医療機関・介護施設の食事提供では、安全に美味しい食事をしてもらうために様々なことに気を遣わなければなりません。嚥下能力が低下している方に対して、誤嚥を防止するためにソフト食など通常食とは異なった形態で提供するのもその一つです。
今回は特に「ソフト食」に焦点を当てて、ソフト食とは何か、おすすめのメーカーについてわかりやすく解説していきます。本記事を読むと、ソフト食について理解することができ、施設向けに提供しているおすすめのソフト食メーカーがわかるでしょう。
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実際の製品を見比べる前に、ソフト食とは何か?軟菜食・ゼリー食との違いを知りたい方はこのまま読み進めてください。
ここでは、ソフト食について特徴などを解説していきます。
ソフト食とは、軟菜食をペースト状にして、とろみ剤を加えて固めた食事のことです。飲み込む力や噛む力が弱くなってしまった方々の食事では、食材を細かく刻んだきざみ食が一般的でした。しかし、従来のきざみ食では、食材を細かく刻むことで表面積が大きくなり、食中毒の危険性があります。このような背景から介護施設や病院でソフト食が広まり、嚥下機能が低下している方でも安全に美味しく食事をすることができるのです。
食事形態には、ソフト食以外にも軟菜食やゼリー食などがあります。それぞれの特徴を下表で見ていきましょう。
食事の種類 | 特徴 |
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ソフト食 | 軟菜食をすり潰してペースト状にしたものにとろみ剤を加え、形成した食事。軟菜食よりも柔らかく食べやすいため、嚥下機能が低い方や歯がない方でも食べることが可能。普通食と見た目が似たものを作れるため、食欲も湧きやすいというメリットがある。 |
軟菜食 | 普通の食事メニューとほとんど変わらず、圧力鍋などで長時間調理し、柔らかく煮た食事形態。歯がない方でも無理なく食事ができる点が特徴。また、見た目や味も普通食と変わらず楽しめるメリットがある。 |
ゼリー食 | 普通食または軟菜食をペースト状にし、ゼラチンや寒天などを加えてゼリー状にした食事形態。ゼリーのような食感のため、しっかりと噛まずに食事ができるのが特徴。噛む力や飲み込む力がかなり低下している方に向いている。 |
上記のように、喫食者の摂食機能や嚥下機能によって食事形態も変わってきます。そのため、介護施設や病院の利用者さんに合った食事形態に対応してくれるメーカーを選ぶことが大切です。次章では、ソフト食を提供しているおすすめのメーカーを見ていきましょう。
ここでは、施設向けにソフト食を提供しているおすすめのメーカーについてそれぞれ解説していきます。
株式会社クリニコは森永乳業を親会社に持つ企業で、栄養補助食品や医療食、嚥下リハビリ食の開発・販売会社です。ソフト食を提供するやわらか亭シリーズは、豊富なラインナップを取り揃えています。
お米は国産を使用しており、じっくり煮込んで柔らかく仕上げているため、噛む力が弱い方でも安全に美味しく食事ができるでしょう。
やわらか亭シリーズの比較ポイント
製品情報
製品名 | やわらか亭 |
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賞味・消費期限 | 製造日より9ヶ月 |
対応可能エリア | 要お問い合わせ |
特長 | 豊富なラインナップ。じっくり煮込んで仕上げているため、噛む力が弱く諦めていた食材も食べることができる。常温保存ができるため、いつでも食べたいときに食べることが可能。 |
マルハニチロ株式会社は、「食を通じて健康を応援する」コンセプトのもと、ユニバーサルデザインフードの開発を手掛ける企業です。おかずセットやNew素材deソフトなどの商品ラインナップを取り揃えています。鶏肉や魚など歯が必要な食材も、歯茎で潰せる固さに仕上げているので安心です。オンラインショップから簡単にネット注文ができるため、全国どこでもマルハニチロのソフト食を楽しむことができるでしょう。
メディケア食品の比較ポイント
製品情報
製品名 | メディケア食品 |
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賞味・消費期限 | 要お問い合わせ |
対応可能エリア | 全国 |
特長 | おかずセットやソフト食用の食材など様々なラインナップあり。一般的には固い食材のものを歯茎で潰して食べることができる。 |
独自の技術により、レンコンやお肉などの固い野菜は、舌で崩せるほどの柔らかさを実現しています。一般的な調理法で食材を柔らかくする場合、ビタミンなどの栄養素が減少してしまうデメリットがあります。あいーとの独自技術で、素材本来の栄養成分の減少を防ぎ、少量でも栄養摂取することが可能です。また、再成形食ではなく、食材の繊維を酵素の力で柔らかく加工しているため、見た目は普通食と変わらず目でも食事を楽しむことができます。
「あいーと」の比較ポイント
製品情報
製品名 | あいーと |
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賞味・消費期限 |
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対応可能エリア | 全国 |
特長 | 独自技術により、素材本来の栄養を損なわずに食べることができる。また、再成形食ではなく食材の繊維を軟化加工しているため、見た目は普通食と変わらず食事を楽しめる。 |
学校給食から介護・病院などの利用者様まですべての人々の健康を維持できるよう、安心安全な製品の提供を行う企業です。病院・高齢者用食品では、ハンバーグや鶏つくねからプリンやワッフルといった甘いお菓子も用意されています。舌で潰せるほど柔らかい団子などもあるため、噛む力が弱く好きな食べ物を諦めていた方でも安心して食べることができるでしょう。
病院・高齢者用食品(カセイ食品株式会社)の比較ポイント
製品情報
製品名 | 病院・高齢者用製品 |
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賞味・消費期限 | 製品によって異なる(例:和風プリン180日) |
対応可能エリア | 要お問い合わせ |
特長 | 豊富なラインナップが取り揃えられており、ハンバーグやつくね、ワッフルや団子といった様々な種類から選ぶことができる。 |
株式会社大冷の楽らく柔らかシリーズは、新鮮な原料にこだわっており、骨なし魚のパイオニアとして知られています。商品ラインナップは、さば照り焼き・さわら西京焼き・メヌケ西京焼きの3商品です。特許製法と独自の加熱方法でパサつきが少なく柔らかい商品になっており、加熱不足の心配もありません。ユニバーサルデザインフードの「容易に噛める」に対応しているため、噛む力が弱い方でも魚料理を楽しむことができるでしょう。
楽らく柔らかシリーズの比較ポイント
製品情報
製品名 | 楽らく柔らかシリーズ |
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賞味・消費期限 | 18ヶ月 |
対応可能エリア | 全国 |
特長 | 噛む力が弱い方でも容易に食べることができる。程よく固形感のあるので、普通食と変わらない美味しさで食事を楽しめる。 |
ソフト食・介護職の選び方として、「ユニバーサルデザインフードの基準で選ぶ」「専門家に相談する」などがあります。それぞれ見ていきましょう。
「ユニバーサルデザインフード」とは、普通食から介護食まで幅広い層に対応している、食べやすさに配慮した食品のことです。施設や調理師によって、介護食の基準が異なるため、ユニバーサルデザインフードが付いたマークから選ぶとよいでしょう。ユニバーサルデザインフードには、いくつかの区分が設けられているので、下表を参考にしてみてください。
区分 |
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噛む力の目安 | 固いものはやや食べづらい | 固いものは食べづらい | 細かくて柔らかいものは食べられる | 固形物に関しては小さくても食べづらい |
飲み込む力の目安 | 普通に飲み込める | 食べ物によっては飲み込みづらい | 飲み物が飲み込みづらいことがある | 飲み物が飲み込みづらい |
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ご飯〜柔らかご飯 | 柔らかご飯〜全がゆ | 全がゆ | ペースト状 |
ユニバーサルデザインフードに適合した食品には、それぞれロゴマークや上記表の区分の表示がされています。区分の表示から、利用者の状態に合わせた柔らかさの食品を選ぶことができるでしょう。
ユニバーサルデザインフードの基準から選定できない場合や、不安が残る方は専門家に相談して選ぶ手段もあります。専門家には、医師や管理栄養士などに相談するとよいです。相談できない場合は、本人に一口ずつ食べてもらって反応を見るしかありませんが、知識がない方は危険なためおすすめはしません。やはり判断が難しい場合には、専門家に相談するのが最も有効な手段でしょう。
介護施設・病院におすすめの食事提供の方法として、クックチルやニュークックチルがあります。クックチルとは、食材を加熱調理後に急速冷却し、0〜3℃で保存・管理する調理法のことです。食事提供の際は、チルド状態のまま盛り付けを行った後に再加熱する点が特徴です。細菌が繁殖しやすい温度帯を一気に通過するため、安全な食事提供が可能となります。ニュークックチルは盛り付けをした後に再加熱を行うため、加熱から提供までのスピードが短く、食中毒のリスクも軽減されます。これらの調理法を取り入れることで、利用者の満足度向上・職員の業務負担軽減につながるでしょう。クックチルとニュークックチルについての詳細は、下記の記事を参考にしてみてください。
クックチルについてはクックチル業者10選を徹底比較|導入の基礎知識から選び方まででも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
ニュークックチルについてはニュークックチルとは|クックチルとの違いやメリットを解説でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
ソフト食は、噛む力や飲み込む力が弱くなってしまった方でも食べる喜びを感じてもらうために提供する食事です。各メーカーで様々な工夫がされており、普段食べられないような固い食材でもソフト食であれば食べることができます。ソフト食の調理には手間がかかるため、ソフト食を提供しているメーカーを積極的に利用するとよいでしょう。今回ご紹介したソフト食の選び方やおすすめメーカーを参考にし、ソフト食の導入を検討してみてはいかがでしょうか。