医療機関や介護施設で必ず必要なのが、利用者への食事の提供です。施設の規模や形態により、調理内容を変える必要があります。忙しい時間帯とそうでない時間帯の差が激しく、複雑な業務であるといえるでしょう。
逼迫した現場の需要に伴い、従来の調理法であるクックサーブに改良を加えたクックチルが登場しています。今回は新調理法であるクックチルとクックサーブの特長と調理法の違いについて解説していきます。
まずはクックチルについてそれぞれ解説していきます。
クックチルとは食材を大量に調理して、チルド保存した料理です。必要な時に最適な量だけ取り分けて再加熱することで利用者に提供することができます。食品を急速冷却することで、従来の料理法より安全性が向上しているのが特長です。調理方法は具体的に決められているため、誰でも一定レベルの料理を提供できます。しかし、クックチル独特の調理法から一部の料理では味や品質の再現が難しいため、提供できない点が難点です。
クックチルは中心部が75度・1分以上の加熱調理をした後、袋詰めをして0〜3度まで急速冷却します。その後は冷却時と同等の温度を保つことで、最大で5日間のチルド保存が可能です。提供時は再び75度・1分以上の加熱をすることで、従来通り食器に盛り付けが可能となるのです。再加熱からは、2時間以内の提供が鮮度や味を保つ上での必須条件となります。
新調理システムは従来の調理法であるクックサーブと、クックチルなどの新調理を組み合わせた手法のことです。HACCPの理念に沿っており、従来より厳格な食品衛生管理を保証したシステムです。それと同時に、施設の規模や要望・予定に合わせて柔軟にレシピを組み立てることができます。システムをマニュアル化することでレシピの再現度が高くなり、誰でも同じ味を作り出せる点が特徴です。
クックチルについてはクックチルとは|ニュークックチルとの違いや導入フローまで詳しく解説 でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
ここからはクックサーブについて詳しく説明していきます。
クックサーブは、従来から行われている食材を加熱等の調理後すぐに提供する方法を指します。調理後すぐに提供するので、出来立てならではのみずみずしさを演出しやすいのが特徴です。個人のインスピレーションや技術を発揮した、個性的な料理・独創的な味を生み出すのに最適といえるでしょう。新調理システムが開発される前は、作り置きだと味や鮮度が落ちてしまう問題からクックサーブが主流でした。
食材の下処理から味付け・加熱などの調理・盛り付け・提供までをその場で行う手法のことです。個人の発想やセンス・技術を最大限に生かせる点はメリットといえるでしょう。クックサーブがあることで新しい料理が生まれやすくなっているのです。逆に、調理する人により仕上がりや味にばらつきが出やすいという難点があります。一定レベルの料理を提供するには、それに見合った人員の確保が必須です。また、時間帯によっては人数を多く動員しなければならないという難点も多々あります。
ここでは新調理システムとクックサーブを比較していきます。
新調理システムには先ほど紹介したクックチルのほかにも、さまざまな手法があります。以下はそれぞれの調理方法の大まかな流れです。
ここまでクックチルとクックサーブのそれぞれの特徴などを説明してきました。以下は項目ごとの特徴を詳細にまとめたものになります。
クックチル | クックサーブ | |
提供工程 | 冷却保存後、再加熱して提供 | 喫食時に調理作成し提供する |
味・風味 | 再加熱して提供するのでおいしい | 加熱調理後すぐに提供でおいしい |
必要人員 | 事前準備でピーク時の人数を削減可能 | ピーク時に多数の人員が必要 |
管理 | 機械化・マニュアル化されているので誰でも可能 | 属人化しており難しい |
安全性 | システムによって管理されているため安心 | 調理工程で異物混入や汚染のリスクがある |
医療機関や介護施設にとって、利用者へ適切な食事を提供することは必須業務となります。徹底した衛生管理が施されている点にも重点をおかなくてはなりません。同様に、一定以上の味や鮮度の料理を提供したいものです。これらの問題から、これまでは従来の料理法であるクックサーブに頼らざるを得ませんでした。近年ではクックサーブをアレンジした新調理システムが登場し、業務の軽減を計れるようになったのです。
それぞれの特長や調理法を比較したうえで、最適な調理方法の検討をおすすめします。