レセプトのオンライン請求は義務化される?概要や反対意見も解説

更新日 2024.01.31
投稿者:豊田 裕史

オンライン請求システムは、従来の紙やフロッピーなどを審査支払機関にレセプト請求を行っていたものを、安全なネットワークを利用して請求データ(レセプトデータ)をオンラインで受け渡す仕組みです。

本記事では、レセプトオンライン請求義務化の概要に触れつつ、反対意見が出ている理由、オンライン請求のメリット・デメリットなどについて解説します。レセプトのオンライン請求義務化について不安に感じている方は、ぜひ本記事を参考にしてください。

\ご希望条件に合う製品を早く知りたい方は、お気軽にお問合せください/
レセコン選びの専門知識・時間がない方
コンシェルジュが代わりに探してご案内します!
業界に精通したコンシェルジュが、希望条件をお伺いし、ピッタリなメーカー・製品をご案内。時短&手間ナシで情報収集が可能です。相場観や補助金情報などのご質問にもお答えします。

レセプトオンライン請求への移行方針

厚生労働省は、光ディスクなどで請求する医療機関に対して、2024年9月末までにオンライン請求への移行を実質義務化するロードマップを発表しました。

このロードマップは、オンライン請求の割合を100%に近づけるためのものです。

また、紙レセプト請求機関に対しては、経過的な扱いとした上で、2024年4月以降は新規適用を終了する方針を示しています。

オンライン資格確認整備の義務化に便乗した形となり、医療機関には負担と混乱を招き、反対意見も多く上がっています。

特に小規模で光ディスク請求を行っている6割程度の歯科分野を中心に、影響が大きく歯科診療の安定確保も危ぶまれる状況です。

ただし、現状は政府の方針が示されただけであり、法的に「義務化」されたわけではありません。実質義務化の方向に進んでいるといえるでしょう。

出典:厚生労働省「オンライン請求の割合を100%に近づけていくためのロードマップ(案)」

レセプトオンライン請求の概要

ここでは、レセプトオンライン請求について概要を深掘りしていきます。

レセプトオンライン請求の対象となる医療機関

レセプトオンライン請求が対象となる医療機関は決められています。それが以下の医療機関です。

  • 診療所、病院
  • 歯科医院
  • 薬局

次に、上記の医療機関でオンライン請求しているのはどのくらいの割合か見ていきましょう。

オンライン請求されているレセプトはどれくらい?

令和5年2月時点の支払基金への請求状況を以下の表にまとめたので、参考にしてください。

点数表 電子レセプト/オンライン 電子レセプト/電子媒体 紙媒体
医科 73,958(78.3%) 17,633(18.7%) 2,833(3.0%)
歯科 22,034(32.6%) 40,198(59.4%) 5,426(8.0%)
調剤 59,306(98.3%) 464( 0.8%) 588(1.0%)

上記の表を見ると、医科、調剤では一定の割合でオンライン請求が実現していますが、歯科は3割程度に止まっています。

移行期限

厚生労働省は、2024年9月末までに原則オンライン請求に移行するとしています。新規適用を2024年6月4月から終了し、既存機関は2024年9月末までに原則オンライン請求に移行しなければなりません。

光ディスクなどの請求を続ける期間に関しては、移行計画の提出を求め、1年単位の経過的な取り扱いとします。

オンライン請求義務化に対する反対意見

全国の医師・歯科医師10万人以上で構成されている医療団体「全国保険医団体連合会」がオンライン請求義務化に対する反対を求める声明を出しています。

ここでは、その概要と反対している理由について見ていきましょう。

声明の概要

全国保険医団体連合会は2023年3月28日付けで、「診療報酬オンライン請求「義務化」方針の撤回を求める(声明)」を発表しました。

オンライン請求の義務化は、医療機関に負担と混乱を招くものとして、強く反対の意を示しています。

以下は、全国保険医団体連合会の声明をまとめたものです。

「今回のロードマップは、医療機関の置かれている状況を全く考慮していないものです。

コロナ感染拡大に伴い、地域の医療機関に大きな負担がかかり続ける中、オンライン請求を強制するようなことは容認できません。

医療機関にオンライン請求を実質義務付ける提案を、即時撤回するよう求めるもの」という内容です。

出典:診療報酬オンライン請求「義務化」方針の撤回を求める(声明)

反対している理由

ではなぜ、オンライン請求義務化に反対しているのでしょうか。

具体的には、小規模で光ディスク請求を選択している歯科では、影響が大きいと予想されており、歯科診療の安定確保が危ぶまれるからです。

紙レセプトを請求する割合が多い高齢医師や歯科医師なども、紙レセプトは「経過的な取り扱いであることを法令上明確化」した上で、改めて届出を提出しなければなりません。

そのため、余計な負担がかかり、閉院・廃院に繋がりかねない事態となることを危惧しているのです。

レセプトオンライン請求のメリット

反対意見もあるレセプトオンライン請求の義務化ですが、移行するメリットはあるのでしょうか。ここでは、レセプトオンライン請求を導入するメリットについて解説します。

保険者側の事務作業が削減される

レセプトオンライン請求では、事務点検機能により事前にエラーチェックができます。これは、オンライン請求を受付する際に、自動的にレセプトをチェックできる機能です。

エラーチェックによりミスが減るので、保険者側の事務作業の削減につながります。

例えば、以下のような項目をチェック可能です。

  • 氏名の記入漏れ
  • 保険者番号、記号番号抜け
  • コメントに外字が含まれている
  • 診療開始日に昭和以前の年号が記載されている

など、単純なミスを防げるため、返戻レセプトを減らすことにもつながるでしょう。

医療費の不正請求が防止される

レセプトオンライン請求により、セキュリティの強化につながります。

暗号化通信だけでなく安全性が確保されたネットワーク回線を使用するため、従来の請求に起きうる書類の破損や紛失がなくなります。

また、医療費の不正請求防止にもなるでしょう。

医療情報の共有化が進む

医療現場では、医療機関間での診療情報の共有は非常に大切です。救急医療や災害の現場などで、情報の共有ができていれば、医療安全の確保や効果的・効率的な治療を行えます。

レセプトオンライン請求の導入により、医療情報の共有化が進むので、医療の質が向上するきっかけにもなるでしょう。

返戻レセプトをデータで受け取ることができる

レセプトオンライン請求のメリットに、返戻レセプトをデータで受け取ることができる点が挙げられます。

オンライン請求を導入している医療機関では、返戻レセプトを「紙」と「電子データ」で返戻レセプトを受け取ることが可能です。

電子データで返戻レセプトを受け取る場合は、オンライン上でCSV形式のデータとしてダウンロードすることもできます。

ASPができる点や電子データで一元管理できる点から、電子データで返戻処理を行う医療機関が増えていくでしょう。

レセプトオンライン請求のデメリット

次に、レセプトオンライン請求のデメリットを解説します。

医療機関側にシステム導入費用がかかる

レセプトオンライン請求を導入するには、システム導入にかかる費用が必要です。

初期費用として、以下の例が挙げられます。

オンライン請求用のPC 10万円
外付CD/DVDドライブ 1万円
電子証明書発行料 1,500円
インターネット接続にかかる初期費用 28,000円

なお、毎月のネットワーク費用は、6,000円程度です。オンライン請求の導入費用は、15万円程度となります。

また、初期設定をシステムベンダーに依頼する場合は、追加の費用もかかるでしょう。

スタッフにIT知識が求められる

レセプトオンライン請求は、PCを使って操作するため、IT知識が求められます。

主に、レセプト作成→点検→データ修正→オンライン提出までの流れを、医療事務は身につけなければなりません。

そのためには、教育や採用コストが必要となるでしょう。医療機関内にオンライン請求に詳しいスタッフがいない場合、システムベンダーに教育を依頼することも可能です。

レセプトオンライン請求の対応に慣れるまで時間がかかるのがデメリットといえるでしょう。

インターネット回線が必要

オンライン請求を実施するためには、インターネット回線が必要です。そのため、ネットワーク環境が悪い場合は、接続エラーになってしまうデメリットがあります。

また、インターネット回線の開通には時間が必要です。工事が必要な場合は、数ヶ月かかる場合もあるため早めに申し込みしましょう。

レセプトオンライン請求の移行準備

レセプトオンライン請求へ移行する際、どのような準備が必要なのでしょうか。ここでは、移行準備について解説します。

レセプト送信用パソコンとネットワーク回線を用意する

まずは、レセプト送信用のパソコンとネットワーク回線が必要です。送信用パソコンに関しては、レセコンとの共用ができます。

ネットワーク接続するには、以下のいずれかの方式を選ぶ必要があります。

  • ISDN回線を利用したダイヤルアップ接続
  • 閉域IP網を利用したIP-VPN接続
  • IPsec+IKEサービスを用いたインターネット接続

ネットワーク回線事業者については、支払基金ホームページを参照してください。

スタッフを教育する

オンライン請求は、従来の請求と違った運用になるため、教育や研修が必要になります。必要最低限のIT知識が必要になるため、操作が苦手な方も出てくるでしょう。

教育するスタッフがいない場合は、システムベンダーに教育することもできます。しっかりとスタッフ教育を実施し、操作トラブルが発生しないように準備しましょう。

レセプトオンライン請求を申請するには?

レセプトオンライン請求の申請は、以下の流れで申請を行います。

  1. オンライン請求に関する開始・変更届出
  2. 手続きが完了次第、設定ツールなどを発送
  3. 電子証明書発行申請を提出
  4. 手続き完了次第、電子証明書発行通知書が発送

オンライン請求に関する届出に関しては、以下のページ経由で申請できます。

出典:医療機関等向けポータルサイト|オンライン請求利用申請

まとめ

本記事では、レセプトのオンライン請求の義務化について解説してきました。

政府は2024年9月末までに、オンライン請求に移行することを義務化する方針を示しています。しかし、医療機関では反対意見も出ており、義務化の撤回を求める声も多いです。

レセプトのオンライン請求は、「医療費の不正請求の防止」「医療情報の共有化が進む」などのメリットがあります。

このようなメリットがありながらも反対意見が出ている理由としては、歯科への影響が大きく安定確保が危ぶまれるからです。

レセプトのオンライン請求の義務化に関しては、方針を示している段階なので、法的な影響は現在ありません。

しかし、義務化された時のためにも、本記事を参考に準備できるようにしておきましょう。

\ご希望条件に合う製品を早く知りたい方は、お気軽にお問合せください/
レセコン選びの専門知識・時間がない方
コンシェルジュが代わりに探してご案内します!
業界に精通したコンシェルジュが、希望条件をお伺いし、ピッタリなメーカー・製品をご案内。時短&手間ナシで情報収集が可能です。相場観や補助金情報などのご質問にもお答えします。

中小企業診断士
セカンドラボ株式会社 PR Solution Div.
URL:https://note.com/2ndlabo/n/n949eaa3e9d69

北海道大学を卒業後、医療機器の営業として6年間勤務。外科、整形外科、泌尿器科領域を中心に民間・国公立の病院を担当。2020年よりセカンドラボ株式会社に入社。医療福祉施設の課題解決プラットフォーム「2ndLabo」にて各種ITツール、医療機器の導入支援、クリニック開業支援に従事。

2ndLaboのサービスを通じて、これまで1,000件を超えるサービス導入支援・開業支援を担当。得意分野は、電子カルテ、介護ソフト、各種医療機器。

関連記事

PAGE TOP