薬剤師は薬を受け渡す際、患者様に対して服用方法や注意点などを説明する義務があります。これを服薬指導といい、薬剤師にとって重要な業務のひとつです。患者様にとっても、自身の薬について理解するという点で大切な作業となるでしょう。
今回は、オンライン服薬指導について詳しく解説します。服薬指導のメリットからシステムを選ぶ時のポイントについても触れていきますので、最後までご覧ください。
まず初めに、オンライン服薬指導について解説していきます。
名前の通り、患者様に対して服薬の方法や注意点などをオンラインを通して行うことです。従来では、原則として対面での指導が義務付けられていました。2020年9月に高齢化やライフスタイルの変化に伴い、改正薬機法改正の施行を予定することとなります。
しかし、その年の始めに新型コロナウイルスの感染が拡大し、オンライン服薬指導のニーズが加速しました。それに伴い、厚生労働省からは時限的にオンライン服薬指導を解禁する「0410対応」が発出されます。結果としてオンライン服薬指導は、2020年4月に当初の予定よりも前倒しで解禁となったのです。
オンライン服薬指導が認められる条件は、以下の通りです。
オンライン服薬指導の流れは、以下のようになります。
まずはオンライン診察、もしくは病院やクリニックでの対面診察を行います。診察の際にオンライン服薬指導を希望しているか患者さんに確認するのがおすすめです。薬を渡した後に患者さんがオンライン服薬指導を希望しても、服薬までに間に合いません。事前に患者さんに希望を確認しておくことで、スムーズな医療機関と調剤薬局の連携が可能です。
患者さんがオンライン服薬指導を希望した場合、医療機関が直接薬局へ処方箋を送ります。もし患者さんが自分で処方せんを送る場合はFAXや薬局が導入しているアプリ等を利用します。
医療機関から薬局側に、患者さんがオンライン服薬指導を希望していると連絡すると、薬局側が服薬指導計画書の作成などの準備を行います。服薬指導計画書とは、オンライン服薬指導で説明する薬についての情報や、ルールをまとめたものです。オンライン服薬指導を行う上で、重要な書類となります。
スマートフォンやタブレット・パソコンを用いてオンライン服薬指導を行います。服薬指導の内容は対面と同じく、薬の効果や服薬方法、副作用や飲み合わせの注意点になります。対面に比べて患者さんの症状が伝わりにくい場合があるので、薬剤師は患者さんの疑問点や不安点をよく確認する必要があります。
薬局から患者さんへ医薬品を配送する方法と、薬局に患者さんが直接受け取りに来る方法があります。患者さんがどちらを希望するか確認しましょう。配送する場合、患者さんに別途料金がかかる場合があるため、きちんと料金体系を伝えておくことが大切です。
オンライン服薬指導後、必要に応じて薬剤師と医師の間で患者さんの状態について情報を共有します。対面での診療が必要になる場合や、万が一副作用が出た場合に備え薬剤師と医師は適切な連携を図る必要があります。
ここからは、オンライン服薬指導のメリットとデメリットを解説します。まずはメリットについてです。
患者様の体調や状況によっては、薬局まで足を運ぶことも困難です。また、アクセスの悪い地域に住んでいる場合、通院・薬の受け取りも難しいでしょう。オンライン服薬指導を利用すれば、薬局への移動や待ち時間もなく、自宅にいながら薬を受け取ることができます。医療機関が充実しにくい地域でも、高度な診察や服薬指導が可能となり、患者さんに安心感を与えることができます。
近年では社会のニーズに応じて在宅医療が発展し、薬剤師が患者様の自宅に訪問することも珍しくありません。しかし、毎回訪問で服薬指導を行っていると業務が滞り薬剤師の負担が大きくなってしまいます。訪問とオンラインを組み合わせることで、移動による負担の軽減と業務の効率化にもつなげられるのです。
医療機関や調剤薬局は、普段から体調に不安を抱える患者様が多く集まる場所です。それらの施設は、感染拡大のリスクを常に抱えているといえるでしょう。特に高齢者や疾患を持つ患者様にとっては、大きな不安を感じている方も少なくありません。オンライン服薬指導は自宅や患者様がリラックスできる場所で行えるため、感染予防につなげられます。リスクも避けられるので、患者様はもちろんスタッフにとっても安心感を感じられるのです。
続いては、オンライン服薬指導におけるデメリットを解説します。
オンライン服薬指導を実施した場合、通常は薬局側から薬を配送する方法が主になります。手渡しと比べて、薬の到着までに日数がかかる点や配送料はデメリットです。状況に応じて対応できるよう、配送手段の確保は必須となります。また、薬の品質管理や安全を保てる体制作りも薬局にとっては大きな課題です。
対面と比べるとオンライン服薬指導では、患者様から受け取れる情報が乏しいという点もデメリットです。画面越しでは顔色や声の調子など、患者様のちょっとした変化に気づくのが難しくなります。通信状況によっては、検査値やお薬手帳などの情報を受け取れないこともあるでしょう。特に患者様にとって複雑な薬に関しては、オンラインでの指導は困難な場合が多いです。オンライン服薬指導の際はより意識して患者さんの不安点や疑問点を確認することが大切です。
以下では、オンライン服薬指導システムを選ぶときのポイントを解説します。
オンライン服薬指導はテレビ電話という指定はあるものの、具体的なシステムについては触れられていません。厳密に言えば、コロナ禍で活用され始めた凡用的なテレビ電話ツールでも実施は可能ですが、専用システムでは服薬指導以外にもさまざまな機能が搭載されており、汎用的なテレビ電話ツールよりも利便性が高いです。以下は、オンライン服薬指導システムとテレビ電話の比較表になります。
専用システム | テレビ電話 | |
---|---|---|
予約 | スケジュール管理機能が搭載しているシステムであれば、確認はもちろん変更やキャンセルも簡単 | 予約後の変更やキャンセルに手間がかかる |
問診票 | オンラインでの事前問診票機能を活用することで、服薬指導前の余裕のある時に確認ができる | 問診票を事前に確認できないので、服薬指導に時間がかかる |
保険証 | 保険証を画像で確認できる | 服薬指導時の保険証の読み上げが必要 ・別途メールかFAXで保険証を送る手間が必要 |
服薬指導 | 患者様を呼び出したり、入室を促す機能が搭載されているため事前の案内が不要 | オンライン用のアクセスURLを伝えておく必要がある |
決済 | オンライン決済を利用すれば、キャッシュレスが可能 | 来院時の支払いや振込での対応となるため、未収金リスクがある |
配送 | 配送会社との連携機能を活用することで、配送もスムーズ | 薬局側が都度集荷依頼や持ち込みで発送手続きを行う必要がある |
メーカーにより搭載されている機能は違いますが、活用することで多くの業務を軽減できます。
システムの利用形態は、メーカーによってブラウザとアプリの2つの方法に分かれています。ブラウザの場合は、インストールの手間がいらないのでスムーズに始めやすい点がメリットです。反対にアプリだと、初期設定の手間はかかるものの継続的に利用してもらいやすくなるでしょう。どちらの方法も、メリット・デメリットがあります。自局の患者様にとって、使いやすい方法を選ぶことがおすすめです。
オンライン服薬指導システムを導入していても、患者様に利用してもらえなければ意味がありません。そのため、患者様にとってアクセスがしやすいシステムを選ぶことは非常に重要です。オンライン服薬指導に対応している薬局を検索できる機能があれば、自局も見つけてもらいやすくなるでしょう。そのまま予約まで進められれば、患者様の利用率も向上します。メーカーによっては、局内に貼る案内ポスターを提供してくれるので確認しましょう。
医療業界の制度改正は変化が激しく、複雑なものが多いです。そのため、改正のたびに混乱する業界関係者は存在します。またシステムに慣れない場合はスタッフへの指導も大きな課題となるでしょう。状況の変化に柔軟に対応しなければならない調剤薬局において、サポート体制は非常に重要です。サポート内容はメーカーにより幅があるので、どの範囲まで対応してくれるのかチェックしておきましょう。
新型コロナウイルスの蔓延防止や高齢化社会の観点から、オンライン服薬指導が導入され始めています。服薬指導は、患者様に薬の重要性や注意点を知ってもらう非常に重要な業務のひとつです。オンライン服薬指導システムは、活用することでスムーズな通信だけでなく前後の業務負担を軽減してくれます。細かな機能やサポート体制はメーカーにより異なるため、十分に確認してから比較していきましょう。