UTMは複数のセキュリティ機能を統合し、あらゆる脅威からネットワーク環境を守ってくれる端末です。なかでも、セキュリティ対策の不安や手間、コストなどの課題を解決してくれるのが「クラウド型UTM」。
本記事ではクラウド型UTMの概要やメリット・デメリット、アプライアンス型との違いについて解説します。さらに、おすすめのクラウド型UTMも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
クラウド型UTMとは、複数のセキュリティ機能を統合したシステムUTMをクラウド上で提供する仕組みのことです。クラウド型UTMはハードウェアの調達が不要で、初期設定から運用保守までサービス会社が行ってくれます。その他の特徴は、
などがあります。アプライアンス型とは違い、クラウドサーバーで稼働しているため、社内にハードウェアを設置する必要はありません。
1台の機器に複数のセキュリティ対策機能を備えたものがUTMで、その機器がUTMアプライアンスです。UTMアプライアンスは拠点ごとに、物理的な機器を設置しなければなりません。一方のクラウド型UTMは、UTMサービスをクラウド上で提供しているので、導入の際に機器を設置する必要がありません。それぞれのメリット・デメリットは下記のとおりです。
UTMアプライアンスのメリット | UTMアプライアンスのデメリット |
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・機器の選択が簡単 ・操作性が統一されている ・それぞれの拠点でメンテナンスが可能 ・システムダウンなどのトラブルに強い |
・定期的なメンテナンスが必要 ・拠点ごとに機器を設置する必要がある ・性能が物足りない場合、買い替えが必要 |
UTMアプライアンスは物理的な機器の設置が必要である反面、トラブルに強いなどのメリットがあります。
クラウド型UTMのメリット | クラウド型UTMのデメリット |
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・機器の設置が不要 ・メンテナンスが不要 ・機器コストの負担を抑えられる ・短期間での導入が可能 ・通信量の増加に対応しやすい |
・それぞれの拠点で機器のメンテナンスができない ・システムダウンなどのトラブルに弱い |
クラウド型UTMは機器の設置が不要で、比較的短期間での導入がメリットにある反面、システムダウンなどのトラブルに弱いのがデメリットです。
機能・性能 | 引き分け ⇒導入する製品次第なので差はない |
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コスト | 引き分け ⇒拠点数次第なので差はない |
運用負荷 | クラウドの勝ち ⇒装置の購入・設置やシステム構築がない&メンテナンスも行う必要がないので運用が楽 |
システムエラー | アプライアンスの勝ち ⇒クラウド型でシステムエラーが起きると全拠点でセキュリティ対策がダウンするが、アプライアンス型だと1拠点のみなのでリスクが低い |
機器(アプライアンス)を設置する必要がないという「クラウド型UTM」の仕組みを、より詳細に見ていきましょう。 前提として、クラウド型UTMの設置はベンダーが行うことが多く、この仕組みをユーザーが目にする機会はほとんどありません。データセンターでベンダーが行っている作業を想像して読み進めてください。
UTMアプライアンスの場合、それぞれの拠点ごとにUTMの機器を設置してセキュリティ対策を実施しますが、クラウド型の場合は、データセンターで管理されているクラウド上でUTMを運用するため、各拠点に端末を設置する必要がありません。また、クラウド上のUTMと拠点間の通信は限られたユーザーだけがアクセスできるようになっており、インターネットに接続されていないネットワーク環境(閉域網)となっています。
クラウド型UTMの製品はいくつかあり、どれを選べばいいか迷っている方も多いのではないでしょうか。ここではいくつかある製品の中から、おすすめのクラウド型UTMを5製品ご紹介します。
SmartConnect Network & Securityはクラウド型UTMなので、機器の導入が不要です。ファイアウォール機能やIPS(不正侵入防御)機能、アンチウイルス機能などUTMの代表的な機能は問題なく活用できます。
料金は初期費用10万円、月額35000円~から。標準でサーバー・デバイス100台程度を収容できます。使っているUTMは、世界・国内シェアともトップのFortigateを採用しています。一旦特定の拠点からスモールスタートで運用を始め、規模が拡大したら他の拠点でも導入するといった柔軟な使い方ができるのも、クラウド型の特徴です。
導入後は、管理画面でトラフィックやセッション情報を参照できます。企業の情報システム部門担当者による設定変更も随時行うことができます。
SmartConnect Network & Securityのセキュリティ専門部隊に、セキュリティ対策の導入や維持にかかる面倒な作業を任せることができ、運用負担の削減が可能です。もしものトラブルや急な設定変更でも安心の、24時間365日体制のサポート対応で安心して利用できます。
SmartConnect Network & Securityの比較ポイント
製品情報
参考価格 | 初期費用10万円、月額35,000円〜 |
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VPN | 〇 |
ファイアウォール | 〇 |
IPS/IDS | 〇 |
アンチウイルス | 〇 |
メーカー名 | NTT SmartConnect |
MRB-Cloudは端末台数500台までの企業を対象にした国内メーカーによるクラウド型UTMです。クラウドタイプでも据え置き型と同様、もしくはそれ以上のセキュリティを提供しています。VPNが組める既存のルーターがあれば、新たな設備を導入することなく利用できます。
アウトバウンドセキュリティも充実しています。独自のWEBフィルタリング機能により、webサイトを78のカテゴリに分類。危険レベルを「低」「中」「高」および「カスタム」で設定することができ、管理しやすくなっています。
リモートワーク環境にも対応しており、固定IPアドレスなども不要です。オフィスで作業するときと同様、URLフィルタリングなどのセキュリティを提供します。
MRB-Cloudの比較ポイント
製品情報
参考価格 | 要お問い合わせ |
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VPN | 〇 |
ファイアウォール | 〇 |
IPS/IDS | 〇 |
アンチウイルス | 〇 |
メーカー名 | 株式会社テクノル |
Sophos UTMの特徴は、導入形態を柔軟に選べることです。ハードウェア、ソフトウェアと仮想化環境、クラウドから選べます。ラインナップ数が多いので、中小企業・大企業、大学などさまざまな業種に対応できるのが特徴です。
また、シンプルで直感的に操作できるユーザーインターフェースなので、日々の管理作業も楽にこなせるでしょう。他にもリアルタイムに情報が表示されてカスタマイズ可能なダッシュボードや、フレキシブルなモジュール型ライセンス、直感的に利用できる設定機能などが備わっています。
なお、Sophos UTM Managerの配布は22年1月31日に終了しています。製品のサポートも受け付けていないため、新規でクラウド型UTMを検討する場合は、このページで紹介している他の製品を選ぶようにしましょう。
Sophos UTMの比較ポイント
製品情報
参考価格 | 要問合せ |
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VPN | 〇 |
ファイアウォール | 〇 |
IPS/IDS | 〇 |
アンチウイルス | 〇 |
メーカー名 | SOPHOS |
アップサイドセキュリティは、各種ネットワーク事業を展開するNTTPCコミュニケーションズが提供するクラウドUTMです。
単拠点向けに作られた構成なので、SOHO・小規模企業に特化したサービスです。難しいセキュリティ設定を排除した運用ができるので、直感的な操作ができます。必要最低限の機能を備えることで、最小限の価格を実現しています。
Wi-Fi構築の代理店であるティーガイア社とタッグを組み、小規模オフィス向けにWi-Fi環境とネットワークセキュリティ対策を備えたソリューション「TGマネージドセキュリティ」を提供するなどユニークな取り組みも行っています。
アップサイドセキュリティの比較ポイント
製品情報
参考価格 | 要お問い合わせ |
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VPN | 〇 |
ファイアウォール | 〇 |
IPS/IDS | 〇 |
アンチウイルス | 〇 |
メーカー名 | NTTPCコミュニケーションズ |
株式会社ソフトクリエイトが提供するPRIME GATEは、FortinetのUTMです。標的型攻撃対策、メールアーカイブ、メール暗号化など、必要な機能をサーバレスでセキュリティ対策が実現できます。PRIME GATEはクラウド型なので、障害発生時の対応や運用にかかるコストを大幅に削減することが可能です。また、カスタムメイド構成、メールアーカイブが利用できるコースなど、要件・要望に合ったプランの選択ができるのも特徴です。
PRIME GATEの比較ポイント
製品情報
参考価格 | 要お問い合わせ |
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VPN | 〇 |
ファイアウォール | 〇 |
IPS/IDS | 〇 |
アンチウイルス | 〇 |
メーカー名 | 株式会社ソフトクリエイト |
UTMはさまざまなメーカーから販売されており、どれを選べばいいか迷う方も多いです。製品選びに迷う方は、以下の流れで行うことをおすすめします。
まずは自社に必要な機能・性能を決めておきましょう。UTMは一種のコンピュータでもあり、処理能力は性能(スループット)などによって大きく異なります。自社に必要な機能や性能がないUTMを導入してしまうと、データの送信に遅延が生じ、業務効率化どころか、悪化やトラブルの原因になるでしょう。「必要な機能がわからない」という方は、一般的な6つのセキュリティ機能を見てください。
企業によっては上記のうち、いくつかは不要な場合もあります。まずは自社に必要な機能や性能を決めておきましょう。
ファイアウォールのスループットについてはUTMの処理速度に影響?ファイアウォール等のスループットを解説でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
UTMにはユーザー数の上限があるため、大企業などの部署や人員が増えることが予想される企業は注意が必要です。そのような場合はユーザー数無制限のサービスを契約した方がいい場合もあります。しかし、多くのメーカーではユーザー数に応じて価格設定を行っています。そのため、現状の人員よりも余裕を持って契約を結ぶのがよいでしょう。
また、UTMの接続数や処理能力などに余裕がない場合、UTM自体を買い替えなければならない可能性もあります。契約内容にかかわらず、十分なスペックを持つハードウェアを候補に絞り込むのがおすすめです。
UTMはセキュリティ対策で重要な役割があるため、トラブル発生時のサポートが非常に重要です。UTM製品は処理装置を海外から導入している場合があります。海外の製品は管理画面やマニュアルが英語であったり、翻訳しても正しい日本語にならないこともあり、使いづらさを感じることも多いです。サポート体制で注目しておくべき点は、
などをチェックしておきましょう。
上記の項目と照らし合わせて気になった製品が見つかれば、問い合わせましょう。そこでポイントなのが、1つの製品だけでなく、複数製品に問い合わせてください。なぜなら、担当者との話でわかることもあるからです。1社だけであれば、比較検討ができません。そのため、気になった製品に複数問い合わせて最適な製品を決めていくのがおすすめです。
今回は、クラウド型UTMの特徴やメリット・デメリット、おすすめ製品について解説してきました。クラウド型UTMのメリットには、
など、多くあります。スモールスタートや段階的な導入にもおすすめなので、ぜひ本記事を参考に、導入を検討してみてはいかがでしょうか。