介護施設の厨房業務は、慢性的な人手不足やコスト増、そして利用者の多様なニーズへの対応など、多くの課題を抱えています。
これらの課題を解決に導く画期的な方法として、「完全調理品(以下、完調品)」が、注目を集めています。完調品とは、全ての調理工程が完了した状態で納品される食品のため、「誰でも」「手軽に」「美味しい」食事提供が出来ることが大きな特長です。
この記事では、厨房運営に課題意識を持つ介護施設の担当者の方に向けて、完調品の基礎知識から、導入メリット、選び方のポイント、導入後の運用イメージまで網羅的に解説します。主要な完調品メーカーの特長も比較しやすいように解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。業者選定に迷った場合はお気軽にご相談ください。
この記事は2025年8月時点の情報に基づいて編集しています
本記事で紹介する完調品メーカーの特徴を比較表にまとめました。それぞれのメーカーの特徴は本記事の中で紹介しています。
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サービス名 | クックパック | おたっしゃごぜん | クックデリ | すこやか | LEOC Ready-made |
業者名 | 株式会社フーヅリンク・フジ産業株式会社 | 名鉄協商株式会社 | クックデリ株式会社 | 株式会社ナリコマホールディングス | 株式会社LEOC |
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対応地域 | 全国 | 東京/神奈川/千葉/埼玉/静岡/愛知/岐阜/三重/大阪/兵庫/京都/滋賀/奈良 | 全国 | 全国 | 全国 |
配送 | 冷凍便 | クール便または冷凍便 | 冷凍便 | 冷凍便 | 冷凍便 |
食事の種類 | 普通食/荒キザミ・極小キザミ食/ミキサー食(ソフト食) | 普通食/荒キザミ・極小キザミ食/ミキサー食(ソフト食) ※3つのタイプのクックチルを提供 |
普通食/ミキサー食/ソフト食 | 普通食/ソフト食/ミキサー食/ゼリー食 | 要問い合わせ |
完全調理品(以下、完調品)とは、下ごしらえから味付けまで、すべての調理工程が完了した状態で納品される食品のことです。湯煎やスチームコンベクションオーブンで温めて、盛り付けるだけで、すぐに提供できる手軽さが最大の特長です。
常食だけでなく、やわらか食、ミキサー食、ムース食など、摂食・嚥下機能に合わせた食事形態も豊富に揃っているため、利用者一人ひとりの状態に合わせた食事提供が可能です。
調理師不足、人件費の高騰、HACCP対応の義務化など、給食業務が抱える課題を解決するための有効な選択肢として注目されています。
完調品を導入することには多くのメリットがあります。「誰でも」「手軽に」「安定した品質」で食事提供ができるという性質上、次のような課題意識のある介護施設はぜひこのまま本記事を読み進めてください。
ここでは介護施設向けにおすすめの完調品メーカーを5社紹介します。多くの完調品メーカーが試食にも対応しています。完調品に興味を持たれている方は、実際に2.3社食べ比べてみることをおすすめします。
高齢者施設向けの完全調理済み食材「クックパック」は、真空調理法を用いて食材の旨味を閉じ込め、高齢者にも食べやすい柔らかさに仕上げた商品です。和食・洋食・中華など4,000種類以上の豊富なメニューと、嚥下状態に合わせた介護食を提供。簡単な再加熱と盛り付けのみで調理が完了するため、厨房業務の効率化とスタッフの負担軽減に貢献します。また、栄養管理クラウドサービスも無料で利用することができ、献立管理や発注業務も効率的に行えます。
クックパックの比較ポイント
製品情報
食事の種類 | 常食/荒きざみ食・極小食/ミキサー食・ムース食 |
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料金 | 要お問い合わせ |
おたっしゃごぜんでは、3つのタイプのクックチル(フリーズ・チルド・クック)を取り扱っているため、お客様の多様なニーズに対応可能です。複数のメーカーとやりとりする手間を省き、3タイプを一度にまとめて商談・試食(無料)を行うことも可能です。
食事提供に関するお悩みは、介護施設によってそれぞれ。おたっしゃごぜんではまずはお話しを伺いながら施設の運営状況全体を把握していきます。「どうすればよいのかがわからない」「何が課題なのかもわからない」といった場合でも、お気軽にご相談いただけます。
おたっしゃごぜんの比較ポイント
製品情報
食事の種類 |
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料金 | 下記の表に記載の通り |
料金表
食事の種類 | 朝食 | 昼食/夕食 |
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おたっしゃフリーズ | 18〜29名様 210円/1食 30名様以上〜 190円/1食 |
18〜29名様 190円/1食 30名様以上〜 300円/1食 |
おたっしゃチルド | 225円/1食 | 310円/1食 |
おたっしゃクック | 190円/1食 | 335円/1食 |
「クックデリ」は、プロの料理研究家が監修した完全調理済みの冷凍食品を提供しています。クックデリの献立は全て管理栄養士が栄養価計算を行い、バランスを考えながら作成しています。高齢者の方の健康を考え塩分は控えながらも、おいしく食べられるよう工夫するほか、完食のよろこびを味わっていただける分量にも配慮しています。行事食や季節のメニューも豊富で、五節句や旬を意識した献立が食事の楽しみを広げます。指定添加物不使用など、安心・安全にもこだわっており、全国6,000以上(2025年5月時点)の施設で利用されています。
クックデリの比較ポイント
製品情報
食事の種類 | 普通食/ミキサー食/ソフト食 |
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料金 | 要お問い合わせ |
完全調理済み食品「すこやか」は、365日日替わりのクックチル献立です。家庭料理に合わせた調理方法で、季節感のある食材を使用。おせちや敬老の日といった行事食や郷土料理などバリエーション豊かな食事を楽しむことができます。
身体機能(嚥下力・咀嚼力)に合わせた4つの食形態「普通食・ソフト食・ミキサー食・ゼリー食」を提供しています。普通食と介護食(ソフト食・ミキサー食・ゼリー食)が横並びで同一献立になっています。嚥下力・咀嚼力が落ちて食事の形態が変わってしまっても、変わらない味を楽しめます。
すこやかの比較ポイント
製品情報
食事の種類 | 普通食/ミキサー食/ソフト食 |
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料金 | 要お問い合わせ |
大量調理・集団給食のプロフェッショナル LEOCがこれまでの知識と経験を集結して生み出した最新のミールパック。食材の切り方や加熱時間、冷凍方法にいたるまで、食材に最適な製造工程を研究し、味だけでなく、見た目や食べた時の食感にもこだわって商品開発を行っています。
ここでは、具体的に完調品を導入することでどのようなメリット・デメリットがあるのかを紹介します。
まずは完調品のメリットから見てみましょう。本記事の冒頭でも触れていますように、完調品は「誰でも」「手軽に」「安定した品質」で食事提供ができるという特徴を持っています。そのため、完調品を導入することで次のような恩恵を受けることができます。
下ごしらえや調理の手間が不要なため、大幅な時間短縮が可能になります。
専門的な調理師を配置する必要がなく、少人数での運営が可能になります。調理経験のない方でもすぐに戦力となってくれるため、求人募集のハードルが下がります。
必要な分だけ解凍・温めるため、食材の廃棄ロスがほとんど発生しません。
プロが調理したものを利用するため、誰が温めても常に均一で美味しい料理を提供できます。
工場で徹底した衛生管理のもと製造されるため、食中毒のリスクを軽減できます。
自施設では作れないような専門的なメニューも簡単に提供でき、利用者の満足度向上につながります。業者によってイベント食も豊富に用意されています。
完調品を利用する場合に想定されるデメリットも見ておきましょう。
調理作業が「温めるだけ」「盛り付けるだけ」といった単純な作業に限定され、仕事のやりがいや面白みを感じにくくなることがあります。
食事提供数によっては追加で冷蔵庫や加熱機を用意した方がいい場合もあります。
利用者の好みや個別の要望に、その場で柔軟に対応するのが難しい場合があります。
自施設で調理するよりも、一食あたりの単価が高くなる場合があります。ただし、人件費や食材ロスを含めたトータルコストで比較すると、完調品の方が安価になるケースも多いです。
介護施設で食事提供をする方法は大きく3つの方法があります。それぞれの特徴を比較すると次のようになります。それぞれメリット・デメリットがあるので自施設に適した食事提供方法を選択しましょう。
自前調理 | 給食委託会社 | 完調品 | |
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初期費用 | 高い | 低い | 低い |
ランニングコスト | 中程度 | 高い | 低い〜中程度 |
スタッフの負担 | 大きい | 小さい | 小さい |
食事の自由度 | 高い | 中程度 | 中程度 |
品質・衛生管理 | 施設次第 | 高い | メーカー次第 |
適した施設 | 食事へのこだわりが強く、人件費に余裕がある施設 | 専門的な食事管理を外部に任せたい施設 | 厨房スタッフの負担軽減を最優先したい施設 |
完調品と一口に言ってもその種類は多岐にわたり、選び方を間違えると「費用対効果が低い」「利用者の満足度が下がった」といった失敗につながることも。ここでは、完調品を選ぶ際に抑えておきたいポイントを紹介します。
まず、最も重要なのは、施設の喫食者に合っているかです。味付けだけでなく、ソフト食・ミキサー食・刻み食など食事提供の種類も確認しましょう。無料サンプルを提供しているメーカーも多いので、何社か実際に試食してみることをおすすめします。
完調品は「温めるだけ」の便利さが魅力ですが、毎日同じようなメニューでは飽きられてしまいます。和食・洋食・中華など幅広いジャンルに対応できるか、季節ごとのメニューがあるかなど、メニューの選択肢が豊富にあるメーカーを選びましょう。
厨房スタッフが簡単に扱うことができるかという視点も重要です。調理だけでなく、発注方法や配送スケジュール、イレギュラーが発生した場合の対応など、導入後のオペレーションを想定して選ぶようにしましょう。
完調品は冷蔵または冷凍で送られてくるため、発注ロットにあわせた保管スペースが必要です。業者によって最低発注ロットが設けられていることもあります。施設の規模や冷蔵・冷凍庫の容量、使用頻度に合わせて、配達頻度や発注ロットを事前に確認しておきましょう。
完調品を導入した後の運用は、非常にシンプルです。
その日の食事提供に向けて、前もって必要な食事数を発注しておきます。提供会社によっては、献立が既にきまっていることもあります。
食事提供の数日前に注文分の完調品が届きます。完調品の種類に応じて、冷蔵また冷凍で保管します。
完調品を湯煎やスチームコンベクションオーブンで温めます。
温めた料理を食器に盛り付け、必要に応じて付け合わせや汁物を添えて完成です。
完調品の導入を検討している方によくある質問をQ&A形式でまとめました。参考にしてみてください。
A. 1食あたりの単価は提供会社や食事の種類(常食、ソフト食、刻み食等)によって異なります。1日3食で1人あたり800円~1000円程度の料金設定となっていることが多いです。
A. 運営によります。完調品を導入しても、オペレーションに慣れないうちは、思うようにコスト削減につながらないケースもあります。しかし、オペレーションに慣れることで確実に厨房業務のスリム化につながります。人件費や光熱費を削減できることで、トータルコストが安くなるケースが多く見られます。
A. 完調品は、徹底した衛生管理がされたセントラルキッチンで調理・製造されています。食品を急速冷却し、細菌の増殖を抑える「クックチル」や「クックフリーズ」といったシステムを採用しているメーカーがほとんどです。また、施設内では再加熱や盛り付けのみとなるため、調理過程での食中毒リスクを低減できます。
A. 調理士、栄養士など特別な資格は必要ありません。未経験者でもすぐに業務に慣れることができるため、採用の間口が広がります。
A. ほとんどの完調品メーカーが無料サンプルや有料の試食サービスを提供しています。実際に喫食者やスタッフに試食してもらい、味や見た目、食感などを確認することが、導入後の満足度を高める上で非常に重要です。
完調品は、介護施設の食事提供における様々な課題を解決に導く、魅力的な食事提供手段です。完調品を賢く活用すれば、厨房業務の効率化はもちろん、スタッフの負担軽減にもつながります。
「調理スタッフの負担を軽減したい・・・」
「もっと効率よく厨房運営ができないだろうか・・・」
こういった厨房業務への課題意識をお持ちの方は、ぜひ、今回の記事を参考に貴施設にぴったりの完調品を探してみてください。まずは、いくつかの完調品提供会社に相談し、資料請求や試食をしてみることから始めてみませんか。業者選びで悩むことがあればお気軽にご相談ください!