黒字化まで15年 医療福祉業界に飛び込んだ老舗企業 使い捨ておむつ密封システム開発の裏側

投稿日 2021.08.16 / 更新日 2022.08.18
投稿者:森 章也

介護施設や病院、幼稚園や保育園など多様な業種で活躍する株式会社スミロンの使用済みおむつ密封パックシステム「エコムシュウ」。おむつやマスク、ガウンなどを衛生的かつ効率的にパッキングできる画期的な製品です。
異業種ながらエコムシュウの開発、製造、そして普及に奮闘する株式会社スミロン ライフケア事業部 事業部長の春山泰三さんに、エコムシュウの開発秘話や魅力をうかがいました。

使用済みおむつの臭いが無臭に 患者様の生活の質も向上

エコムシュウとはどのような製品ですか?

エコムシュウ

エコムシュウは使用済みのおむつや、感染症対策のために使用したガウン、マスクなどを個別にパッキングするワゴン式の機械です。機械上部から使用済みおむつ等を入れると、下部から完全に密封された状態おむつが出てきます。使用しているのは、フィルム同士が密着する特殊フィルム。強い圧力をかけることなく密着するため、医療系の廃棄物のパッキングに適していると判断しました。

ワゴン式ですので患者様や入所者様の部屋を巡回する際に、その都度使用済みのおむつ処理が可能です。入院・入所されている皆様にとってベッドは寝る場所であると同時に食事の場でもあります。そこに使用済みおむつの臭いが充満すると、生活の質が低下しますよね。エコムシュウは患者様・入所者様の生活を向上させる製品だと自負しています。

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使用済みのおむつの臭いは、どうやっても漏れてしまいそうですが、エコムシュウは本当に臭わないのですか?

臭いませんね。エコムシュウの無料モニター機を貸し出す際、当社の担当者が施設にお持ちして、モニター期間が終了すると引き取りにいきます。するとお持ちしたときに感じていた臭いが、引き取りに行くときは一切感じられなくなっているんです。

これだけでは説得力がないので、ニオイセンサーによる実験も実施済みです。 エコムシュウで処理した使用済みおむつ(臭い指数307)を密閉容器の中に入れ、臭い指数を測ったところ、170という数値でした。200以下では、人が臭いを感じません。

さらに医療機関、介護施設の皆様に支持されているのが、ウイルスも密封できる点です。第三者機関にウイルスが漏れ出ていないかどうかの検査を依頼したところ、ノロウイルスやヒトコロナウイルス、大腸菌、黄色ブドウ球菌、C.ディフィシル等のウイルスや細菌は検知できませんでした。

新型コロナウイルス感染症の拡大により、エコムシュウの引き合いは増えています。おむつを処理する機械は多くの業者から販売されていますが、おむつ1つずつをフィルムで密封できるのは当社製品だけです。

エコムシュウに使われるフィルムを手にする春山さん
エコムシュウに使われるフィルムを手にする春山さん

鶴の一声で動き出した医療介護業界への挑戦

スミロン様の事業内容を教えてください。

当社は1972年創業の粘着加工製品を製造する会社です。自動車を出荷する際に車体を保護するフィルムや、プリント基板などの表面のほこりを除去するテープ、液晶パネルの保護フィルムなどを取り扱っています。医療、介護業界とはまったく異なる業界ですね。現在でも当社の売上のうち9割が粘着加工製品によるものです。

スミロンといえばテープや保護フィルムというイメージが強く、医療・介護系の製品を取り扱っていることをご存知の方はまだまだ少ないかもしれません。


なぜエコムシュウを開発したのですか?

先代代表(春山喜一)が知り合いの医師に、「フィルムを取り扱っているなら医療廃棄物を包む製品を作ったらどうか」と提案されたんです。それがきっかけでプロジェクトは動き出しました。

社長のひとこえで、開発メンバーが使用済みおむつをパッキングできるテープを作成。ただそれだけでは実用性はほとんどありません。一枚ずつ手作業で包むようでは、手間がかかりすぎて、衛生的ともいえません。そこでパッキングする機械も作ろうということになりました。


開発から販売まですべてが手探り

粘着加工製品から使用済み製品のパッキング機器の製造となると、かなりの異業種のように思えますが、開発はスムーズに進みましたか?

当社は機械の製造メーカーではないので、ノウハウはゼロ。粘着加工製品を設計・開発する技師はいますが、おむつを包む機械となるとほぼ門外漢です。初号機は、彼らが試行錯誤しながら図面を引き、電子部品は他の業者に依頼して開発を進めました。ところが、完成した初号機は使い物にならない。そこから何度も改良を繰り返して、今は5代目のエコムシュウです。

開発だけでなく製造段階でも、製造メーカーの選定という大きなハードルがありました。 当社のテープやフィルムの製造ラインでエコムシュウを作ることはできませんので、製造は外注しなければならない。ところが、どんなメーカーがエコムシュウのような機械の製造を得意としているのかもわかりません。今までに3、4社ほど製造先も変更しています。


量産品の販売ルートはどのように整備したのでしょうか?

そこは本当に苦労しましたね。当社がこれまで戦ってきた領域と、医療介護業界はまったくの異業種であり、売り方もわからない状態でしたから。

飛び込み営業やダイレクトメールなど人海戦術で販売ルートを広げようとしましたが、すぐにうまくいくものではありません。そもそも業界が違えば、営業マンに求められるお作法も違います。そういった常識を知らずに飛び込んだわけですから、最初は相手にされないことも少なくありませんでした。

初代の製品は2、3台しか売れませんでした。今思えばよく売れたなと思います。当時の営業マンがよほど頑張ってくれたのでしょう。

介護関連の展示会への出展も行っていました。ただ同種の製品が存在しなかったため。受け入れたもらうのは並大抵のことではありませんでした。誰しも新しいものには抵抗があります。

経営者側からすれば「これまでお金がかからなかったおむつの処理のために、コストをかけるなんて無駄だ」という意識もあったようです。実際には使用済みおむつを衛生的に処理するための人件費や、保管場所は必要なので、コストはゼロではないのですが。いまでこそ多くのお客様からエコムシュウのご注文をいただいていますが、当時の知名度は低かったと思います。

エコムシュウの使い方

①おむつを投入。自動でパックされます。

エコムシュウの使い方

②パックされたおむつを取り出します。

販売3000台間近、施設のアピール材料にも

2021年7月現在の販売実績は?

2800台まで伸び、もう少しで3000台に手が届く段階です。日本のみならず台湾や韓国、中東やヨーロッパの病院や介護施設などにも販売されています。開発からカウントすると足かけ15年。ようやくここまでこれたなと感慨深いですね。

購入いただいたお客様のほとんどからリピートのご注文をいただいています。新型コロナウイルス感染症の治療にあたる病院からは、マスクやガウンなどをまとめてパッキングできるとあって、多くのお問い合わせをいただいている状態です。

「医療介護とは異なるメーカーが製造していて、アフターフォローが心配」というお声をいただくこともありますが、ご安心いただける体制を構築済みです。国内のユーザー様へのアフターサービスはNECフィールディング株式会社に依頼しています。離島までサービスネットワークが網羅されており、トラブルが発生した際はすぐ駆けつけますよ。


お客様からどのような声が届いていますか?

展示会では現場の皆様から、「使いたい」との声を多くいただいています。経営者様よりも現場の皆様が、どれだけメリットがある製品なのかを理解してくれる傾向ですね。現場で働いている皆様にとって、使用済みおむつの臭いは大きなストレスですから。 エコムシュウを使っていただいている介護施設の中には、エコムシュウを導入したとSNSで告知してくださるところもあります。臭いの強い使用済みおむつのストレスを避けられることで、エコムシュウの存在が採用面で求職者にとってもアピールになっているようですね。

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終わらない開発と改良、お客様の快適な暮らしのために

現在も新しい機種を開発しているのですか?

現段階で計画しているのは現行機種のマイナーチェンジと、家庭でも使える小型タイプの製品化です。自宅で介護をしているご家庭では、臭いは切実な問題です。狭い空間で臭いが充満してしまいますから。

エコムシュウはお客様の声に合わせて、進化し続けています。現在はバッテリー方式ですが、過去の機種はケーブル式でした。ケーブル式ではワゴンを押して病棟を回るような使い方は難しいですよね。そこでバッテリー方式を採用し、動かしやすくしたのです。使い勝手がよいようにラックをつけたりゴミ箱を取り付けたりといったオプションも用意してあります。ラックとゴミ箱を装着すれば、エコムシュウ一台でおむつ交換業務を完結でき、業務を大幅に効率化できるのです。


エコムシュウは事業として軌道に乗るまでに時間がかかってたと聞いています。それでも諦めなかった理由は?

エコムシュウが事業として軌道に乗り始めたのはつい最近のことです。それまではずっと赤字の状態。ですが、エコムシュウは当社のオンリーワン製品。当社にしかできないことをやりたいとの理念でここまで頑張れました。不採算部門だからと肩身の狭い思いをした担当者もいると思いますが、「お客様に、快適な職場、患者様に快適な暮らしを提供するために」という理念のもとにここまできたのです。継続すれば、いつか業界に受け入れてもらえると信じていました。

そして今、ようやく日の目をみて、多くのユーザーに愛用していただいています。これからもお客様と二人三脚で、よりよい製品をお届けできるように尽力していく所存です。

エコムシュウが軌道に乗るまでの苦労を語る春山さん
エコムシュウが軌道に乗るまでの苦労を語る春山さん

<株式会社スミロンプロフィール>

1972年9月創業。主力事業は粘着加工シートやフィルムの製造・販売。「薄膜多層コーティング技術」をベースに、金属・建材、自動車、エレクトロニクス向けなどに事業を展開している。その技術はエコムシュウにも活かされている。

企業名:株式会社スミロン
代表:春山 英二
本社住所:〒543-0021 大阪府大阪市天王寺区東高津町11-9
URL:https://www.sumiron.com


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株式会社こゆ記|代表取締役

大学時代は中世日本史を専攻し、史料の解析・分析を学ぶ。
商社と損害保険会社で働いた後、2012年にライターとして独立。現在は書籍や雑誌、webサイトに掲載する記事などを執筆している。


都内大学病院

小児科専門医、医学博士。専門は、アレルギー、免疫。大学病院および地域の基幹病院で小児科医として10数年勤務、ゲノム研究、論文執筆を行う。オンライン診療、患者サポートプログラムなどの監修。正しい医療情報を発信するためにライターとしても精力的に活動中。

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