造成工事は、土地の用途を変える際に必ず行われている工程です。普段聞きなれない言葉ではありますが、身近な工事のひとつとなっており見たことのない人の方が少ないでしょう。では、造成工事の費用はどのくらいなのでしょうか。
今回は、造成工事の費用相場や安く抑えるポイントについて解説していきます。工事業者の選び方や気を付けるべきポイントについても解説しますので、参考にしていただければ幸いです。
造成工事とは、土地をこれまでとは別の用途として整える方法です。例えば畑や田んぼなどの農地と宅地では、土地の状態は全く違います。農地を宅地にするためには、安全に家を建てられる地盤を作り上げる必要があるのです。そこでまずは、造成工事の費用相場を紹介します。
一言で造成工事と言っても、土地の状況や目的などで費用の差は大きいです。地域によっても異なるため、明確な相場を知ることは難しいでしょう。その中で最も参考になるのは、国税局が発表している「宅地造成費」です。
実際の工事費用ではありませんが、地域差や工事内容ごとの単科を知ることができます。各工事内容については記事内で後ほど詳しく解説していきますので、そちらも参考にしていただければ幸いです。
下の表は、前提として傾斜のない平坦地である場合の宅地造成費となります。
管轄の国税局 | 整地(円/㎡) | 伐採・抜根(円/㎡) | 地盤改良(円/㎡) | 土盛(円/㎡) | 土止(円/㎡) |
---|---|---|---|---|---|
札幌 | 600円 | 1,000円 | 2,100円 | 6,600円 | 72,900円 |
仙台 | 700円 | 1,000円 | 1,900円 | 7,500円 | 69,500円 |
関東信越 | 700円 | 1,000円 | 1,800円 | 7,100円 | 69,700円 |
東京 | 700円 | 1,000円 | 1,800円 | 6,900円 | 70,300円 |
金沢 | 700円 | 1,000円 | 1,900円 | 6,900円 | 69,300円 |
名古屋 | 700円 | 1,000円 | 1,800円 | 7,000円 | 71,500円 |
大阪 | 700円 | 1,000円 | 1,800円 | 6,600円 | 67,600円 |
広島 | 700円 | 1,000円 | 1,800円 | 6,600円 | 66,400円 |
高松 | 700円 | 1,000円 | 1,900円 | 6,600円 | 71,800円 |
福岡 | 700円 | 1,000円 | 1,800円 | 6,700円 | 56,100円 |
熊本 | 600円 | 1,000円 | 1,800円 | 6,700円 | 52,300円 |
沖縄 | 700円 | 1,000円 | 2,400円 | 7,200円 | 57,900円 |
出典:財産評価基準書|国税庁
以下の表は、傾斜地である場合の宅地造成費です。傾向としては、傾斜が大きくなるほど費用は高くなっています。
管轄の国税局 | 3度超5度以下 | 5度超10度以下 | 10度超15度以下 | 15度超20度以下 |
---|---|---|---|---|
札幌 | 18,700円 | 23,300円 | 35,600円 | 51,000円 |
仙台 | 19,200円 | 23,300円 | 35,300円 | 49,700円 |
関東信越 | 18,400円 | 22,600円 | 34,600円 | 49,100円 |
東京 | 18,600円 | 22,800円 | 34,900円 | 49,500円 |
金沢 | 18,400円 | 22,500円 | 34,100円 | 47,800円 |
名古屋 | 18,100円 | 22,200円 | 33,500円 | 47,000円 |
大阪 | 18,600円 | 22,200円 | 33,900円 | 47,800円 |
広島 | 17,700円 | 21,400円 | 32,800円 | 46,200円 |
香川 | 18,100円 | 22,200円 | 34,000円 | 48,000円 |
福岡 | 16,900円 | 20,100円 | 31,600円 | 43,900円 |
熊本 | 16,700円 | 19,500円 | 31,700円 | 44,400円 |
沖縄 | 17,700円 | 21,000円 | 31,400円 | 42,800円 |
※整地費、土盛費、土止費の宅地造成に要するすべての費用を含めて算定したもの。
出典:財産評価基準書|国税庁
前述の通り、造成工事とは土地を目的に合わせて整えることです。農地を宅地にする際はもちろん、古くなった戸建を解体して立て直す際にも造成工事が必要になります。家を解体すると廃材やがれきが出るため、取り除く作業が必要です。これも造成工事に含まれます。
土地の造成には「宅地造成等規制法」という法律があり、誰もが自由に行えるものではありません。法律に遵守した業者のみ行えると決められており、小〜中規模の造成であれば解体業者や外構業者が最適です。
造成工事は、いわば土地を目的に合わせて整える際に行う作業の総称です。細かく分けると以下のような作業が造成工事にあたります。
ここでは、それぞれを詳しく解説していきます。
土地にある不要物を取り除き、傾斜や凹凸がある土地を平らにする工事です。造成工事時の基礎となるため、必ず行われる工程になります。作業の範囲は幅広く、単なる地固めから砂利やアスファルトでの舗装も整地です。
伐採しなければならない木や草が生い茂っている場合に行う工事です。土地の表面だけでなく、地中に根っこが残っている時にも行われます。伐採・伐根は、もともと山林だった土地を造成する際に行われるケースが多いです。
建物を建てた後に草木が生えないよう、防草シートが敷かれる場合もあります。
地盤を安全な状態に整える工事のことを指します。田んぼや畑・長い間メンテナンスされていない土地は地盤が弱く、そのままでは建物を建てることができません。表層の土にセメント系固化材を混ぜたり鋼杭を打ち込むなどして、地盤の強度を上げていきます。
土地が隣接する道路よりも低い場合には、土盛や土止が行われる場合があります。土盛とは、外部からもってきた土砂を使い土地を底上げすることです。土止は、その底上げした土地の土砂が流出・崩壊しないよう防ぐ方法を指しています。
反対に土地が道路よりも高かった場合には、不要な土を削り取る切土を行い高低差を調節するのです。
当然ですが、切土を行うと不要な土が出てきます。この土を処理する作業が残土処分です。残土処分は土質の規制があるため、受け入れ先が限定されています。異物が混じっていた際には、その分費用が発生する恐れがあることも頭に入れておきましょう。
前述した通り、造成工事にはさまざまな手法があり土地によって手順は全く変わります。素人目では判断が難しいため、個人で行うことは不可能でしょう。専門の重機も必要なので、造成業者への依頼が最適です。
造成業者へ依頼することで、その土地に最適な造成工事の提案やスケジュールを提示してくれます。より適した工事内容や金額を知るために、できる限り複数業者から相見積もりをとることがおすすめです。
依頼する造成業者が決まったら、正式な工事スケジュールを確認していきましょう。近隣に影響を及ぼす場合は、事前に挨拶をしておくことで余計なトラブルを防止できます。工事の大まかな流れは、次の通りです。
①地盤調査
②地ならし・伐採
③土盛・切土・土止
④地盤改良
⑤地盤固め・仕上げ
⑥残土処分
天候や状況によっては工事のスケジュールに影響が出る場合があります。進捗状況を確認するためにも、可能であればたまに様子を見に行くとよいでしょう。
造成工事の期間は、土地の状態によって大きく異なります。例えば整地のみといった比較的簡単な工事であれば、5日〜1週間程度で完了可能です。反対に複数の工程を行う工事の場合は、1ヶ月〜2ヶ月を要することも珍しくありません。
雪や雨が続く時期には工事を実施できない日も出てくるため、その分期間が伸びてしまいます。なるべく早く工事を終わらせたい場合は、雪が降る恐れがある冬季や梅雨を避けて依頼すると良いでしょう。
冒頭でもお伝えした通り、造成工事の相場はおおよそ決まっています。しかし、膨大な金額であるため少しでも費用を抑えたいと思うのは当然のことでしょう。ここでは、造成工事の費用を抑える方法について解説していきます。
造成業者を選ぶ際には、できる限り複数社への相見積もりがおすすめです。複数の見積を比較することで、自身の土地に対する相場感を確認することができます。担当者から会社の印象をうかがい知ることもできるでしょう。
解体業者が造成工事を手掛けているケースも多いため、そちらへの問い合わせも方法のひとつです。そもそも造成業者を探せないという方は、一括見積もりサイトを利用するのも良いでしょう。
造成工事を住宅施工会社に一括してオーダーするという方は非常に多いです。しかしその場合、中間マージンとして余計な費用が発生してしまいます。造成業者に自身で直接依頼をすれば、その分費用を抑えることができるのです。
費用面でメリットが大きい方法ですが、時間や手間を要する方法だということは理解しておいた方が良いでしょう。例えば比較をせずに業者を選んでしまったとしたら、相場より高い金額を請求されてしまうリスクがあります。
逆に金額が安いというだけで選んだ結果、工事内容がずさんだったという業者も決して少なくありません。頼りになる造成業者を選びたい方は、特に契約前に複数社とやりとりを行いましょう。
廃棄物の処理費用は産業廃棄物以外は割高です。産業廃棄物とそれ以外に分別する必要があり、廃棄手数料もかかるため造成業者に頼むとさらに割高になります。処理費用を抑える場合は、できる限り自身で分別し粗大ごみなどで廃棄しましょう。
その他にも中古買取業者や行政に持ち込むことで、手数料を抑えることができます。
宅地造成と新居の建築時期を計画的に行うことでも、費用を抑えられるケースがあります。逆に言えば、宅地造成と近居の建築時期によっては固定資産税の負担が大きくなってしまうのです。宅地の場合、建物があれば「住宅用地の特例」で固定資産税は抑えられます。
しかし、建替えのタイミングによっては建物がないとみなされ特例が受けられなくなってしまうのです。固定資産の確定は1月1日時点で行われるため、その時点で建物がある状態にしておけば負担の増大は避けられます。
例をあげると1月1日の時点では旧家屋に手を付けず、次の1月1日までに造成・新築を完成させるのがベストです。
土地を造成する際に必ず行われるのが、登記簿謄本での名義チェックです。親族であったとしても他人名義であったり、複数人の共有財産であると後々思わぬトラブルに発展しかねません。
最悪の場合家を取り壊さなければならないリスクも可能性も出てきてしまうため、法的手続きは必要です。面倒だと感じる方もいるでしょうが、放置しておくと将来子どもにしわ寄せがいってしまいます。長期目線で安心して暮らせるよう、法的手続きは忘れず行いましょう。
造成工事で最も発生するトラブルが近隣住民との関係によるものです。造成工事はさまざまな重機を使用して土を掘り返すので、騒音や振動・粉塵飛散も発生しやすくなります。近隣の方とはその土地に住んでからも長いお付き合いになるため、特に注意が必要でしょう。
お互いにストレスを抱えることがないよう、造成工事が始まる前に挨拶しておくのがおすすめです。また、造成業者のマナー次第でトラブルを防ぐことができます。造成業者の態度が悪ければ、近隣の方もその土地にあまり良い印象を受けないかもしれません。
造成業者のイメージが契約者の印象になってしまわないよう、マナー教育がされている業者を選ぶのがおすすめです。万が一トラブルが発生してしまった際に、対処方法が明確な業者であれば安心して依頼ができます。
可能であれば、トラブルの事例や実際の対処法について確認すると良いでしょう。
ここからは、造成業者を選ぶポイントについて解説します。
造成工事は工程が土地によって異なり、素人では判断しにくいです。その点を理解したうえで詳細な見積もりを提示してくれる業者は信頼できるといえるでしょう。中には安さで客を吊って、工事はずさんな悪徳業者も存在します。
より良い工事を行ってもらうためには、適切な金額が必要です。安さだけで選ばず、契約中に丁寧な対応を行ってくれる業者かを見極めましょう。
実績が豊富な業者は、お客様が想像し得ない幅広い事例を経験しています。また、仕事ぶりの良さから多くの依頼をもらっているともいえるのです。一見すると判断が難しい場合も、お客様目線に立って作業を進めてくれるため安心して任せられるでしょう。
工事後のアフターフォローの内容も、造成業者を選ぶ際のポイントになります。万が一不具合が生じた時にどの程度までフォローしてくれるかを確認してけば、安心して契約を進められるでしょう。
造成工事には、業者選びの他に注意すべきポイントがいくつかあります。工事の不安を解消するためにも、以下で確認しておきましょう。
造成工事にかかる費用は工事内容や規模により異なりますが、一般的には数百万円はかかります。家を建てる際にローンを組む方は多いですが、造成の段階では住宅ローンを利用することはできません。
そのため、造成工事ではつなぎ融資を利用するのが一般的です。つなぎ融資とは、家が建ってローンが開始する前に一時的に使える融資のことを指します。住宅ローンが利用できるようになると、つなぎ融資は自動的にローン内で完済されるシステムです。
住宅前にまとまった金額を借り入れられるので、安心して工事をすすめられます。
自身が所有している土地だとしても、実は2つの法律が関わっています。そのため、造成工事には都道府県知事などの許可を得なければなりません。
都市計画法とは、国内の都市を計画的に作っていくことを目的とした法律です。土地の利用方法は、国民が住みやすい都市づくりを実現するために定められています。例をあげると、切土や盛土といったことも土地を変形する事になるため、都市計画法に関係するのです。
具体的に次の造成工事は都市計画法に関わるので、都道府県知事などから許可を受ける必要があります。
宅地造成等規制法では造成工事によって発生し得る事故を防ぐために、さまざまな規制が設けられています。造成工事を行う土地の場所によっては、崖崩れや土砂の流出が発生する可能性もあるでしょう。そうなれば最悪の場合、死傷者を出してしまうことにもなりかねません。
以下の造成工事は、宅地造成等規制法に関わってきます。
これらの工事も、都市計画法と同様に都道府県知事などの許可が必要です。どちらも手続きが複雑なので、工事業者に確認しながら進めていきましょう。
造成業者に産業廃棄物の処理を委託する場合、不法投棄を防止する「マニフェスト制度」というものがあります。このマニフェスト制度により、責任の所在を明らかにすることができるのです。
このマニフェストがあやふやでなおかつ業者が不法投棄をしていた場合、依頼者が罰せられるリスクがあります。依頼者は業者のマニフェストを確認できる権限があるため、リスクを回避するためにも提示を求めましょう。
造成工事は、行う土地の場所によって相場が変わってきます。工事にはさまざまな工程があり、土地の状態によって行われる作業も異なってくるのです。素人目では判断が難しいので、工事業者に依頼すると良いでしょう。
良い工事業者に出会うためには複数社からの相見積もりや、担当者の人柄を見ていく必要があります。特に新たに家を建てる場合は、近隣トラブルを回避するためにも実績が豊富で信頼できる業者への依頼がおすすめです。