老人ホーム建設時に注意すべきポイントとは?気になる費用も解説

更新日 2024.06.26
投稿者:豊田 裕史

国内の65歳以上の高齢者数は2042年頃にピーク(3,878万人)を迎えると予想されており、高齢者向け施設は今後ますます需要が高まるでしょう。

この記事では、老人ホームの建設を検討する方に向けて、知っておきたいポイントや建設時にかかる費用を解説しています。老人ホームの建設に失敗しないための注意点も紹介しているので、ぜひお役立てください。

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そもそも老人ホームとは?

老人ホームとは病気や加齢により自宅での生活が困難になった高齢者を対象に、日常生活のサポートや介護サービスを提供している施設の総称です。ひとえに老人ホームと言っても、形態が違うと、収益モデルや建設にかかる費用も異なります。早速それぞれの特徴を見ていきましょう。

施設形態 主な運営主体 特徴
有料老人ホーム 民間企業 高齢者の方が食事や生活サービスの提供を必要とする場合に入所する施設
特別養護老人ホーム 社会福祉法人、医療法人 常時介護が必要で在宅での日常生活が困難な場合に入所する施設
介護老人保健施設 社会福祉法人、医療法人 在宅生活への復帰に向けたリハビリを中心とする医療ケアと介護を必要とする場合に入所する施設
グループホーム 民間企業、NPO 要支援2以上の認知症をもつ高齢者が共同生活を送るための施設
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) 民間企業 自立して在宅生活が送れる方や軽度の要介護者が日常生活や介護などのサービスを必要な時に受けられる住宅

主な5つの形態のうち、「有料老人ホーム」「グループホーム」「サービス付き高齢者向け住宅」は民間企業による運営が認められています。

有料老人ホーム建築の基本事項

有料老人ホームを例に、建設の流れや注意点を解説していきます。有料老人ホームを設立するには、一定の基準を満たしたうえで、自治体に届出を提出することで開設できます。なお、手順は以下の通りです。

  • 老人ホーム設立プランを立てる
  • 土地・施設建設予定地を決める
  • 損益・CFシュミレーションをする
  • 都道府県・市区町村の担当へ相談
  • 都道府県・市区町村の審査を受ける
  • 審査通過後に法人を設立する
  • 備品や人員雇用の準備をする
  • 行政と事前協議を行い、設置届を提出
  • 正式に受理されたら建設工事を始める

認可を受けるには、設備や居室面積など基準が設けられています。 ここからは、注意すべき点や知っておきたい事柄をチェックしていきましょう。

立地条件をよく理解する

労務費単価や土地の価格が地域によって違うので、土地購入や建設にかかる費用は、それぞれ変わります。地域別の建設費用は、関東地方や都市部で高い傾向があるようです。 一般住宅を建てる際とは違い、有料老人ホームとして認可をもらうには、行政が定める基準をクリアする必要があり、施設が建設できるだけの土地と十分なスペースが必要です。 車での送迎なども考慮して、候補地を決める必要があるでしょう。

建物の規模に注意

有料老人ホームを建設する場合、居室の面積や廊下の幅など、満たすべき基準があります。居室は個室であることや、一人当たりの床面積は13㎡以上である必要があり、廊下は車椅子がすれ違ってもスペースに余裕がある1.8m以上の幅で建築するのが規定です。入居者が安全で快適な日常生活を送るのに適した規模と構造にしましょう。

出典:厚生労働省「社会福祉住居施設の設備基準」

必要な設備基準について

建築法の他に高齢者住まい法などを基準に設備を整えます。有料老人ホームは、消防設備や空調設備、ナースコールや医療設備を設置するため一般的な住宅とは仕様が異なるでしょう。また、施設は耐火建築物でなくてはいけませんし、バリアフリー対応など十分に備えておく必要があります。細かい法規制や登録基準があるので、運営ノウハウのある専門家へきちんと相談して、確認をしましょう。

有料老人ホーム開設までにかかる費用

有料老人ホームにかかる費用は2億円〜程度が多いようです。あくまでも一例ですが、坪単価の平均は68.1万円/坪(参照元:日本医療福祉建築協会)だと言われています。初期費用が多額なため、運営開始後に収益が見込めるかシュミレーションを重ねる必要があるでしょう。初期費用の主な内訳は下記の通りです。

  • 土地購入費
  • 施設建設費
  • 設備・什器
  • 会社設立費

会社設立の際には、福祉施設建設のノウハウを持つ専門家や、税理士さんに相談しながら進めるのが安心です。

定員20人程度の小規模施設の例

表は、デイサービスを併設した住宅型有料老人ホーム(定員20人程度)の建設費用事例です。土地面積250坪(約825㎡)、建物延床面積約300坪(約990㎡)の場合にかかった費用は以下の通りでした。

土地購入費 825㎡ 100,000,000円(1㎡=約121,000円)
建設費 延べ床990㎡ 210,000,000円(1㎡=約212,000円)
設備・備品費 15,000,000円
営業・販促費 (パンフレット・広告等) 2,000,000円
求人費 3,000,000円
合計 330,000,000円

出典:【図解】老人ホームの開業までにかかる費用(土地代・建設費・設備費・人件費・運営費)

記載されている1㎡=12万円の土地取得費用は関東近郊の中規模地方都市レベルの価格です。 また、今回の事例では、営業・販促費や求人費も含まれています。施設が軌道に乗るまでの数ヶ月を見越して、開設後にかかる毎月発生するランニングコストなど事前にキャッシュフローの確認をしておくと良いでしょう。

老人ホーム開設時に活用可能な資金調達方法

老人ホームの建設費用は資金調達で得る場合が多いでしょう。老人ホームの中でもサ高住は、建設時に補助金制度が利用できたり、開設後、税制優遇制度や長期固定金利でローンが組めるケースがあります。補助金を申請する場合は、「サービス付き高齢者向け住宅整備事業」において最大、建築費の10分の1を補助金を受け取ることが可能です。また、固定資産税や不動産所得税などの税制面でも優遇措置が設けられています。

詳細については各機関に確認が必要です。ここでは、老人ホームの形態に関わらず利用できる資金調達方法の概要をまとめましたので、参考になれば幸いです。

日本政策金融公庫の創業支援

日本政策金融公庫では創業融資として「新創業融資制度」や「中小企業経営力強化資金」などの制度が設けられています。特に、「中小企業経営力強化資金」は、認定支援機関の助言があれば無担保・無保証・低利で融資を受けられるので対象者は申請しておくと良いでしょう。全国に支店があり、固定金利での融資や、長期返済が可能など、事業をはじめる人が融資を受けやすい制度が整っています。

WAM(独立行政法人福祉医療機構)からの融資

施設建設の費用を「長期・固定・低利」で融資が受けられます。融資の上限金額が高いため、優先的に検討したい調達先です。地域における医療及び介護施設に関する法律に基づき整備される有料老人ホームが対象です。

融資相談は東日本と西日本で窓口が分かれています。他の選択肢に比べ調達までの時間がかかる傾向にあるようですが、2〜3ヶ月で見積もっておくと心配ないでしょう。

金融機関等からの融資

メガバンクや地銀など金融機関から融資を受ける制度もあります。実績のない創業者が金融機関から融資を受けるのは難しいように聞こえますが、「信用保証協会」という公的機関に保証人になってもらうこともできます。信用保証協会に保証を受け、金融機関から融資を受けるという方法もあります。

各期間は全国各地に支店があり地域ごとに融資制度を設けています。また、独自の融資制度を設けている自治体も多くあるので、自治体の窓口で確認すると良いでしょう。

きらぼし銀行|高齢者施設サポートローン

高齢者向け有料老人ホームの開設などに対して、最長30年、最大3億円の融資が受けられます。施設建設資金はもちろん増改築資金及び付帯する諸費用に充当できて、借り換え資金でも利用可能です。

りそな銀行|りそな医療福祉応援ファンド

高齢者向け有料老人ホームの開設などに対して、最長30年、最大15億円の融資が受けられます。施設建設資金及び整備資金、不動産購入資金等に充当できて、借り換え資金でも利用可能です。

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老人ホームの設計・施工会社選定時のポイント

施設建設で失敗しないためには、施工会社を慎重に選ぶ必要があります。どのような会社を選べばいいのかポイントをチェックしていきましょう。

設計施工の一括発注が可能かどうか

設計から施工まで一括発注が可能な施工会社を選ぶと費用や施工期間が最短で抑えられるなどのメリットがあります。設計事務所で設計を依頼して、建設会社が施工をするという分離発注だと、報告連絡相談の手間も会社をまたぐためその分手間や時間がかかります。施工会社であっても設計士やデザイナーを抱えている場合がほとんどです。設計やデザインで、他施設との差別化を図る施策などでない場合は一括発注が良いでしょう。

老人ホームの施工実績があるかどうか

老人ホームの建設には、施設の施工実績が豊富な施工会社を選ぶ必要があります。また自治体によっても規定が異なる場合があるので、地域の事情を把握している施工会社の方が安心です。 施設ごとの設備基準が異なるので、福祉施設の設計・建築のノウハウがないと細かな法律を十分に把握していない可能性があります。一般的な知識や技術だけではなく、使用者の目線に立ってバリアフリー設計や手すりなどの設備の位置を調整できる業者を選びましょう。

まとめ

老人ホームの建設には、広いスペースや設備に適した仕様が必要になるため相応の費用がかかります。しかしその反面、初期の費用が多額になることが、他の事業者が参入しにくい障壁にもなるでしょう。冒頭に述べておりますように、日本の高齢化のピークは2042年ごろと予想されており、現在の老人ホームの施設数ではすべての高齢者の介護を行うのに足りなくなってしまう可能性があります。 高齢者が安全かつ快適に生活するために、老人ホームの建設は日本の未来を担う大切な事業です。この記事が施設建設検討において参考になれば幸いです。

介護施設の建築リフォーム業者については介護施設のリフォーム業者おすすめ5選|業者の選び方も解説でも解説しています。ぜひ参考にしてください。

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中小企業診断士
セカンドラボ株式会社 PR Solution Div.
URL:https://note.com/2ndlabo/n/n949eaa3e9d69

北海道大学を卒業後、医療機器の営業として6年間勤務。外科、整形外科、泌尿器科領域を中心に民間・国公立の病院を担当。2020年よりセカンドラボ株式会社に入社。医療福祉施設の課題解決プラットフォーム「2ndLabo」にて各種ITツール、医療機器の導入支援、クリニック開業支援に従事。

2ndLaboのサービスを通じて、これまで1,000件を超えるサービス導入支援・開業支援を担当。得意分野は、電子カルテ、介護ソフト、各種医療機器。

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