調剤薬局のレセプト業務を解説|請求の流れや診療報酬の仕組みまで

更新日 2024.04.09
投稿者:豊田 裕史

レセプト請求は調剤薬局において欠かせない業務のひとつですが、これから調剤薬局の仕事に就こうと考えている人などは、具体的にどのような業務なのか分からない方もいるでしょう。

今回の記事では、レセプト請求について詳しく解説していき、社会保険診療報酬支払基金を経由しない直接審査支払いのメリット・デメリットも紹介しますので参考にしてください。

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レセプト請求とは

調剤薬局におけるレセプト請求は、基本的に医科のレセプト請求と同じで、組合健保や協会けんぽ、市区町村などの健康保険の保険者に診療報酬を請求します。

レセプト請求には入院・外来・歯科・調剤の4種類があり、翌月10日までに審査支払機関に提出しなければならず、請求点数は1点10円です。

レセプト請求の流れ

レセプト請求の基本的な流れは以下の通りです。

  1. 診察・入力
  2. レセプトの作成
  3. レセプトの点検・提出
  4. 審査支払機関にレセプトを提出

診察・入力

患者の診察が終わったら、レセプトのもとになる診療情報を、窓口会計業務を行いながら「レセコン」に入力していきましょう。

多くの場合、レセコンで診療内容などに応じたコード・品番を入力すると、診療報酬点数が自動で算出されます。基本的に外来患者の場合は来院するたびに入力する必要がありますが、入院患者の場合は月に数回、精算のたびに入力すれば問題ありません。

レセプトの作成

患者一人ひとりの1ヶ月間の診療内容および診療報酬の記録であるレセプトを作成していきましょう。
患者一人ひとりのレセプトを作成する必要があるので大変そうに思えますが、作業自体はそれほど難しくありません。

ただし、大規模病院の場合はその件数が数千単位と非常に多いです。それでも、しっかりと正確な情報をレセコンに記録しておけば、後はレセコンが自動で集計してくれるのでそれほど負担は大きくないでしょう。

レセプトの点検・提出

レセプトの点検作業は、レセプト請求においてもっとも重要な業務です。レセコンに入力された情報は、すべてミスなく記録されているとは限りません。医療事務の人が間違えて入力している可能性がありますし、医師が診療内容や処方した薬を間違えて申告していることも少なくないです。

そのため、レセコンから出力されたレセプトの内容が正確であるか否かを慎重に1件ずつ確認する必要があります。

主に「患者の情報は誤っていないか」「記載されている傷病名と実際に行った診療行為・処方薬など整合性がとれているか」といった部分を点検しましょう。点検するなかで入力の誤りを発見した場合は、速やかに修正を行います。

審査支払機関にレセプトを提出

最後に、作成したレセプトを審査支払機関に提出しましょう。
レセプトと診療報酬請求書は、審査支払機関で慎重に1件ずつ確認作業が行われます。もし、レセプトの記載内容に誤りがあった場合は、審査支払機関からレセプトを差し戻されてしまうので注意しなければなりません(返戻)。

また、診療報酬点数を減点される(減額査定)ことも少なくないです。返戻された際は、レセプトを精査・修正して、再提出する必要があるので手間と時間がかかります。

なお、2015年4月から紙での提出が原則として認められなくなっており「電子媒体」もしくは「オンライン」を利用して提出しなければなりません。また、最近ではオンライン請求を義務化する動きもあるようです。

診療報酬の仕組み

作成したレセプトは、そのまま健康保険組合などへ提出してはいけません。審査支払機関を通して作成したレセプトを厳重に確認してもらう必要があります。確認後、健康保険組合などに受領してもらえれば、診療報酬が審査支払機関へと支払われるのです。その後、最終的に審査支払機関から、医療機関に診療報酬が支払われる流れとなっています。

なお、調剤レセプトは、オンライン請求の割合が9割を越えているということも頭に入れておきましょう。

レセプトの返戻・査定とは?

レセプト請求に対して、審査支払機関側が適当でないと判断した際に、レセプトそのものを差し戻されることを、レセプト返戻(へんれい)と呼びます。

医療行為の適否の判断が困難な場合に行われ、審査支払機関側から一方的にレセプトそのものが差し戻されますが、その際、医療機関は再請求が可能です。

また、医療機関からの請求に対して、審査支払機関側が適当ではないと判断した項目を修正し、減額・減点によって調節した額で支払いが行われることをレセプト査定と呼びます。
レセプト査定は返戻とは違い、査定が行われたレセプト請求に対しては、医療機関側からの再請求はできません。

調剤報酬の直接審査支払いとは?

調剤報酬の直接審査支払い

通常、調剤報酬の支払いは社会保険診療報酬支払基金を経由しなければなりません。しかし、直接審査支払では、支払基金を経由せずに薬局が健保にレセプトを提出することが可能です。
ただし、直接審査支払いにはメリット・デメリットがあるので、以下で詳しく解説していきます。

直接審査支払いのメリット

直接審査支払いのメリットは以下の通りです。

  • ジェネリック医薬品の推進ができる
    調剤薬局との協力関係によって、ジェネリック医薬品への転換促進を行えます。
  • 保険者機能の発揮できる
    調剤レセプト情報の入手時間を短縮でき、調剤薬局との対話が実現するため、保険者機能の発揮を図ることが可能です。
  • 事務手数料の削減が可能
    調剤報酬の請求から支払いまでを保険薬局と直接行うことができるため、事務手数料を削減可能です。

直接審査支払いのデメリット

一方、直接審査支払いによって、以下のリスクが発生する可能性があります。

  • 審査が厳しくなる可能性が高い
  • 支払いまでの時間が長くなる可能性がある
  • 支払い金額が減る可能性がある

このようなリスクがあるため、日産自動車健康保険組合は、 令和4年8月調剤分を最後に、組合会の承認および厚生労働省の認可を受けた上で、直接審査支払いに廃止を決めています。

理由としては、直接審査支払いのメリットであったコスト削減効果が期待できなくなり、「新たな追加費用発生」のリスクやオンライン資格確認導入に伴う「薬剤情報の閲覧」ができないといったデメリットも生じたためです。

まとめ

レセプト請求は、調剤薬局において欠かせない業務のひとつです。正確性・効率性が求められる業務であり、入力ミスなどによって返戻や査定があると、手間と時間がかかることも少なくありません。社会保険診療報酬支払基金を経由しない直接審査支払いは、メリット・デメリットがあるため、廃止する組合もでてきています。今回の記事の内容を参考に、請求時の流れや注意点を理解した上で、レセプト請求を行うようにしましょう。

中小企業診断士
セカンドラボ株式会社 PR Solution Div.
URL:https://note.com/2ndlabo/n/n949eaa3e9d69

北海道大学を卒業後、医療機器の営業として6年間勤務。外科、整形外科、泌尿器科領域を中心に民間・国公立の病院を担当。2020年よりセカンドラボ株式会社に入社。医療福祉施設の課題解決プラットフォーム「2ndLabo」にて各種ITツール、医療機器の導入支援、クリニック開業支援に従事。

2ndLaboのサービスを通じて、これまで1,000件を超えるサービス導入支援・開業支援を担当。得意分野は、電子カルテ、介護ソフト、各種医療機器。

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