病院、介護施設の運営において、多くの運営者、担当者様の頭を悩ませるのが患者様、入居者様のお食事です。さまざまな給食、給食業者を検討するものの最適解にたどり着かず困っているというお声も耳にします。
そこで今回は埼玉県で120名超の入院患者様を抱える狭山ヶ丘病院様の事例をご紹介します。狭山ヶ丘病院の管理栄養士の奥間すみれさん、給食を提供している富士産業株式会社の鈴木真紀チーフにお話を伺いました。精神科の患者様へのお食事の提供の困難さや、富士産業株式会社の給食サービスの魅力について現場の声をお届けします。
病院の管理栄養士である奥間さんが栄養面を管理、富士産業社が献立の作成から食器の洗浄までをワンストップで担当しています。まずは狭山ヶ丘病院が食事を内製化していた頃のこと、そして同院で入院食を提供することの困難さについて、お二人にお話を伺いました。
──そもそも、どうして食事を外注化しようと考えたのですか?
奥間さん:元々は、院内で食事提供を完結させていました。自院スタッフを雇用して、食材を仕入れ、調理から配膳、洗浄までを行っていたのです。私はその頃は入職していませんでしたが、大変だったと聞いています。食材をうまく管理できずにフードロスを発生させてしまったり、突然のスタッフの休みや欠員に対応できなかったりと苦労していたようです。患者様からは「メニューがマンネリ化している」という声もあったとか。
それで食事を外注しようと考えたのです。もう今から13年前、2008年9月のことです。そして富士産業さんにプレゼンしていただき、当院に適していると判断したと聞いています。コスト部分でも相談していただいた点も大きかったようです。
──精神科ならではの悩み、対応の大変さはありますか?
奥間さん:精神科だからというわけではありませんが、常食と治療食を用意しなければならないんですよね。糖尿病などの食事の制限が必要な疾患をお持ちの方には病状に合わせた治療食が必要です。
患者さまの食については入院されたときに、管理栄養士である私が詳しく把握しています。噛む力や咀嚼、嚥下の状態、現在患っている疾患や、偏食、アレルギーの有無やこれまでの食生活などなど。月に一度、血液検査を実施して健康状態もチェックしているんです。大きな疾患がなくとも、貧血気味の患者さまや栄養状態が低下している患者さまもいらっしゃいますので、体調・病状に合わせた食事を用意する必要があります。122人の患者様のうち20人ほどは糖尿病や脂質異常症、貧血などの疾患をお持ちなので、治療食を提供しています。
さらに常食の中でも「刻み」や「個別食材の除去」といった対応が求められます。高齢の患者様については、飲み込む力が弱くなっているので、食材を細かく刻んで食事を提供しなくてはならないですね。また偏食の患者様も多いんですよ。特定の野菜や特定の色の食材を取り除くなどの対応が求められます。
治療食と常食、そしてカロリーのコントロールや形状別の食事の用意など、院内スタッフだけによる対応では限界があったと聞いています。
狭山ヶ丘病院が富士産業の医療食事サービスを利用し始めてから13年。なぜ同社のサービスを使い続けているのでしょうか。富士産業の医療食事サービスの魅力を交えて伺いました。
──富士産業社のサービス社の契約を更新し続けている理由を教えてください。
奥間さん:理由はたくさんありますが、食への不安が0であることは大きいですね。食に関する不安は様々です。人員の確保に食材の管理、衛生面の不安。富士産業さんにお願いすることでこういった不安が解消されます。メニューの決定から食材の仕入れ、配膳、そして洗浄までを責任を持って行っていただけるので助かっています。
──富士産業さんの衛生管理はどのようになされていますか?
鈴木さん:給食室はクリーンゾーンとそうではないゾーンが完全に分離されています。食材を搬入する部屋、加工室、そして調理室です。それぞれの部屋には両側から開く大型冷蔵庫があり、食材を搬入したら搬入口側の冷蔵庫から収納し、加工室側から食材を取り出します。加工室で下処理を行った食材は、調理室と加工室の間にある冷蔵庫に入れるのです。こうすることで外部の汚れが調理室に持ち込まれることはありません。
奥間さん:こういった配慮は当院だけでは成し得なかったと思います。衛生管理が徹底されていますので、食中毒に対する不安もありませんね。たしか調理台の拭き取り検査も定期的に行っていますよね? 費用がかかって富士産業さんは負担が大きいと思うのですが、しっかりと外部機関で検査されているので安心できます。
鈴木さん:はい。調理台を拭きとって外部機関で細菌検査をしています。食材のチェックも行っていますね。
──患者さまの状態について、どのように連携を図っているのですか?
奥間さん:患者様の病状や栄養状態、食の進み具合などについては、その都度しっかりと連携しています。それとは別に、当院と富士産業さんとで定期的に「栄養管理委員会」を開催しています。この会議では看護部長も出席して、患者さんや病棟からの要望を伝えるようになっていますね。
鈴木さん:「もっと患者様の個別の状態にあわせて対応してほしい」といった要望もいただきます。患者さんによっては偏食がひどく、抜いて欲しい食材が多数あることも。そういったものについても、できる限り患者様の要望に応える形で対応しています。
奥間さん:お食事の時間に巡回して、患者様の様子を確認する「ミールラウンド」を定期的に行っています。「昨日はしっかり食べていたのに、突然食べられなくなった」という方もいらっしゃいますので、そういった情報は迅速に富士産業さんに共有して、柔軟に対応してもらっているんですよ。
続いて富士産業の食事について、患者様やスタッフの評判を伺いました。
──メニューはどれくらいの期間でサイクルしますか?マンネリ化しないように、どのように工夫されていますか?
奥間さん:3ヶ月でメニューが一周するように献立を組み立てています。朝ご飯はご飯とお味噌汁におかず。お昼は麺やパン、丼にピラフや炒飯など。ご飯と煮物と和え物、といった定食のようなメニューもありますよ。
鈴木さん:マンネリ化させないために季節の野菜を取り入れたり、バリエーションを付けたりと工夫しています。たとえばラーメン。夏は冷やし中華、冬は味噌ラーメンなど。お蕎麦も夏は冷たいお蕎麦で、冬は温かいお蕎麦。お蕎麦とあわせる具材も季節感をだしています。春には揚げた桜エビが香ばしく、香りがよくて食が進むと好評ですね。
──食が進まない方や偏食の方もいらっしゃるかと思います。どのように対応をされていますか?
鈴木さん:「見せ方」を工夫しています。とにかく「食べてもおいしい、見ても楽しい」食事を提供できるように心がけているんです。ポテトサラダには枝豆を入れて、鮮やかに。添え野菜には2色を入れたりなど「彩り」を重視しています。たとえば好評だったのはオクラ入りゼリー。透明のゼリーの中にオクラを入れることで、日頃はオクラに箸を付けられなかった患者様にも召し上がっていただけました。
──患者さまはお食事を楽しみにしている様子ですか?
奥間さん:皆さん、とっても楽しみにしていらっしゃるんですよ。お食事を待ちわびるあまり、お配りした献立をすべて覚えてしまう方もいらっしゃいます。
鈴木さん:季節を感じていただくために、同じカレーであっても季節の野菜を用いてバリエーションを出しているんですが、その中の「夏野菜のカレー」を気に入ってくださった患者様がいらっしゃいましたよね。
奥間さん:あまりにもおいしかったから、そのカレーをご自宅で再現されたんですよ。退院してお料理ができるまでに回復されたこと、そして当院の食事を気に入ってくださったことに大きな喜びを感じました。ハロウィンやお正月、クリスマスなど四季折々の行事食も人気ですよね。
鈴木さん:お正月はお餅風のムース、バレンタインは私がデコレーションしたチョコレートなどなど。皆様にお食事を楽しんでいただきたいので、飾り付けや見せ方にはこだわっています。
奥間さん:おやつは私たちも大変助かっています。富士産業さんがおやつも出してくださるので、患者様にお菓子を用意していただく必要がありません。これまでは患者様やご家族がお菓子を購入すると、病棟スタッフのチェックが必須でした。ですが今は富士産業さんのおやつのおかげで、病棟スタッフの負担が大幅に軽減されたんですよ。カロリーコントロールがなされている点も安心できます。おやつも刻み食に対応していただけますし。
──スタッフの皆さまの評判はどうですか?
奥間さん:私たち職員は福利厚生の一環として、食事の提供を受けています。「おいしい」と多くのスタッフが喜んでいますよ。温かいものは温かく、冷たいものは冷たく食べられるって幸せなことですよね。
栄養バランスが計算されていますし、食材の魅力を最大限引き出してうま味を感じられるような工夫がなされています。「今日のご飯はこれだから」と仕事を頑張れるっていう職員もいるようです。
──富士産業社のサービスはこれからも使い続けたいですか?
奥間さん:富士産業さんのサービスが継続する限り、お願いしたいなと考えています。このコストで、ここまでの対応をしていただける業者はないんじゃないかと思います。個別対応やトラブルの対策など万全な状態を整えてくださっているので。
この13年間で他の業者さんが営業に来ることもあります。でもその内容を富士産業さんにお伝えすれば、よりよい条件にしていただけました。それだけではありません。災害時の備蓄や対応も大変心強いと思っています。
鈴木さん:当社は地震や風水害などの天災でライフラインが寸断されてしまったときに、お食事を提供できるようにキッチンカーを用意しています。食材とスタッフを乗せてお客さまのもとに駆けつけるのです。東日本大震災の際は、東北の各地方にキッチンカーを派遣しました。
奥間さん:それだけでなく、当院の備蓄についてもご協力いただいています。お水やレトルトの食材などを十分に準備できているので、非常時の食の不安も軽減されています。トータルで考えて当院の運営において、富士産業さんは欠かせないパートナーだと思っています。
鈴木さん:これからも、より患者様のニーズ、狭山ヶ丘病院様の要望に応えられるように、全力を尽くしていきたいです。
1963年に精神科の専門病院として開業。小規模専門病院ならではの「顔の見える医療」を目指している。外来、入院による診療だけでなく、訪問診療・看護、退院後の通所リハビリテーションなど切れ目のない医療を提供する。
法人名:医療法人狭山ヶ丘病院
理事長・院長:守屋 雪夫
住所:〒350-1317 埼玉県狭山市水野1026
URL:https://sayamapsy.or.jp
1972年創立。医療・介護福祉・学校給食・社員食堂分野における食事サービスの提供に携わる。経験・知識豊富な管理栄養士・栄養士が病院の給食運営をサポートする。栄養技術講習会や社内研修など、スタッフの育成にも力を注ぐ。2020年度の売上は823億9800万円。
法人名:富士産業株式会社
代表:中村 勝彦
本社住所:〒105-0004 東京都港区新橋5丁目32番7号
URL:http://www.fuji-i.com