などを解説してきました。

オンライン資格確認を導入すれば、「保険証の入力の手間を削減」「資格過誤によるレセプト返戻の作業削減」などのメリットがあります。ただし、導入には費用や機器の設定などが必要です。オンライン資格確認端末に利用できる、補助金などを活用するとよいでしょう。

令和5年4月からオンライン資格確認の導入が原則義務化されるため、本記事を参考にしながら導入を検討してみてください。

中小企業診断士
セカンドラボ株式会社 PR Solution Div.
URL:https://note.com/2ndlabo/n/n949eaa3e9d69

北海道大学を卒業後、医療機器の営業として6年間勤務。外科、整形外科、泌尿器科領域を中心に民間・国公立の病院を担当。2020年よりセカンドラボ株式会社に入社。医療福祉施設の課題解決プラットフォーム「2ndLabo」にて各種ITツール、医療機器の導入支援、クリニック開業支援に従事。

2ndLaboのサービスを通じて、これまで1,000件を超えるサービス導入支援・開業支援を担当。得意分野は、電子カルテ、介護ソフト、各種医療機器。

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