1959(昭和34)年9月に厚生大臣の認可を受けて、事業を開始した社会福祉法人博仁会。肺結核に罹患して療養した経験を持つ創設者齋藤邦雄氏が、「療養生活で受けた恩恵に報いたい」と社会福祉事業を開始しました。創設から62年を過ぎた現在は、老人ホーム事業だけでなくデイサービスを運営し、地域の老人福祉事業の拠点としての役割を果たしています。
そんな歴史を持つ社会福祉法人博仁会が運営している特別養護老人ホーム「和楽ホーム」では、最先端のAI技術を誇るエイ アイ ビューライフ株式会社の見守りロボットA.I.Viewlifeを導入して、介護の現場の効率化とスタッフの負担軽減を図っています。そこで今回はA.I.Viewlifeの導入の経緯や、導入後の変化について伺いました。お話いただいたのは施設長の宮澤良浩さんと特養部長の木本孝志さんです。
——和楽ホームの入居者さん、スタッフさんは総勢何名いらっしゃるのですか?
宮澤さん
当施設は、ユニット型、従来型、ショートステイを合計すると129床を有しています。スタッフは50人ほど在籍しており、昼間は20名から25名が入居者様のケアに当たっています。夜間は1フロアに1名で合計5名、フリーで動けるスタッフが2名の合計7名体制です。
——昼間もさることながら、夜間の業務が過酷になるかと思うのですが、A.I.Viewlifeを導入する前はどのような状態だったのですか?
木本さん
夜間は限られたスタッフで対応しますが、定時の業務は多々あります。排泄介助に、体調不良者のケア、検温などなど。そしてこうした業務の最中にひっきりなしに「見守り業務」が生じます。入居者様のうち転倒や転落リスクが高い方については、センサーマットを活用して事故を回避できるようにしていました。
センサーマットは体圧センサーと足踏みセンサーの2つがあり、入居者様の動きを検知してアラートが鳴る仕組みです。入居者様の状態によっては「寝返りをしただけ」でもアラートが鳴ってしまい、四六時中アラートに対応に追われていました。スタッフがおむつ交換をしている最中にアラートが鳴れば、「すぐに行かなきゃ。でもおむつ交換がまだ終わっていない」と焦ってしまいます。スタッフの精神的ストレスはかなり大きかったと思います。
職員が駆けつけたら「少し寝返りをうっただけ」、「ベッドの上に座っただけ」ということも多々ありました。体圧センサーや足踏みセンサーだけでは見守りの限界がありました。
——A.I.Viewlifeをどのような経緯で知ったのですか?
宮澤さん
もともと見守り支援システムを探していました。さまざまな企業の見守り支援システムをインターネットでリサーチしていましたね。これからの時代は介護者の人材不足と高齢者の増加によって、さらに人が足りなくなります。そういったときに対応できるようテクノロジーの力を借りなければならないと考えていました。
多くの企業の見守り支援システムのデモを行い、私たちの希望を叶えてくれる唯一の見守り支援システムがA.I.Viewlifeだったのです。ベッドにいるときだけでなく離床時の危険を察知できること、入居者様のプライバシーを保護しながら見守れることなどが私たちの求める条件に合致しました。
木本さん
居室内を動画で撮影するタイプのセンサーの導入を検討した際、、スタッフ間で大いに議論が交わされました。入居者様の部屋をカメラで監視することに抵抗を覚えるスタッフが少なくなかったのです。その点A.I.Viewlifeはシルエットセンサーなので、入居者様のプライバシーを侵害することがありませんよね。
宮澤さん
入居者様の安全を守ることのみならず、プライバシーが保たれた状態で暮らしていただくことも非常に重要だと当法人は考えています。だから高解像度のセンサーや監視装置は選択肢から外れました。
——導入を決定づけたきっかけはありましたか?
宮澤さん
当施設がA.I.Viewlifeを導入したのは2020年11月のこと。東京都のICT補助金制度がスタートしたため、第一期に申請したのです。A.I.Viewlifeにかかる費用は1300万円程度で、Wi-Fi網の整備やパルスオキシメーターなどと抱き合わせで導入しました。もともと見守りセンサーは入れるつもりだったので、補助金制度の新設がきっかけとなりました。A.I.Viewlife35台と、通知を受け取るためのiPhoneとiPadも合計10台購入しました。
——A.I.Viewlifeを導入して、スタッフさんの業務はどのように変わりましたか?
木本さん
かなり変わりましたよ。A.I.Viewlifeは天井に設置したセンサーで入居者様の動きを察知してiPadやiPhoneにアラートを送信してくれます。どのような動きがあったかを音声で知らせてくれるので、画面を開かなくても何が起きたかを瞬時に理解できるんです。
業務中にアラートが鳴っても、すぐさま優先順位を付けられます。これによってスタッフの精神的負担が大幅に軽減されましたね。また、見守りセンサーと別で生体情報を取得できるセンサーがあるのですが、こちらもありがたいです。居室にいる入居者様の呼吸の有無等を常時監視できますので。
——入居者様に関して、何か変化はありましたか?
木本さん
入居者様自身は体圧センサー時代と比べて大きな変化は感じていないと思います。「天井になにかついてるなあ」くらいの認識でしょうか。
宮澤さん
以前は転倒事故などが発生しても、ご家族に推測でしか経緯を説明できませんでした。しかし、現在では、転倒などの事故が起きたときのご家族への説明もエビデンスに基づき説明ができ、必要に応じて事故の発生時を記録した動画を見せて説明できるため、施設に対する信頼にも繋がると感じています。
木本さん
入居者様が転倒するときってあっという間なんです。いつもはゆっくりな動きでも、ほんの3秒の間にベッドから落ちてしまう。どんなセンサーでも、アラートが鳴ってから職員が駆けつけても間に合わないことはあります。するとスタッフが見ていないときに起きたことは、起きた出来事からの推測に過ぎず真実はわからないんです。
宮澤さん
でもA.I.Viewlifeなら危険な動きを検知すると、その前後の動画が自動で保存されるので、転倒の経緯をつぶさに確認できるんです。
A.I.Viewlifeは入居者様のプライベートな空間を撮影するため、必ず入居者様やご家族の同意が必要です。入居者様がシルエットの状態で表示されるA.I.Viewlifeの利用については、すべてのご家族へ事前に書面にてお知らせし、ご理解いただけています。
——スタッフの皆さんはスムーズにA.I.Viewlifeを用いた業務に慣れましたか?
木本さん
人によりけりですが、20代から60代のスタッフが働く当施設では、A.I.Viewlifeの導入に抵抗を持つスタッフもいました。iPadやiPhoneの操作に慣れていない方もいます。ロック画面を解除するときは、パスコードを入力しますよね。その操作に戸惑う人もいるくらいです。
——どのように皆さんはA.I.Viewlifeの使い方を覚えたのでしょうか?
木本さん
自主的に「ICT導入委員会」を設立して、各フロアから代表の数名が委員となって操作方法を学びました。スタッフそれぞれが責任を持って覚えようという前向きな姿勢が見られましたね。委員会で学んだ知識は委員が他のスタッフに伝える仕組みです。
A.I.Viewlife自体は、センサーさえ設置をすればあとはiPhoneやiPadで通知を確認して、動画を閲覧するという流れなので使い方が難しいわけではありません。けれども設置方法や設定はちょっと複雑です。当施設ではどの部屋にもA.I.Viewlifeを設置できるように、すべての部屋に専用のコネクタを完備しています。入居者様のお部屋が変わったり、新たな入居者様がお見えになったりしたときは、A.I.Viewlifeを取り外して、付け替えます。
宮澤さん
といいながらも、今後は台数を増やすことを検討しているのですが、スタッフが「あの人とこの人のところも入れて欲しい」という具合に要望が上がってくるんですよ。それほどまでに、A.I.Viewlifeは業務には欠かせない存在になっています。
——メーカーのサポートはいかがですか?導入時や導入後もきちんとフォローされていますか?
木本さん
導入時は、代表者を集めて研修を開催してくれました。また先ほど少し出てきた施設内でA.I.Viewlifeを移設する際の手順もレクチャーしていただき、その様子をスタッフが動画で撮影。共有フォルダに入れてあるので、全員がいつでも確認できるんですよ。
宮澤さん
電子機器なので、故障やトラブルは発生します。ただその際は土日であっても担当者に必ず電話で対応していただけているので助かっていますね。
——A.I.Viewlifeの機能は導入時と比べてアップデートされているのでしょうか?
木本さん
アップデートされていますよ。たとえばiPhoneやiPadから流れるアラートの音声。今は音声で「(入居者様が)ベッドから歩きますよ!」と動作を知らせてくれますが、以前は通知音だけでした。だからいちいち手を止めて端末を確認しなければならない。今は音声で知らせてくれるので、音だけである程度の優先順を付けられるんです。
——今後A.I.Viewlifeを使い続けたいですか?またどのような機能を期待しますか?
宮澤さん
使い続けたいですね。スタッフの負担が大幅に軽減されていますから。A.I.Viewlifeは拡張性があるプロダクトで、さまざまな機能を期待できると思います。
あればうれしいなと考えているのは「双方向でコミュニケーションを取れる機能」ですね。居室内で入居者様が急に立ち上がったときに「○○さんちょっと待ってくださいね」と遠隔でスタッフが声をかけられれば、転倒や転落リスクが減少すると思います。
木本さん
簡単に設定できる機能があればいいなと思います。介護保険ソフトと連動させて、事故発生リスクが高いと想定される入居者様を自動で設定できるようになれば、現場の負担感がさらに少なくなるかなと。
宮澤さん
それも要望したいですね。A.I.Viewlifeなら実装してくれるのではないでしょうか。
<社会福祉法人 博仁会プロフィール>
1959年9月に法人創設。「和楽ホーム」の他、養護老人ホーム「愛仁ホーム」やデイサービスセンター「さざなみ」、ケアサポートセンター「ひまわり」を運営。
取材に応じたいただいた「和楽ホーム」は、ショートステイ「あおぞら」を含む129床の特別養護老人ホーム。入居者様が相部屋で利用するの従来型居室と、一人で過ごすことのできるユニット個室の両方を備える。季節ごとのクラブ活動や施設行事も大切にしている。
法人名:社会福祉法人 博仁会
理事長:齊藤哲也
住所:〒198-0002 東京都青梅市富岡1‐318
URL:http://www.hakujin-kai.or.jp
<エイ アイ ビューライフ株式会社プロフィール>
2017年4月設立。見守りロボット機器の開発・販売を手がける。介護用見守りロボット『A.I.Viewlife(エイアイビューライフ)』は、広角センサー・生体センサーで利用者を見守り、利用者の危険な動作の予兆を検知することができる。
企業名:エイ アイ ビューライフ 株式会社
代表:安川 徹
本社住所:〒102-0092 東京都千代田区隼町 2−13 US半蔵門ビル201
URL:https://aiview.life