クックチルとは｜ニュークックチルとの違いや導入フローまで詳しく解説

クックチルとは

クックチルとは、調理した料理を急速に冷凍して保管し、食事提供のタイミングで再加熱する調理方法です。その調理方法は、温度や保管期限などが具体的に定められています。具体的には、加熱調理（芯温75℃/1分）した食品を急速冷却し、0〜3℃で衛生的に保管しておきます。保管期限は5日間です。

従来の方法は、クックサーブと呼ばれる方法でした。加熱調理後、すぐに提供する方式です。おいしい状態で料理を提供しますが、長期の保存はできません。すぐに提供して、食べてもらう必要があります。クックチルは、冷凍技術を活用することで、味と品質を両立できます。画期的な新技術と言えるでしょう。

クックチルの調理法の流れは？

クックチルの調理の流れは下記の通りです。

1. 加熱調理

   スチームコンベクションオーブンなどで芯温を75度以上に保ち、1分以上加熱。

2. 急速冷却

   急速冷却機（ブラストチラー）を使って0〜3℃を保ちながらチルド保存する。

3. チルド保存

   再加熱開始直前までチルド保存。

4. 再加熱

   2時間以内に喫食できるよう配膳時間に合わせて再加熱カートなどで芯温を75度以上に保ち、1分以上再加熱する。

5. 盛り付け

   加熱した料理を盛り付けて提供。

クックチルの調理法や再加熱についてはクックチルの再加熱方法は？｜調理法の流れや導入方法まででも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

ニュークックチルなど他の調理方式との違い

クックチルは新調理方式のひとつですが、新調理方式にはニュークックチルやクックフリーズなどさまざまな種類があります。ここでは、クックチル、ニュークックチル、フリーズクック、真空調理方式、クックサーブの調理方式を解説していきます。

それぞれの大まかな流れの違いは下図の通りです。調理工程や温度管理、保存期間に違いがあります。

クックチル

クックチルは調理方式が決まっており、加熱調理、急速冷凍、再加熱というフローで進みます。料理だけを事前に行い、盛りつけは行いません。そのため、提供するときに盛りつける必要があります。また、加熱と再加熱にスチームコンベクション、調理後に急速冷凍する設備としてブラストチラーもそろえる必要があります。機械の導入が必要になりますが、料理のフローを効率化できる調理システムと言えるでしょう。

ニュークックチル

ニュークックチルは、クックチルをアップデートした調理方式です。加熱し、急速冷凍した後に、盛りつけまで行います。盛りつけ後にチルドで保存し、提供時に再加熱を行います。チルドまでの工程では、クックチルと同様にスチコンとブラストチラーが必要で、再加熱工程では再加熱カートが必要になります。ニュークックチルは、料理から提供までのフローを効率化したシステムと言えるでしょう。

ニュークックチルについてはニュークックチルのシステムは？｜メリットやクックチルとの違いを解説でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

クックフリーズ

クックフリーズは、料理の中心温度を-5℃まで90分以内に冷却させた後に、-18℃まで冷却させて保存行います。

クックチルやニュークックチルと違い、文字通り食品を「凍結」させることが特徴です。

メリットとしては、他の調理方式に比べて保存期間が長い点です。クックチル・ニュークックチルの保存期間が5日間程度であるのに対して、クックフリーズですと最大8週間程度保存できます。

反対にデメリットとしては、味が落ちてしまうことがある点です。凍結すすことで食事によっては食感や風味が損なわれることがあります。

ただし味に影響がない食材も多くあるので、施設によってはクックチル（ニュークックチル）とクックフリーズをハイブリッドで導入し、味が落ちない食材はクックフリーズで長期保存する運用方法を取っています。

クックフリーズについてはクックフリーズおすすめ業者8選｜メリットや業者選定ポイントまででも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

真空調理方式

真空調理法は、真空パックを利用した調理方法です。下処理の済んだ食材と調味料を真空パックに入れて、保管した後、必要に応じて真空パックのまま湯煎などで調理します。そのため、鍋などの調理器具の洗浄は必要ありません。計画的に生産できるため、食材のロスが少なくなります。調理の手間が省けるのも、大きな特徴です。

クックサーブ

クックサーブとは、一般的な調理方法です。食材の下ごしらえを行い、加熱調理を行います。食堂と同じような提供システムです。独自のメニューを作れたり、味つけできたり、大型システム投資の必要がないのが特徴です。

クックチルの導入メリットは？デメリットはない？

味と衛生面での品質を両立できるクックチルには、メリットとデメリットがあります。ここでは、具体的なメリットとデメリットについて解説していきます。

クックチルのメリットについてはクックチルのメリットとは？業務効率化、衛生面で安心でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

クックチルの導入メリット

クックチルの導入メリットは、主に下記の4点です。それでは具体的に見ていきましょう。

調理場作業の効率化と負担軽減

クックチルを導入することで調理作業の効率化と負担軽減が可能です。まず、クックチルでは、スチコンで加熱調理を行い、ブラストチラーで冷却を行います。調理するときの工程は多くありません。機械を使用することで、調理場作業の効率化に繋がると言えるでしょう。また、クイックチルでは、事前に調理を完了させておくことができます。保管期限は決まっていますが、計画的に料理を作ることが可能です。そのため、ピークに合わせての負担が軽減されます。

一般的な調理方式のクックサーブでは、ピークに合わせて人員を配置して、料理を行います。ピークに負担が高まることを回避できないため、調理場作業の平準化は容易ではありません。クイックチルは、調理担当者の負担軽減にも繋がると言えるでしょう。

料理のクオリティの安定化

クックチルを導入することで料理のクオリティの安定化も可能です。調理条件が、スチコンによって均一になり、品質が安定するからです。作り手によって、大きく変わることはありません。また、加熱後の料理を急速に冷凍するため、おいしさを逃しません。再加熱時にもっとも美味しい状態で提供することができます。クックチルを導入することで、料理のクオリティを高いレベルで安定させることが可能です。

衛生管理面での安全性の高さ

クックチルは衛生管理面でも安全性が高いのが特徴です。というのも、調理後、急速冷凍することで菌の増殖を防いでいるからです。

食中毒の原因となる菌は、常温で保管する状態が長引くと増えていきます。クックチルは、加熱後30分以内に冷却を開始し、90分以内に芯音3℃以内に冷却しなければなりません。厳格なルールのもと、冷却条件が定められているからです。そのため、衛生管理面での安全性も高くなります。また、衛生管理指標のひとつであるHACCPも導入可能です。セントラルキッチンで作られたクックチルの場合、ほとんどがHACCPに基づいて製造されます。国際的な管理指標が適応されており、衛生管理面での安全性の高さが伺えます。

人件費と運送費の削減

クックチルは、人件費と運送費の削減に繋がります。従来のクックサーブでは、ピークに合わせて調理と配膳を行わなければならないため、多くの人員を確保する必要があります。しかし、クックチルはそうではありません。計画的に調理できるため、人員が少なくて済むのです。また、クックチルは1度に多くの料理を作るため、材料もまとめて配送できます。そのため、運送費の削減も可能です。クックチルを導入することで経費削減にも繋がると言えるでしょう。

クックチルのデメリット

クックチルを導入すると多くの業務効率化につながります。それでは、クックチル導入時のデメリットとはどのようなものなのでしょうか。以下で具体例を見ていきます。

クックチル用の調理機器や保管食材がスペースを圧迫

クックチルでは、多くのスペースが必要になります。加熱や冷却を行うための設備、チルド保管するためのするための大型冷蔵庫を置く場所が必要です。また、1度に多くの調理を行うため、その食材の保管スペースも必要になります。施設のスペースを圧迫することになります。クックチルのデメリットの一つと言えるでしょう。

メニューのマンネリ化

クックチルではレシピをマニュアル化できます。しかし、その代わりに作れないメニューもあります。例えば、焼き物や炒め物、揚げ物などの一部のメニューです。また、手の込んだ複雑な工程を経たようなメニューは作れません。そのため、クックチルを長く使っていると同じメニューが多くなりがちです。メニューのマンネリ化もデメリットの一つと言えるでしょう。

クックチルの導入方法2種類とそれぞれの価格相場を解説

クックチルの導入方法には、主に2種類あります。具体的な違いについて、以下で解説していきます。

セントラルキッチン方式で導入

クックチル導入のひとつ目の方法は、大きな工場で料理を行い、各利用施設に必要分を届けるセントラルキッチン方式です。セントラルキッチンの特徴は、一括で作業を行うことで調理コストを下げ、厳格な品質管理ができる部分にあります。ただ、大型の工場が必要になるため、非常にコストがかかり、立地も限られます。導入する場合、いくつもグループ企業を持っていて、立地を確保できるような大きな企業におすすめです。

また、セントラルキッチンを持っている企業と契約して、メニューを提供してもらうという方法もあります。こちらに関しては、施設と近くの企業としか契約は行えませんが、機器代などが発生しないため、手軽に導入可能です。小規模な施設におすすめの導入方式になります。

セントラルキッチンについてはセントラルキッチンとは？導入メリットやおすすめ企業まで詳しく解説でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

自施設の調理場で導入

ふたつ目のクックチル導入方法は、自施設のキッチンに設備を導入する方法です。ただ、施設内に機械を導入するため、スペースと設備導入費用が発生します。もちろん自分達で大きなセントラルキッチンを建設するよりは難しくありません。

セントラルキッチンと契約するよりも、手作り感やオリジナリティを増やすことも可能です。自施設で工夫できるため、食品ロスの削減にも繋がります。小規模と中規模の施設におすすめの導入方式と言えるでしょう。

セントラルキッチン方式のおすすめクックチル業者11選

こちらではセントラルキッチンと契約して、料理を提供してもらうおすすめのクックチル業者11社について解説していきます。

自施設で導入する場合のおすすめクックチル業者4選

業者に依頼するクックチルは、会社ごと、地域ごとに特性があります。一方で、自施設でクックチルを導入するという方法もあります。それでは、自施設の導入ではどのような業者を選択すればいいのでしょうか。以下、4つの業者を紹介します。

まとめ

クックチルを導入することで、安全かつ安定した食事を利用者に提供できます。また、人件費などの削減にも繋がり、施設の業務改善も可能です。様々なメーカーがクックチルを提供しているため、それぞれの特徴を比較して、検討するようにしましょう。

よくある質問

クックチルとは？

クックチルとは、加熱調理した料理を急速に冷凍して保管し、食事提供のタイミングで再加熱する調理方法です。 保管期限は5日間と決まっていますが、計画的に調理を進めることができます。 食材のロスも少なくなり、衛生管理面に強みがあり、まとめて調理を行うため人件費などのコスト削減につながる調理方式です。

クックチルとニュークックチルの違いは？

クックチルとニュークックチルの違いは、盛り付けにあります。クックチルは、調理後に盛り付けを行いません。真空パックで保管し、提供のタイミングで盛り付けを行います。そのため、病院の現場でピーク時に多くの盛りつけ作業が発生します。 一方で、ニュークックチルは盛りつけまで行ってチルド保管します。提供時は、盛りつけた料理を皿ごと温めるだけです。 ただ、再加熱するための専用機械が必要になり、導入の設備投資がクックチルより高くなる傾向にあります。

クックチルの導入メリットは？

クックチル導入のメリットは、大きく分けて2つあります。ひとつ目がコスト削減です。計画的に調理を行うため、ピークに合わせた人員配置が必要ありません。 また、食品のロス削減や運送費の削減にも繋がるため、大幅なコスト削減を実現可能です。 ふたつ目が、衛生面でのメリットです。加熱調理後に急速冷凍するため、菌の繁殖を抑えられます。 食中毒のリスクが低くなることはクックチルの大きなメリットと言えるでしょう。