介護施設や薬局において最も重要な業務のひとつとしてあげられるのが、薬を正しく利用者に渡すことです。個々人に応じて処方された薬を誤って別の人に飲ませてしまうと、最悪の場合、命を危険に晒してしまう恐れもあります。
また、薬は飲むタイミングごとに適切な量を処方しています。1回服用を忘れた場合に「今回の分と一緒に飲む。」ということもあってはならないのです。しかし、配薬はそれほど重要な業務にも関わらず、人為的なチェックでの確認しか行われていませんでした。
紙に記録したり施設独自に確認方法を工夫したりしていても、間違える危険性は常に存在しています。その点、「誤薬防止システム(服薬支援システムとも呼ばれる)」を利用すれば、個々の服用情報をデータ化・一元化して管理することが可能です。
今回の記事では、ヒューマンエラーによる薬の間違いを根絶し、度重なるチェック回数を減らすために有効なシステムを紹介していきます。
誤薬防止システムは、ヒューマンエラーをなくすための重要な役割をはたしています。利用者への投薬予定を立て、実際に服薬を行った際にデータベース上で履歴を残すことが可能です。履歴をもとに、以降の投薬スケジュール管理も行えます。
従来は準備や服薬確認などに時間がかかっていました。しかし、システムを利用することで職員の業務効率化にも非常に役立ちます。そのため、薬局や介護施設でのニーズが高まっているのです。
誤薬防止(服薬支援)システム導入のメリットは以下になります。
業務が多忙なため、投薬の時間が過ぎてしまった経験はありませんか?また、利用者本人がうっかり服薬を忘れることもあるでしょう。たった1回の服薬ですが、忘れてしまうことでその後の体調に影響が出てくる場合もあります。誤薬防止システムには、投薬の時間をアラームなどで知らせてくれる機能が搭載されているものがあり、そうした機能を利用することでヒューマンエラーのリスクを減らすことが可能です。
業者から届いた薬を検品→配薬→確認という作業は、職員同士の連携が必要となり手間と時間がかかります。それがシステムを利用することでスムーズに進み、一連の流れが可視化できるのです。また、利用者一人ひとりの服薬状況も一元管理できます。薬をきちんと飲んだのか口頭で確認する必要がなくなるので、非常に効率的でしょう。
従来では上に書いたような作業において間違いを生じさせないために、複数の職員の目が必要でした。目視や声出し確認による、ダブル・トリプルチェックでカバーするしかなかったのです。それも利用者の人数分だけ行わなくてはならなかったので、多くの職員の時間と労力が注がれていました。その点、システムを利用することにより、最小限の人数でチェックをすることができます。
誤薬防止(服薬支援)システムの選び方には3つのポイントがあります。それぞれ詳しく説明していきます。
誤薬防止(服薬支援)システムには、基本的な性能に大きな差はありません。ただし、企業により運用方法が若干異なります。職員の好みや施設での運用を考えて、システムを選びましょう。代表的な運用方法は以下の3つになります。
お薬チェックが完了すると、利用者の顔写真が表示される機能が搭載されていると便利です。モバイル端末を使ったシステムなら、服薬状況を入力する段階で利用者の写真を撮影することもできます。
テキストだけでなく顔を確認することで間違いを減らせるため、この機能がついている商品はおすすめです。代表的なシステムとしては、ノアコンツェル社の「服やっくん」やPHBDesign社の「誤薬防止システムnondi®」があげられます。
服薬の時間、タイミングは利用者によってそれぞれ違います。そのため、事前に投薬の時間指定が出来るかどうかについてはしっかりとチェックしておきましょう。
ノアコンツェル社の「服やっくん」は、施設ごとに時間を細かく設定することが可能です。時間幅の指定や、前回服薬時からの対応を見て警告を出すなどの機能も搭載しています。
また、利用者のタイミングがあわず、ロボットが排出した時に薬を飲めないないなんてこともあるでしょう。その点、ミヤサカ工業社の「コッくん お薬よ~」は、投薬後3時間(夜は4時間)たつと自動的に収納してくれます。その後の誤薬が防げるので安心です。
ここからはおすすめの9社の誤訳防止(服薬支援)システムを紹介・比較していきます。
モバイル端末を使用するシステム。常に携帯していられるので、必要な時にすぐに確認・入力ができます。「わずか5秒で全ての情報を確認できる」という手軽さと操作のしやすさが特徴。
服薬の時間指定を施設ごとに細かく設定でき、前回からの時間をチェックして警告音を出してくれます。他の作業に没頭していて投薬時間を忘れていた…といった、うっかりミスを防いでくれるのです。
服薬支援システム服やっくんの比較ポイント
製品情報
価格 | 要お問い合わせ |
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本体寸法 | 要お問い合わせ |
投薬日や服薬時間・利用者の情報をバーコード化し、全てのチェックをスキャンで行います。これにより、目視では防げなかったうっかりミスが大幅に減少できるのです。操作方法はバーコードをスキャンするだけなので、誰でも簡単に利用できます。
利用者を登録する際に顔写真も入れておけば、スキャンした時に自動で表示される機能も搭載。テキストの情報だけでなく顔写真もチェックすることで、確実に配薬作業を進められるでしょう。
誤薬防止システムnondi®の比較ポイント
製品情報
価格 | 要お問い合わせ |
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本体寸法 | 要お問い合わせ |
服用時間になると画面と音声により知らせてくれ、最適な薬を取り出せるようになっています。有効時間は2~5時間で、それ以外は薬を取り出せないシステム。飲み忘れや飲みすぎ・間違いを予防できます。
音声はお年寄りにも聞き取りやすいよう、ゆっくり・はっきりとした女性の声を採用。また、本体には服薬履歴がデータとして残ります。USBを使用すれば最大4週間分まで管理が可能なのです。
服薬支援ロボの比較ポイント
製品情報
価格 | 132,000円(税込)<構成:ロボ本体×1、カセット×4、ピルケース×28(1週間分)> |
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本体寸法 | 270㎜(W)×329㎜(D)×314㎜(H) |
QRコードとiPhone端末を利用した、誤薬防止支援システムです。専用ハードウェアが不要・利用料も比較的安価なので、初期費用を抑えることができます。初めてシステムを利用する場合でも、導入しやすいでしょう。
あらかじめ薬袋にQRコードを張り付けておき、iPhoneアプリで読み取るシステムです。オプションで顔写真・名前読み上げ機能も搭載。使用者に薬を渡す前にQRコードを読み取れば、その場で間違いがないか確認ができます。
誤薬チェッカーの比較ポイント
製品情報
価格 | 初期費用:0円 月額利用料:5,500円(税込)~ |
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本体寸法 | iPhoneを使用 |
全国で調剤薬局を展開している企業、日本調剤株式会社が提供している服薬支援システムです。QRコードを利用した服薬チェックを行うことにより、利用者がきちんと服薬できているかをしっかり管理。
アプリはiOSとAndroid・Windowsにも対応しており、全て無料で利用ができます。追加料金もかかりません。クラウドで情報を保存しているので、端末が故障してしまってもすぐにデータ復旧が可能です。
あんしん服薬くんの比較ポイント
製品情報
価格 | 無料 |
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本体寸法 | モバイル端末を使用 |
従来の紙薬歴に近づけることを重視したシステム。どこにいても支援票のように過去薬歴や指導歴を見ながら、患者さんに服薬指導が可能となっています。iPadを利用するので、指1本で簡単に操作ができるのも特徴です。
服薬指導の流れに沿ってタッチしていくだけで、すぐに薬歴の下書きが作成できます。また、音声入力も追加料金なしで使用できるという利点も。入力に労力をかけずにすむので、目の前にいる患者さんとの会話に集中できるでしょう。
電子薬歴GooCoの比較ポイント
製品情報
価格 | 要お問い合わせ |
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本体寸法 | ipad、PCを使用 |
ニーズに合わせて、4つのタイプが選択できる服薬支援ロボットです。朝・昼・晩・寝る前の決められた時間に薬の入ったケースが自動で出てきます。ケースを取り出さなかった場合は3時間(夜は4時間)で自動的に収納されるので、飲みすぎる心配もありません。
タイプによっては投薬時間にそばに近づくと、光と音声で知らせてくれる機能も搭載。さらにWi-Fiを利用して、服薬情報をスマホやPCに知らせてくれるタイプもあります。単一乾電池3本で2年以上稼働するので、電源コードでの転倒を防止できるという利点も。
コッくん お薬よ~の比較ポイント
製品情報
価格 | 43,780円(税込)~ |
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本体寸法 | 300㎜(W)×205㎜(D)×338㎜(H) |
20~30人分の薬を搭載できるカートタイプの大型誤配薬防止システムです。手のひらにある静脈を利用した生体認証、もしくはバーコードを読み込むことで該当者のトレーのみが開放するという仕組み。
医療情報システムと連携し配薬・投薬記録が残せるほか、保管庫としてもご利用が可能です。服薬の履歴はPDF出力して電子カルテに取り込めるので、看護記録としても利用ができます。
誤配薬防止システム「MEPS21」の比較ポイント
製品情報
価格 | 100万円 ~ 500万円(要お問い合せ) |
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本体寸法 | 要お問い合わせ |
iPod touchとQRコードを利用した誤薬防止システムです。利用者ごとに分けられたお薬ケースと、食札の両方に記載されているQRコードを照合します。両方のQRコードが一致することで、誤薬をなくすことができるのです。
QRコードを照合すると、同時にLiSOが開発しているシステムのケース記録書と服薬状況一覧表に自動転記されます。LISOは介護に対するシステム作りに力を入れている企業です。提携のシステムも一緒に利用することで、より深く情報を記録できるでしょう。
誤薬防止支援システムの比較ポイント
製品情報
価格 | 要お問い合わせ |
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本体寸法 | iPod touchを使用 |
医療や介護業界において、最も気をつけなくてはならない業務のひとつに薬の処方があげられます。利用者ごとに都度最適な薬が処方されているため、間違えると最悪命が危険に晒されることにもなりかねません。
同様に飲み忘れた薬を次回まとめて飲むことも、あってはならないことです。そのような重要な業務であったにもかかわらず、人によりダブル・トリプルチェックをするしか方法がありませんでした。
誤薬防止(服薬支援)システムは、ヒューマンエラーを防止するための重要な役割をはたしてくれます。また、確認に立ち会う時間や人数も削減できるので、職員の業務効率化にも非常に役立つでしょう。
今回ご紹介したシステムは基本的な性能に大きな差はありませんが、企業ごとに運用方法が異なります。職員のニーズや実際に利用することを考えて、システムを選びましょう。