エレベーターといえば、商業施設やホテルにあるタイプを思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、エレベーターには用途に応じてさまざまな種類があるのです。今回はエレベーターのタイプを多角的に解説していきます。
まずは初めに、用途別にみたエレベーターの種類について解説します。
商業施設やテナントビル・ホテルなど、人を乗せる目的で設置されているエレベーターです。エレベーターと聞くと、一番イメージしやすいタイプでしょう。1日の中でも利用者が多いため、効率よく乗降できるよう中央開きのドアが主流です。乗車している方にとって快適な速度と感じられる運転スピードが保たれます。建物内に複数台設置する場合、群管理システムで効率よく稼働できるよう機器ごと割り振られるのも特徴です。
住宅用エレベーターとは、中低層から高層マンション規模の集合住宅に設置されているタイプのことです。家具や大型の荷物も積み込めるよう、奥行き部分が長く設計されています。ドアは、限られたスペースの中でも間口を大きく取れる片開き式です。かご奥に開閉式のトランクを設けることで、ストレッチャーを搬送できるよう設計しているタイプもあります。最近では、各階から中の様子が見える防犯窓付きドアを採用している企業が多いです。エレベーター内を閉ざされた空間にしないことで、防犯を未然に防ぐ効果が期待できます。窓がドア部分のほぼ全面に施された大型防犯窓を採用すれば、背丈の低い子供や車いすの方も安心です。
ストレッチャーや寝台を運べるよう設計されたエレベーターです。医療機関や福祉施設など、利用者を載せたまま搬送する機会が多い場所で設置されています。反対に、法令によりストレッチャーを日常的に使用する建物以外での設置はできません。万が一に備え目的階まで直通運転に切り替える・搬入出時にドアを開けておく時間を伸ばす機能を搭載しています。衣装機器の電源を確保するためにAC電源が設置されている種類もあり、緊急時に配慮した運用が可能です。
荷物の搬送のみを目的としており、運搬目的やエレベーターの運転者以外の乗車は禁止されています。ドアは片開きと上開きの2種類が主流です。通常の片開きの他に間口が広い3枚片開きも多く見られます。上開きタイプはスペース確保に有効なため、人気のタイプです。荷物用ではありますが人が操作するので、安全を考慮したセーフティドアが採用されています。
車いすの方でも利用できるよう操作しやすい高さのコンパネや、かご側面に手すりを設置したエレベーターです。後期高齢化が進む中、より多くの人が不満を感じることなく使えるよう工夫されています。かご内にミラーを取り付けることで、ドアの開閉状況を振り返らずに確認できる点も特徴です。
小型の荷物を運搬する際の専用エレベーターです。施設内で荷物の搬送が多い工場や病院・店舗などで多く採用されています。テーブルタイプは、立った姿勢をキープしながら荷物の積み下ろしが可能です。また、フロアタイプでは台車に荷物を載せたまま搬入出できるので、腰を痛める心配がありません。配送階に素早く連絡できるよう、音声案内装置や通話式インターホンを装備しているメーカーもあります。
ここからは、作動原理別にエレベーターを分類し、特徴や仕組みについて解説していきます。
電動モーターでワイヤーロープを巻き取り・巻き戻しを行うことでエレベータールームを昇降させる方式です。さらに釣合おもりを使用した「トラクション式」と、ドラム装置にロープを巻き付ける「巻胴式」に分けられます。
機械室のあるトラクション式はエレベーターで最も一般的なタイプです。システム構成が簡単で、ビルやマンションなど様々なシーンで使われています。かごと釣合おもりのバランスを取り、エレベーター上部の巻上機でロープを操作して動かします。
機械室のないトラクション式は、巻上機や制御装置が昇降路内部に設置されています。巻上機は上部に設置する場合と下部に設置する場合があります。建築上部に荷重がかからず昇降路を自由に設計できる点がメリットです。また、機械室を設置しない分、建物の屋上に突出物がなく、日影規制や高さ制限の影響を受けません。
エレベーターの巻上機についてはエレベーター巻き上げ機とは?構造から価格や修理のタイミングまででさらに詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
巻胴式は、小規模な建物で使われるタイプのエレベーターです。シンプルな構造で、スペースの限られる建物でも設置しやすいタイプです。かごに結んだロープを巻胴(ドラム)に巻きつけて動かします。釣合おもりや機械室がないため、建物の高さ制限などの影響を受けません。
エレベータールームを下からジャッキで直接支えます。作動油の圧力を制御して昇降させる方式です。機械室が不要で、日影規制や高さ制限の影響を受けません。しかし先述したとおり、機械室のないロープ式エレベーターが開発されているため、現在はロープ式が主流です。油圧式の駆動方式はさらに「直接式」「間接式」「パンタグラフ式」に分類することができます。
直接式は油圧ジャッキが直接かごを動かす仕組みです。エレベーターのかごと油圧ジャッキが直結しています。油圧ジャッキの動きが直接かごに伝わるため、積載量が大きく重量物をのせるのに適しています。
間接式は、油圧ジャッキがロープや鎖を介して滑車を動かし、間接的にかごを動かす仕組みです。間接式の場合、油圧ジャッキを地中に埋める必要がありません。また、ロープの掛け方によって効率的にかごを動かすことができます。
パンタグラフ式は、かごの下に取付けられたアームを油圧ジャッキで動かす仕組みです。マジックハンドのようにかごを動かす形です。
回転運動を直線運動に置き換えることができるリニアモーターを利用しているエレベーターです。一次側を釣合おもりに内蔵し、二次側を昇降路の全長に伸ばすことで巻上機が必要ありません。
水圧を利用して駆動するタイプのエレベーターです。油圧式と原理は同じですが、よりコンパクトに設置できます。
エレベーターのリニューアルのタイミングについてはエレベーターリニューアル工事の費用・タイミング・注意点を解説でさらに詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
一言でエレベーターと言っても、用途や駆動方式は様々です。商業施設やホテルにあるタイプの他に、荷物を運ぶためのエレベーターも存在します。また、病院やマンションでは使用目的に合わせて設計が工夫されているのです。駆動方式としては、今まではロープ式と油圧式が一般的でした。しかし、最近ではリニアモーター式や水圧式など、環境に配慮されたエレベーターも開発が進んでいます。導入時には使用目的や費用など、長期的な目線での比較がおすすめです。