HALは、筑波大学の山海嘉之教授によって設立されたサイバーダイン社が開発した世界初の装着型サイボーグです。その大きな特徴は、なんといっても身に付けることで身体機能を改善・補助・拡張・再生できること。人が体を動かそうとすると、その意思に従い動作することが出来るのです。
HALは優れた特徴から主に医療や介護の分野で活用され、2022年2月には診療報酬の出来高算定科目の対象になったことが、日本経済新聞などの大手メディアでも取り上げられました。しかし、HALは世界初の装着型サイボーグということもあり、なかには「怪しい」などの声も聞かれます。
そこで、今回はHALの詳しい機能や仕組みについてはもちろん、評判や将来性なども解説するので確認していきましょう。また、導入された介護現場での評判も紹介するので、ぜひ最後までお読みください。
タイプ | アクティブ |
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重量 | 3.1kg (バッテリ含む) |
連続稼働時間 | 約180分(動作環境に応じて変動あり) |
デモの有無 | ー |
レンタルの有無 | 施設向け・個人ともレンタル可 |
価格帯 |
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HALは、利用者が体に身に付けることで身体機能を改善や補助・拡張・再生できるサイボーグ型のアシストスーツとなります。
本来、人の動作は脳から筋肉に対し動作につながる信号を伝えるのですが、HALでは実現した動作から脳へのフィードバックを送ることも可能です。この機能を実現したのは、世界で唯一HALだけとなります。
この項では、HALの機能や仕組み・活用方法について確認していきましょう。
HALによって得られる効果は、身体機能の改善や補助・拡張・再生です。その効果を実現する仕組みは次のとおりです。
繰り返しになりますが、HALが世界で唯一実現しているのは、これまで述べたように本来、脳から動作にしかつながらないベクトルを、完了した動作から脳にも送ることができる点です。動作に対する正解を脳に教えてあげることができるのです。
この例としては、HALが歩くという動作を適切にアシストしたときは、「歩けた」という感覚が脳へフィードバックされることが挙げられます。このフィードバックによって、動作ができたという感覚が脳に伝えられるのが、世界で雄一の大きな特徴です。
次に、HALの種類について説明します。 HALは医療や福祉分野の動作支援や工場での重作業支援、災害現場での復興活動支援など幅広い分野で活用されているのが特徴です。
なかでも、医療福祉現場での支援で大きな効果を発揮するため、次のような種類を取りそろえています。
このように利用者の目的や状態に応じて多くの種類があるため、病院はもちろんリハビリテーションや機能維持など多くの場面で活躍できるのです。
高機能なサイボーグでさまざまな用途で利用されているHALですが、利用した効果はどうでしょうか。その効果は実際に使ってみないと、よくわからない点があるかもしれません。
そこで、この項ではHALの導入事例を紹介します。HALを実際に利用した特別養護老人ホームでの導入事例をまとめました。
「HALを導入した大きな理由は、その見た目です。 介護業界は、3Kなどのネガティブなイメージの業界に位置づけられています。HALのスマートで先進的なデザインが、介護業界のイメージを明るい未来に変えてくれるのではという希望を感じました。悠う湯ホームでは、職員の半数程度が腰痛のため業務に支障をきたしており、HALを導入することでの業務改善が期待された点です。当時、介護ロボットを導入している施設がまだ少なかったので、 他施設との差別化を図りたいという狙いも挙げられます。」
「実際に使ってみて、HALを装着して行った業務とそうでない場合には大きな差がありました。体の疲労感などが明らかに減ったのです。 最初は業務命令だから仕方なく装着していましたが、半年ほど使い続けるうちにアシストされる感覚がだんだん分かり、2年近くたっても腰痛は発生していません。 導入して効果を実感できてよかったです。」
HALは利用者のみならず介護者にもメリットがあるツールですが、今後、注目すべき動きがあります。
2022年4月からHALの診療報酬が包括算定科目ではなく出来高算定科目に変わり、導入した病院も多くの診療報酬を得られるようになりました。また、海外での導入も進み売り上げも大きく伸びており、今後ますます国内外で普及しそうな状況です。
HALは本来脳から動作につながる信号を、動作から脳への信号も発することが唯一可能なサービスです。その効果が認められ、2022年4月から「医療用HAL下肢タイプ」が入院時の診療報酬として出来高評価で加算できることになりました。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)や筋ジストロフィーなど8つの緩徐進行性の神経・筋疾患の難病で入院する患者への治療に用いられた場合に算定されます。
急性期医療を対象とした診療報酬の包括評価制度では、1日当たりの医療費は定額(包括)で計算されていました。投薬や注射、検査などが包括されている対象項目は、別々には算定できないのがその例です。
しかし、2022年4月からの改定では、医療用HALが包括評価から出来高算定項目に変更され、入院でも外来と同じように、出来高評価として診療報酬算定ができるようになったのです。
サイバーダイン社によれば、診療報酬は1回4万円となり、HALを装着して入院中に週2回月9回、各1時間程度の歩行機能改善を行った場合、36万円が出来高分に算入できると説明しています。
診療報酬の増点もありコストの障壁が下げられ、病院がHALを導入しやすくなる条件が整いました。
HALの海外展開も着々と進行中です。サイバーダイン社の「2022年3月期 上期決算説明資料」によれば、同社の海外売上高が2020年上期から2021年上期で43%増加し好調に推移しています。
また、HALは日本だけでなく、アメリカやヨーロッパ・アジアなど世界のあらゆる国で医療機器の承認を得ているのです。
そのようななか、海外の大学病院など最先端の環境でHALの導入が進んでおり、フランスで最大級の大学病院センターであるリヨン市民病院をはじめ、スペインやインドネシアにも導入されています。
その他にはコロナ禍でペンディングになっていますが、マレーシア、フィリピン、オーストラリアなどにも導入が予定されており、今後ますますと導入が進んでいくでしょう。
サイバーダイン社のHALは世界初の装着型サイボーグで、その特徴はなんといっても身に付けることで身体機能を改善・補助・拡張・再生できる点にあります。
その効果は、施設の利用者だけでなく介護者にも大きいメリットがあるのです。特筆すべきは、脳からの生体電位信号を神経を通じて筋肉に伝えることで動きをアシストするだけでなく、動作した際の信号を脳へもフィードバックできるのが世界で唯一の機能です。
2022年4月からは一部製品が日本の診療報酬(入院時の出来高評価)に組み込まれたことに加え、アメリカやヨーロッパを初めてする最先端の医療機関への導入が進んでおり海外展開も順調に進行しています。これらにより、今後国内外でますます導入が進むでしょう。
今回の記事により、世界初の装着型サイボーグ「HAL」の正しい理解につながれば幸いです。
介護ロボットについては介護ロボット徹底解説|種類やメリット、具体的な製品紹介まででも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。