介護IoTとは?介護業界におけるIoT導入とメリットデメリットを徹底解説!

更新日 2024.02.14
投稿者:豊田 裕史

近年、IoTという言葉を聞く機会が増えています。その他、ICTという言葉もよく耳にするでしょう。
今回の記事では、IoTとは何なのか?また、介護業界におけるIoTのメリットについて詳しく解説していきます。
介護施設でのIoT導入を検討している方は、参考にしてみてください。

IoTとは

ここでは、IoTについて詳しく解説していきます。また、IoTとICT・ITとの違いをそれぞれ解説するので、参考にしてください。

IoTとは

IoTは、ここ数年でよく聞くようになった言葉です。 IoTとは「Internet of Things」の略であり、「モノのインターネット」という言葉を耳にしたことがある方も多いでしょう。

IoTは、パソコンやスマートフォンだけではなく、家電や身の回りのデバイスなど、さまざまなモノをインターネットに接続可能です。

モノがインターネットに接続されることで、モノのデータの送受信ができるようになります。遠隔地から、モノの状態を把握・管理することも可能です。また、モノの稼働状態をリアルタイムで確認することもできます。

IoTとITの違い

ITという言葉は、以前からよく使われているため、耳馴染みのある方も多いでしょう。ITは「Information Technology」の略で、日本語に訳すと「情報技術」となります。IoTとITの違いは、以下の通りです。

  • IoT:あらゆるモノがインターネットにつながる状態・技術
  • IT:デジタル機器およびデジタル化された情報や技術

IoTとICTの違い

ICTとは、「Information and Communication Technology」の略で、日本語に訳すと 「情報通信技術」という意味になります。 スマートフォンやタブレットでの、コミュニケーションや外出先での書類作成などで利用されているのがICTです。

このような情報通信技術は、日本だけではなく世界的にICTと表現されています。IoTとICTの違いは、以下のようなイメージを持つと分かりやすいです。

  • IoT: あらゆるモノがインターネットにつながる状態・技術
  • ICT:人とインターネットをつなぐだけではなく、人と人もつなぐ技術

IoTで何ができるのか

IoTでは、下記のようなことが可能です。

  • モノをインターネット経由で遠隔操作
  • モノの状態管理と故障予知
  •  
  • モノ同士の通信

モノをインターネット経由で遠隔操作

IoTでは、モノをインターネット経由で遠隔操作できます。たとえば、スマートフォンで家電を操作可能です。また、外出先からエアコンのスイッチを入れたり、お風呂を沸かしたりできます。

ビジネスシーンでも活用でき、製造現場では離れている拠点からでも機器を制御可能です。将来は制御・管理をテレワークで行えるようになる可能性もあります。

モノの状態管理と故障予知

IoT導入によって、さまざまなモノの状態を管理可能です。たとえば、自宅のドアにIoTを導入することで、外出中でも鍵を閉めたか確認できます。他にも窓の開閉など、さまざまなモノの状態を管理できるのです。

また、設備の故障や不具合などを自動的に検知することもできます。AIと組み合わせれば、公共施設や工場に設置している機器の状態を監視しつつ、不具合の自動検出や故障予知が可能です。

モノ同士の通信

モノ同士を通信させることで、人が手動でモノの操作をする必要がなくなります。また、モノが自動的に状況把握し、必要な判断と動作が可能です。

たとえば、自動車の各パーツがIoT化されてセンサーを搭載すれば、自動車同士の距離や周りの状況を検知し、然るべき判断と動作ができるようになります。

介護業界におけるIoTについて

ここでは、介護業界におけるIoTについて、詳しく解説していきます。IoTの技術は、普段の生活を便利にするだけでなく、介護業界で活用することも可能です。

たとえば、利用者の健康状態や遠隔地からでも確認でき、状態の異変を素早く察知して通知します。また、ロボットで声かけをすることも可能です。

介護現場に導入されているIoT機器

介護現場で導入されているIoT機器には、下記のようなものがあります。

  • 見守りシステム
  • コミュニケーションサポートシステム
  • 事務業務の負担を軽減させるシステム

見守りシステム

見守りシステムには、接触型と非接触型の2種類があります。接触型の見守りシステムは、ベッドに敷くセンサーマットやバイタルセンサーなどです。非接触型の見守りシステムは、ドア・壁・ベッドの下などに設置するセンサーの他、カメラ・スマートフォンなどを利用するものもあります。

見守りセンサーの場合、高齢者の異常を検知してスマートフォンやPCなどに通知を送ることが可能です。また、通知だけではなく、カメラで高齢者の状態を確認できます。そのため、緊急の場合、迅速に対応可能です。

コミュニケーションサポートシステム

介護ロボットのような、高齢者のコミュニケーションをサポートするシステムを備えているものもあります。介護ロボットでは、センサーで高齢者を見守ることが可能です。また、声かけをしてコミュニケーションを図ることもできます。

レクリエーションのプログラムを搭載している介護ロボットの場合、音楽を流したり、クイズを出したりすることが可能です。介護ロボットにAIを搭載しているものもあり、モニター付きの介護ロボットであれば、遠方からでも家族と対話可能です。

事務業務の負担を軽減させるシステム

事務業務の負担を軽減させるIoTシステムには、下記のようなものがあります。

  • 介護記録をPCやタブレット端末などで入力できるもの
  • 高齢者のヘルスケアに必要なデータを集約・管理できるもの

など。

介護記録などの情報を電子化することで、手書きで作成するよりも書類作成業務の負担を軽減可能です。また、紙よりも利用者情報を共有しやすい上、タブレット端末があればその場ですぐに情報を確認できます。

IoT導入のメリット

ここでは、IoT導入のメリットを解説していていきます。IoT導入のメリットは、下記の3点です。

  • 介護職員の業務負担を軽減できる
  • 介護サービスの質を向上できる
  • 緊急時にすばやく対応できる

介護職員の業務負担を軽減できる

介護現場にIoT機器を導入すれば、介護スタッフの業務負担を軽減可能です。たとえば、介護記録の作成や、夜間の見回りなどの負担を軽減できます。

事務作業は介護業務の合間を縫って行いますが、介護業界は人手不足であり、業務量も多いため残業をするケースも少なくありません。IoT機器を導入することで、書類作成の時間を大幅に短縮可能です。

介護サービスの質を向上できる

IoT機器を導入することで、スタッフの負担が減るため、介護サービスの質の向上が期待できます。IoT機器を導入し、業務負担が軽減することでスタッフの心に余裕ができ、利用者に寄り添ったケアを提供できるようになるのです。

緊急時にすばやく対応できる

IoT機器を導入することで、利用者の転倒や急病などの異変に素早く気付くことが可能です。そのため、迅速かつ適切な対応ができるようになります。

見守りセンサーなどのIoT機器を導入していれば、居室から離れていても異変があった際に、アラームで知らせてもらうことが可能です。また、夜間帯に勤務しているスタッフのプレッシャーを和らげることもできます。

介護職員の定着率アップ

人材不足の問題を抱える介護業界において、現場で働く介護職員の離職や転職は避けたいところです。しかし、業務効率化とリスク管理が進むことにより、職員の定着率アップや業界イメージの向上にもつながるでしょう。

ICT導入のデメリット

ここでは、IoT導入のデメリットを解説していていきます。IoT導入のデメリットは、下記の3点です。

  • 購入費用や維持管理費が発生
  • 導入意識の共有が不可欠
  • 個人情報の漏洩には要注意

購入費用や維持管理費が発生

ICT導入にあたっては、少なからず費用が発生します。また、定期的にメンテナンスが必要な場合もあるので、ランニングコストも事前に確認した上で導入するのが重要です。

大規模な事業所や複数の事業所を運営している施設の場合、導入時期の調整や機器の保証期間なども考慮するといいでしょう。

導入意識の共有が不可欠

IoTを導入する際には、導入目的や活用方法を介護スタッフ自身が理解しておく必要があります。費用をかけて導入しても、機器を効果的に使いこなせなければ、期待する効果を得られません。

導入目的や活用方法を共有することで、介護スタッフの業務負担を軽減でき、利用者へのサービス量や質を向上させられます。

個人情報の漏洩には要注意

ICT機器によっては、個人情報を取り扱うことがあります。また、インターネット回線を利用して外部から操作することもあるでしょう。

そのため、事業所として、個人情報に対するセキュリティ対策をとらなければなりません。ITや通信環境での、個人情報漏洩リスクを考慮した対策も重要です。

介護業界の活用事例

ここでは、介護業界におけるIoTの活用事例を紹介していきます。

IoT活用による介護見守り

見守りや安否確認という業務は、介護スタッフにとって大きなプレッシャーとなります。少し目を離した隙に転倒してしまう可能性もあるため、気が抜けません。IoTによるセンサーシステムを活用すれば、離れた場所からでも常に利用者の様子が確認できます。

見守りセンサーは、利用者が寝ているマットレスの下に設置することで、就寝時の心拍数・体圧・呼吸状態などを記録・管理できるシステムです。

利用者が寝付けずに起きていたり、離床していたりする場合、手元のスマートフォンに通知が届くようになっています。そのため、夜勤スタッフが迅速に対応でき、転倒事故を未然に防ぐことが可能です。

記録作成にスマートフォンを活用

記録作成を、タブレットやスマートフォンで行えるシステムもあります。訪問の際、その場でケア記録や連絡事項を入力でき、他のスタッフへリアルタイムで情報共有することが可能です。これにより、円滑な情報共有ができるようになります。

また、介護前に過去の記録やサービス内容を確認することで、利用者に対して適切な介護サービスを提供可能です。

センサーを活用した行動分析

利用者の居室に行動分析センサーを設置すれば、転倒や転落が発生した場面と前後1分間を自動で録画できるシステムがあります。動画から事故の発生状況を正確に把握できるため、医師への説明や利用者の家族への連絡に活用可能です。

また、動画から事故原因を分析して、再発防止策や介護スタッフへの研修に役立てることもできます。

ICT導入支援事業について

日本では、2030年の高齢化率が30%を超えると言われています。介護業界は、深刻な人材不足を抱えており、この問題は早急に解決しなければなりません。

そこで期待されているのが、介護現場でのIoT・ICTの導入です。人材を確保しつつ介護スタッフの負担を軽減するために、国から補助金を出して介護現場のIoT・ICT化を支援しています。

補助対象

ICT導入支援事業の補助対象となるICT機器は以下の通りです。

  • 介護ソフト
  • タブレット端末・スマートフォン
  • インカム
  • 業務効率化に資するその他のソフト
  • Wi-Fi機器の購入・設置

また、これらの運用経費も補助対象となります。

出典:ICT導入支援事業の概要

補助要件

ICT導入支援事業の補助要件には、以下のような要件が挙げられます。

  • LIFEによる情報収集・フィードバックに協力
  • 他事業所からの照会に対応
  • 導入計画の作成、導入効果報告(2年間)
  • IPAが実施する「SECURITY ACTION」の「★一つ星」または「★★二つ星」のいずれかを宣言など

出典:ICT導入支援事業の概要

補助上限額等

ICT導入支援事業の補助上限額は、以下の通りです。

※補助される金額の限度額は、事業所で働く職員の人数に応じて設定されます。

  • 1~10人:100万円
  • 11~20人:160万円
  • 21~30人:200万円
  • 31人~:260万円

(補助率は各都道府県が設定)

出典:ICT導入支援事業の概要

実施自治体数

ICT導入支援事業は令和元年度に15県で実施されました。その後、急速に増え、令和2年度は40都道府県、令和3年度は47都道府県すべてで実施されています。

助成事業所数も令和元年度は195事業所でしたが、令和3年度は5,371事業所と大幅に増えています。

出典:ICT導入支援事業の概要

まとめ

介護業界において、IoT導入は早急に進めるべき課題です。IoTが普及することで、スタッフの負担を軽減したりサービスの質を上げられたりと、さまざまなメリットがあります。

今回の記事の内容を参考に、IoTの導入を検討してみてください。

中小企業診断士
セカンドラボ株式会社 PR Solution Div.
URL:https://note.com/2ndlabo/n/n949eaa3e9d69

北海道大学を卒業後、医療機器の営業として6年間勤務。外科、整形外科、泌尿器科領域を中心に民間・国公立の病院を担当。2020年よりセカンドラボ株式会社に入社。医療福祉施設の課題解決プラットフォーム「2ndLabo」にて各種ITツール、医療機器の導入支援、クリニック開業支援に従事。

2ndLaboのサービスを通じて、これまで1,000件を超えるサービス導入支援・開業支援を担当。得意分野は、電子カルテ、介護ソフト、各種医療機器。

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