病院や介護施設では、体調や病状が異なる利用者に安全で食べやすい食事を提供する必要があります。そこで、個々の事情に合わせた食事を用意するために、スタッフが早番で出勤する、配膳時間に大量のスタッフを動員するなどの必要に迫られてきました。
適切な温度の料理を自動で用意できるリヒートウォーマーは、人手不足の解消や業務の効率化に貢献する機器として注目が集まっています。基本的なタッチパネル操作で、冷蔵保存、再加熱、保温に至る一連の作業ができるため、パートスタッフでも対応できることが強みです。
今回の記事では、リヒートウォーマーの概要や導入するメリットのほか、おすすめのメーカーを5つご紹介します。それぞれのメーカー製品の特徴や仕様、強みなどもまとめました。施設にリヒートウォーマーを導入する際の、検討や比較のためにご活用いただけますと幸いです。
リヒートウォーマーとは、盛り付け済みの料理をセットするだけで適温になるまで再加熱できる機器のことです。温かい料理を保温できる機器はありましたが、再加熱には対応していませんでした。そこで注目されている厨房機器がリヒートウォーマーです。リヒートウォーマーの強みは、適温で料理を提供できるように配膳時間に合わせて自動制御できることと言えるでしょう。料理を冷却した状態でカートに入れれば、それ以降人が手で触れることがないので交差汚染の心配がありません。リヒートウォーマーの加熱方式は、熱風循環、熱伝導、電磁波誘導、加熱蒸気、マイクロ波の5方式があります。完成するまでの時間や電気代が異なるため、施設のニーズや予算に合わせて選ぶことになるでしょう。
ニュークックチルについてはニュークックチルとは|クックチルとの違いやメリットを解説でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
料理を再加熱する機器は2種類あります。キャスターが付いているのが再加熱カートです。手押しで移動できますので、配膳車としても活用できるでしょう。ただし、キャスターやステーションが付いていることから、大きめのサイズの再加熱カートが多いです。リヒートウォーマーは据え置き式ですので、再加熱カートのように移動できません。しかしながら、キャスターやステーションがないためコンパクトなサイズのリヒートウォーマーもあります。設置スペースに限りがある施設向けと言えるでしょう。
再加熱カートには冷スペースがありますので、漬物やサラダなど冷たい料理も同じカートに入れられます。一方リヒートウォーマーは冷やすスペースがありません。そこで冷蔵庫なども併用することになるでしょう。ただし価格についてはリヒートウォーマーのほうが比較的安価です。
再加熱カート | リヒートウォーマー | |
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冷却スペース | あり(漬物やサラダなど冷たい料理も同じカートにセットできる) | なし |
サイズの比較 | 大きい(キャスターやステーションが付属する) | 小さい(コンパクトサイズを選択可能) |
カートの移動 | できる(キャスターがついており配膳車としても使用可能) | できない(据え置き式) |
価格 | 高い | 安い |
参考:新調理方式「ニュークックチル」とは? 概要とメリット、導入事例をご紹介
再加熱カートについては再加熱カート12選徹底比較|使い方や特徴、導入メリットまで解説でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
リヒートウォーマーは、電源を入れた時点では加熱はされません。冷蔵された状態を保つことができます。任意の時間を設定すると、それに合わせて加熱が開始されますので、配膳するタイミングで料理を適温にできるでしょう。加熱が完了したら自動で保温機能が作動します。リヒートウォーマーには冷やすスペースがありませんので、加熱完了後に冷たい料理を盛り付けることになるでしょう。そのあいだも保温機能により料理が冷めることはありません。リヒートウォーマーの設計はとても簡易的です。そのため簡単なタッチパネルを操作するだけで運用できます。厨房担当ではないスタッフでも操作できますので、施設のマンパワーの有効活用が期待できるでしょう。
リヒートウォーマーは特別な食器を必要としません。耐熱であれば一般家庭で使われている食器をそのまま利用できます。蓋つきのものを選べば、蓋を開けたときにフワッと湯気があがり、料理の美味しさがより引き立つでしょう。リヒートウォーマー専用の食器も販売されています。価格はさまざまで、安いものなら1つ1000円ほどで購入できます。高価なものですと1つ4000円ほどになるでしょう。表面が熱くならない、割りにくい、カートから取り出しやすいなど、リヒートウォーマーの設計や用途に合わせた仕様になっています。調味料による着色を防止するタイプの食器もありますので、長期的に利用すればコスパは悪くないでしょう。
リヒートウォーマーは、病院や介護施設の課題を解決するために開発された厨房機器です。さまざまな背景がある利用者が美味しく食事をとれるように、加熱や保温を自動で制御してくれます。施設が提供する食事は大人数分をまとめて調理することから、冷たく味気ないというイメージがありました。また、体調が不安定な利用者が多い施設ですと、集団食中毒に対する懸念も拭い切れませんでした。リヒートウォーマーは、料理を美味しくかつ安全に提供できるのみならず、スタッフの業務を簡略化できます。ここでは主なメリットを3つまとめましたので、導入検討の参考にしてみてください。
リヒートウォーマーがあれば、調理された食材を器に盛り付けて再加熱するだけで提供できます。器ごと温められますので、食べているあいだも料理を温かい状態で保てるでしょう。施設の食事は冷たく味気ないという従来のネガティブなイメージを一新できます。衛生面でもより安全性を増せることがリヒートウォーマーのメリットです。リヒートウォーマーを使えば、調理済みの料理の冷蔵保存、再加熱、保温に至るまで自動で管理できます。その過程で人の手が触れることがありませんので、衛生的な状態で提供に至れるでしょう。
調理スタッフの安全性も担保できます。食材を盛り付けた状態で再加熱できますので、調理スタッフが盛り付ける必要がありません。そのため、盛り付け中に火傷をする、同じ姿勢を保つことで腰痛になるなどの心配もなくなるでしょう。
厨房で作った料理をそのまま提供する場合、利用者に温かい状態で食べてもらうために、直前まで加熱していなければなりません。そのため、配膳作業が調理師免許を持ったスタッフに集中するという課題がありました。リヒートウォーマーを利用することで、前日に調理済みの食材を器に盛り付けてセットしておけます。当日は料理を提供する時間に合わせて再加熱および保温ができますので、スタッフは早朝出勤する必要がありません。
再加熱したあとは配膳するだけですので、調理師免許がないスタッフでも取り組めるでしょう。すでに盛り付けられていますので、食材の型崩れや誤配のリスクもありません。業務工程が簡略化されるため、パートスタッフの雇用を増やすなど人件費削減も期待できます。
リヒートウォーマーにより、食材の加熱や保存のための温度管理をデータ化して保存できるようになりました。問題が発生した場合はデータ記録から原因を把握することも可能です。記録や保存の機能は、衛生管理手法HACCPの制度化に貢献してくれるでしょう。施設がとくに気を遣わなくてはならないのが食中毒です。食中毒がいちど発生しただけで、施設は社会的信頼を一気に失ってしまいます。万が一食中毒の原因となる菌が食材に付着しても、温度設定により増殖を防げることがリヒートウォーマーの強みと言えるでしょう。
施設内の食中毒予防に向けて、HACCPの概念に基づきマニュアル化することも一案です。HACCPをマニュアル化することで、トラブル発生時の対応も迅速にできます。それにより利用者はもちろん家族からの信頼も高められるでしょう。
リヒートウォーマーの価格はメーカーやサイズにより異なるものの、250万円から400万円あたりが相場です。施設の規模や予算に応じて、どの価格帯のリヒートウォーマーにするか考えてもいいでしょう。予算をできるだけ抑えたいというのが施設の本音なのかもしれません。ただし、費用だけに気を取られていると、施設で提供したいメニューが出せないこともあります。介護食や病院食を提供している施設は一定のクオリティを保てるのか確認したほうがいいでしょう。
リヒートウォーマーを導入する際は、複数のメーカーの情報を収集・比較することで、施設にとって最もコストパフォーマンスの高い製品を選ぶようにしましょう。価格については公表されていないこともあります。その場合、メーカーに直接問い合わせてください。
リヒートウォーマーにはメーカーごとに特徴的な機能やサービスがあります。ここでは5つのメーカーの製品をご紹介しますので、施設の規模、ニーズ、予算などを踏まえて検討してみてください。
リヒートウォーマーキャビネットは、冷たいまま器に盛り付けても再加熱すれば適温で料理を提供できます。タイマー機能が搭載されていますので、配膳時間に合わせた自動運転も可能です。器ごと温まりますので、利用者様は温かい状態で食事をできるでしょう。最終加熱調理については、食中毒のリスクを事前に予防するCCPを自動で実行する仕様です。温度の計測などのデータは自動で保存されますので、万が一のときに問題点を洗い出すことができます。厳しいガイドラインを通過できる高度な制御性を誇っていることも特徴的です。冷蔵温度帯は3℃、再加熱した後の芯温は75℃1分以上を保持できます。料理の量に応じて加熱時間や温度が調整されますので、スケジュールに基づく運用が可能となるでしょう。
リヒートウォーマーキャビネット(RHWシリーズ)の比較ポイント
製品情報
サイズのラインナップ |
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価格帯 | 要問合せ |
特長 | AIによる自動補正機能が搭載されているので最適な温度で料理を提供できる |
芯温と湿度の両方をコントロールできることが電気リヒートウォーマーキャビネットRHW型の特徴です。高度な制御機能により再加熱から保温に至るまで最適な温度と湿度を維持できます。料理が乾燥することなく最適な温度で利用者様に提供できるでしょう。電気リヒートウォーマーキャビネットRHW型はHACCPにも対応しています。冷蔵、再加熱、保温と、測定しながら必要に応じて自動で調整してくれるでしょう。高度な自動制御システムにより計画的かつ正確な配膳の実現をサポートします。施設の規模やニーズに合ったリヒートウォーマーを導入できるように、日本給食設備株式会社は現場訪問サービスを提供してきました。どのような仕様の製品がいいのか判断に迷っているときは、メーカースタッフに直接相談してみることも一案です。
電気リヒートウォーマーキャビネットRHW型の比較ポイント
製品情報
サイズのラインナップ |
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価格帯 | RHW-720 2,460,000円 RHW-1400 3,690,000円 |
特長 | 加熱したあと湿度管理ができるため保温中に料理が乾燥することを防げる |
北沢産業株式会社はさまざまな厨房機器を取り扱う専門商社です。食品加工機械、調理機器、加熱調理用機器など、厨房で必要とされる機器を提供してきました。海上自衛隊、官公庁、総合病院、大学の学食との取引も目立ちます。リヒートウォーマーキャビネットを導入すれば、調理が終わった食材を器に盛り付けるだけで、冷蔵、再加熱、保温までを自動で管理できるでしょう。モニタリングしながら温度がコントロールされますので、適温で利用者様に提供できます。性能や使い勝手が気になる方が利用できるのがテストキッチンです。全国に展開されている営業所にて実際に厨房機器を手に取ることができます。気になるリヒートウォーマーがありましたら、一度問い合わせてみてもいいでしょう。
リヒートウォーマーキャビネットの比較ポイント
製品情報
サイズのラインナップ |
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価格帯 | 要問合せ |
特長 | 食材を器に盛りつけてセットすれば、冷蔵、再加熱、保温まで自動で管理できる |
AiHOのリヒートクッカーのこだわりは「あたため上げる」ことです。ただ保温するのではなく、ほかほかの出来立て感を実現することにより、施設の利用者に美味しく食べてもらうことを目指しています。リヒートクッカーは、芯温75℃以上で1分以上加熱することで、食材をほかほかにしてくれるでしょう。HACCPの概念にも対応しています。温度や加熱時間の自動コントロールにより、食中毒のリスクを最低限に抑えられるでしょう。配膳の時間に人手が集中することでその他の業務の停滞が避けられることも、リヒートクッカーの強みです。食事を前日に準備しておくことで当日は自動で提供できる状態まで出来上がります。作業量が大幅に減りますので業務の効率化・人件費削減が実現するでしょう。
リヒートクッカーの比較ポイント
製品情報
サイズのラインナップ | 要問合せ |
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価格帯 | 要問合せ |
特長 | 病院・福祉施設で安全に食事を提供できるようにHACCPの概念を遵守している |
株式会社中西製作所は、リヒートウォーマーキャビネットをはじめ、さまざまな病院・福祉関連機器を販売している総合厨房機器メーカーです。厨房スタッフの負担を減らしながらも美味しい料理を提供できるような製品が取り揃えられてきました。ただ製品を販売するだけではなく、施設のニーズに即した製品の提案や設計も行ってくれます。リヒートウォーマーをはじめとする厨房機器一式を導入する場合、施工も含めてトータルサポートしてくれることが、株式会社中西製作所を選ぶメリットと言えるでしょう。安定した保守サービスを受けられることもリヒートウォーマーキャビネットの強みです。全国にメンテナンス拠点があるため、万が一のトラブルがあっても短時間で対応してもらえるでしょう。国内に自社工場が2か所あるため部品も迅速に提供されます。
リヒートウォーマーキャビネットの比較ポイント
製品情報
サイズのラインナップ | 要問合せ |
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価格帯 | 要問合せ |
特長 | 製品購入後も長期に渡って保守運用できる高度なメンテナンスサービスを受けられる |
リヒートウォーマーは、より美味しく安全な食事を提供できることから、病院や介護施設における導入が浸透してきました。機器のサイズや仕様はメーカーごとに異なります。施設にあったリヒートウォーマーを導入するために情報収集および比較作業は必要不可欠でしょう。施設内の業務を効率化することで人手不足を解消できます。また、高度な温度コントロール機能によりHACCPを制度化できることもリヒートウォーマーの強みです。施設を安全かつ安定的に運営するうえで、リヒートウォーマーはさまざまに貢献してくれるでしょう。今回の記事では、主要なリヒートウォーマー製品も5つご紹介しました。これらの情報が、当機器の導入を検討しているみなさまの助けになりましたら幸いです。