グループホームの建築・開設のポイント|費用や法律まで

投稿日 2022.12.22 / 更新日 2022.12.28
投稿者:豊田 裕史

グループホームを建築し、開設するためにはさまざまな法律を理解しておかなければなりません。福祉施設では各施設が目的に合った設備を用意しなければならず、それに伴い順守しなければならない法律が複数あるのです。

初めてグループホームの建築を手掛ける場合は、事前に建築のポイントを抑えておくようにしましょう。当記事では、グループホーム建築のポイントや注意点、低コストでグループホームを建築するための方法を解説していきます。これからグループホームの建築をしようとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。

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グループホームとは?

まずは、グループホームの定義と入居する利用者がどんな人になるのか、概要を簡単に解説していきます。

グループホームの定義

グループホームとは、一言で言うと介護が必要な利用者が、介護を行う専門スタッフの支援を受け共同で生活を営む住居施設のことです。食事や入浴、排泄、服薬など日常生活の介助を行いながら、機能訓練もあわせて行われます。リラックスできる家庭的な雰囲気が重要ですが、単調な生活では認知症の進行が早まる可能性があります。そのため、より実生活に近い生活と家庭的ケアが求められるのです。グループホームでは5~9人程度の少人数で生活するのが基本です。新しい人が次々に入ってくる環境ではないため、利用者が周囲の変化に戸惑うことなく穏やかに生活できます。プライベートが守られる空間として、利用者ひとりあたり7.43㎡(約4.5畳)以上の個室が必要です。

グループホームの入居対象者

「グループホーム」の中には「障がい者グループホーム」と「認知症高齢者専用グループホーム」の2種類があります。「障がい者グループホーム」は知的障がい者や精神障がい者が入居対象で、自立した生活を送れるように作られたものです。金銭感覚や服薬など、自力では難しいところをスタッフが補いながら小規模作業所における就労などをサポートしていきます。「認知症高齢者グループホーム」は65歳以上で要介護認定を受けており、なおかつ認知症の方が入居対象となります。地域密着型サービスに該当するため、施設を管轄する自治体の被保険者のみが利用できます。

建築基準法上のグループホームの扱いとは?

「障がい者グループホーム」「認知症高齢者専用グループホーム」どちらも、建築基準法上は「寄宿舎もしくは共同住宅」に該当します。ここからは、建築基準法に基づき、注意しなければいけない点を解説していきます。

居室

先述したように、個室の面積はひとりあたり7.43㎡以上必要です。利用者の希望によっては夫婦同室でも問題ありませんが、施設側の都合での相部屋は認められませんので基本的には1人部屋となります。

共有設備

トイレや台所、食堂、浴室、消防設備など、基本的な生活に必要な設備を死角がないように用意しなければなりません。それぞれの設備は安全に過ごせるような環境が求められます。また、介護スタッフの作業スペースや書庫とは離しておかなければなりません。

立地

入所施設や病院の敷地内などにグループホームを建てることは認められていません。また、利用者が孤立しないよう地域や家族と交流できるエリアに開設するようにしましょう。

バリアフリー

地域の条例により細かな基準が異なります。各自治体の条例を確認しておくようにしましょう。

耐震基準

これからグループホームの建物自体を建築する場合は、1981年に定められた「新耐震基準」を満たす必要があります。1981年以前の物件を活用してグループホームを開設する場合は、耐震診断を受けなければなりません。

グループホーム建築時に注意すべき事項

グループホームを建築する場合、注意しなければならないのは「建築基準法」だけではありません。利用者が生活しやすいよう、各ユニットの間取りをイメージすることがポイントになります。ひとつの案としては、中央に居間や食堂など利用者が集まる空間を設置する方法です。個室と居間・食堂との距離が近いので、利用者に何かあった時にスタッフが気づきやすいというメリットがあります。また、会話も聞こえてくるので、常に同居者を身近に感じることができるでしょう。

反対に個室ゾーンを作り、居間や食堂と分けるタイプの間取り例もあります。この場合、個室は静かなプライベート空間になるため、ゆっくりくつろいで過ごすことができるでしょう。ただし、利用者が部屋にこもって孤立しないよう、スタッフが気を配る必要があります。このように、間取りによってグループホームでの過ごし方や雰囲気は大きく変わってきます。どのような雰囲気のグループホームにしたいのか、利用者がどのように過ごすのが理想なのかをイメージしておくと理想的なグループホームを建築できるでしょう。

グループホーム建築時にかかる費用

グループホーム建築の際には、建築費用以外にもさまざまな費用が発生します。主にかかる費用は下記の3種類です。

  • 土地取得費
  • 建築費
  • リフォーム代金

ここからは、それぞれの費用について具体的に解説していきます。

土地取得費

まずは、土地の購入に必要な「土地取得費」です。土地の購入費用は、その地域や土地の広さによってかなり差が出てくる部分でしょう。土地条件は地域によっても異なりますが、東京都では敷地面積300~400㎡以上とされています。駅から近い、交通の便が良いなどの条件を満たす土地になると、その分割高になるでしょう。都心部から離れたところであれば土地取得費を抑えられますが、辺鄙な場所では利用者が集まらない可能性があります。地域住民との交流機会も少なくなってしまうので、バランスを考えながら土地を選ぶようにしましょう。

建築費

次にかかる費用は「建築費」です。グループホームでは、バリアフリーやスロープ、転倒防止柵など一般的な住宅よりも設備が多いため建築費も高額になりがちです。ゼロから建築する場合には1億円くらいの建築費がかかるでしょう。もちろん通常の住宅と同じように、建具や設備、内装などにこだわらなければ建築費を抑えることも可能です。ただし、こだわりや統一性を持たせることで、利用希望者が増える可能性もあります。土地と同じく、内装や設備についてもコスト面と集客面でバランスを取りながら考える必要があるでしょう。

リフォーム代金

既に建築されているアパートや戸建て住宅などを、リフォームしてグループホームとして経営するという方法もあります。ゼロからの建築であれば土地取得費+建築費がかかりますが、既存の建物を活用すればリフォーム代金のみでグループホームの開設が可能です。リフォーム費用の目安としては、内装で300~500万円程度、設備購入費で50~200万円となります。しかし、建物が古い場合など、大規模な改修が必要だとより高額になってしまうので注意しましょう。ただ大規模リフォームになったとしても、大抵は新規で建築するよりも費用を抑えられることがほとんどです。

グループホーム建築を低コストで行うためには?

グループホーム建築を低コストで行う方法として、下記に注意してみましょう。

  • 設計施工一括発注可能かどうか
  • システム建築かどうか
  • 補助金の活用

ここからは、それぞれの方法を具体的に解説していきます。

設計施工一括発注可能かどうか

まずは「設計施工一括発注可能かどうか」という点です。設計と施工それぞれを別会社に発注すると、どうしても費用が割高になってしまいます。一括にすることで経費が安く抑えられるため、その分トータルの費用を安く抑えることができるのです。予算に合わせた設計が提案されるため、予算オーバーでの設計変更などのリスクも少なくなります。設計と施工を一括で発注することで、何か問題が起こった時の責任の所在が分かりやすいというメリットもあります。また、別々に依頼するよりもスムーズに施工が進むのもメリットのひとつでしょう。

システム建築かどうか

次のポイントは「システム建築かどうか」という点が挙げられます。システム建築とは、建物の建築に必要な部材を「標準化」することで、建築のプロセスをシステム化し、それ自体を商品化した建築方法です。ある程度の仕様が決められているので予算が立てやすく、在来工法よりもはるかに費用を抑えることができます。一例として、東京都で1億500万円の建築費がかかる建物を、システム建築で建てる場合は9,500万円程度で建築することが可能です。ただし、基礎から建築までのプロセスがトータルで商品化されているため、自由度は低くなります。

補助金の活用

グループホームの建築には多額の費用がかかりますが、補助金制度を使うことでコストを抑えての建築が可能です。自治体によって給付される補助金精度が異なるため、各自治体にも確認しておくことをおすすめします。今回は各地で実施されている補助金制度を、一部紹介していきます。まずは「社会福祉施設等施設整備費補助金」です。すべての都道府県で取り組まれている補助金制度で、社会福祉法人が施設の整備を行う際に3/4が補助されます。ただし、申請してから実際に助成されるまでの期間が長いので、余裕を持って申請するようにしましょう。

また、兵庫県神戸市では「グループホーム整備支援事業」という独自の補助金制度を設けています。バリアフリーのための改修費用や老朽化した建物の改修費用などの一部が助成される制度です。さらに、既に建っていた建物の解体費用に対する補助金などもあります。先述したように、各自治体によって補助金制度は少しずつ変わりますので、事前に建築予定地を管轄する自治体に確認しておくようにしましょう。

まとめ

グループホームの建築には、建築基準法を始めとするさまざまなルールがあります。ルールを順守した上で開設しなければ、せっかく建てても運営することができません。個室の大きさや必要な設備を整え、適切なグループホームを建築するようにしましょう。建築には高額な費用がかかりますが、各自治体で取り組んでいる補助金を活用できる可能性があります。どのような補助金制度があるのかは、各自治体に確認するようにしましょう。複数メーカーに見積りを出してもらい、比較・検討しながらできるだけ低コストでグループホームを建築することがおすすめです。

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セカンドラボ株式会社 PR Solution Div.

URL:https://twitter.com/toyoda_2ndLabo

セカンドラボ株式会社の社員。病院・介護施設のDX&業務効率化オタク。実は中小企業診断士です。毎日医療福祉施設向けの製品やサービス、企業の調査研究を行っています。


フリーランスWEBライター

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元高校国語教師。3年ほど教育現場で働き、フリーランスWEBライターとして独立。様々なメディアで記事を制作。ディレクターとしても活動。個人でブログも運営しており、情報発信も行なっています。

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