診療報酬制度とは?仕組みから加算まで簡単にわかりやすく解説!

更新日 2024.02.08
投稿者:横山 洋介

診療報酬制度とは、厚生労働省が定めた診療報酬点数を基に、医療機関に支払われる費用を指します。2024年度は診療報酬制度だけでなく、介護報酬、障害福祉サービス等報酬も改定される「トリプル改定」となることから、注目している方も多いのではないでしょうか。

本記事では、診療報酬制度の仕組みや役割をわかりやすく解説するとともに、医療のサービス向上のための改定、加算方法、指摘される問題点についても取り上げます。診療報酬制度をより深く理解する一助になれば幸いです。

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目次

診療報酬制度とは?仕組みを解説

診療報酬制度の仕組み

診療報酬制度とは、病気や怪我などに関して患者に行った医療行為の対価として、医療機関が受け取る報酬になります。なお診療報酬は、厚生労働省によって医療行為ごとに設定された点数を基に算定されたものです。

「診療報酬=医師の収入」ではない

診療報酬制度におけるお金の流れ

診療報酬とは、医療機関が保険適用範囲内の医療行為や医薬品を提供した対価として受け取る料金のことを指し、その報酬を資金として医療機関の運営が行われています。

当然のことながら医療機関には、医師のみならず看護師やさまざまなスタッフが従事していることでしょう。そのスタッフに係る人件費、加えて医療機器費用、医薬品の購入費、施設維持費、管理費用などが必要となりますが、それらすべては診療報酬から捻出しています。決して「診療報酬=医師の収入」ではないということを、ご承知おきください。

診療報酬の内訳

診療報酬は、診療や医療サービスの対価として人件費などに充てられる「本体」と、医薬品や医療機器の公定価格を決める「薬価等」に大きくわけられます。内訳を示すと以下の表のようになります。

医科診療報酬 歯科診療報酬 調剤診療報酬
第1章 基本診療料 第1章 基本診療料 第1節 調剤技術料
第2章 特掲診療料 第2章 特掲診療料 第2節 薬学管理料
第3章 介護老人保健施設入所者に係る診療料 - 第3節 薬剤料
第4章 経過措置 - 第4節 特定保険医療材料料

医科診療報酬、歯科診療報酬、調剤診療報酬の第2節までが「本体」、調剤診療報酬の第3節以降が「薬価等」についての記載となります。

この表では大枠を示しました。さらに詳しく見ていくと、例えば「医科診療報酬点数表」の「基本診療料」では、「初・再診料」「入院料等」についての点数が定められています。

診療報酬の改定とは?点数はどうやって決まる?

診療報酬点数は、通常2年に一度の頻度で行われる『診療報酬改定』と呼ばれる見直しで決定されます。医療の進歩や日本の経済状況などを踏まえて実行されるもので、医療費の抑制や医療サービスの向上を目的としているものです。2024年は診療報酬を含む「トリプル改定」と呼ばれていることや、診療報酬のこれまでの推移を見ていきましょう。

診療報酬改定のタイミング

改定前年度の12月中旬〜下旬、政府が国の予算原案を提出する際に出される診療報酬全体の「改定率」と、社保審から出る基本方針が決定します。その改定率を基に審議するのが、厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医師協議会(以下、中医協)です。

中医協には、報酬を受ける側(日本医師会等)・報酬を支払う側(健康保険組合の代表者等)・公益を代表する側(学者等)の三者が参加します。それぞれの立場から、厚生労働省の社会保障審議会医療保険部会並びに医療部会で決められた改定方針に従って、見直しを決定していくのです。

2024年は「トリプル改定」

2024年度は、診療報酬だけでなく、介護事業所の収益に関わる「介護報酬」、障がい福祉事業所の収益に関わる「障害福祉サービス等報酬」の改定も予定され、6年に1度の「トリプル改定」として注目を集めています。記事作成段階で分かっている改定内容は以下の通りです(2024年2月時点)。

2024年度の診療報酬改定

各種報道機関によると、2024年度の診療診療報酬改定では、「本体」が0.88%引き上げられるプラス改定、「薬価等」が1%引き下げられるマイナス改定となる見込みとなっています。

2024年度の介護報酬・障害福祉サービス等報酬改定

介護報酬改定率は1・59%のプラス改定、障害福祉サービス等報酬の改定率は1.12%のプラス改定となる方針を国が示しています。

診療報酬改定率の推移

それでは、診療報酬はこれまでどのように改定されてきたのでしょうか。セカンドラボがグラフにまとめました(2024年度分は報道ベース)。

診療報酬改定率の推移

推移を見ると、本体部分はプラス改定が続き、薬価等はマイナス改定が続いているのが分かります。グラフの青い部分が、「本体」と「薬価等」を合わせた診療報酬全体の改定率を表しています。過去10年の診療報酬改定の推移として、全体としてマイナス改定が続いているのが読み取れます。よりくわしく言えば、「本体」部分はプラス改定が続く一方、「薬価等」部分でマイナス改定が続いています。

薬価はジェネリック医薬品の普及などに代表されるように、引き下げが進んでいます。今後は「本体」部分の医療費削減に切り込んでいけるかどうかが、大きな注目点となっています。

2022年の診療報酬改定については2022年度診療報酬改定の方向性と押さえておきたい3つのポイントでも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

診療報酬制度3つの役割

診療報酬には「医療機関の収入」という直接的な役割以外に、3つの重要な役割があると言われています。

  • 政策誘導の役割
  • 医療の質を均一化する役割
  • 医療機関の運営をやりやすくする役割

以下にこれら3つの役割を順に解説していきましょう。

政策誘導の役割

「医療」というのは、国民を支える重要なインフラ(生活基盤)ではあるものの、すべてを公的機関が担うことは難しいのが現実です。こうした背景から、公的な医療機関は全体の20%程度を運営しているに過ぎず、残り80%は民間の医療機関が運営しています。

つまり、国策として医療方針を決め実行したくとも、民間の医療機関を一斉に動かすことは難しく、全体の医療現場に反映させることは不可能に近いでしょう。そこで一種の金銭的な動機付けをすることにより、医療機関全体を動かしていく役割を果たすのが診療報酬の役割です。

医療の質を均一化する役割

診療報酬の要件は、それぞれの医療機関が滞りなく運営できるように設定されており、また要件を満たさなければ診療報酬を受け取ることはできません。

例えば「看護師の比率」や「看護職員の配置基準」といったものから「適切な意思決定支援に係る指針を定めている」というような指針作成の要件などもあります。こういった仕組みが、医療の質をある程度均一にする役目を果たしているのです。

医療機関の運営をしやすくする役割

診療報酬は2年に一度改定されているのですが、これは時代や世の中の状況を反映して、医療機関の運営をやりやすくする狙いがあります。

例えば、2020年に診療報酬の改定が行われた際は、前年から適用が始まった働き方改革関連法案に基づく「働き方改革」が大きなテーマとなりました。そうした背景から、医療スタッフの負担を軽減するために「補助人員を配置した場合の加算点数が上がる」などの見直しがされています。

診療報酬の点数(公定価格)とは?

診療報酬の点数(公定価格)とは、厚生労働省がそれぞれの医療行為を点数化したもので、受けた医療行為ごとに『1点=10円』として計算されます。例を挙げると「初診料が250点の場合、2500円に相当する」という具合になり、この計算方法は日本全国どこでも均一です。

なぜ「点数」で設定されているの?

例えば物価が1.2倍になった時、『1円=12円』として計算することで、物価の変動に対応しようとした考え方と言われています。そうすることで経済状況に合わせて、柔軟に対応できるようにしているのでしょう。

診療報酬の具体的な支払い例を紹介

診療報酬明細書の点数を見て、実際に支払う金額を確認してみましょう。

(例)糖尿病の治療のために継続通院している患者様を例にあげます。(内訳は省きますので、ご了承ください)

  • 再診料 128点
  • 医学管理・外来栄養食事指導料 260点
  • 各種検査料 873点
  • 処方箋料 141点

上記の合計点が1,402点となり、医療費合計は10円 × 1,402点 = 14,020 円となります。
その内、患者一部負担料金(3割負担の方の場合)4,200円(10円未満は四捨五入と計算)が、実際に患者様が支払う金額です。

医院で診療報酬と密接にかかわるレセプト点検については【2024最新】レセプトチェックソフトおすすめ7選|選び方や価格まででも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

診療報酬加算とは?主な加算を紹介

前述した通り、診療報酬は医療行為それぞれに点数が決められていますが、決められた要件を満たすことによって、点数を加算できる項目がいくつかあります。ここでは主な加算を紹介していきましょう。

入院基本料等加算

入院基本料は、入院14日目までは1日あたり450点、15日目〜30日目までは192点というように、入院期間によって加算される点数が変わってきます。入院期間が短いほど医療機関にとって有利になる設定になっており、入院をできるだけ短期間で終わらせるよう誘導する仕組みです。

入退院支援加算

患者様が納得のうえ退院した後、できるだけ早く安心して、住み慣れた地域で生活しながら療養できるように支援することで、評価され加算される項目です。この入退院支援加算は、多くの診療報酬が削減される傾向にあるなか、診療報酬改訂時に増加しているもので、国が推進している項目と推測されます。

時間外加算

診療時間外に受診した場合、原則として通常の診療費用に上乗せして請求される加算額のことを言い、「時間外」「休日」「深夜」の3種類に区別されます。加算額は初診・再診によっても異なるほか、「時間外」の範囲は医療機関によって違いがありますので、確認が必要です。

在宅療養指導管理材料加算

在宅で療養を行っている患者が、自身または家族等により特定の医療行為を行いながら生活している場合、適切な指導管理を受けることが必要です。血液透析・酸素療法・自己注射といった医療行為を行う際に使用する、透析液供給装置・酸素ボンベ・注射器などを処方した場合に加算されます。

総合機能評価加算

高齢の入院患者様を対象にした加算で、入退院支援加算項目の一部と見なされています。入院中、症状が安定した、なるべく早い段階から治療を開始し、退院後の生活を円滑に送れるようにすることが目的です。「治療への意欲」「日常生活力」「記憶力等の認知能力」などを、さまざまな角度から総合的に評価をした場合に加算される仕組みになっています。

介護支援連携指導

退院後に介護サービスが必要と考えられる場合、ケアマネージャーや相談支援専門員と連携して、導入について患者および家族へ指導したことを評価するものです。必要とする介護サービスを適切に受けられるように、医療機関は主治医や看護師等の医療スタッフが、ケアマネージャー等と一緒に実施します。

診療報酬制度に対する批判的な見方も

一番大きな問題点は診療報酬における技術料評価の低さです。例えば、歯科の歯周疾患処置であれば14点のみしか算定することができません。ほかにも複数の診療科を受診しても、一つの科のみの診察料しか算定されない、といった「不払い労働」とも言うべき不合理な評価もあります。医薬分業が進んだ結果、医療機関で直接、薬を受け取れないことが増え逆に不便になってしまったり、一部患者の負担金が増えてしまうという問題も指摘されています。

まとめ

本記事では、厚生労働省が定めた診療報酬点数を基に、医療行為に対して支払われる診療報酬制度について詳しく解説してきました。

診療報酬制度は、もちろん問題点はありますが、2年に一度の改定を行うなど、医療サービス向上への歩みを止めない取り組みは評価されるべき点でしょう。メリットとデメリットはありますが、総合的にみて患者様・医療機関・政府にとって意義のある制度と言えるのではないでしょうか。

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セカンドラボ株式会社 PR Solution Div.
URL:https://note.com/2ndlabo/n/n33882f74cd71

国立大学を卒業後、新聞記者として4年間勤務。2020年よりセカンドラボ株式会社に入社。医療福祉施設の課題解決プラットフォーム「2ndLabo」にて各種ITツール、レジの導入支援、クリニック開業支援に従事。

2ndLaboのサービスを通じて、これまで1,000件を超えるサービス導入支援・開業支援を担当。得意分野はレジ関連(POSレジ、自動精算機)、ナースコール、レセプト代行。

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