「軒天が剥がれているけれど、何をしたらよいか分からない……。」
「傷んでいる軒天はすぐに修理すべき?」
傷んだ軒天の対処法や修理のタイミングを知らない方は意外と多いのではないでしょうか。
劣化した軒天をそのままにしておいても大丈夫なのかと不安に思う方も多いでしょう。
そこで本記事では、軒天の劣化症状と対処法について詳しく解説していきます。
軒天の修理にかかる費用などについてもお伝えしますので、ぜひ参考にしてみてください。
「軒天(のきてん)」とは外壁から伸びている屋根先端の天井部分のことで、軒天井や軒裏天井、上げ裏とも呼ばれます。
軒天は建物の印象を左右する要素の一つであり、住宅を建てる際はデザインや意匠に合わせた軒天を選ぶことで美感性を向上できます。また軒天は、雨風や日差しから外壁を守る重要な役割を持っています。
建物の内部に雨水が入り込んだり、紫外線によるダメージを直接受けたりするのを防いでいでおり、住宅における傘のような存在です。
しかし、軒天は屋根と外壁の結合部に位置しており、劣化が進むと雨漏りなどのトラブルが発生する可能性が高くなります。
劣化を放置した結果、住宅内部や基礎が腐食してしまい、大掛かりな修理が必要になるケースも少なくないため、早めの対処が必要です。
では一体、軒天の劣化とはどのような症状が見られるのか疑問に思う方も多いでしょう。
次項では軒天の具体的な劣化症状とその対処法について説明していきます。
軒天が劣化していると判断できる症状は以下の5つです。
それぞれの症状とその対処法を次項で見ていきましょう。
軒天の経年劣化により、もともとの色が褪せてきます。
ただし、軒天の色褪せだけでは補修を急ぐ必要はありません。
外壁塗装や屋根のメンテナンスなど、ほかの箇所をメンテナンスするタイミングで軒天の補修を一緒に行うとよいでしょう。
雨水がうまく排水されずに滞りがあると藻やカビが発生してしまいます。
藻やカビの発生は雨漏りが起こる前段階の症状です。
早期のメンテナンスが望ましいため、藻やカビを発見したらすぐに専門業者へ相談し、適切な対処を行いましょう。
木材系の軒天材や化粧板が劣化すると、表面に剥がれの症状が現れます。
たとえば、ベニヤ板の表面が剥がれたり、ささくれて欠けたりしているような状態です。
剥がれているベニヤ板に対して、単に塗装するだけではうまく塗料が乗らない場合が多いため、下地ごと補修する必要があります。
雨水などが原因で軒天が腐食し、穴が空いたり欠落したりすることがあります。
これらの症状は、雨水が侵食し劣化が進むだけではありません。
鳥や動物などが侵入して住み着いてしまう危険もあり、衛生上の問題も発生します。
この場合、軒天の補修に加えて害獣対策も行わなければならず、余計な手間や費用がかかってしまうでしょう。
そのため、穴や欠落箇所を発見した場合は新たな軒天を張るなど、適切な修理を早急に行ってください。
軒天と破風板の境目が変色していたり、一部だけ茶色いシミができていたりするのも軒天の劣化症状として挙げられます。
屋根からの雨水がうまく排水されず、軒天まで流れてくることが原因でシミができてしまうのです。
シミが発生する状況では、湿気がたまりやすく、建物自体の強度にも悪影響を及ぼす可能性があります。
もしシミを発見した際には専門業者に一度確認してもらい、原因の特定と適切な対策を施してもらいましょう。
軒天には「不燃系」または「木材系」の素材が使用されています。
そもそも軒天材にはどんな種類があるのか、どんな特長を持つのかは意外にも知られていないものです。
そこで本項では、それぞれの素材の種類と特長について説明していきます。
近年では、ほとんどの軒天に不燃系の素材が使用されています。
軒天は隣家で火災が起きた場合に延焼を加速させてしまう原因となるため、火災に強い不燃材が採用されるようになりました。
主な不燃系の軒天材は以下の通りです。
それぞれの特長を見ていきましょう。
代表的な軒天材の一つであるケイカル板は、珪藻土・消化石(水酸化カルシウム)・石綿(アスベスト)が原料の耐久性や耐火性に優れた合成建材です。
現在はノンアスベストの原料を使用しているため、健康被害の心配はありません。
ケイカル板は耐水性も高く、水回りや外回り用の建材にも適しています。
ただし、合成建材であるため、強い衝撃が加わると割れてしまうおそれがあります。
割れてしまった箇所については、部分的な張り替えが必要です。
“スラグ”とは、鉱物を精製したあとの副産物のことで、再生石膏と混ぜ合わせて作られるのがスラグ石膏板です。
原料がスラグと石膏のため耐火性に優れており、延焼防止対策に適しているほか、比較的安価で施工性もよいため、軒天に採用されることが多いです。
ただし耐水性には欠けるため、シリコン系やウレタン系の塗料で定期的なメンテナンスをしなければなりません。
フレキシブルボードはセメントと補強繊維が原料の合成建材です。
セメントが原料のため、不燃性の高さはもちろん、衝撃や湿気に強い耐久性の高さも持ち合わせています。
ただし重量がケイカル板の2枚ほどあるため、軒天材として使用されることはあまりありません。
合成建材や木材系の素材だけでなく、ガルバリウム鋼鈑やアルミスパンドレルといった金属板も軒天に使用されます。
耐久性や耐火性が非常に優れた建材のため、病院などの公共施設に使用されるケースが多いです。
また、意匠性の高さから、近年ではデザイン住宅の外壁材としての人気も高いです。
ただし、金属板は劣化によりサビが発生してしまうため、約25年程度で塗装メンテナンスをする必要があります。
ベニヤ板は築年数の古い住宅に最も普及しており、3〜5mmの軽くて薄いベニヤ板を軒天に使用するのが一般的です。
ベニヤ板はほかの素材に比べて非常に安価で手に入りやすいですが、耐水性や耐火性が低いといったデメリットがあります。
ベニヤ板をそのまま仕上げてしまうとカビの繁殖や腐食の原因となるため、通常はシリコン系またはウレタン系の塗料での塗装が必要です。
ケイカル板には、表面に小さな穴がたくさん空いている有孔タイプのものがあります。
有孔ボードを軒天に使用するメリットは、屋根裏に溜まった湿気や熱気の排出が可能な点です。
さらに、ケイカル板に空いた穴が換気の役割を果たすため、軒天内部の結露防止にも効果的です。
ここからは、軒天の修理方法と費用について具体的に説明していきます。
既存の軒天が激しく劣化している場合、古い軒天材を撤去して新たな軒天材に張り替える方法があります。
撤去費用や廃材の処分費用は別途発生しますが、長期的に見ると最もコストパフォーマンスの高い修理方法と言えるでしょう。
なお、一般規模の戸建て住宅の場合、修理費用は撤去・廃材処分費用や足場代を除いて約180,000〜230,000円程度です。
既存の軒天が下地として機能できる場合、新しい軒天ボードを上から重ね張りして補修することも可能です。
この修理方法は「カバー工法」とも呼ばれ、短期間かつ低コストで仕上げられます。
もし既存の軒天が木材の場合、不燃材の軒天ボードを使用することで耐火性の向上にも有効です。
なお、一般規模の戸建て住宅の場合の修理費用は、足場代を除いて約100,000円〜120,000円程度かかります。
軒天の状態が比較的良く、大きな劣化が見られない場合には、塗装によるメンテナンスが適しています。
下塗りと上塗りの2回の塗装を行うことで、軒天の耐久性と美観の向上が可能です。
ただし、木材系の軒天を塗装する際、劣化具合によっては塗料が剥離するおそれがあるため気をつけなければなりません。
一般規模の戸建て住宅の場合、塗装メンテナンス費用は、約120,000円〜170,000円(足場代を除く)が目安です。
結論から言うと、台風や暴風などの風災により発生した軒天の破損は火災保険が適用されます。
ただし、通常の経年劣化の修理には火災保険は適用されないため注意が必要です。
最終的な破損の原因が風災の場合、火災保険が適用になるケースもあるため、保険契約書を確認しておくことをおすすめします。
万が一風災の被害で軒天が破損してしまった場合は速やかに保険会社に相談するようにしてください。
材料と道具がそろえば軒天修理のDIYは可能です。
しかし、軒天の修理は高所での作業になるため、落下事故の危険性が高く、専門的な技術と経験が必要です。
また、軒天の土台の修理は非常に難易度が高く、DIYでの対応は難しいでしょう。
もし軒天の修理に安全面や技術面で心配な場合は、専門業者への依頼がベストです。
本記事では軒天の劣化症状とその対処法をメインに、修理方法や費用についてお伝えしました。
軒天の劣化は雨漏りや建物自体の劣化を招くおそれがあり、大掛かりな修理になってしまうことも珍しくありません。もし軒天の劣化箇所を見つけた場合は、早急にメンテナンスや補修を行いましょう。
また、風災が原因でできた破損には火災保険が適用されるケースが多いです。
なお、DIYで軒天修理を行うことも可能ですが、高所作業のため注意が必要です。
特に軒天の土台の修理はDIYが難しいため、慣れていない方は専門業者への修理依頼がおすすめです。