昨今の介護業界の人手不足が深刻化している中、介護ロボットの開発・普及が進んでおり、重要度も高まっています。
人手不足の原因はさまざまですが、その一つに身体的・精神的に厳しいことが挙げられます。特に、移乗介助などは腰に負担がかかり、怪我をされる方も多いです。介護ロボットを導入して、介護職員の身体的・精神的負担の軽減に繋げたいとお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、利用者を移乗する際に使える介護ロボットをご紹介し、その価格や選び方も解説します。この記事では移乗用の介護ロボットのメリット・デメリットや導入事例もご紹介していますので、導入後のイメージもわかるでしょう。ご紹介する中に移乗リフトは含んでいませんが、移乗用の介護ロボットについて知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。
介護業務で最も腰に負担がかかるのが移乗支援です。ここでは、改めて移乗支援の基礎知識を解説しますので、今後の介護に役立ててください。
ボディメカニクスとは、最小限の力で介助をすることで介助者の腰痛負担を軽減する技術のことです。
ボディメカニクスの習得は、介助者の身体的負担を軽減できるとして必須のスキルといえます。
移乗時に役立つボディメカニクスの8原則は以下の通りです。
上記のポイントを押さえておくと小さい力で移乗ができるため、身体的にも楽になります。
介護職に携わっている方は、日々実践されていらっしゃると思いますが移乗介助における基本動作を簡単にご紹介します。
日々の業務の見直しも含めて参考にしてください。
上記のポイントを守ることで介助者が安全に介助をすることができ、被介助者は安心して介助をしてもらうことができます。
ノーリフトケアは、介助者のみの移乗を禁止して、利用者の自立度を考えて福祉用具を活用する考え方です。
オーストラリアでは、介助者の介助負担からくる腰痛によって、離職者が増えて深刻な人手不足に陥った経緯からノーリフトケアの考えが生まれました。
実際にオーストラリアでは、ノーリフト・ノーリフティングが導入されてから、労災申請数、労災申請に伴う費用が減少しています。
つまり、ノーリフトケアによって腰痛を訴える方が減少したのです。
日本でもノーリフトケアの動きが徐々にあり、移乗支援などで利用される介護ロボットの開発・普及もこの動きを汲んでいます。
出典:一般社団法人 日本ノーリフト協会|「ノーリフティング」から「ノーリフティングケア」へ
ここでは、移乗を支援する介護ロボットの種類とメリット・デメリットについて解説します。移乗用介護ロボットのメリット・デメリットを知ることで、自施設に導入すべきかの判断材料になるでしょう。
移乗を支援する介護ロボットは、「装着型」と「非装着型」に大きく分けることができます。それぞれの特徴をご紹介します。
移乗支援介護ロボットの装着型は、介助者がロボットスーツなどを装着して介助を行うことで身体的な負担を軽減させることが可能です。
非装着型の介護ロボットは、 介助者による抱え上げ動作のパワーアシストを行うロボットです。
移乗支援の介護ロボットを導入するメリットは下記の通りです。
移乗支援の介護ロボットを導入することで、職員の腰痛予防と防止・業務負担軽減に繋がります。前述した「ボディメカニクス」をうまく活用しても、腰痛に悩まされる職員は大勢いらっしゃるでしょう。
また、介助する側とされる側の体重差があり、一人で支えきれずに腰を痛めてしまうケースも多いです。その点、移乗支援の介護ロボットを導入することで体が小さい方や力がない方でも移乗できるため、腰痛防止と業務負担軽減に繋がるメリットがあります。
先ほどもお伝えした通り介助する側、される側の体格差、体重差で一人で移乗介助が難しい場合があります。移乗支援の介護ロボットを使用することで、ほとんど力を使わずに利用者をベッドと車椅子間の移乗を楽にすることができます。
女性や高齢の職員が、利用者の体格や体重など関係なく介助作業が行えるのは、大きなメリットといえるでしょう。
移乗支援の介護ロボットを導入するデメリットと注意点についても押さえておきましょう。
装着型の介護ロボットの場合、着脱に手間がかかる点がデメリットです。特に、移乗支援用の介護ロボットは、装着手順も覚えなければいけません。装着方法を間違った場合、かえって腰を痛めてしまう原因にもなることがあります。
また、介護ロボットの着脱に時間や手間がかかるため、使いこなすまでに時間がかかるデメリットがあります。
装着型の移乗支援介護ロボットは、洋服のサイズと同じく身体にフィットしたサイズにする必要があります。洋服と同じようにS・M・Lなどのサイズから選ぶことができますが、一部の介護職員はサイズが合わず使えないこともあります。
そのため、せっかく介護ロボットを導入しても、サイズが合わない可能性があるのはデメリットです。
移乗支援の介護ロボットは、介助者の介助負担の軽減や誰でもできるのが魅力ですが、利用者一人ひとりの移乗に時間がかかってしまいます。
移乗用の介護ロボットを導入しても、移乗までに時間がかかり、結局使わなくなった施設もあります。そのため導入する際は、施設の人員状況や業務フローの確認が必要です。
介護ロボットを導入するハードルの高さに導入コストが挙げられます。介護ロボットの購入、レンタル、維持費などがかかるため導入を諦める介護施設も多いです。 実際に、厚生労働省の 「介護ロボットの開発と普及のための取り組み」の中でも、導入する問題に「導入する予算がない」と挙げています。
そのため、移乗支援用の介護ロボット導入を検討している施設は、「介護ロボット導入支援事業」などの補助金を利用するといいでしょう。
ここでは、移乗を支援する介護ロボットを8選ご紹介します。装着型、非装着型の両方をご紹介するので、自施設の状況に合った介護ロボットを導入する参考にしてください。
Hugは、座位が取れる利用者の座位間の移乗介助や、脱衣所などの立位保持をサポートする非装着型の移乗支援介護ロボットです。
さまざまな理由から足を使う機会が少なくなってしまった利用者の残っている脚力を最大限活かすことが可能です。
今まで二人介助で行なっていた移乗介助も一人でできるようになるため、業務の効率化に繋がります。
Hugについては移乗サポートロボット『Hug』の評判は?機能や価格についても徹底解説!でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
移乗サポートロボット Hugの比較ポイント
製品情報
サイズ | (全長×全幅×全高)950×620×880~1350mm |
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最大使用者体重 | 100㎏ |
デモの有無 | あり |
レンタルの有無 | あり |
価格帯 | 移乗サポートロボット Hug L1-01 ¥880,000(税別) 移乗サポートロボット Hug T1-02 ¥980,000(税別) |
非装着型介護ロボット「移乗です」を導入することで、抱きかかえて移乗をすることはなくなります。職員の腰痛防止になり、1分以内の移乗を簡単にすることが可能です。
また、ベッドからポータブルトイレ、入浴用車椅子、食堂の椅子などさまざまなシーンで使用できるため、汎用性が高いのも特徴です。
介護ロボットをしても置き場所に困ることがない全幅77cmのコンパクト設計なので、多床室でも支障なく使用できます。
介護ロボット「移乗です」の比較ポイント
製品情報
サイズ | 幅760 × 奥行730 × 高さ900(mm) |
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最大使用者体重 | 80kg |
デモの有無 | ー |
レンタルの有無 | ー |
価格帯 | ¥600,000(税別) |
ダーウィンハコベルデは装着型の介護ロボットで、特殊な高反発ゴムと人工筋肉を配置しており、腰を落として屈むと、ゴムの収縮力が発生して自然と上体を起こしてくれるアシスト機能が特徴です。
独自開発した空気圧人工筋肉により、辛い中腰などの姿勢を楽に維持することができます。
また、電力を必要とせず、空気の力を利用するため稼働時間を気にせず使用でき、約800gの軽さなので長時間の使用も可能です。
DARWING Hakobeludeの比較ポイント
製品情報
タイプ・動力 | サポートタイプ |
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本体重量 | 約800g |
連続稼働時間 | ー |
デモの有無 | あり(施術院関係・医療従事者の方・法人に限る) |
レンタルの有無 | ー |
価格 | 85,800円 (税込) |
装着型介護ロボットのフレアリーは、センサーによるモーター駆動により、アシスト力の調整を可能とするアクティブタイプです。
また、フレーム構造のような重たい素材は使わず、ベルト巻き上げ式を採用しているため、大幅な軽量化を実現しています。
軽量なので、モーターの電源を切っておけば、フレアリーを装着したまま別の作業をすることも可能です。さらに、本体を抜くと付属する装具は洗濯できるので、衛生面でも安心です。
J-PAS fleairy(フレアリー)の比較ポイント
製品情報
タイプ・動力 | アクティブ |
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本体重量 | 1.6kg |
連続稼働時間 | 約4時間(当社規定の動作環境下での測定結果による) |
デモの有無 | あり(施術院関係・医療従事者の方・法人に限る) |
レンタルの有無 | あり |
価格 | 本体セット(本体、バッテリー、ベスト、膝パッド、脚部ベルト)¥298,000(税込¥327,800) |
装着型介護ロボットのレイボエクソスケルトンの特徴は、腰の支持だけでなく身体全体のバランスを整えて、前屈作業時の体幹をサポートすることです。
また、介護ロボットのような機器を扱い慣れない方でも、胸パッドと腰ベルトを留めるだけで着脱ができるため誰でも装着することができます。
レイボエクソスケルトンの動力源は装着者の運動エネルギーなので、前に屈んだ際に蓄えた力を再び身体を起こす力に転用できるので、無駄のない動きが可能です。
レイボエクソスケルトンの比較ポイント
製品情報
タイプ・動力 | パッシブタイプ |
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本体重量 | 約2.8㎏ |
連続稼働時間 | ー |
デモの有無 | 各地の体験会や展示会にて |
レンタルの有無 | ー |
価格 | 627,000円 |
非装着型の介護ロボット「サラフレックス」は、人間工学に基づいた自然な動きで、利用者を座位から立位への移乗動作を一人で行える点が魅力の一つです。
また、スリングシート(立位補助ベルト)を装着するので、自身で立てない利用者でも安心・安全に立位からの移乗動作を行うことができます。
足に拘縮があり移乗動作が困難な方でも、ふくらはぎに補助ベルトを付けることで持ち上げることも可能です。
サラフレックスの比較ポイント
製品情報
サイズ |
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最大使用者体重 | 200kg |
デモの有無 | ー |
レンタルの有無 | ー |
価格帯 | 980,000円 |
非装着型の介護ロボットSASUKEの特徴は、操作が非常にシンプルなことです。昇降時は片手でレバー操作を行えるため、利用者から目を離すことなく手を添えて安全確認しながら移乗介助を行うことができます。
ベッドや車椅子間の移乗だけでなく、ストレッチャーへの移乗も対応可能です。移乗の際も点ではなく、シートを使用して面で身体を支えるため、安定性があり利用者も安心して移乗を受けることができます。
価格:税抜998,000円
ROBOHELPER SASUKEの比較ポイント
製品情報
サイズ | ー |
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最大使用者体重 | ー |
デモの有無 | ー |
レンタルの有無 | ー |
価格帯 | 税抜998,000円 |
HALは装着型の移乗支援介護ロボットで、移乗動作でも特に負荷のかかる、入浴介助の移乗時に対応できるよう防水仕様になっているのが特徴です。
また、女性や高齢の職員でも無理なく使用できる軽量コンパクトモデルになっているため、長時間の使用も可能にしています。
介護ロボットなどの機器を扱い慣れていない方でも、たった2つのボタンで補助量を設定できるので、誰でも簡単に使用可能です。
価格:要問い合わせ
HAL(ハル)の比較ポイント
製品情報
タイプ・動力 | アクティブ |
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本体重量 | 3.1kg (バッテリ含む) |
連続稼働時間 | 約180分(動作環境に応じて変動あり) |
デモの有無 | ー |
レンタルの有無 | 施設向け・個人ともレンタル可 |
価格 | 要問合せ |
移乗を支援する介護ロボットの導入は、昨今の介護業界の深刻化する人手不足を解決する、一つの手段として注目されています。移乗介助にかかる負担から、職員は腰痛に悩まされていますが、移乗支援の介護ロボットを導入することで負担軽減も可能です。
また、体格差や体重差に関係なく、女性、高齢の職員、誰でも移乗介助をすることができる点も魅力です。導入コストにかかるハードルも介護ロボット導入支援事業などの補助金を利用すれば、クリアできるでしょう。
今回ご紹介した移乗支援の介護ロボットを参考に導入を検討し、業務効率化・負担軽減を図る判断材料になれば幸いです。