在宅医療における「24時間365日の待機体制」を維持することは、医師やスタッフにとって大きな負担となります。この課題を解決し、持続可能な診療体制を築くために、夜間・休日の対応を外部へ委託する「往診代行(オンコール代行)」の活用が広がっています。
導入によって医師の休息を確保できるだけでなく、急な欠員時のバックアップとしても機能します。ただし、近年の診療報酬改定では、外部委託に関するルールが厳格化されています。これは、単にサービスを利用すれば評価されるのではなく、主治医と代行医がいかに実態のある連携をとっているかが厳しく問われるようになったことを意味しています。
ルールが複雑化する今、適切な情報共有体制を持ち、制度に準拠した運用ができるパートナーを選ぶことは、クリニックの経営基盤と信頼を守るために不可欠です。
本記事では、往診代行の仕組みから主要5サービスの比較、2026年度改定を踏まえた選び方のポイントまでを解説します。自院に最適な診療体制を検討する際の参考にしてください。
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往診代行(オンコール代行)とは、在宅診療所が担う「24時間365日の対応体制」のうち、夜間・休日の「電話受付(オンコール)」および「緊急往診」を外部の専門機関に委託する仕組みです。
同様の言葉として、介護施設のスタッフからの電話相談に応じる「施設向けオンコール代行」もありますが、本記事では主に、診療所の負担軽減や体制維持を目的とした「クリニック(在宅)向け」の仕組みについて解説します。
往診代行(オンコール代行)を取り入れることで、診療所の運営において主に以下の3つの利点が得られます。
夜間にしっかり睡眠をとることで、翌日の外来や訪問診療での集中力をキープできます。無理のないスケジュール管理が、結果として主治医自身の健康維持や医療ミスの防止にもつながります。
主治医が急な体調不良や冠婚葬祭で動けないときでも、バックアップがあれば患者さんへの対応を止める必要がありません。地域医療に穴をあけず、組織としていつでも守れる体制を継続できます。
将来的に常勤医や非常勤医を増員する際、「24時間ずっと拘束される」という条件は大きな壁になります。バックアップ体制があることを求人票に明記できることは、医師を採用する際の大きな強みになります。
自院の診療方針やカルテ環境に合ったパートナーを選ぶために、代表的な5つのサービスを紹介します。

株式会社On Callは、一都三県(東京・神奈川・千葉・埼玉)および大阪エリアにおいて、在宅医療の夜間・休日対応をバックアップする専門機関です。
最大の特徴は、
これまでに多くの在宅療養支援診療所をサポートしてきた実績があり、「土日のみ」や「夜間のみ」といった時間帯の調整など、クリニックの状況に合わせた柔軟な相談が可能です。
また、往診の品質維持のため、医師の採用は所属医師からの紹介に限定したリファラル採用を徹底しています。これにより、信頼性の高い医師を確保するだけでなく、医師間での技術やノウハウの共有を促進する仕組みを構築しており、地域医療の質と持続可能な診療所運営を支えるパートナーとしての役割を担っています。
製品情報
| 対応地域 | 一都三県(東京・神奈川・千葉・埼玉)および大阪エリア |
|---|---|
| 特長 | 独自システムによる電子カルテ連携と労務管理の効率化 |

ファストドクター株式会社は、提携医療機関数702件、登録医師数3,800名以上、累計バックアップ患者数10万人以上(2025年8月時点)の実績を持つ、国内最大級のサービスです。
看護師によるファーストコールから医師の緊急往診までワンストップで対応し、往診の平均到着時間は64分という機動力を備えています。80種類以上の処方薬や各種検査・処置に対応し、月間215件のお看取り支援実績を有しています。
運用面では、独自システム「クリニックポータル」により提携先の電子カルテとボタン一つで情報連携が可能です。往診医師の到着予定時刻や診療内容、翌朝の申し送り事項をリアルタイムで可視化できる仕組みを整えています。また、診療報酬改定の要件に準拠したシステム改修や運用フローの整備を随時進めており、医療機関が適切に外部委託を継続できる環境を提供しています。
大規模組織ならではの安定した稼働体制と独自の診察評価制度により、医療の質を維持しながら、主治医やスタッフの負担軽減を支援しています。
製品情報
| 対応地域 | (緊急往診エリア)北海道・東京・神奈川・埼玉・千葉・愛知・大阪・兵庫・奈良・京都 |
|---|---|
| 特長 | 全国最大規模のネットワークと強固な往診機動力 |

株式会社当直連携基盤は、2019年より在宅医療に特化した往診代行を展開しています。現在はエムスリーグループに属し、支援医療機関数350施設超、累計診察数12万件以上、看取り数1万件以上(2025年時点)の実績を有しています。
医師の往診に「メディカルバディ」が同行する診療スタイルを導入しています。バディが現場の設営、処置補助、家族へのフォローを担うことで、医師が診察に専念できる環境を整えています。診療後は、医学的情報に加えて現場の状況を記録した「バディレポート」を提出。外部委託による診療の分断を防ぎ、翌朝のスムーズな引き継ぎを支援する仕組みを構築しています。
医師の採用においては、救急や在宅の現場経験を重視し、独自の教育プログラムを実施しています。創業以来「医療訴訟ゼロ」の実績を維持しており、医療品質と安全性の両立に努めています。現在は首都圏・中京圏・関西圏・福岡と広域に展開し、地域医療の継続性を支えるパートナーとしての役割を担っています。
製品情報
| 対応地域 | (緊急往診エリア)首都圏・中京圏・関西圏・福岡 |
|---|---|
| 特長 | 在宅医療専門の教育を受けた「バディ」の同行による現場マネジメント |

メディカルインフォマティクス株式会社が運営する「Okitell365」は、2013年より在宅医療に特化したコールセンターとして運営を続けています。10年以上にわたり培ったノウハウを活かし、現在は毎日約13,000人の在宅患者の対応にあたっています。
対応にあたるスタッフは、在宅医療に精通した教育・研修プログラムを体系的に受けています。この専門的な教育体制により、現場感覚を持ったトリアージが可能となり、医師の負担軽減と適切な往診判断を支援します。受電時には各クリニックの個別ルールに基づき、必要に応じたアドバイスや精神的なフォローを行うことで、患者や家族の安心感を維持する体制を整えています。
長年の経験に基づく独自の運用体制により、診療品質を保ちながら持続可能な診療体制の構築をサポートしています。全国の在宅療養支援診療所に対し、地域医療の質を損なうことなく、医師やスタッフが本来の業務に専念できる環境を提供しています。
製品情報
| 対応地域 | 全国 ※電話受付のみ |
|---|---|
| 特長 | 10年以上の実績を持つ在宅医療特化型オンコール代行 |

株式会社プロアスが提供するcocomedica(ココメディカ)では、オンコール代行「cocomedica Call365」や往診代行「cocomedica Doctor」を展開しています。また、レセプト代行を行う「cocomedica Outsourcing」も提供し、在宅医療の運用を多角的に支援しています。
「cocomedica Call365」は、看護師等の有資格者を含む専門オペレーターが夜間・休日の一次受付を担当します。クリニックの方針に合わせた柔軟な運用設計が可能で、ガイドラインに基づき緊急性の高いコールのみを待機医へ繋ぐことで、医療従事者の精神的負担を軽減します。
「cocomedica Doctor」は、2005年から活動する現役の在宅専門医師が当直医の教育と監督を担当する往診代行サービスです。当直医は提携医療機関の非常勤医師として訪問し、深夜・祝日も一律の報酬体系で往診や看取りに対応。検査処置道具や内服薬を持参し、1時間以内の到着を目指します。運用面では、既存カルテからの情報移行や更新内容の同期オプションも用意されています。
製品情報
| 対応地域 | ■オンコール代行 全国対応 ■往診代行 東京・神奈川・埼玉・大阪府・京都府・兵庫県・奈良県 |
|---|---|
| 特長 | 10年以上の実績を持つ在宅医療特化型オンコール代行 |
往診代行の導入費用は、月々の管理患者数、委託する対応日数や時間帯、そして実際の往診発生の有無といった複数の要因によって決まります。自院の現在の診療ボリュームや、どの程度のバックアップを必要とするかによって最適なプランを選択することが大切です。主な変動要因は、以下の3点に集約されます。
月額の基本料金を大きく左右するのは、委託する時間帯の長さです。土日祝日のみのバックアップに限定すれば費用を抑えることができますが、平日夜間を含めた365日の対応を委託する場合は、その分基本料金も高くなります。どの程度の頻度で主治医の負担を軽減したいかによって、最適なプランを選択することになります。
基本料金とは別に、電話対応(オンコール)の件数に応じた費用が発生します。これは1回につき2,000円〜3,000円程度の従量課金制をとることが一般的です。管理している患者数が多いほど電話が鳴る頻度は高くなるため、月々の総額を予測する上では、自院の月間平均コール数をあらかじめ把握しておくことが重要です。
電話での指示にとどまらず、医師が現場へ駆けつける緊急往診が必要になった場合には、別途出動費用がかかります。1回あたり20,000円〜30,000円程度の費用が発生しますが、医師が出動する時間帯(深夜や早朝など)によっても金額が変動する場合があるため注意が必要です。夜間休日往診料などの診療報酬は原則として自院で算定するため、その収益を委託費用の支払いに充てる形での運用が一般的です。
自院の課題に最適なパートナーを絞り込むためのポイントを解説します。体制やコスト、連携の質など、持続可能な診療体制を築くために不可欠な6つの視点を確認してください。
まず、解消したい負担を明確にします。電話対応のみが負担であれば、専門スタッフが一次受付とトリアージを行うサービスが適しています。一方、夜間の往診出動まで外注したい場合は、医師の派遣体制が盤石なサービスを選びます。自院の現在の体制に合わせて、どこまでを代行会社に委ねるかを検討することが重要です。
自院の顔として患者様やご家族に接するスタッフのクオリティは極めて重要です。電話対応を行うオペレーターには、在宅医療の知識だけでなく、不安に寄り添う高い接遇スキルが求められます。また、往診医についても、臨床経験や専門性の基準に加え、在宅特有の作法や看取りに関する教育、経験豊富な医師による監督体制が機能しているかを見極める必要があります。
医師の派遣を伴うサービスでは、対応エリアの確認が最優先です。都心部特化型や広域展開型などサービスごとに特徴が分かれるため、自院の診療圏がカバーされているか、緊急時に迅速に急行できる体制があるかを事前に把握しておく必要があります。
外部医師による診察で懸念されるのが「診療の分断」です。主治医が翌朝スムーズに診療を引き継ぐためには、詳細な診察内容がリアルタイムに共有される仕組みが欠かせません。専用ポータルでの可視化や詳細なレポートなど、自院の電子カルテ運用と親和性の高い連携手法を確認します。
在宅医療の制度は頻繁にアップデートされるため、最新の診療報酬改定に準拠しているかは極めて重要です。適切な算定要件を満たした記録体制や、制度変更に合わせて運用フローを柔軟に見直せる体制をチェックしてください。確実な制度対応は、クリニックのコンプライアンス維持に直結します。
料金構造は、契約患者数に応じた定額制や往診ごとの従量課金など、会社によって様々です。深夜・休日などの時間帯による割増、お看取り対応時の追加費用、処置内容による変動など、どのような条件下でコストが膨らむのかを事前に精査しておく必要があります。支出の予測を立てやすい体系かを見極めることが経営の安定につながります。
往診代行サービスは、クリニックの体制や希望に合わせて複数のパターンで活用されています。ただし、業者によって対応範囲が異なる点には注意が必要です。自院が解消したい負担に合わせ、どこまで依頼できるか事前に確認することが重要です。
夜間の電話対応から緊急往診まで、すべてを委託する形です。主治医やスタッフが電話を持つ必要がなくなるため、負担を最大限に軽減したい場合に適しています。
受電はクリニック側で行い、診察が必要と判断した際に出動を依頼する形です。患者の状態を把握している自院スタッフが初期対応を行うため、安心感を維持しつつ、夜間の外出負担のみを解消できます。
一次受付をコールセンターに委託し、緊急性の高い連絡のみを主治医に繋いでもらう形です。事務的な問い合わせなどをオペレーターが整理するため、待機中の睡眠の質を確保しやすくなります。
電話受付から往診まで一括して依頼する場合、夜間や休日の緊急要請に対してどのようなフローで対応が行われるのか、一般的な流れを解説します。
診療時間外にクリニックの電話を代行サービスのコールセンターへ転送します。患者や家族からの連絡は、まず専門スタッフが受電します。
オペレーターが症状をヒアリングし、緊急性を判断します。アドバイスで様子見が可能な場合はその旨を伝え、往診が必要な場合は速やかに医師へ出動要請を出します。
往診医が患者の自宅へ駆けつけ、診察や必要な処置を行います。入院が必要な場合には、救急搬送の調整までを現場で行う体制が一般的です。
診察終了後、往診医が診療内容をレポート化します。専用ポータル等を通じて、医師の所見や処置内容がクリニック側へ即座に共有されます。
翌朝、主治医は報告内容を確認し、自院の電子カルテへ情報を集約します。夜間の経過を踏まえ、スムーズな継続診療が可能です。
在宅医療のニーズが拡大する中、外部サービスを利用する際のルールは年々厳格化されています。2024年度の改定からその傾向が強まっており、2026年度(令和8年度)には、自院と代行会社がいかに実効性のある連携をとっているかが評価の分かれ目となります。
出典:厚生労働省|令和8年度診療報酬改定について【全体概要版】
厚生労働省|個別改定項目について
2024年度の改定により、夜間・休日の対応を外部に委託する場合の報酬体系が適正化されました。自院の医師が直接対応する場合と、代行業者が対応する場合では算定できる「往診料」に差が設けられています。
代行業者に依存しすぎると、地域で高い機能を持つ診療所としての評価(施設基準)を維持できなくなり、結果としてクリニック全体の収益が下がる仕組みが導入されています。
2026年度の改定では、外部委託を利用する際の「質の担保」がさらに厳しく問われます。
| ポイント | 内容とクリニックへの影響 |
|---|---|
| 自院による対応実績 | 外部に頼り切るのではなく、月に数回は自院の医師が24時間往診できる体制を確保しているかどうかが、高い報酬を得るための条件になります。 |
| 医師同士の事前連携 | 代行医が診察する際、事前に主治医と面談したりカルテを閲覧して方針を共有したりしていることが、算定の前提条件として追加される見込みです。 |
| ICT活用の義務化 | 診察結果を紙の報告書でやり取りするだけでなく、クラウドシステム等を用いてリアルタイムに情報を共有できる体制が強く求められます。 |
今後は、単に「夜間の電話や往診を代わってくれる」という利便性だけで選ぶのではなく、2026年度の基準を見据えた連携体制を構築できるパートナー選びが重要です。また、夜間・休日は外部の医師が対応することについて、患者様やご家族へ事前に説明し、同意を得るプロセスもこれまで以上に厳密に行う必要があります。
導入を検討する際、「どんな先生が来るの?」「どこまで任せられるの?」といった不安を感じる先生は多いものです。現場の運用や医療の質について、よくある疑問を整理しました。
各代行サービスでは独自の採用基準を設けており、多くの場合、救急科や総合診療科などで研鑽を積んだ医師が在籍しています。また、在宅医療特有の接遇や看取りの作法についても、事前の研修やマニュアル共有を徹底しているケースが一般的です。
サービス内容によりますが、基本的には医療的なトリアージを優先する体制をとっています。ただし、翌営業日にクリニックへ申し送りを行うフローが確立されているため、緊急性のない事務的な内容は、翌朝に自院スタッフが対応する形で整理できます。
バルーンカテーテルの交換、経管栄養のトラブル対応、在宅酸素(HOT)の調整など、在宅で頻用される処置には広く対応しています。特殊な医療機器を使用している患者様がいる場合は、事前に対応可否を代行会社とすり合わせておくと安心です。
往診医が現場で搬送の必要性を判断し、救急要請から受け入れ先病院への連絡調整までを代行します。その際、搬送先での診療に支障が出ないよう、現場で診療情報提供書(紹介状)の作成まで完結させるサービスが主流です。
事前に契約を交わしていれば、夜間のお看取り(死亡診断)も代行可能です。ご家族への説明や、その後のグリーフケア、死亡診断書の発行まで一連の対応を任せることができます。ただし、2026年度の診療報酬改定を見据え、事後の主治医によるフォロー体制についても検討しておく必要があります。
往診代行(オンコール代行)の活用は、医師の疲弊を防ぎ、持続可能な地域医療体制を築くための現実的な選択肢です。夜間や休日の対応を外部と分担することで、主治医は日中の診察に集中できるようになり、結果として患者様への医療の質を保つことにもつながります。
一方で、2026年度の診療報酬改定に向けた動きを見てもわかる通り、国が求める基準は「単なる外注」から「中身の伴った連携」へと厳しくなっています。
これらのポイントをふまえ、自院の診療方針に合ったパートナーを選ぶことが、クリニックの安定した運営と地域住民の安心感に直結します。まずは自院のエリアやカルテ環境に対応したサービスへ相談し、無理のないバックアップ体制を検討してみてはいかがでしょうか。