2024年に迫る医師の働き方改革とは?要点と何をすべきか解説

更新日 2024.02.14
投稿者:豊田 裕史

2019年度から働き方改革法案が順次施行されていますが、医師についてはその業務の特性から2024年4月より施行されることになっています。連続勤務時間制限や、勤務間インターバル制度などの適用により、医師の長時間労働を是正することが目的です。

本記事では、医師への働き方改革について制度の内容と医療機関が何をすべきかその対応について解説していきます。これから働き方改革に向けて対応を検討している場合は、ぜひ参考にしてみてください。

医師の働き方改革とは?

医師の働き方改革とは、勤務時間が固定され長時間労働が前提となっている働き方を、柔軟な働き方を自分で選択し、ワークライフバランスの適正化を計ることです。

働き方改革を進めなければいけなくなった背景は、医療や介護のニーズは年々増えている一方で、長時間労働が常態化していることにより深刻な医師不足となっていることです。

医師の働き方改革について規定した「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」は2021年5月28日に公布され、2024年4月1日に施行されます。

上記の法律が施行されると、医師も原則としては1日8時間の労働、週40時間以内が法定労働時間。労使で36協定を結ぶことによって残業が可能になるので、医療機関によっては36協定については見直しが必要かもしれません。

法改正前は、月45時間の残業規制はあったものの、大臣告示のため罰則はありませんでした。今回の法改正によって、労働時間・残業時間の規制は法的義務となり、罰則も就くようになったのです。

こうした法改正に対応するためには、医師が時間外労働が既定の範囲内を超えていることを理由に応召に応じなかったとしても違反にならないことの徹底や、医師のタスクシフト/シェアが必要になります。

出典:良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案の閣議決定について

「時間外労働の上限規制」が目玉

医師の働き方改革の目玉は、「時間外労働の上限規制」です。緊急の対応や当直勤務など、市民の命を守るために医師の長時間労働は冗長化しています。この実情を是正するために、労働時間に罰則のある規制が設けられたのです。具体的に確認していきましょう。

水準 対象 時間外労働規制
A水準 すべての医師

(通常の医療機関勤務で、下記の例外に当てはまらないもの)
年960時間以下/月100時間未満(休日労働含む)
B水準 地域医療暫定特例水準

(救急病院や救急車の受け入れが年間1000台以上など、緊急性の高い医療を提供する医療機関)
年1,860時間以下/月100時間未満(休日労働含む)
C水準 集中的技能向上水準

(初期臨床研修医・新専門医制度の専攻医や高度技能獲得を目指すなど、短期間で集中的に症例経験を積む必要がある医師や研修を実施する医療機関)
年1,860時間以下/月100時間未満(休日労働含む)

通常の医療機関ではなく、地域医療において救急対応が必要な病院や研修などを行う医療機関は例外として認められています。

上限規制に違反した場合は罰則あり

上限規制に違反した場合は罰則があります。一般企業と同様に6か⽉以下の懲役または30万円以下の罰⾦(労働基準法141条)が課せられるのです。

罰則を受けた医療機関となれば、患者様からの信頼や、新たな医師の採用も困難になりかねません。罰則が規定された以上、法律は遵守することが必要です。

追加的健康確保措置の実施

前述した時間外労働の上限規制のほかに、医師の健康を守るための措置を講じることも必要です。

月の上限を超えて勤務する医師に対しては、医療機関が面接指導をします。労働時間の軽減や、宿直回数の減少などの必要な就業上の措置を講じる必要があり、それらが行われない場合は都道府県から指導が入る場合もあります。指導と就業上の措置についてはA~C水準ともに法的義務です。

また、医師の健康確保のために下記の規制が導入されています。

  • 連続勤務時間を28時間に制限する
  • 勤務間のインターバルを9時間以上
  • 休息中にやむを得ない事情で勤務した場合に代償休息を取得する

上記については、B水準、C水準については法的義務、A水準については努力義務です。

医師の働き方改革に対して医療機関は何をすべきか?

医師の働き方改革に必要な措置を確認してきましたが、医療機関はこれらに対応するために具体的に何を行っていくべきでしょうか。

ここからは、労働時間を正しく管理する、労働量を減らすという2つのアプローチで紹介していきます。それぞれが重要なポイントですので、ぜひ実施を検討してみてください。

労働時間管理の適正化

まずは、労働時間を適正に管理することです。 医師の労働時間については、勤務時間の管理がずさんで、手書きの場合いくらでも適当な時間を書き込めてしまうことも問題でしょう。

実働時間と研鑽時間・宿日直時間・待機時間と呼ばれる非実働時間が混合しているため、管理がしづらいことも原因です。

上記を是正し、正確な勤務時間を把握することがまずは重要です。勤怠管理システムの導入することで、正確な勤怠管理が可能になります。

勤怠管理システムの導入による改善例

勤怠管理システムの導入事例を紹介します。ある医療機関では、勤務時間の管理が適正に行われていなかったため、ICカードによる勤怠管理を導入しました。勤務時間が適正に把握できるようになっただけではなく、早すぎる出勤を抑止するようにもなったとのことです。

参考:医師の働き方改革に関する好事例

タスク・シフティングの推進

次に、タスク・シフティングを推進することも働き方改革の推進につながります。 医師がこれまで行ってきた業務の中でも、他の人に任せられるものを増やしていくことが重要です。

医師事務作業補助者の活用

医師、看護師、薬剤師などの業務を整理し、診断書の入力代行などを行うのが医師事務作業補助者です。医師事務作業補助者を活用することにより、医師は患者様の診察など本来注力すべき業務に集中し、効率的に医療機関を運営することができます。

医師事務作業補助者については、医師の負担軽減や処遇改善を図るために、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして届け出た保険医療機関は点数が加算できます。

特定看護師の活用

特定看護師を活用することも有効です。特定看護師とは、定められた特定の好意を実践するための必要な高度知識と技術を指定機関で学び修了認定を受けた看護師のことを言います。

医師が介入しなくても、特定看護師が専門的な視点からの観察や判断が可能となり、医師とスムーズに連携できます。医師が手術や急患対応ですぐに対応が困難な場合の初期対応をタイムリーに行えるメリットがあります。

一方で、特定看護師を含む医療従事者の不足が解決することはなく、簡単にできることでもないというのが現状です。

医療現場のDX化

最後に、医療現場のDX化を進めることも、働き方改革につながります。 DX化による医師の業務負担の軽減の例を紹介します。

オンライン問診票の導入

オンライン問診票とは、患者様が事前にWEBから症状や受診理由などを記載できるシステムです。事前に問診票を回収することで、患者様の待ち時間の短縮や医療スタッフの負担軽減につながります。3密を避けてコロナ禍でも安心して受診ができることもメリットです。

クラウド型電子カルテ導入による効果

クラウド型の電子カルテの導入により、医療機関内の様々なシステムと連携し、日々の事務作業の煩雑さを解消できます。非効率で生産性の低い業務を軽減し、労働時間の短縮を計ることが可能です。

クラウド型の電子カルテについては【目的別】電子カルテ53製品|おすすめ製品、規模別の選び方まででも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

まとめ

本記事では、2024年に迫る医師の働き方改革について、要点とどのようなことを実施すればよいのかを解説しました。

労働時間の軽減のため、システムの導入や特定看護師・医師事務作業補助者などの活用が有効な手段として考えられています。

持続的な医療機関運営のためにも、医師の長時間労働を軽減し健康に働いてもらうことが、医師不足の解消には必要です。本記事を参考に2024年までの対応を検討してみてください。

中小企業診断士
セカンドラボ株式会社 PR Solution Div.
URL:https://note.com/2ndlabo/n/n949eaa3e9d69

北海道大学を卒業後、医療機器の営業として6年間勤務。外科、整形外科、泌尿器科領域を中心に民間・国公立の病院を担当。2020年よりセカンドラボ株式会社に入社。医療福祉施設の課題解決プラットフォーム「2ndLabo」にて各種ITツール、医療機器の導入支援、クリニック開業支援に従事。

2ndLaboのサービスを通じて、これまで1,000件を超えるサービス導入支援・開業支援を担当。得意分野は、電子カルテ、介護ソフト、各種医療機器。


フリーランスWEBライター
URL:https://twitter.com/kakeru5152

元高校国語教師。3年ほど教育現場で働き、フリーランスWEBライターとして独立。様々なメディアで記事を制作。ディレクターとしても活動。個人でブログも運営しており、情報発信も行なっています。

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