就労継続支援B型や相談支援事業所を運営していくなかで、避けて通れないのが行政による「実地指導(運営指導)」や「監査」です。近年の報酬改定を経て、制度はより複雑になり、ルールのチェックもこれまで以上に厳格化しています。「今の準備で、細かなルールにしっかり対応できているかな」と、不安を感じている経営者の方やサビ管さんは少なくありません。
対策の基本は、日々の支援の様子を正しく書類に残し、その理由をしっかり説明できるようにしておくことです。しかし、人手不足や忙しさのなかで、最新のルールをすべて把握し、一つひとつの記録を丁寧に維持し続けるのは、決して簡単なことではありません。
本記事では、実地指導(運営指導)で必ず確認される基本ポイントを整理しました。あわせて、行政向けのシステム開発にも携わり、現在は福祉AI「AURA(オーラ)就労支援」を展開している前川氏にインタビュー。監査の場で指摘されやすい「記録のコピペ」問題など、現場の負担を減らしながら運営の質を高めるヒントを伺いました。
>>>福祉AI「AURA就労支援」を展開している前川氏へのインタビューはこちら
実地指導(運営指導)対策において、最も重要なのは「ルール通りにサービスを提供し、それを過不足なく記録に残しているか」という点です。まずは、必ずと言っていいほど確認される基本のポイントを押さえておきましょう。
B型事業所や相談支援事業所の監査において、行政が最も重視するのが「アセスメント」「個別支援計画」「モニタリング」が一本の線で繋がっているかどうかです。
| アセスメント | 利用者様が今どのような状態で、何に困っているのかを正確に把握しているか。 |
|---|---|
| 個別支援計画 | アセスメントに基づき、どのような目標を立てて支援を行うか。 |
| モニタリング | 計画通りに進んでいるか、目標は達成できそうかを定期的に振り返っているか。 |
この3つのどれか一つでも欠けていたり、内容がバラバラだったりすると、「適切な支援が行われていない」と判断される原因になります。
出典:厚生労働省|指定障害福祉サービス事業者等の指導監査について
近年の制度改正では、これまで以上に記録の細かさが求められるようになりました。例えば、食事提供体制加算における「喫食率(実際にどれくらい食べたか)」の記録が必須となるなど、より具体的な根拠(エビデンス)が必要になっています。こうした変化を見落とすことが、意図せぬ「不適切な請求」として指摘されるリスクを生んでいます。
出典:厚生労働省|令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容
支援の記録に加えて、事業所運営の土台となる「管理書類」を整えておくことも極めて重要です。大切なのは次の2点です。
まず注意したいのが、勤務体制一覧表と出勤簿の整合性です。届け出ている人員基準が、日々のシフトの中で実態として守られているかは厳格に確認されます。急な欠勤などで人員配置が変わった際、記録の修正が漏れてしまうと、基準違反を指摘されることになりかねません。
また、訓練等給付費の請求根拠についても細心の注意が必要です。請求している金額が、日々のサービス提供記録と一分一秒の狂いもなく一致しているかが問われます。こうした事務的な書類の不備は、たとえ意図的でないミスであっても「過誤請求」とみなされるリスクがあるため、日頃からの正確な管理が欠かせません。
実際の実地指導では、書類が「あるかないか」だけでなく、その「中身の整合性」が厳しく問われます。日々の多忙な業務の中では、意図せずとも記録の漏れや矛盾が生じてしまうものです。
まずは、ご自身の事業所の現状を振り返るために、以下の「10のチェックポイント」を確認してみてください。もし一つでもチェックがつかない項目があれば、それは次の実地指導で指摘を受けるリスクが潜んでいるサインかもしれません。
【重要書類の連動性】
[ ]アセスメントの内容が、個別支援計画の目標に正しく反映されているか
[ ]モニタリングの結果を受けて、必要に応じ計画の修正が行われているか
[ ]計画書に利用者・家族の署名(または押印)と日付が漏れなくあるか
【日々の記録の具体性】
[ ]支援記録が「前回と同じ」「昨日と同じ」の使い回しになっていないか
[ ]記録の記載時間が、サービス提供時間と矛盾していないか
[ ]欠席時対応加算など、加算取得の根拠となる記録が別個に整理されているか
【管理体制と整合性】
[ ]勤務体制一覧表と、実際の出勤簿(タイムカード)が一致しているか
[ ]食事提供体制加算において、欠食届と実際の提供数が合っているか
[ ](最新ルール)喫食率(食べた量)の記録が毎日行われているか
【運営の根拠】
[ ]支援記録を読めば、その日どのような「具体的な支援」をしたか第三者が理解できるか
ここまでは、実地指導で必ず確認される基本的なポイントを見てきました。しかし、頭ではわかっていても、多忙な現場でこれらを完璧に維持するのは容易ではありません。
そこで、行政向けの支援システム開発にも携わり、現在は障がい福祉ソフト「AURA(オーラ)就労支援」を展開している前川氏に、現場が直面する課題と現実的な解決策についてお話を伺いました。
前川氏: そうですね。行政の調査現場を見ていく中で、指導が入りやすい事業所には共通する「ある入り口」があることが分かりました。それは、日々の記録が「コピー&ペースト(コピペ)」で埋め尽くされていることです。
障がい福祉は制度に基づく仕事ですから、書類作成は絶対に避けられません。でも、現場は本当に忙しいですよね。「とりあえず今日も昨日と同じ内容でいいか」と、つい効率を優先したくなる気持ちも本当によく分かります。
ただ、いざ実地指導が来たときに、そこを真っ先に指摘されてしまうんです。「利用者さんは一人ひとり個性が違うはずなのに、どうして全員の記録が同じ文面なんですか?」と。ここで納得のいく理由を答えられないと、事態は一気に深刻な方向へ進んでしまいます。
前川氏: 「記録が使い回されている」ということは、行政側から見れば「実際にはまともな支援をしていないのでは?」という疑いに直結します。
最初は「忙しくて、つい昨日と同じ内容を写しただけ」という、ほんの些細な油断だったかもしれません。しかし、それが「支援の実態がないのに請求をした(不正請求)」とみなされてしまう。これが、今もっとも気をつけなければならない現場の落とし穴なんです。
最悪の場合、給付金の返還請求や、事業所の存続に関わるトラブルに発展することもあります。「忙しかったから」では済まされないリスクの入り口は、実はこうした「日々のコピペ」に潜んでいるのです。
前川氏: 事業所を訪問するなかで、経営者とサビ管(サービス管理責任者)がそれぞれ異なる「モヤモヤ」を抱えていることに気づきました。経営者は「最新のルールに現場が対応できているか」を心配し、サビ管さんは「もしミスがあったら、監査の責任を一人で背負わされる」という恐怖を感じている。この「正解がわからない」というストレスが、現場を疲弊させてしまうんです。
前川氏: 行政のチェックポイントをシンプルに捉え直すことです。監査官が見ているのは、結局のところ「必要な書類が揃っているか」と、その内容に対して「なぜこの支援が必要なのかを根拠を持って説明できるか」という2点に尽きます。
ここさえ押さえておけば、必要以上に怖がることはありません。大切なのはスタッフ個人の頑張りに頼り切るのではなく、チェック基準を最初から「仕組み」として取り入れること。そうすることで、サビ管さんの重圧を軽くし、経営者も安心して現場を任せられるようになります。
前川氏: その通りです。だからこそ、個人の意識に頼るのではなく、「ルールが自然に守られる仕組み」を事業所内に作ることが重要です。
私たちは行政側のシステム開発にも携わってきた経験から、監査で「どこを、どのような視点で見ているか」という基準を熟知しています。その知見を現場向けのソフト「AURA就労支援」に反映させました。
前川氏: 特別な意識をしなくても、使うだけで自然と法規制や行政のチェック基準を守れるようになります。システムが法規制の盾となって事業所を守ってくれる。そんな「守りに強い仕組み」があれば、サビ管さんが一人で抱え込む不安も解消されます。
前川氏: そこで活用したいのがAIです。ただし、大切なのは「AIにすべてを任せないこと」です。私たちが提案しているのは、AIが国の基準に沿って8割の下書きを作り、残りの「最後の2割」をサビ管さんが仕上げる形です。
この2割に、サビ管さんならではの視点や、利用者様への想いを込める。このひと手間があることで、コピペではない、支援の実態が伝わる確かな記録になります。
前川氏: はい。事務作業の時間を削ることは、単なる時短ではありません。浮いた時間を「利用者様と向き合う本来の支援時間」に充てること。それが結果として、最も確実な実地指導対策であり、質の高い支援に繋がっていくのだと信じています。

AURA就労支援は、就労移行支援や就労継続支援(A型・B型)事業所に特化したAIアシスタント型クラウドサービスです。日々の記録や書類作成から国保連請求まで、現場に必要な機能を網羅しています。
最大の特長は、AIによる書類の自動下書き作成機能です。面談内容の録音・分析を通じて、個別支援計画書やモニタリング報告書、面談記録などの草案をAIが作成。これにより、職員の書類作成時間を最大95%削減し、本来の支援業務に集中できる環境づくりをサポートします。
| サービス名 | 福祉AI AURA就労支援 |
|---|---|
| 提供会社 | 株式会社Jin |
| 対応サービス種別 |
|
| 利用料金 | 初期費用0円~(限定キャンペーン中) ※通常:初期費用30万円 |
AURA就労支援の開発秘話は、AIが就労継続支援A・B型の書類業務を95%削減!AURA就労支援とは?で紹介しています。こちらも参考にしてください。
実際に「AURA就労支援」を導入した就労支援事業所「てとて」様の事例は、こちらの記事で紹介しています。こちらも参考にしてください。
実地指導や監査を「怖いもの」と感じてしまう最大の理由は、自分たちの記録に「漏れや不自然さがないか」という確信が持てないことにあります。不安を解消するために、まずは以下の3点を改めて確認してみてください。
これらのポイントを一つひとつ押さえていけば、実地指導は決して恐れるものではありません。スタッフの善意や頑張りに頼り切るのではなく、無理なく正解を出し続けられる「環境」を整えること。正しい記録を積み重ねることは、事業所を守るだけでなく、そこで働くスタッフと利用者様の安心を支える一番の土台となります。
その他の障がい福祉ソフトについては、【2026】障害福祉ソフトを徹底比較|価格やサービス種別ごとのおすすめで詳しく解説しています。こちらも参考にしてください。