オンライン服薬指導の流れを解説!通常のビデオ通話ツールとの違いまで

更新日 2023.05.09
投稿者:豊田 裕史

オンライン服薬指導は、忙しいライフスタイルを送っている方や高齢者に寄り添った方法といえます。全国の薬局で少しづつ導入は進んでいますが、解禁して年数が浅いため浸透率が低いのが現状です。

今回は、オンライン服薬指導の基本的な流れやビデオ通話ツールとの違いまで解説していきます。こちらの記事がシステムの導入に迷われている方のヒントになれば幸いです。

オンライン服薬指導とは

調剤薬局で薬を受け取る際に必ず受ける服薬指導を、オンラインを通して実施する方法のことです。従来は対面指導が義務付けられていましたが、ライフスタイルの変化により法改正が進められていました。

新型コロナウイルス流行を受け予定よりも早く解禁したこともあり、利用者は増加しています。オンライン診察と組み合わせることで、リスクを最小限にしながらも効率よく患者様のケアが可能です。

オンライン服薬指導の流れ

一言でオンライン服薬指導と言っても、どのような流れで実施されるのか分からない方も多いでしょう。そのような方にも分かるよう、以下で一連の流れを解説します。

患者様がオンライン診察を受ける

病院やクリニックで診察を受けた患者様は、対面・オンラインのどちらで服薬指導を受けるのかを選択できます。オンライン服薬指導を希望する場合、診察もオンラインで受診している方がほとんどでしょう。

オンライン服薬指導は、対応している薬局のみ行うことができます。利用したい薬局がある時には、オンライン服薬指導に対応しているのかをあらかじめ確認しておきましょう。

患者様もしくは医療機関が処方箋を調剤薬局へ送付

患者様がオンライン服薬指導を希望している場合、医療機関側はその旨を処方箋に記載することが必要です。必要事項が記載された処方箋は、医療機関か患者様のどちらかから調剤薬局へ送られます。

送付方法はメールやFAX・アプリなどが一般的ですが、原本は後日薬局への送付が必要です。処方箋を受け取った薬剤師は患者様の服薬情報や処方薬を確認し、オンライン服薬指導が可能か判断します。

予約受付・オンライン服薬指導実施

患者様からの予約を受け付けたら、薬剤師は対面時の業務と同様に服薬指導の準備を始めます。同時に、予定の時間にスムーズに通信できるようインターネット環境の確認も行っていくのです。

一連の準備が整い約束の時間になったら、システムを利用しビデオ通話で患者様とつながります。接続が開始したら、対面と同じ流れで患者様に対し服薬指導を進めていきましょう。

患者様が会計を行う

服薬指導が完了したら、患者様が料金を支払います。通常は薬局が指定した決済方法で支払いますが、クレジットカードが用いられる場合がほとんどです。

薬を配送する

オンライン服薬指導後、医薬品を梱包・配送します。配送自体は専門業者に依頼する薬局が多いですが、品質を確保した状態で到着できるよう配慮が必要です。発送後は患者様に確実に荷物が届けられたかも確認していきます。

必要に応じたフォローを行う

服薬指導を終えた薬局は、必要に応じて医師と薬剤師の間で情報共有を行います。また、薬剤期間中に適切な使用方法をキープできるよう患者様へのフォローも大切な業務です。

オンライン服薬指導を実施する際の注意点

オンライン服薬指導はビデオ電話システムを利用するため、顔を確認しながら行うことができます。しかし、普段あまりインターネットを利用しない方に対して配慮する点は非常に多いです。

ここでは、オンライン服薬指導を実施する際の注意点を解説していきます。

本人確認は必ず行う

特に初回の場合、患者様と薬剤師の双方で身分確認書類を用意し確認する必要があります。

相手の身元が分かれば、双方とも安心して服薬指導をスムーズに進められるでしょう。何度か服薬指導を受けており、顔見知りとなれば毎回行う必要はありません。

プライバシーの確保に注意

患者様によっては、薬の内容を周りに知られたくないという方もいます。そのような理由からオンライン服薬指導を選択している場合もあるのです。薬局側ができる配慮のひとつとして、周囲に人がいない空間で通話を行うことがあげられます。

画面越しの空間が静かであれば、患者様に安心感を与えられるでしょう。患者様目線に立った配慮を心がけていけば、信頼度アップにもつながります。

患者様に対し説明責任をきちんと果たす

オンラインは対面に慣れている患者様にとって、普段とは全く違う環境になります。対面よりも情報を理解しにくくなるため、より丁寧な説明を心がけるとよいでしょう。例えばオンライン服薬指導時の情報漏洩について、責任の所在は必ず伝えておきます。

薬剤師の知見によりオンライン服薬指導の実施ができない場合も、理由を添えた上で丁寧に説明しましょう。

患者様に薬についての理解を深めてもらう

説明責任の重要性は、薬について正しく理解してもらうことにもつながります。処方された薬を適正に使用してもらうためには、患者様の理解度に応じた対応が必要です。口頭での説明の他に、薬の情報を画面に表示するのも有効な手段になります。

必要であれば服薬期間中の様子を確認したり、診察した医療機関へ情報共有すると良いでしょう。

オンライン服薬指導のメリット・デメリット

ここからは、オンライン服薬指導のメリット・デメリットを紹介します。

オンライン服薬指導のメリット

まずはメリットについて詳しく見ていきましょう。

業務の効率化を図れる

オンライン服薬指導は、あらかじめ予約を受けてから進めることができます。患者様の待ち時間を削減でき、薬局も予定に合わせて準備を進めていくので業務の効率化が可能です。

業務がスムーズに進められれば、空いた時間を患者様のサポートに充てることもできます。

顧客満足度向上につながる

患者様は予約した時間に通信ができる環境であれば、どこでも服薬指導を受けられます。リラックスした環境で受けられ、待ち時間を削減できるのでメリットは大きいです。時間に制約のある忙しい人なども、その後の予定を立てられやすくなるでしょう。

引っ越しなどでかかりつけ薬局に行くことができなくなっても、オンライン服薬指導であれば問題ありません。

感染症対策になる

ご自身の体調によって、感染症のリスクを下げたいと考える方は非常に多いです。本来であれば医師から処方された薬をもらいたくても、感染を恐れて外出できないという方もいます。

オンライン服薬指導であれば、感染リスクを下げながら適切な処置が可能です。

プライバシーを保護できる

近所や知り合いに自身の病気や服用している薬を知られたくない場合も、オンライン服薬指導は役立ちます。

プライバシーが保護されることで、患者様も積極的に治療に取り組むことができるのです。

他薬局との差別化が期待できる

少しづつ普及しているとはいえ、オンライン服薬指導を導入していない薬局はまだまだ多いです。裏を返せば、いち早く導入することで他薬局との差別化に繋げることができます。

間口も広がるので、新規患者様の獲得にも繋げられるでしょう。

予約から決済手続きまでが簡単

オンライン服薬指導システムは、予約から決済までを一元管理できるものがほとんどです。患者様はもちろん、薬局側も情報を把握しやすくなり効率化につながります。

その場で決済も完了するので、未払いの心配もありません。

オンライン服薬指導のデメリット

続いてオンライン服薬指導のデメリットを確認していきましょう。

患者様・薬局の双方に安定した通信環境が必要

オンライン服薬指導を利用するには、当然のことながら安定した通信環境が必要不可欠です。薬局だけでなく、患者様側双方が環境を整備しておかなくてはいけません。

高齢者やオンラインの利用が難しい方にとっては、特に配慮が必要な部分となるでしょう。

セキュリティに注意する必要がある

オンラインを利用すると、どうしてもセキュリティ対策を行う必要があります。服薬指導では処方箋を始めとした多くの個人情報を扱うため、特に注意が必要です。

通信回線の整備やウイルス対策ソフトの導入など、場合によっては追加費用がかかってきます。

操作に慣れていない患者様のサポートが必要

近年では、新型コロナウイルスの流行によりオンライン慣れしている方が増えてきました。しかし、オンライン服薬指導単体で見ると利用者は決して多いとはいえません。

慣れていない方に操作方法をレクチャーする機会は、必然的に多くなるでしょう。

対面に比べて薬の到着までに時間がかかる

オンライン服薬指導後、通常であれば医薬品は配送業者の手により患者様に届きます。対面であればその場で受け取れるのに対し、オンラインだとある程度の日数がかかってしまうのです。

急いで服薬を行う必要がある場合には、オンライン服薬指導は不向きといえます。

オンライン服薬指導システムでできること

メーカーにより異なりますが、オンライン服薬指導システムでは主に以下の機能を搭載しています。

  • オンライン服薬指導
  • 予約及びアラート機能
  • 決済機能
  • 薬の配送
  • オンライン診療システムと連携

以下で詳しく解説していきます。

オンライン服薬指導

予定時間になったら薬剤師側からビデオ通話を開始させることができます。患者様・薬剤師双方の顔を見ながら対面と同じように服薬指導が可能です。

予約及びアラート機能

患者様はシステム上にあるカレンダーや定型フォームから予約をとれます。アラート機能が搭載されているシステムであれば、薬局と患者様ともに予約時間を忘れる心配がありません。

決済機能

システムが指定している方法での決済を行えます。薬局側が料金を入力すると、患者様が登録しておいたクレジットカードへ自動請求しスムーズな決済が可能です。

薬の配送

配送業者が薬局へ集荷を行い、患者様へ届けてくれます。エリアによっては最短で当日配送も可能です。ただし、配送機能に対応していないメーカーもあるので、あらかじめ確認しましょう。

オンライン診療システムと連携

同メーカーのオンライン診療システムであれば、患者様の情報をスムーズに連携でき服薬指導がしやすいです。

近隣の医療機関で診療システムを導入している場合、可能な限りメーカーを揃えることをおすすめします。

通常のビデオ通話ツールとの違い

オンライン服薬指導は、テレビ電話などを利用して実施するよう定められています。専用システムである必要はなく、コロナ禍により普及が増えた既存のテレビ通話ツールでも実施可能なのです。

専用システムとビデオ通話ツールでは、服薬指導に特化した機能の豊富さに違いがあります。服薬指導だけであればビデオ通話で十分ですが、予約や決済などを含めると汎用的なツールでは不十分です。

オンライン服薬指導システムは服薬指導を含め、それに伴う前後の業務もワンストップでカバーできます。以下では、オンライン服薬指導システムとビデオ通話ツールを比較しました。

オンライン服薬指導システム 汎用的なビデオ通話ツール
予約 ・スケジュール機能があるシステムを利用すれば、予約状況の確認が画面上で可能
・患者様はシステムから予約をはじめ、変更やキャンセルを行える
・日程調整のために事前に電話する必要がある
・変更やキャンセルがある場合も都度連絡をしなければならない
問診表 ・事前問診機能を利用すれば、事前に患者様の情報を確認できる
・患者様は事前に入力を行え、時間の有効利用が可能
・服薬指導前の問診表を確認するためには、ある程度の時間が必要
・服薬指導時の聞き取りとなるため、その分テレビ通話の時間が長くなる
保険証や本人確認 ・事前共有機能を使い、保険証を画像で確認できる ・服薬指導時の保険証の読み上げが必要
・別途メールやFAXでデータを送らなければならない
服薬指導 ・システムを使いスムーズに入室ができるので、事前案内が不要 ・アクセス先のURL発行作業が発生する
・患者様にURLを事前に送る必要がある
決済 ・キャッシュレス決済機能があれば、その場で支払いを完結できる ・次回来局時に支払うか、振込による後払いになることが多い
・未払いとなってしまうリスクが高い
配送 ・配送業者との連携機能を利用すれば、手続きがスムーズ
(一部のメーカーでは対応していません)
・送り状の記載・配送業者への集荷依頼や持ち込んで発送作業を行う必要がある

オンライン服薬指導システムを検討する際のポイント

オンライン服薬指導システムを扱っているメーカーは多く、選ぶには自局にとっての基準が必要です。ここではオンライン服薬指導システムを検討する際のポイントを解説していきます。

患者様がアクセスしやすい体制が整っているか

オンライン服薬指導を利用してもらうには、まずは患者様に知ってもらうことが必要になります。患者様がアプリなどから対応薬局を検索できるシステムが導入できれば、周知にもつながるでしょう。

そのまま予約を行えれば機会損失も防止できます。このように、患者様が利用しやすいシステムを取り入れているメーカーは非常におすすめです。来局する患者様へ向けた案内資材を、どれくらい提供してくれるのかも確認しましょう。

服薬指導以外の機能が充実しているか

オンライン服薬指導システムを利用するメリットとしては、ビデオ通話以外の機能にあります。予約や薬歴確認・会計などオンライン服薬指導の一連の手順を連携することで、ミスの防止に効果的です。

便利な機能を導入することは、患者様にとって利用しやすい環境を提供することにもつながります。患者様の幅広いニーズに応えられれば、信頼関係が生まれやすくなりリピート率も向上するでしょう。

サポートは充実しているか

オンライン服薬指導は解禁されて日が浅いため、浸透率は低いといえます。社会的にも新しい取り組みに区分されるからこそ、サポートの手厚さは重要なポイントです。サポートの定義は幅広く、マニュアル提供のみの場合もあれば現地駆けつけまでさまざまになります。

サポートがあるからと安心せず、どのような内容をどこまで行ってくれるのかを確認しておきましょう。万が一の時に万全の体制が整えられていると分かっていれば、薬局スタッフも安心して働くことができます。

まとめ

新型コロナウイルスの影響や高齢者の増加により、新しい取り組みが進められています。オンライン服薬指導もそのひとつです。インターネット環境や操作のレクチャーなど必要不可欠な部分はありますが、それ以上のメリットがあります。

専用システムを導入すれば、予約や決済までワンストップで行えるので一連の業務がスムーズです。解禁されて日が浅いシステムであるからこそ、機能やサポートにこだわって導入を進めていきましょう。

中小企業診断士
セカンドラボ株式会社 PR Solution Div.
URL:https://note.com/2ndlabo/n/n949eaa3e9d69

北海道大学を卒業後、医療機器の営業として6年間勤務。外科、整形外科、泌尿器科領域を中心に民間・国公立の病院を担当。2020年よりセカンドラボ株式会社に入社。医療福祉施設の課題解決プラットフォーム「2ndLabo」にて各種ITツール、医療機器の導入支援、クリニック開業支援に従事。

2ndLaboのサービスを通じて、これまで1,000件を超えるサービス導入支援・開業支援を担当。得意分野は、電子カルテ、介護ソフト、各種医療機器。

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