企業のネットワークを不正アクセスやウイルス攻撃などの攻撃から守るためには、自社のニーズにあうセキュリティ対策を行うことが重要です。しかし、セキュリティ製品の導入を検討する中で、UTMと次世代ファイアウォールのどちらを導入するべきなのか、お悩みの方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、UTMと次世代ファイアウォールについて、概要や違い、それぞれに適した企業まで、詳しく解説していきます。この記事を読むことで、UTMや次世代ファイアウォールについての情報を得て、自社のニーズにあうセキュリティ対策ができるでしょう。
目次
ここではUTMと次世代ファイアウォールの概要について、それぞれ解説していきます。
UTMはウイルス攻撃やハッキングなどの脅威から、ネットワークを包括的に守るセキュリティ製品です。ネットワークは、不正アクセスなどの外部からの攻撃や、有害サイトへのアクセスで起きる内部からの攻撃など、さまざまな脅威にさらされています。これらの脅威に対して、従来であれば以下のようにそれぞれ個別に対応する必要がありました。
しかし、複数のセキュリティ製品を導入すると、システム管理者の業務負担が大きくなりますし、コストの増大も避けられません。そこで、セキュリティ対策機能を1つにまとめ、一括管理できるようにしたのがUTMです。
UTMの特徴としては、ファイアウォールやアンチスパム、Webフィルタリングなど、さまざまなセキュリティ対策が、1つに集約されていることが挙げられます。集約することでコストを抑えたり、システム管理者の負担を下げたりするのが、UTMのメリットと言えるでしょう。
UTMについてはUTMとは?機能や特徴・必要性をわかりやすく解説でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
次世代ファイアウォール(NGFW)は、アプリケーションを制御できるファイアウォールです。「L7ファイアウォール」とも呼ばれています。次世代ファイアウォールはアプリケーション層(第7層)の通信内容解析(ディープパケットインスペクション)や、従来よりも高度な脅威探知が可能です。
例えば、業務中に見るのには好ましくない特定のWebサービスの利用を禁止しつつ、必要なアプリケーションのみ許可することが可能です。
次世代ファイアウォールは、アプリケーションを識別し制御できる点が、従来型との最大の違いです。
そもそも、ファイアウォールとはどのようなものなのでしょうか。ファイアウォールは、外部からの不正アクセスや攻撃から、自分たちのネットワークを防御するためのセキュリティ製品を指します。なかでも、次世代ファイアウォールとは、従来型ファイアウォールの機能を拡張し、より多くの脅威に対応できるようにしたものです。
従来型は、通過させるIPアドレスやポート番号を設定し、その通信情報に一致しないものは遮断し不正アクセスを防いでいました。しかし、アプリケーションの識別まではできないため、近年では制御が難しい状況になっています。
一方、次世代型では、アプリケーションを識別できるため、アクセス許可・不許可の制御をしたり、特定のユーザーにのみ閲覧の許可を与えたりすることが可能です。アプリケーションごとに制御ができるので、セキュリティの統制が図れ、ネットワークを脅威から守れるでしょう。
WAFとはWebアプリケーションへの攻撃に対抗するセキュリティ対策です。Webアプリケーションファイアウォールとも言います。サーバと外部との通信を監視し、攻撃とみなされたアクセスをブロックすることができます。アプリケーションのセキュリティ対策に特化しており、通信内容まで厳しくチェックします。
続いて、次世代ファイアウォールの特徴について解説していきます。
WebアプリケーションやSNSなどのアプリケーションを識別し、それらの通信を制御する機能です。例えば、社内で広報担当以外のSNS利用を禁止する場合、担当者でない社員のSNS通信を遮断することができます 。
IPSは侵入防止システムとも呼ばれます。ネットワーク上で発生する不審な通信を検知し、遮断することができます。
次世代ファイアウォールには、脅威インテリジェンス機能があります。脅威インテリジェンスとは、データの盗用や紛失など、悪意のある攻撃を検出し対策を行うことです。次世代ファイアウォールの脅威インテリジェンス機能は、従来のファイアウォールで見逃されていた高度なサイバー攻撃を阻止することができます。
ウイルスを検知し対応します。この検知機能は更新されるためウイルスが変化した際も素早い対応が可能です。
では、UTMと次世代ファイアウォールにはどのような違いがあるのでしょうか。簡単に説明すると、UTMと次世代ファイアウォールでは、搭載している機能の数や対象となる企業規模が異なります。UTMと次世代ファイアウォールは、以下のような共通した機能を持っています。
上記の機能を持っており、ネットワークを守るため役割を担っている点が共通点と言えるでしょう。
IPSについてはIDS・IPSとファイアウォールとWAFの違いをわかりやすく解説でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
では、次世代ファイアウォールとUTM、WAFにはどのような違いがあるのでしょうか。それぞれに分けて詳しく解説していきます。
UTMと次世代ファイアウォールの大きな違いは、機能の幅広さと対象となる企業規模です。
UTMは次世代ファイアウォールに比べると多くの機能を搭載しており、対応できるセキュリティ対策が幅広いことが特徴です。UTMには次世代ファイアウォールには無い、以下の機能があります。
一方で、次世代ファイアウォールも、近年では上記の様な機能を搭載している場合があります。UTMと次世代ファイアウォールの境目は曖昧になってきているといえるでしょう。
UTMと次世代ファイアウォールでは、対象とする企業規模が異なることも違いのひとつでしょう。一般的に、UTMは中堅・中小企業向けで、次世代ファイアウォールは大企業向けと言われています。ただしこれは一般論のため、企業規模やネットワークの通信量に応じて、導入すべきセキュリティ製品を検討するとよいでしょう。
次世代ファイアウォールとWAFの違いは「Webアプリケーションの通信内容までチェックするかどうか」です。先述したように、次世代ファイアウォールはWebアプリケーションの監視を行い、通信ログの分析や蓄積を行いますが、通信内容に関してはチェックを行いません。WAFはWebアプリケーションのセキュリティのみに特化しているため、通信内容まで厳しくチェックを行うことができます。
では、UTMと次世代ファイアウォールはそれぞれどのような企業に適しているのでしょうか。前提として、UTMは汎用的な機能をもつセキュリティ製品、次世代ファイアウォールはファイアウォール機能に特化したセキュリティ製品です。
車に例えるなら、UTMは乗りやすさや幅広い場所で使える一般車、次世代ファイアウォールは速さだけを追い求めたF1カーと言えるでしょう。下記の表では、中小企業と大企業それぞれのセキュリティ対策についてまとめています。
大企業 | 中堅・中小企業 | |
---|---|---|
ルーティング | ルータ | UTM |
WAN最適化 | WAN最適化コントローラ | UTM |
ファイアウォール | ステートフルなファイアウォール NGFW |
UTM |
侵入防御 | IPS/NGIPS NGFW |
UTM |
URLフィルタリング | SWG NGFW |
UTM |
WEBウイルス対策 | SWG NGFW |
UTM |
WEBアプリケーション・セキュリティ | アプリケーション配信コントローラ WEBアプリケーション・ファイアウォール クラウド・サービス 次世代IPS |
UTM |
ITレピュテーション | SIEM NGFW |
UTM ほとんど考慮されない |
ファイアウォール・ポリシー管理 | NGFWコンソール セキュアなポリシー管理ソリューション |
UTMコンソール |
アプリケーション制御 | NGFW SWG |
UTM |
電子メールのウイルス対策/スパム対策等 | SEG クラウド・サービス |
UTM クラウド・サービス |
表からもわかるように、UTMはファイアウォールからWAN最適化、IPレピュテーション、スパム対策まで対応しており、中小企業のセキュリティは十分に賄えるでしょう。よってUTMは、企業規模が小さく、セキュリティ担当者が少ない企業や、対策を一元化したい企業におすすめです。
一方、大企業の場合はセキュリティの要件が高く、WAN最適化コントロールやSWG、SIEMなどそれぞれに特化したものを導入する必要があるでしょう。次世代ファイアウォールは、大企業や、高度なセキュリティが必要な企業におすすめです。
以下の記事でおすすめのUTM製品、次世代ファイアウォール製品について詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
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この記事では、セキュリティ対策を一元化できるUTMと次世代ファイアウォールについて、概要や違い、それぞれに適した企業まで、詳しく解説しました。UTMと次世代ファイアウォールの大きな違いは、搭載されている機能の数や対象とする企業規模が異なる点です。
一般的には、UTMは中小企業向け、次世代ファイアウォールは大企業向けと言われています。要点をおさえながら自社のニーズを見極めて、製品選びをすると良いでしょう。