日本では介護を必要とする人が増える一方、高齢者を介護する人が少ないため深刻な問題になっています。多くの介護事業所でも、介護士の人材不足を感じていらっしゃるのではないでしょうか。
介護業界の慢性的な人手不足を解消する技術として期待されているのが、「介護ロボット」です。そのため、政府も介護ロボットの開発・推進の促進に取り組んでおり、介護現場や在宅での導入が急がれています。しかし、介護ロボットの導入ハードルの高さから、介護ロボットがまだまだ普及していないのが現状です。
今回は、介護ロボットについて詳しく解説しつつ、介護ロボットの種類、導入するメリット・デメリットに関してもご紹介しています。
また、導入障壁の一つとして挙げられている「導入コスト」の削減方法についても詳しく解説し、実際の施設で導入した事例もご紹介します。この記事を読めば、介護ロボットについて網羅的に理解することができ、導入の際に役立つでしょう。ぜひ参考にしてください。
目次
介護ロボットとは、ロボット技術やAI技術などを応用した介護機器のことで、利用者の自立支援や介護者の負担軽減に役立つものです。 厚生労働省は、以下の3つを定義としています。
上記の要素を満たした機械システムのことを、介護ロボットと定義しています。
介護ロボットにはさまざまなタイプのものがあり、例えば、「移乗支援」「排泄支援」「入浴支援」など幅広いシーンで活躍し、利用者の自立支援、介護者の負担軽減に役立つのがロボットなのです。
出典:介護ロボットとは
今後の日本の介護に介護ロボットが欠かせない理由の一つに、介護業界の「慢性的な人手不足」が挙げられます。この深刻な問題に政府は、介護士の賃金アップや働き方の改善などの対策を進めていますが、人手不足の課題は解決されていません。
実際に「厚生労働省編職業分類」によると、2022年1月時点で介護サービス職業の有効求人倍率は、「3.68倍」となっています。
これは、一人の求職者に対し3〜4社の求人があることを意味しています。全職業の有効求人倍率の平均が1.14倍からもわかるように、非常に高い数値です。
また、少子高齢化のさらなる進行に伴い、介護人材の不足は増加するとされています。厚生労働省の「介護人材確保に向けた取り組み」によると、2025年度には約243万人、2040年度には約280万人の介護人材が必要と予測されています。
このように加速する介護業界の人手不足の解決のカギは、業務効率化です。人手不足による介護職の業務負担は大きいですが、業務を効率化することで人手不足を解消する一つの手段として介護ロボットが注目されています。
介護業界の人手不足を解消する手段として、介護ロボットが注目されていますが介護事業所にまだまだ普及していないのが現状です。
実際に、公益財団法人 介護労働安定センターが出している「事業所における介護労働実態調査」によると、介護ロボットの導入に関して、「いずれも導入していない」と答えたのが80.6%と多くの事業所などで普及が進んでいないことがわかります。
「事業所における介護労働実態調査」によると、介護ロボットの導入の際の課題や問題に、「導入コストが高い」、「投資に見合うだけの効果がない」、「技術的に使いこなせるか心配である」などが挙げられています。
最も多い回答となったのが、「導入コストが高い」となり、多くの介護事業所で介護ロボット導入ハードルの高さに課題を感じているとのことです。
介護ロボットが普及しているとは言えず、実際に評価を得ている介護ロボットの数がまだまだ少ないのが現状と言えるでしょう。
日本では介護ロボットがまだまだ普及していませんが、導入台数は着実に増加しているのも事実としてあります。
株式会社矢野経済研究所が調査して明らかにした「介護ロボット市場に関する調査を実施(2022年)」によると、介護ロボット市場規模は年々拡大傾向にあり、官民一体となって開発に取り組んでいることがわかるでしょう。
また、昨今の新型コロナウイルスの流行を受けて、「新しい生活様式」に対応した介護ロボットの導入も注目されています。「介護ロボットの開発トレンド、コロナ禍で生まれた変化」によると、利用者と介護従事者の接触による感染リスクの軽減を図るべく、非接触型の介護ロボットや遠隔コミュニケーションロボットなどの注目が高まっています。
他にも、コロナ禍の影響で世代を問わず運動不足の方が増加傾向にある中、運動不足を解消するために、リハビリ用ロボットスーツの導入やトレーニングプログラムなど高齢者の運動を支援する介護ロボットへの注目も高いです。
では、日本では介護ロボットの市場規模は年々拡大傾向にあるのに対し、海外では、介護ロボットの普及は進んでいるのでしょうか。「ロボット介護機器の海外動向と国際展開に向けた戦略」によると、アメリカ合衆国では「見守り・コミュニケーション」のニーズが高く、既に導入が進んでおり、Googleの「Google Home」、Appleの「Apple Watch」、Amazonの「アレクサ」などの製品が生活に入り込みつつあるとされています。
中国は介護の担い手が豊富にいるため、介護ロボットの導入は進んでいませんが、介護市場が2035年ごろから爆発的に拡大すると言われています。介護ロボットの導入よりも、日本式介護のような質の高いサービスが注目されており、ハード面だけでなくソフト面の注目度も高いです。
ここでは、介護ロボットの種類について説明しつつ、それぞれの特徴や価格相場を見ていきましょう。
介護ロボットは大きく分けて、「介護支援型」「自立支援型」「コミュニケーション/セキュリティ型」の種類に分かれています。
上記の種類を細分化して、目的別の介護ロボットをご紹介します。
介護ロボットのそれぞれの特徴や価格相場を知ることで、導入時に最適な選択ができるでしょう。
移乗支援は「装着型」と「非装着型」に分けることができます。それぞれの特徴と価格相場を見ていきましょう。
移乗介助の介護ロボットは、ロボット技術を応用して介助者のパワーアシストを行う装着型の機器です。
特徴として、介助者が一人で装着ができ、パワーアシスト機能で移乗介助の際にかかる腰の負担を軽減することができます。
主に、ベッドや車椅子、トイレ間の移乗に使用することが可能です。
主な製品に「HAL」、「介護用マッスルスーツ」などがあり、価格相場は、50万〜220万です。
非装着型の移乗介助介護ロボットの特徴は、介助者が一人で扱うことができ、要介護者を移乗させる際に、介助者の力の全部もしくは、一部のパワーをアシストすることが可能です。
移乗に時間はかかりますが、装着する手間がありません。
製品例として、「SASUKE」や「Hug」などがあり、価格相場は90万〜120万円となっています。
見守り・コミュニケーションに特化した介護ロボットは、転倒を防止するセンサーや高齢者とのコミュニケーションにロボット技術を応用した機器があります。
見守り・コミュニケーションにも、
と分けることができます。それぞれの特徴と価格相場を見ていきましょう。
介護施設で見守りの用途で使用する介護ロボットは、センサーや外部通信機能を備えた技術を用いた機器です。センサーにより、複数の要介護者を同時に見守ることが可能となり、複数の介護者へ情報を共有することができます。
これにより、要介護者がベッドから離れようとしている状態、もしくは離れた状態をセンサーが検知し、転倒リスクのある要介護者の転倒防止に努めることが可能です。
製品例として、「シルエット見守りセンサ」や「3次元電子マット式見守りシステム」などがあり、価格相場は30万〜40万となっています。
在宅で使用する転倒検知センサーや外部通信機能を備えた介護ロボットです。特徴は、複数の部屋を同時に見守りすることができ、暗い場所や浴室などの見守りが可能になります。
また、要介護者の転倒を検知し、すぐに介護者へ通知が行くため、素早い対応ができるのも魅力の一つです。
製品例として、「いまイルモ」、「ネオスケア」などがあり、価格相場は15万〜40万円程度です。
コミュニケーション用の介護ロボットは、高齢者などの言語や身体を認識し、コミュニケーションや特定の動き、移動をするロボットです。 人手不足によって生まれてしまう業務過多、そこからコミュニケーション不足になっていくのを解消し、癒しやレクリエーションなどで認知症対策にも効果があると期待されています。
主な製品として、「PALRO」「Sota」などがあり、価格相場は、15万〜35万程度となっています。
移動支援型の介護ロボットは、高齢者の移動をサポートし、転倒予防や不安定な歩行をアシストするロボット技術を用いたものです。移動を支援する介護ロボットは、
に分けられているので、それぞれの特徴と価格相場を見ていきましょう。
屋外移動の介護ロボットは、外出の際の移動をサポートし、荷物などを安全に運ぶことができる機器です。特徴として、モーター駆動などにより上り坂では推進し、下り坂ではブレーキをかけるアシスト機能があります。これにより、屋外での歩行が不安な高齢者でも安心して移動することが可能です。
主な製品として、「歩行アシストロボット」「歩行アシストカート」などがあります。価格相場は、20万〜30万円となっています。
高齢者が屋内を移動する際やトイレなどの立ち座りをサポートし、特にトイレへの往復やトイレ内での姿勢保持を支援する介護ロボットです。 特別な操作を必要とせず、トイレ内での一連の動作が一人でも可能となり、転倒防止、自立した排泄の実現が可能です。
主な製品として、「屋内型ロボットウォーカー」があり、価格相場は20万〜30万円となっています。
高齢者が移動の際に装着し、歩行時の補助や立ち座りをサポートしてくれるロボット介護です。屋外でも使用可能で、装着したまま外出することもできます。 歩行状態が悪い方に多い、すり足歩行を防止する機能を搭載している機器もあり、転倒予防にも役立ちます。
製品例として、「aLQ」「パワードウェア」などがあり、価格相場は5万〜50万円程度です。
排泄支援の介護ロボットは、運動機能の低下や認知症などにより、失禁や排泄障害などの問題を解決するとして期待されています。 排泄支援の介護ロボットを導入することで、高齢者の自立した排泄の実現や介助者の負担軽減に繋げることも可能です。
排泄支援の介護ロボットを大別すると、
に分けることができます。それぞれの特徴と価格相場を見ていきましょう。
排泄物処理ロボットの特徴は、従来のポータブルトイレに「排泄物処理」機能を搭載したもので、排泄物のにおいが広がらないように室外へ流したり、容器や袋に密閉して隔離します。
これにより、衛生を保つことができるため自尊心の保護になり、介護者の負担を軽減することが可能です。 主な製品として、「自動ラップ式排泄処理システム」や「真空式水洗ポータブルトイレ」などがあり、価格相場は50万〜70万円です。
排泄予測支援機器などを用いて、排尿タイミングをロボットが通知してくれるので、最適なタイミングでトイレに誘導することができるのが特徴です。これにより、利用者の自立した排泄の実現が可能になり、QOLの向上と介護者の負担軽減に繋げることができます。主な製品として、「DFree」や「リリアムスポット2」などがあり、価格相場は5万〜35万円です。
DFreeについては排泄予測支援機器「DFree」とは?|2022年4月から介護保険適用にでも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
排泄動作支援ロボットの特徴は、トイレ内での下衣の着脱などの一連の動作をサポートする機器です。立位保持が難しい高齢者の方でも動作支援ロボットを使用することで、立位保持が可能になり、排泄後のお尻のケアや脱衣介助を行うのにも役立ちます。 主な製品として、「Hug」があり、価格相場は88万円前後です。
入浴支援の介護ロボットは、利用者が浴槽に出入りする際の一連の動作をサポートする機器です。
足元が不安定で滑りやすい浴室で、浴槽に入りたくても不安感から入るのをためらう方もいらっしゃいます。介護者も事故予防のために、入浴介助には体力や集中力を必要とし、負担がかかる業務です。
利用者と介護者、双方が安心して入浴動作を行えるように、入浴支援の介護ロボットが役立ちます。
主な製品として、「バスリフト」「Wells」があり、価格相場は35万〜180万円です。
介護業務支援の介護ロボットは、介護業務に伴う情報を収集、蓄積し介護に必要な支援に活用できるロボットです。
また、情報は介護に従事者などに共有することができ、介護記録システムやケアプラン作成などに活用できます。
これにより、情報共有を円滑にし、施設運営の効率化が期待できます。 主な製品は、「SCOP」「FTCare-i」などです。
ここでは、介護ロボットを導入するメリット・デメリットについて解説します。メリット、デメリットの両方を知ることで、施設や自宅で介護ロボットが本当に必要かの判断材料になるでしょう。
では、介護ロボットを導入するとどのようなメリットがあるのでしょうか。 以下の4つのメリットをご紹介します。
昨今の少子高齢化により、介護人材の不足が深刻化していることはこれまでにも述べてきました。人手不足のため介護職員の抱える業務量が増え、一人の利用者に時間を割けず、サービス品質が低下してしまうことも多いでしょう。
介護ロボットを導入することで業務の効率化が期待され、一人の介護職員が抱える業務量の減少にもなります。
例えば、時間のかかる介護記録や申し送り業務にSCOPなどのプラットフォームを活用すると時間短縮になり、利用者一人に対して対応できる時間が増えます。 利用者とのコミュニケーションなどの時間も増え、結果的にサービス品質の向上にも繋げることが可能です。
介護の仕事は身体介護や夜勤業務などもあり、身体的、精神的負荷のかかる仕事です。特に移乗介助などで腰を痛めてしまう介護士も多いのではないでしょうか。 介護士一人が抱える業務量も多く、ストレスを感じてしまう方も多いです。
介護ロボットを導入することで、業務負担、ストレスの軽減などに繋がります。 例えば、立ち上がりが難しい利用者をトイレへ移乗する際に、「Hug」などの介護ロボットを活用することで、介護スタッフは少しの力で移乗することが可能になり、業務負担の軽減になります。
それにより長く勤めることができ、離職防止にも役立つでしょう。
介護ロボット導入は事故の防止やヒヤリハットの減少にも繋がります。実際に、厚生労働省が出している「介護ロボットの導入支援及び導入効果実証研究事業」報告書によると、ある施設は導入前の事故・ヒヤリ件数9件に対し、導入後には0件と報告されています。
例えば、介護施設で最も多い「転倒事故」も見守りセンサーなどを導入すれば、介護職員が転倒リスクの高い利用者の元へすぐに駆けつけることも可能です。
介護ロボットの導入により、要介護者の満足度アップやストレス減少に繋がります。例えば、夜間の巡回時に訪室してしまうと、利用者は安心して眠れずストレスになります。 しかし、介護職員も状態確認のためなどで訪室しなければいけません。
「眠りスキャン」や「見守りロボット」などの介護ロボットを導入することで、過度な見守りを減らし、利用者は熟睡することも可能です。結果的に、満足度アップやストレス減少に繋がります。
次に、介護ロボットを導入するデメリットをご紹介します。
上記のデメリットについて詳しく解説していきます。
「事業所における介護労働実態調査」によると、全体の50.6%が介護ロボット導入の課題・問題として「導入コストが高い」と回答しています。
介護ロボットの相場は、コミュニケーションロボットでも数万円、大型のロボットや高性能なものであれば、高くて数百万する介護ロボットもあります。
補助金やリース、レンタルを活用すれば導入コストを抑えることもできますが、導入環境や施設状況に合わせて検討する必要があるでしょう。
介護ロボットを使いこなせる方は、業務の効率化や負担軽減に繋がり便利なものですが、操作を覚える必要があります。
また、普段機械の扱いに慣れていない方や機器に対して苦手意識を持っている方は、操作を覚えてもうまく使いこなせない可能性も出てしまいます。
使い方を間違えると事故に繋がることもあるため、一時的ではあるものの、ロボットを扱う方の負担が増えてしまうでしょう。
厚生労働省が出している「介護ロボットの開発と普及のための取り組み」の介護ロボットに関する課題・問題に、「清掃や消耗品管理などの維持管理が大変である」と29.9%が回答しています。
ロボットなので、定期的なメンテナンスケアは必要になり、それにかかる人的コストが発生してしまうデメリットがあります。
人的コストを払ってでも導入するメリットがあるか検討する必要があるでしょう。
介護ロボットは手のひらサイズの小さいものから大型のロボットまでさまざまあります。特に移乗、移動用の介護ロボットは大型サイズのものが多く、施設内のスペースを圧迫します。
設置、管理するスペースを考えなければならず、小規模の施設だとスペースに悩まされることも少なくありません。
施設内のスペースを取ってしまうのはデメリットといえるでしょう。
前述したように、介護ロボット導入の最大の障壁は「導入にかかるコスト面」です。この課題を解決するために政府は、補助金や導入支援事業などの制度を実施しています。導入したいと思っても導入コストで悩んでいる方は、補助金や導入支援事業を活用することで導入コストを削減できるので、ぜひ参考にしてください。
ICT導入補助金は、ICTを活用して介護記録・情報共有・請求業務までができるように、ICT化に必要なタブレット端末や介護ソフト、ネットワーク機器などの導入費用の一部を給付する制度です。
厚生労働省はICT化を進めており、介護現場のICT化によってビッグデータの蓄積が可能となり、科学的根拠に裏付けされた「科学的介護」で業務効率化、職員の負担軽減を図る狙いがあります。
【補助率】都道府県が設定【補助上限額】最大260万円 【今年度の実施有無】各都道府県によって異なりますので、問い合わせが必要です。
新型コロナウイルスの感染症拡大の影響により、売上の減少、資金調達で悩んでいる企業などが利用できるさまざまな制度があります。
例えば、「日本政策金融公庫」は、介護施設への融資を積極的に行なっています。
【融資限度額】7,200万円(うち、運転資金4,800万円) 【今年度の実施有無】要問い合わせ
各都道府県でも導入支援補助金を行っています。詳細は、各都道府県の介護ロボット導入支援事業費補助金などを参考にしてください。
介護ロボットの導入は、補助金や導入支援事業以外にも、リースやレンタルで導入する方法があります。補助金などを使って購入までは考えておらず、試験的な導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
リース・レンタルと聞くと、どちらも「借りる」という意味では同じです。リースとレンタルの大きな違いは、「契約期間の長さ」にあります。
リースの場合は、中途解約なしで数年単位の契約期間が設けられており、中長期間の利用が原則です。 一方のレンタルは、中途解約が可能で数日から数年単位の契約期間が設けられています。
そのため、中長期の利用を想定しているリースの方が割安に設定されています。 導入コストを抑えて本格的に介護ロボットを使用したいなら「リース」。 購入前の試験的な導入を検討しているなら「レンタル」がいいでしょう。
リースで介護ロボットを導入すると、さまざまなメリットがあります。一つずつ詳しく見ていきましょう。
介護ロボットを購入しようと思うと、高いロボットで数百万の導入コストがかかってしまいます。リースで導入すれば、月々の支払いだけで済むので多額の初期費用などは必要ありません。また、中長期の使用を想定しているため、レンタルよりも割安で介護ロボットを導入することが可能です。
介護ロボットは政府も開発・普及の促進に力を入れており、新たな介護ロボットが日々開発されています。開発スピードも加速している中、介護ロボットも陳腐化する危険性もあります。リース期間を耐用年数に合わせたリース期間に設定することで、常に最新の介護ロボットを導入することが可能です。
リースはレンタルで導入するよりも割安で導入することが可能ですが、デメリットも知っておきましょう。
リースで契約すると、基本的には途中解約はできません。何らかの理由で途中解約をしたい場合は、違約金を支払う必要があります。もしくは、残りの契約期間のリース料を一括で支払うなどのデメリットがあります。
リースした介護ロボットが故障やメンテナンスが必要になった場合、一部の会社ではユーザー負担としていることがあります。メンテナンスや修繕費などの維持費がかかってしまうことがあるのは大きなデメリットでしょう。 介護ロボットをリースする会社によっては、保守や修繕をしてくれるので確認が必要です。
レンタルで導入するメリットは、以下の通りです。
それでは、一つずつ説明します。
リースとは違い、保守や修繕などのメンテナンス業務はレンタル会社が請け負います。そのため、定期的なメンテナンスにかかる維持費などは発生しません。
レンタルの場合、個人に合わなくなった機器などの調整や交換も行なってくれるため、安心して利用することができます。アフターサービス料も無料の会社も多いので、維持費などを抑えたい方には大きなメリットでしょう。
レンタルは契約期間が短期間のため、購入前の試験的な利用をしたい方にメリットがあるでしょう。施設によっては、導入してから設置、管理するスペースに困っているなどの意見も見られます。
本格的に導入する前に、本当に導入して効果があるのか試すことが可能です。また、中途解約も可能な場合も多く、気軽に導入できる点はメリットです。
レンタルで導入するデメリットは次の通りです。
リースに比べてレンタルは契約期間が短期のため、日割り計算するとリースよりも割高になってしまいます。しかし、リースと違い短期間の利用ができるので、短期間の導入を検討している場合はリースよりも割安になります。短期間の導入ならレンタル、中長期で導入を考えるならリースの方が料金は安くなるでしょう。
レンタル会社が所有している介護ロボットの中から導入するロボットを選択しなければいけないため、最新の介護ロボットを取り扱っていることが少ないです。
導入したい介護ロボットがあれば、レンタル会社の利用も選択肢の一つとして挙げられますが、最新の介護ロボットを導入したい施設などはデメリットになるでしょう。
ここでは、最新の介護ロボットから定番のロボットまで10選をご紹介します。 さまざまなシーンを想定してご紹介していますので、導入時の参考にしてください。
移乗を支援する介護ロボットの製品として、装着型の「HAL」、非装着型の「SASUKE」「Hug」をご紹介します。
HALの装着型介護ロボットは、介護者と被介護者に対して介護支援と自立支援、両方の用途で活用できる移乗介助ロボットです。
HALを装着することで、移乗介助や体位変換などの介助時にかかる負荷を医学的解剖学的観点から解析・シミュレーションし、腰部にかかる負荷を軽減することができます。
要介護者が装着することで、弱った足腰などのパワーアシストにも効果があると期待されています。また、防水機能を搭載しているため、特に負荷のかかる入浴介助の移乗シーンでも活用することが可能です。
価格:要問い合わせ
HALについては世界初の装着型サイボーグ「HAL」!実際の評判・導入事例についてもご紹介!でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
CYBERDYNE株式会社の比較ポイント
製品情報
タイプ | アクティブ |
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重量 | 3.1kg (バッテリ含む) |
連続稼働時間 | 約180分(動作環境に応じて変動あり) |
デモの有無 | ー |
レンタルの有無 | 施設向け・個人ともレンタル可 |
価格帯 |
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SASUKEの特徴は、非装着型の移乗介助ロボットで、「お姫様抱っこ」のようにシートが昇降しベッドから移乗することができます。昇降時は手元にあるレバー操作で行えるため、難しい操作手順を覚える必要もありません。
シートの面で支えるため、揺れの少ない安定した移乗設計になっています。「抱えない介護」の実現により、介護者と利用者、双方が安全に利用することが可能です。
価格:998,000円
マッスル株式会社の比較ポイント
製品情報
サイズ | ー |
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最大使用者体重 | ー |
デモの有無 | ー |
レンタルの有無 | ー |
価格帯 | 要お問い合わせ |
次に、見守り・コミュニケーションに特化した介護ロボット4選をご紹介します。
パロは、アザラシ型のコミュニケーション・セラピーに特化した介護ロボットです。アザラシの可愛い見た目をしたパロは、「世界で最もセラピー効果のあるロボット」としてギネスにも認定されています。
その可愛らしい特徴から、ペット用、セラピー用として機能し、ストレス軽減やコミュニケーションの活性化が可能です。 機能として、名前を呼ぶと反応したり、接し方で性格が変化したりします。
価格:420,000円 リース:月額12,600円 レンタル(3ヶ月):月額18,700円
パロについてはアザラシ型ロボット「パロ」の評判は?|価格や特徴、導入メリットをまとめてみたでも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
メンタルコミットロボット パロの比較ポイント
製品情報
サイズ | ー |
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重量 | ー |
通信 | ー |
充電時間 | ー |
稼働時間 | ー |
価格帯 |
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ソワンは自動駆けつけ介護ロボットで、利用者の腕に装着した活動量計からの情報をサーバーへ送信し、継続的に見守りをすることができるロボットです。また、設定した活動量の数値を超えると、サーバーからの指示を受けて自動で利用者の元へ駆けつけ、入室と同時に映像の録画を開始します。
介護者は遠隔で映像を見ることができ、ソワンを通じて利用者と会話することが可能です。 これにより、夜間帯などの少ない人員の時に、職員の代わりに活動量を見守りながら自動巡回するので、職員は業務に追われることが少なくなります。
価格:要問い合わせ
株式会社高山商事の比較ポイント
製品情報
サイズ |
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重量 | 60kg(バッテリー含む) |
通信 | Wi-Fi/モバイルネットワーク通信(LTE) |
充電時間 | 約7時間 |
稼働時間 | 約20時間 |
価格帯 | リース料(5年償却)¥66,000/月 ※¥88/時間 |
LOVOTは可愛らしくぬいぐるみのような特徴の介護ロボットです。LOVOTは、主に在宅での使用を想定されており、3つの見守り機能を搭載しています。
部屋の地図をもとに移動しながら状況を観察し、人などを検知すると撮影して利用者にアプリで報告します。他にも、ダイアリー機能やモニター機能が搭載されており、暮らしに安心・安全を届ける家族型ロボットです。
価格:
LOVOT(らぼっと)については話題のコミュニケーションロボット「LOVOT」とは?|介護施設での導入事例を紹介でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
GROOVE X株式会社の比較ポイント
製品情報
サイズ | W280 × H430 × D260 mm |
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重量 | 約4.2 kg(服なし) |
通信 |
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充電時間 | 約15〜30分程度充電 |
稼働時間 | 約30〜45分程度稼働 |
価格帯 |
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うーご君は、ベッド上での起き上がりやトイレから立ち上がった時にナースコールでお知らせしてくれる機器です。利用者の衣服などにクリップをつけるだけなので、難しい操作は不要で誰でも扱うことができます。
うーご君を使用することで、ベッドからの立ち上がり時やトイレでの転倒事故防止に役立ちます。また、衣服にクリップをつけるだけなので、利用者に不快感を与えることなく使用することが可能です。
価格:73,800円
株式会社ホトロンの比較ポイント
製品情報
価格 | センサー本体:¥11,400(税別) / セット標準価格:¥73,800(税別) |
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種類 | クリップセンサー |
サイズ | W50 × H78.5 × D32mm |
排泄支援の介護ロボットは数が少ないですが、その中でも主要な製品のロボットをご紹介します。
リリアムスポット2は、超音波によって尿のたまり具合を知ることができる機器です。リリアムスポットを下腹部に当てるだけでトイレ介助の適切なタイミングを知ることができ、尿意のズレをなくすことが可能です。
これにより、普段トイレでの排泄ができなかった利用者が適切な排尿タイミングを知ることで、トイレでの自立した排泄に繋げることができます。 また、適切な排尿がわかれば、何度もトイレに行く必要がなくなり、介護者の負担軽減にもなります。
価格:99,000円
株式会社リリアム大塚の比較ポイント
製品情報
デモの有無 | ー |
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レンタルの有無 |
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価格帯 | 購入¥99,000(税込)※送料無料 |
ここでは、入浴支援の介護ロボットをご紹介します。
入浴支援リフトの「バスアシスト」は、立ち上がりが難しい方や膝や腰を曲げるのが難しい方が浴槽に安心して移乗できるロボットです。ハンドルを回すと上昇、レバーを引くと下降する簡単な操作のため、難しい操作を覚える必要がありません。
また、水圧式のため感電や充電を心配する必要もなく、7.8kgと軽量設計なので女性でも取り外しが可能です。
価格:要問い合わせ
株式会社ハイレックスコーポレーションの比較ポイント
製品情報
タイプ | 浴槽内設置型 |
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サイズ |
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最大利用荷重 | 80kg |
昇降方法 | 水圧式 使用水量:約15リットル/回 |
業務効率化が図れる介護業務支援の介護ロボットをご紹介します。
スマート介護プラットフォームSCOPは、オペレーション向上とサービス品質向上を目的に開発されたクラウド型ロボット連携プラットフォームです。他社製品との連携を可能にし、利用者のヘルスデータを一元管理することが可能です。
リアルタイムで情報を共有することができるため、わざわざ持ち場を離れて情報共有する時間を削減することができます。 また、iPad上で記録作業ができるので、記録漏れが一目でわかるようになっています。
価格:要問い合わせ
社会福祉法人善光会の比較ポイント
ここでは、導入前に実際に介護ロボットを体験できる展示会をご紹介します。最新の介護ロボットを実際に体験できるので、導入前の相談なども可能です。 次回開催される際は、ぜひ参加してみてください。
「介護ロボット全国フォーラム」は、商品化している、または近々商品化を予定している最新の介護ロボットなどの展示会です。
展示内容は、介護者の業務を支援する介護ロボットや被介護者の自立や介助に役立つ介護ロボットの展示や体験、相談などができます。
これから介護ロボットを導入する施設などが、実際に操作性などを体験することで、導入後のイメージなどをすることが可能です。
介護ロボット全国フォーラムは、毎年開催されており2022年は1月26日に実施されています。 参加は無料で、2022年の開催時にはオンラインでの参加も可能でした。
社会福祉法人博仁会が運営する特別養護老人ホーム「和楽ホーム」では、最先端のAI技術を誇るエイ・アイ・ビューライフ株式会社の見守りロボット「A.I.Viewlife」が導入されたので、その事例をご紹介します。
A.I.Viewlifeを導入する前は、体圧センサーや足踏みセンサーを導入していましたが、入居者様が少し動いただけでもアラートが鳴ってしまうので、対応に追われていました。 他の業務中にも頻繁になるため、スタッフの精神的ストレスはかなり大きかったでしょう。
そこで、新たに見守り支援システムを探していたところ、東京都のICT補助金制度がスタートしたため申請しました。 A.I.Viewlifeに決めた理由は、ベッドにいるときだけでなく離床時の危険を察知できること、プライバシーを保護しながら見守りができることが条件に一致したので、導入を決めました。
導入後は、天井に設置したセンサーで入居者様の動きを察知して音声で知らせてくれるので、画面を開かなくても何が起きたかを瞬時に理解できるようになりました。 業務中に鳴っても瞬時に優先順位がつけられるので、スタッフの精神的負担が大幅に軽減されました。
機器の操作に慣れていない方もいらっしゃいますが、委員会を立ち上げて操作方法を学ぶ機会を作りました。今では、スタッフから「他の入居者様にも導入してほしい」という要望が上がっているくらいA.I.Viewlifeは業務に欠かせない存在になっています。
少子高齢化や人口減少の影響で介護される側の割合は増加しているのに対し、介護人材の不足が深刻化している日本において、介護ロボットが普及しこのような問題の解決の一助になるのでしょうか。
結論から言うと、そう遠くない未来に介護ロボットが、現代におけるスマートフォンのような、当たり前の存在になるでしょう。本記事でも、実際に見守りロボットなどの介護ロボットを導入した施設では、事故防止や介護スタッフの負担軽減に繋がっていることをお伝えしました。
しかし、介護ロボットを将来普及させるためには、根本にあるさまざまな問題を取り除くことが必要です。介護ロボットには、「導入コストが高い」、「スペースを取る」、「操作が難しい」など実際の介護現場のニーズと合っていない現状があります。
さらに、「介護は人の手で行うもの」という一般的なイメージがまだまだ根強いです。こうした問題を解決するために、費用対効果の大きい箇所から介護ロボットを導入し、普及させていくのが必要でしょう。
このことを受けて、2030年には費用対効果の大きい見守り系の介護ロボットが普及することが予想されます。24時間365日介護スタッフが見守りをしている現在では業務負担が大きく、一人ひとりの利用者にコミュニケーションなどの時間が割けていない施設などは多いのではないでしょうか。
見守りロボットなどが普及することで、業務効率化や利用者の身体能力、認知能力の向上により状態の悪化を防ぐことができます。2040年、2050年からはロボットとの生活が当たり前になり、現在の福祉住環境は介護ロボットの導入を前提とした住宅が増えるでしょう。
これにより、介護度が高くても自宅での生活が可能となる方が増加。ウィルスミス主演の映画「アイロボット」のように、一家に一台ロボットが導入される日はそう遠くないかもしれません。
介護ロボットは少子高齢化の影響などにより深刻な人手不足で悩まされている介護業界の解決策の一つとして注目されています。
介護スタッフの業務負担の軽減、高齢者の自立した生活の支援が介護ロボットの導入によって実現可能です。
しかし、導入コストが高い、操作性の難しさなどから介護ロボットの導入が普及していないのが現状です。
こうした課題を打破するため政府は、介護ロボットの開発・普及に力を入れており、補助金や導入支援事業などの制度を実施しているので、コストなどで導入を考えている方は活用するといいでしょう。
介護ロボットが施設などでどう役立つのか、実際に体験してみたい方は、「介護ロボット全国フォーラム」などで体験することができます。
介護ロボットの普及は徐々に増加しており、実際に導入した施設では業務負担の軽減や転倒防止などの効果があるとの声が聞かれています。介護ロボットの導入は、介護業界の慢性的な人手不足を解決する一助になるものです。この記事を参考に、介護ロボットの導入に役立てれば幸いです。