介護施設では、人手不足により現場で働く職員の業務負荷が深刻です。離職率が高く、新規の採用も難しくなっています。そこで注目されているのが見守りシステム。職員の業務負荷を軽減し、定着率を向上させる効果が期待され、国も積極的な導入を事業所に求めています。
この記事では職員の業務負荷を軽くするために用いられる、見守りシステムのメリットや導入する際の留意点を解説します。
見守りシステムとは、入居者が使用するベッドや移住空間にセンサーを設置し、システムと連動させることで別の部屋にいる職員に、入居者の情報を知らせるシステムです。
この章では、見守りシステムの種類について紹介します。
近年のロボット技術が発展する以前の機器は「見守り支援機器」と呼ばれました。見守り支援に関する介護ロボットも登場し、最近は「見守りシステム」というと、こちらを指すことが多くなっています。
費用や入居者の人数に応じて、使い分けることができます。
見守りセンサーの種類については離床センサー7種類の特徴を解説|利用者の状態や予算にあわせた選び方でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
センサーの種類 | 運用方法 | 検知方法 |
赤外線センサー | ベッド周辺や生活空間に赤外線センサーを設置 | 赤外線センサーの照射範囲に対象者が入ると、体温に反応して検知 |
マットセンサー | ベッドの降り口にマットを設置、ベッド上にセンサー付シートを敷く | 対象者がマットを踏み、体重がかかった時に反応し、通知 対象者と家族を識別できるマットセンサーも。 |
ビームセンサー | ベッドのヘッドボードやフットボードに、ビームセンサーを設置 | 対象者がベッドから起き上がったり、離れたりする時にビームが当たると検知 部屋の出入口に設置すると、入退室を通知することも可能 |
タグ(ID)センサー | 入居者にタグ(ID)をつけ、建物内に受信器を設置する | タグをつけた入居者が近づくと受信機の信号にタグが反応し、検知 |
センサーの種類 | 運用方法 | 検知方法 |
バイタルセンサー | マットの上か下にセンサーを設置 | センサーはバイタルサイン(体動・心拍・呼吸)を検出。 対象者のバイタルサインを検知しなくなると、音を鳴らすなどして知らせる。 |
シルエットセンサー(独立型) | ベッド上方に見守りエリアを設定。対象者の動きで状態を把握する | 対象者の起き上がりやはみ出し、離床を区別して検知。 |
人感センサー | 対象者から離れたところに人感センサーを設置 | センサーが温度や熱に反応。起き上がりなど入居者の動きを察知して検知 |
見守りシステムを取り入れると、介護する側にもされる側にもメリットがあります。具体的なメリットを4つあげて説明しましょう。
見守りシステムを導入すると、転倒や転落などの理由がわかります。転倒のリスクをセンサーが検知して職員に通知され、入居者の行動に対応することができるためです。 従来の見守り機器では、異常を知らせるセンサー音が鳴るだけで、実際の様子を職員が見に行く必要がありました。センサーのある見守り支援機器の多くは、離れた場所からモニターやタブレットなどで対象者の動きを確認できます。
また、職員が対象者を巡回する機会が減り、転倒の危険性が高い対象者のケアに注力できます。
巡回の回数が減ると、入居者のストレスや介護に対する抵抗が減り介護の質が向上。ロボットタイプのセンサーであれば、パソコンやスマートフォンで夜間の見守りが可能です。
職員が部屋を訪れるのを嫌がる利用者に対しては、訪問回数を最小限にするなどタイミングに合わせた支援ができるようになります。その結果、利用者が感じるストレスが軽減され、睡眠の質が向上したり、日中により活発に行動するようになったりといった効果がみられた施設もありました。不要な介入を避けることで、利用者が自発的に行動する動機づけになる例もあるようです。
センサーにより対象者の行動が可視化されたことで、対象者の行動の背景まで考えたケアプランに活かせます。これまではセンサーが感知すると「動かないで下さい」等、行動を制限する声かけや対応となりがちでした。
対象者の行動を監視・制限するのではなく、利用者の生活の質を向上させるツールとして位置づけることが大切です。
介護施設のかかえる問題として、職員の離職率の高さがあります。見守りシステムの導入は、離職の歯止め効果もあるようです。実際に見回りロボットを導入した、社会福祉法人三篠会老人ホームひうな荘では、職員の前向きな姿勢がみられました。入居者の排泄における自立の向上や、睡眠の改善による日中の活動の向上を感じられたことが関係しています。
職員自身が、入居者の生活の質が良くなったと実感できることで、やりがいや達成感につながったのです。また、パソコンやスマートフォンの操作に慣れている若い世代の職員が、操作に慣れていないベテラン職員に使用方法を伝えることでコミュニケーションが取れ、チームワークが生まれます。仕事に対するやりがいは離職を防ぎ、若い世代が得意なことを活かせることで、新しい人材確保に期待が持てます。
従来型の見守りシステムは、センサーと専用端末、ナースコール中継器の導入だけで使用できます。ロボットタイプに比べ費用も安価で仕組みもシンプルなため、取り入れやすいです。
しかし、情報量が少なかったり、同時にセンサーが作動した時に優先順位がわからなかったりなど課題もあります。ロボットタイプは、通信環境や周辺機器の整備も必要です。
ロボットタイプはWi-Fi接続を前提とすることが多く、Wi-Fiが設置されていない施設では、新たに導入する必要があります。すでにWi-Fiを使用している施設においても、場所によっては十分な通信環境を得られないこともあるでしょう。
Wi-Fiのルーターが古かったり、電波が弱くなっていたりする可能性もあります。パソコンや専用のスマートフォンなども必要です。通信環境や周辺機器はしっかり確認し、整備しましょう。
見守りセンサーを施設に導入する際は、職員への研修会を開きましょう。入居者の家族への説明もおこなってください。見守りセンサー導入の目的や操作方法、運用方法、使用上の留意点などを共有することが大切です。安易な導入は身体拘束につながる恐れもあり、説明を尽くすようにしましょう。
特にロボットタイプは、現場になじみ有効利用できるまでに時間がかかるでしょう。施設全体への一斉導入ではなく、ひとつのフロアから徐々に広げて導入することも有効です。
従来タイプの見守りシステムは、センサーからの通知で専用端末やナースコールが鳴ります。難しい操作がないため、簡単なマニュアルでも対応できるでしょう。
ロボットタイプは、機器の取り扱いや使い方のマニュアルや運用ルールを作成し、職員がいつでも手に取れるよう、わかりやすい場所に設置してください。マニュアルは運用する中で見直しながら、更新や追加することが必要です。
ここで、医療福祉施設の課題解決プラットフォーム「2ndLabo(セカンドラボ)」に掲載している見守りシステムを5つご紹介します。あなたの施設にはどの見守りシステムが必要なのか、参考にしてください。
Wi-Fiが不要な従来タイプ |
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Wi-Fiが必要なロボットタイプ |
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転倒・転落事故の防止に最適な非接触型の赤外線離床センサー。Wi-Fiが不要です。
小型センサータグを使用した徘徊感知センサーです。
寝具の下に敷いたマットセンサーの圧力で、心拍数や呼吸数、体動を常時計測できる遠隔見守りシステムです。
マットの下に医療機器のセンサーを設置するタイプ。少しの体動から呼吸や心拍を感知し、異変が出たらメールなどで職員に知らせる見守りセンサーです。
入居者の動きをシルエット動画で判別し、徘徊やベッドからの落下を未然に解決する見守りセンサーです。
介護施設に必要な見守りシステムについて解説しました。
見守りシステムには、従来タイプとロボットタイプがあります。従来タイプはセンサーが入居者の動きに反応して感知、専用端末やナースコールを通して職員に知らせます。ロボットタイプに比べ安価で、操作が簡単な上にWi-Fiが必要ないので取り入れやすいです。反面、部屋に行ってみないと状況がわからない、センサーが複数同時に鳴ると優先順位がわからないなど課題もあります。
ロボットタイプは部屋に行かなくても、シルエット動画や呼吸、心拍で入居者の異常がわかり巡回の数を減らせます。一方、Wi-Fiや周辺機器の整備、スタッフへの研修が必要です。
施設の大きさや入居者の人数などに応じて取り入れる見守りシステムを選びましょう。