エレベーターの巻き上げ機は、エレベーターを動かすためのモーターや減速機を指す機器のことです。重さ約1トンもあるエレベーターを安全に、快適に動かすためにも重要な部品の1つです。
本記事では、エレベーターの巻き上げ機について構造や価格、修理のタイミングなどを解説します。
目次
エレベーターの巻き上げ機とは、エレベーターの上げ下げを行うための「駆動装置」のことです。エレベーターにはロープがついており、屋上機械室にある巻き上げ機で引っ張っています。
エレベーターの重さは約1トンあり、ゾウほどの重さがあります。巻き上げ機は、重さ1トンもあるエレベーターを動かすために必要な部品です。
電動巻き上げ機の法定耐用年数は10〜15年と言われており、定期的なメンテナンスを行う必要があります。部品が古くなってきた場合は、適切なタイミングでのリニューアルが必要です。
現在のエレベーターはほとんどが電動モーターによって駆動しています。駆動方式はロープ式が主流になっており、釣合おもりを使用した「トラクション式」と、巻胴にロープを巻き付ける「巻胴式」に分けられます。
ここでは、エレベーター巻き上げ機の働きや構造をタイプ別に見ていきましょう。
トラクション式の機械室ありタイプは、エレベーターで最も活用されているタイプです。エレベーターの「かご」と「釣合おもり」の重量バランスを整え、巻き上げ機で効率よく駆動させます。
システム構成もシンプルなので、低層ビルから高層ビルまであらゆる場所で活用されているのが特徴です。
トラクション式機械室なしタイプは、昇降路を自由に設計できるタイプです。機械室が不要で建築上部に突出物がないため、北側斜線制限や日影規制の影響がありません。
巻き上げ機の設置場所は、上部に設置するタイプと下部に設置するタイプに分かれます。エレベーターの速度が異常に早くなった時に調速機が作動し、エレベーター制御が行われた場合の復帰操作は、必ず手動で行われるのが特徴です。
前述したとおり、巻き上げ機はエレベーターを動かすために欠かせない装置です。万が一、巻き上げ機に不具合が発生すると、エレベーター事故に繋がります。
例えば、エレベーターから異音や油漏れが発生したり、ブレーキの利きが悪くなることによってカゴとフロアの間に段差が生じたりします。
さらには、閉じ込め事故に繋がる恐れもあるため、巻き上げが不具合になる前に修理することが大切です。
エレベーター巻き上げ機の修理方法は以下の3つが挙げられます。
上記のうち制御リニューアルは老朽化しやすい部分のみ修理するため、コストを抑えられるメリットがありおすすめです。
ここでは、エレベーター巻き上げ機の修理方法についてそれぞれ解説します。
その名の通り、制御盤やカゴ、巻き上げ機などをすべて新品に交換する方法です。既存のエレベーターを完全に撤去して新しいものと取り替えるため、エレベーターの使用が約25日〜40日程度停止します。
また、新しいエレベーターの製造には通常50日〜120日かかるので、工事期間全体では約120日程度かかるでしょう。新品のエレベーターにリニューアルできるという利点がありますが、費用は1基あたり1,200〜1,500万円と高額なのがデメリットです。
準撤去リニューアルは、建物各階に固定される「三方枠」や「敷居」などは再利用し、他の部品は全て新品に交換する方法です。
制御系やカゴも新品に交換するため工事期間は全撤去とほぼ同じですが、費用を抑えることができます。ただし、既存のエレベーターが旧式の場合、部品の調達に時間がかかることがあるでしょう。
制御リニューアルは、一部の部品はそのままに、巻き上げ機や制御盤などの制御系のみをリニューアルする手法です。
エレベーターのリニューアル方法の中では、費用が400万円〜700万円と最もコストを抑えることができます。工期も3日〜15日程度に短縮できる点も大きなメリットです。
ただし、交換しない部品や機器に関しては、別途リニューアル計画や改修計画が必要になるでしょう。
エレベーター巻き上げ機のみをリニューアル・交換する場合の費用相場は50万円〜です。
この価格には、送料や工事費用が追加でかかります。また、巻き上げ機の大きさなどによっても価格は変動する点には注意が必要です。
多くの業者では、専門スタッフが使用中のエレベーターを調査し、老朽化の進み具合や利用状況に合わせた提案をしてくれます。
ここでは、エレベーター巻き上げ機のリニューアルに対応しているおすすめの業者を4社紹介します。
エス・イー・シーエレベーター株式会社は、56年以上の実績で多数のリニューアル実績がある企業です。全メーカー対応のノウハウと技術力から生まれたスピードリニューアルが魅力です。
スピードリニューアルは、制御盤と操作盤、制御ケーブルのみを交換するプランになります。完全停止期間は最短1日で、低コストでのリニューアルが可能です。
また、光天井や防犯カメラ、開延長ボタン、停電時自動着床装置などオプションも豊富です。
エス・イー・シーエレベーター株式会社の特長・メリット
基本情報
対応可能な業務 | メンテナンス・リニューアル |
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対応可能なメーカー | 全メーカーに対応 |
業者タイプ | 独立系 |
営業サポートエリア | 全国対応 |
会社規模 | 1,100名 |
上場区分 | 未上場 |
ジャパンエレベーターサービス株式会社は、独立系として唯一、プライム市場上場を果たしている企業です。保守契約台数は8万台を超え、独立系メンテナンス・リニューアル会社でトップシェアを誇ります。
エレベーターの要である「制御盤」のみを交換する「Quick Renewalプラン」により、工事期間を最短半日、大幅なコストダウンを図れます。
また、リモートでエレベーターの運転状況や状態を把握できる「PRIME」を導入しているのも、独立系ではジャパンエレベーターサービスのみです。
ジャパンエレベーターサービス株式会社の特長・メリット
基本情報
対応可能な業務 | メンテナンス・リニューアル |
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対応可能なメーカー | 全メーカーに対応 |
業者タイプ | 独立系 |
営業サポートエリア | 全国対応 |
会社規模 | 連結1,766名(2023年3月末時点) |
上場区分 | 東京証券取引所 プライム市場 |
日伸セフティ株式会社は、ビル管理業務から人材派遣までビルをワンストップでサポートする企業です。関西圏と関西圏対応エリアを限定することで、経験豊富な技術スタッフが1台1台丁寧できめ細かなメンテナンス・リニューアルを実施します。
メンテナンスで使用する部品は、メーカーの純正部品のみです。各拠点にストックしているので、故障やトラブルに備えて万全の供給体制を整えています。
また、24時間365日緊急対応のスタッフが常に待機しており、エレベーターが緊急停止しても迅速な対応が可能です。
日伸セフティ株式会社の特長・メリット
基本情報
対応可能な業務 | メンテナンス・リニューアル |
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対応可能なメーカー | 全メーカーに対応 |
業者タイプ | 独立系 |
営業サポートエリア | 関東圏+大阪 |
会社規模 | 256人 (2020 年度) |
上場区分 | 未上場 |
エレベーターコミュニケーションズ株式会社は、エレベーターの保守管理・点検業務を行っている企業です。業界初のリーズナブルなプランを用意しているのが特徴です。
リニューアルプランでは、必要最低限の主要部品のみを交換するライトプランを用意。相場よりも安い290万円からリニューアルを依頼できます。
遠隔監視体制は独自開発のイージシステムにより、災害発生時にも24時間365日迅速な対応が可能です。また、各サービスマンが携帯するiPadで、トラブル履歴や部品手配状況を把握し、スムーズな復旧作業が行えます。
エレベーターコミュニケーションズ株式会社の特長・メリット
基本情報
対応可能な業務 | メンテナンス・リニューアル |
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対応可能なメーカー | 全メーカーに対応 |
業者タイプ | 独立系 |
営業サポートエリア | 全国対応 |
会社規模 | 従業員数196名(2022年3月現在) |
上場区分 | 未上場 |
ここでは、エレベーターの巻き上げ機の交換・リニューアルに活用できる補助金と助成金を紹介します。
大阪市内の共同住宅に備えられたエレベーターについて、利用者の安全確保を目的とした防災対策の改修工事にかかる一部費用を補助する制度です。
この制度は、共同住宅に設置されたエレベーターの防災対策を進め、市民の安全性を向上させることを目的としています。
以下の要件にすべて該当するエレベーターが対象です。
補助金額は、補助事業の対象となる経費×23%です。補助上限額は、1台につき218万5千円となっています。
ただし、補助事業の対象となる経費には、消費税および地方消費税相当額を含みません。
共用階段や階段からの避難経路上の「手すり設置」や「段差解消」に関する工事、または「地震時完成運転装置」「戸開走行保護装置」を設置する費用の一部を助成する制度です。震災時における高齢者などの移動手段の安全性を確保する目的があります。
手すり等の設置工事など | 上限100万円 |
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地震時管制装置、戸開走行保護装置の設置 | それぞれ上限30万円 |
停電時自動着床装置の設置を含むエレベーターのリニューアル | 上限100万円 |
防犯カメラ等防犯装置を新しく設置 | 上限30万円 |
防犯カメラ等防犯装置の増設・取替え | 上限20万円 |
※助成率は工事費の1/3
既設エレベーターに安全装置を設置する修繕工事にかかる費用の一部を港区が助成する制度です。安全装置には、戸開走行保護装置、地震時等管制運転装置、耐震対策が含まれています。
助成対象建築物 | 最大助成率(上限額) |
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マンション | ・戸開走行保護装置:100%(最大300万円) ・地震時管制運転装置:2/3(上限額なし) ・耐震対策:2/3(上限額なし) ※最大助成額は、エレベーターリニューアル工事費総額の2/3です。 |
一般建築物 | ・戸開走行保護装置:100%(最大100万円) ・地震時管制運転装置:50%(上限額なし) ・耐震対策:50%(上限額なし) ※助成金額算定の対象にできるのは、各助成対象工事費の合計950万円までです。 |
新宿区の既設エレベーターに、防災対策改修を行う際にかかる工事費の一部を助成する制度です。既設エレベーターの安全性向上により、区民の安全性を確保することを目的としています。
助成対象となる建築物は、以下の1〜5のすべてに該当するものです。
助成金の上限額は、以下のとおりです。助成金額は、防災対策改修工事の区分ごとに算出した助成金の合計で計算します。
防災対策改修工事の区分 | 区分ごとの上限額 |
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①主要機器の耐震補強 | 932,000円 |
②戸開走行保護装置の設置 | 291,000円 |
③地震時管制運転装置の設置 | 233,000円(※693,000円) |
※区と協定を結んだ帰宅困難者の一時滞在施設で、リスタート運転機能などを含めた工事を実施する場合
出典:新宿区|新宿区エレベーター防災対策改修支援事業のご案内
分譲集合住宅に設置されているエレベーターの防災対策整備にかかる経費の一部を補助する制度です。
エレベーターの防災対策整備は、以下の3つすべて、またはいずれかを新設するための工事を指します。
工事内容 | 補助上限額(補助率) |
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P波感知型地震時管制運転装置 | エレベーター1基あたり50万円(工事に要した経費の1/3) |
停電時自動着床装置 | エレベーター1基あたり50万円(工事に要した経費の1/3) |
非常用電源装置 | 1棟あたり100万円(工事に要した経費の1/3) |
出典:浦安市|分譲集合住宅のエレベーター防災対策整備費補助金
老朽化したマンションの建替えや改修、敷地売却、敷地分割、または除却を行うマンション管理組合に対して、区分所有者の合意形成を図るために行う活動費用の一部を補助する制度です。
申請には事前協議が必要です。事前協議に必要な書類は、住宅政策課窓口または当課ホームページで受け取る必要があります。
以下の条件を全て満たしているマンション管理組合が対象です。
補助額は交付決定日から2024年3月11日(月)における再生等検討活動費の1/2以内で25万円が上限です。ただし、予算の範囲内での補助となります。
耐震診断が義務付けられた建築物に対して、長周期地震動対策として実施する改修工事にかかる費用の一部を助成する制度です。
長周期地震動とは、大地震が発生した際に生じる長くて大きな揺れのことをいいます。長周期地震動の対策をしていない建物は、大地震が発生した際に閉じ込め事故などにつながりやすくなります。
補助対象は、以下のいずれかに当てはまるものです。
補助率・補助上限額は下表のとおりです。
補助率 | 補助上限額 | |
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詳細診断にかかる費用 | 詳細診断にかかる費用の1/3を補助 | ・1,000㎡以内の部分:3,670円/㎡ ・1,000㎡超え2,000㎡以内の部分:1,570円/㎡ ・2,000㎡を超える部分:1,050円/㎡ |
改修設計にかかる費用 | 改修設計にかかる費用の1/3を補助 | - |
改修工事にかかる費用 | 改修工事にかかる費用の11/5%を補助 | 次の①と②のうちいずれか低い方の額 ①51,200円/㎡ (免震工法等の場合、83,800円/㎡) ②8,150円/㎡に16億3千万円を加えた額 |
巻き上げ機はエレベーターを動かすために欠かせない部品で、リニューアルのタイミングで必ず交換が必要になります。巻き上げ機に不具合が発生すると、大きな事故につながる可能性もあります。
そのため、巻き上げ機に不具合が起こる前に修理をすることが大切です。 リニューアル費用はリニューアルの方法によっても異なるため、適正価格で提案してくれる業者を選びましょう。