サービス付き高齢者向け住宅の建築について解説|建築基準法や費用など

更新日 2022.12.28
投稿者:豊田 裕史

超高齢社会のあおりを受け、サービス付き高齢者向け住宅が年々増えています。政府もサービス付き高齢者向け住宅を新築する者に対して補助金を交付しており、普及を後押ししていることがわかります。

しかし、サービス付き高齢者向け住宅を建築するにあたって、基礎知識がない方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、サービス付き高齢者向け住宅の基本的な知識や建物の設備基準のほか、補助金などを解説します。本記事を読むと、サービス付き高齢者向け住宅の建築に関する基礎知識や費用、補助金などについて理解できるでしょう。

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サービス付き高齢者向け住宅とは?

サービス付き高齢者向け住宅は、バリアフリー対応の賃貸住宅のことで、安否確認や生活相談の提供が義務付けられている施設です。一般的には「サ高住」とも呼ばれます。

サービス付き高齢者向け住宅は下記の2種類に大きく分けられます。

一般型 介護サービスは訪問介護が主体
介護型(特定施設) 介護保険にある食事・入浴・排せつなどの身体介助や生活介助などが主体

サ高住には、原則60歳以上の介護度が低い方や自立した方が入居の対象になります。また、医療や介護の資格を持った職員が常駐している点も特徴といえるでしょう。

有料老人ホームと混合される場合がありますが、大きく異なる点はサ高住は「賃貸契約」であるということです。入居者の1日のスケジュールは本人の自由なので、スケジュールが決まっている有料老人ホームとは異なります。

サービス付き高齢者向け住宅の設備基準

サービス付き高齢者向け住宅の運営には、設備の基準があります。

具体的な設備基準について、有料老人ホームと比較して下表で見ていきましょう。

サービス付き高齢者向け住宅 有料老人ホーム
管轄 国土交通省、厚生労働省 厚生労働省
根拠法律 高齢者住まい法 老人福祉法
個人の居室面積 床面積25㎡(※条件つきで18㎡) 以上/戸あたり ※リビングや食堂などの共用部で十分な面積を有する場合は18㎡以上 原則個室で、13㎡以上/戸あたり
設備基準 各居室にキッチン、トイレ、収納設備、洗面、浴室が必要。条件を満たせば例外として、一部共用部の利用が可能 スタッフルーム、介護室、スプリンクラーの設置などが必要
配置人数 介護・看護の資格を持つ生活支援を行う職員を日中常駐 提供サービスによって異なるが、施設長・事務スタッフ、生活相談員、介護士、看護師、栄養士、PT、OTなど
生活支援サービス 生活相談と安否確認のサービス提供が義務付けられている 食事・入浴・排泄介助などの介護サービスを提供
介護サービス 外部利用 外部利用
医療サービス 外部からの往診または、医療機関への受診 外部からの往診または、医療機関への受診
契約形態 賃貸契約 利用権方式
建築基準法の適用 共同住宅 児童福祉施設など

上記のように、サ高住と有料老人ホームでは設置基準や規制などが異なります。

食事や入浴などのサービスを提供する場合は有料老人ホームに該当し、設置基準や法律も変わってくるため注意が必要です。

サービス付き高齢者向け住宅と建築基準法

サービス付き高齢者向け住宅を新築で建てようとする際、気をつけなければならないのが「建築基準法」です。

しかし、「サービス付き高齢者向け住宅」としての用途は、建築基準法上では存在しません。施設内に備え付けられている設備によって、「有料老人ホーム」「共同住宅」「寄宿舎」の用途に分類されます。

下記で、サ高住の区分について詳しく見ていきましょう。

建築基準法における「サ高住」の区分表

建築基準法におけるサービス付き高齢者向け住宅の用途はどのように分けられるのでしょうか。

下記の建築基準法における「サービス付き高齢者向け住宅」の区分表の考えをもとに、総合的に判断しています。

用途 区分理由
有料老人ホーム 老人福祉法第29条に規定する、食事・排泄・入浴などの介護サービスを提供などを提供する施設
共同住宅 有料老人ホームを除いて、各居室内にトイレ・洗面台・キッチンが設置している
寄宿舎 有料老人ホームを除いて、居室内にキッチンがなく、共同キッチンがある

食事や排泄に関わる介護サービスを提供している施設も多いため、建築基準法では有料老人ホームに該当するケースもあるでしょう。ただし、国土交通省管轄の情報提供システムに登録した施設は、国土交通省・厚生労働省から「サ高住」として認定されます。

サービス付き高齢者向け住宅の建築にかかる費用

サ高住の建築にかかる費用は、一般的な賃貸物件や戸建住宅の建築費用よりも高額になります。それは、サ高住が居室面積に基準があったり、バリアフリー化にしたりする必要があるからです。

具体的な費用は、1坪70~80万円程度とされています。

例えば、延床面積が600坪だった場合、建築費用は「4億2,000万円」必要になる計算です。また、土地を持っていないケースであれば、新たに土地を取得する必要があるでしょう。

サ高住を建てるために必要な土地は、300〜500坪程度です。坪単価を30万円とした場合、下記のような計算になるでしょう。

建築費用 1坪70万円×延床面積600坪=4億2,000万円
土地を取得して建築する場合 4億2,000万円(建築費用)+30万円/坪×300坪=5億1,000万円

上記はあくまで一例なので、設備の内容や建築業者などによっても大きく異なります。

サービス付き高齢者向け住宅の補助金制度

サ高住は国土交通省の「高齢者等居住安定化推進事業」の対象になっているため、新築で建てると建築費の最大10分の1の補助金を受け取れます。さらに、固定資産税や不動産取得税に関しても、税制優遇を受けることが可能です。

国土交通省のサービス付き高齢者向け住宅における税制優遇の概要によると、それぞれ下記の内容になります。

固定資産税に関する税制優遇
一戸当たり120㎡相当部分につき、5年間税額の2/3を参酌して1/2以上5/6以下の範囲内において、市町村が条例で定める割合を軽減

不動産取得税に関する税制優遇
家屋について1,200万円控除、土地について4万5,000円(150万円×3%)または土地の評価額のいずれか大きい方の金額を税額から控除

市区町村によって適用条件が異なるため、地域の役所窓口に相談しましょう。

出典:国土交通省|サービス付き高齢者向け住宅における税制優遇の概要

サ高住の補助金を受け取るためには、下記の要件を満たす必要があります。

  • 各居住部分の床面積が25㎡以上
  • バリアフリー構造であること
  • トイレ・浴室の設置など一定の基準を満たしていること
  • 安否確認と生活相談のサービスを提供すること
  • 長期的な安定が図られた契約を交わしている
  • 家賃やサービス対価、敷金以外から金銭を徴収しないこと

サ高住の設計や建築に関しては建築業者に委託することが多いため、上記の要件は満たせるでしょう。

なお、サ高住を新築で建てる場合と、建物を改修してサ高住を建築する場合では補助金が異なる点には注意が必要です。

補助額

国土交通省のサービス付き高齢者向け住宅における税制優遇の概要によると、床面積に応じて下記のように定められています。

新築の場合

補助率 補助金限度額 補助の対象
床面積30㎡以上 補助率1/10 135万円/戸 全住戸数の2割を上限に適用
床面積25㎡以上 補助率1/10 120万円/戸
床面積25㎡未満 補助率1/10 90万円/戸

補助金限度額は建築費の1/10を上限として床面積が30㎡以上あり、一定の基準を満たした設備であれば、最大135万円/戸を受け取れます。ただし、135万円/戸を受け取れるのは、全住戸数の2割を上限としており、2割を超える住戸については120万円/戸になります。

改修の場合

補助率 補助金限度額 補助の対象
1/3 180万円/戸
  • ・階段室型の共有住宅を活用して新たに共用廊下を設置する
  • ・建築基準法などの法令に適合するための工事が新たに必要な場合

上記にある改修以外は、新築を建てる際の限度額になります。

出典:国土交通省|サービス付き高齢者向け住宅における税制優遇の概要

補助金の対象外になる場合

これまで説明した、サ高住の補助金要件や登録基準を満たしても、補助金を受け取れないケースがあります。

以下の条件に当てはまる場合は、補助金を受け取れないので注意してください。

  • 家賃30万円以上/戸のサ高住
  • 事業目的を達成するために必要ない資金、またはサ高住に関係のない設備投資

例えば、サ高住の外観に設置する装飾などは、事業目的と関係がありません。

ただし、市区町村の判断によって事業目的と判断される場合もあるため、改修工事を行う際は確認が必要です。

まとめ

サービス付き高齢者向け住宅に関する建築基準法や建築費用について解説してきました。

サ高住は、政府が補助金を出すほど今後需要の見込まれる事業の一つです。ただし、補助金を受け取るためには、いくつかの要件を満たさなければなりません。

また、最も高い補助金の135万円/戸を受け取れるのは、全住戸数の2割を上限に適用されるなど細かな規定もあります。

今回解説した、サ高住の建築に関する基礎知識をしっかりと理解し、計画を立てて開業を進めましょう。

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中小企業診断士
セカンドラボ株式会社 PR Solution Div.
URL:https://note.com/2ndlabo/n/n949eaa3e9d69

北海道大学を卒業後、医療機器の営業として6年間勤務。外科、整形外科、泌尿器科領域を中心に民間・国公立の病院を担当。2020年よりセカンドラボ株式会社に入社。医療福祉施設の課題解決プラットフォーム「2ndLabo」にて各種ITツール、医療機器の導入支援、クリニック開業支援に従事。

2ndLaboのサービスを通じて、これまで1,000件を超えるサービス導入支援・開業支援を担当。得意分野は、電子カルテ、介護ソフト、各種医療機器。

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