ポータブルエコーの普及により、往診や救急といった現場でも迅速な画像診断が可能になりました。なかでもコンベックスプローブは、腹部臓器や膀胱、肺など体内の深部を広範囲に観察できるため、日々の診察において非常に活用の幅が広いツールです。
現在は多くのメーカーから多様な特徴を持つ製品が販売されており、自身の診療スタイルに適した一台をどのように選ぶべきか、迷われる方も少なくありません。
本記事では、コンベックス対応ポータブルエコーの主要な製品を紹介するとともに、選定時のポイントや主な活用シーンを解説します。導入を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
>>>コンベックス対応ポータブルエコーの各社製品はこちらの見出しで紹介しています。
ポータブルエコーの導入において、診察部位や深さに応じたプローブ選択は重要です。コンベックスプローブは、主に腹部や骨盤腔など体内の深い領域を観察するために設計されています。
超音波の発信面が凸状にカーブしており、波が扇状に広がることで、深部ほど広い範囲を走査できる構造です。表在用のリニア型よりも低い周波数を用いるため、減衰を抑えて体の奥深くにある臓器まで波を到達させることが可能です。
主な観察対象は、腹部臓器、膀胱、肺など多岐にわたります。広範な状況を素早く把握するスクリーニングにおいて汎用性が高く、現在は小型化により往診や救急などの現場でも広く活用されています。
ポータブルエコー全般の基本性能や特徴を幅広く知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
コンベックススキャンに対応した製品は、その構成から大きく2タイプに分けられます。コンベックス専用のプローブを用いる単一プローブ型と、1本で異なるスキャン方式を切り替えられるデュアルプローブ型です。
機種選定においては、日常の診療でカバーすべき部位の広さが判断基準となります。腹部診察や排尿ケアといった特定の深部診断が主であれば単一型がシンプルで扱いやすく、一方で腹部から血管、表在組織まで多角的に診察する場合は、持ち替えの手間がないデュアルプローブ型が重宝します。
各メーカーの主要な製品を、これら2つの分類に沿って整理しました。自身の診療スタイルに最適なモデルはどちらか、比較の参考にしてください。
※単一プローブ型として分類した製品には、同シリーズ内でリニアやセクタなどのバリエーションを選択できるものも含まれます。
前述した2つの分類に基づき、コンベックススキャンに対応した主な製品を紹介します。それぞれの特徴を、自身の診療スタイルや必要となる診察範囲に照らして比較検討する際の参考にしてください。
>>>コンベックス単一プローブのポータブルエコー
>>>デュアルプローブ型のポータブルエコー
>>>コンベックス対応ポータブルエコーの一覧表
はじめに、一本のプローブにコンベックス振動子が搭載された各社のモデルを紹介します。腹部や深部のスキャンに特化した設計を求める場合や、用途に合わせて特定のプローブを導入したい場合に検討される機種をまとめました。
※各製品のラインナップには、リニアモデルや、複数のプローブから用途に合わせて選択可能な機種も含まれます。

株式会社富士メディカルサービスの「エコープロF1」は、高密度192エレメントを搭載したワイヤレス型のコンベックスエコーです。約200gと軽量でポケットに収まるサイズながら、最大305mmの深部まで高精細に描出できる性能を備えています。
Bモードのほか、カラー・パワー・パルスドプラを含む5つのモードに対応し、腹部や泌尿器、産婦人科など幅広い領域の診察が可能です。iOS端末とWi-Fi接続するだけで即座に起動でき、計測や画像共有も一台で完結。月額25,000円からのレンタルプランも用意されており、在宅診療や往診の現場へ手軽に導入できる機動力とコストパフォーマンスが魅力の製品です。

富士フイルムメディカルの「iViz air コンベックス」は、本体とプローブをWi-Fiで接続する完全ワイヤレス設計のポータブルエコーです。断線リスクがなく、ポケットに収まる軽量コンパクトなサイズ感で、多様な部位の走査を容易にします。
最新の画像処理技術「Clear Visualization Plus」を搭載し、構造物の明瞭な画像を提供。約20秒の高速起動や長時間バッテリーにより、診察をスムーズにアシストします。さらにZoomを用いた遠隔画面共有やSNS共有、PC・USBメモリへの多彩な出力機能を備えており、医療者間の連携も強力にサポート。用途に合わせてタブレットやアプリを自由に組み合わせ可能です。

フィリップスの「Lumify」は、長年の技術を凝縮した高いトランスジューサ性能により、据置機に迫る高画質を実現したポータブルエコーです。コンベックスプローブを用いた消化器領域の診察では、肝実質の性状を深部までクリアに描出します。
画像を自動最適化する「AutoSCAN」機能を搭載し、煩雑な調整なしで迅速な診断をサポート。産婦人科領域の胎児観察や、最大B-line数を自動計測する呼吸器領域の評価にも対応しています。また、遠隔診療支援機能「Reacts」を活用すれば、リアルタイムでの画像共有やビデオ通話が可能。専門医による遠隔からの手技支援や教育など、場所を問わない高度な医療連携を支えます。

テルモの「ポータサウンド」は、プローブとタブレット表示器で構成されるワイヤレス超音波診断装置です。表示器にiPad miniを採用し、持ち運びやすさと画面の視認性に配慮しています。
約20秒の起動時間により、必要な時に迅速な検査開始が可能です。Wi-Fiによるワイヤレス運用のほか、状況に応じて有線接続も選べる仕様となっています。カラーモードを搭載するなど、実用的な使い勝手を備えた設計が特徴です。中心静脈カテーテルの穿刺補助や腹部スクリーニングなど、現場でのスムーズな判断を支えるツールとして活用されています。

アイソンの「SONON 300C」は、完全ワイヤレス設計のコンベックス型ポータブルエコーです。iOSやAndroid端末とWi-Fiで接続するため、ケーブルの取り回しに制限されることなく検査が行えます。
本体重量は約390gと軽量で、最大20cmの深度まで描出可能です。バッテリーは最大3時間の連続スキャン、12時間の待機に対応しており、長時間の往診や回診にも適しています。DICOM規格に準拠しているため、PACSサーバーへの画像転送・管理もスムーズです。6つの検査項目がプリセットされており、腹部診断をはじめとする日常的なスクリーニングを迅速に行うための機能を備えています。
次に、1本のプローブに異なる2種類の振動子を内蔵したタイプを紹介します。これ一台で深部から表在までスキャン領域を瞬時に切り替えられるため、複数の部位を診察する際の機動力に優れています。

GEヘルスケアの「Vscan Air CL」は、コンベックスとリニアの2つの振動子を1本に集約したワイヤレスモデルです。プローブを裏返すだけで深部から浅部まで全身の検査を網羅でき、場所を問わず鮮明な画像を提供します。
AI技術を活用した自動膀胱容積計測機能「Auto Bladder Volume」が利用可能で、ガイダンスに沿った操作により膀胱容積の定量的な評価をサポートします。さらにパルスドプラやMモードも備え、精度の高い診察が可能です。IP67の防水性能やMIL規格準拠の耐衝撃性を持ち、Qi規格のワイヤレス充電にも対応しています。3年間のメーカー保証が標準装備されており、往診や救急などの現場でも長期的に運用できる一台です。

富士メディカルサービスの「エコープロF2」は、1本のプローブにコンベックス、リニア、フェーズドアレイ(セクター)の3種類の振動子を統合したワイヤレスモデルです。これ一台で腹部、運動器・血管、循環器など、幅広い領域の診察に対応できる点が特徴です。
専用のアプリをインストールすることで、手持ちのスマートフォンやタブレットをモニターとして活用できます。複数のプローブを使い分ける手間を省き、迅速なスクリーニングや処置が求められる現場での効率的な運用をサポートします。完全ワイヤレスによる取り回しの良さと、多機能を1本に集約した汎用性を兼ね備えています。

キヤノンメディカルシステムズの「Aplio Air」は、薄型コンベックスとリニアの振動子を1本に集約した約200gの軽量ワイヤレスエコーです。ワンタッチで画像を最適化する「Quick Scan」を備え、場所を選ばず安定した描出をサポートします。
「自動膀胱計測機能」や「Auto-IMT機能」を標準搭載し、簡便な定量評価が可能です。また、エコー画像と患部の写真をセットで保存できる「ApliCam」機能は、ボディマーク代わりの記録にも役立ちます。IP67の防水性能に加え、落下補償やバッテリー劣化補償を含む5年間の長期保証プランが用意されている点が特徴で、在宅現場や救急など多様な環境下での運用を支えます。

日本シグマックスの「miruco CL5」は、コンベックスとリニアの振動子を1本に集約したワイヤレス仕様のポータブルエコーです。プローブ側のスイッチで簡単にモードを切り替えられ、在宅診療やPOCUS(現場即時超音波)など、1台で深部から浅部まで幅広い部位の観察に対応します。
4,000台以上のシリーズ販売実績を持ち、ドプラ機能の搭載や約2時間の連続動作など、実用的な機能を備えています。本体価格は495,000円(税込)と導入しやすい価格設定が特徴で、過失による故障もカバーする「安心3年サポート」プランも用意されています。IPX5の防水性を備えた軽量なケーブルレス設計により、外来から訪問看護、スポーツ現場まで機動力を活かした運用が可能です。
ここまで紹介してきたコンベックスプローブ対応のポータブルエコーをタイプ別に一覧表にまとめました。
コンベックス単一プローブのポータブルエコー
| 製品名/メーカー | 価格 | プローブの種類 |
|---|---|---|
| エコープロF1 富士メディカルサービス |
要お問い合わせ | コンベックスプローブ |
| iViz air コンベックス 富士フイルムメディカル |
要お問い合わせ |
|
| Lumify(ルミファイ) フィリップス・ジャパン |
要お問い合わせ |
|
| ポータサウンド テルモ株式会社 |
要お問い合わせ |
|
| SONON 300 アイソン株式会社 |
要お問い合わせ |
|
デュアルプローブ型のポータブルエコー
| 製品名/メーカー | 価格 | プローブの種類 |
|---|---|---|
| ポケットエコー Vscan Air GEヘルスケア・ジャパン |
798,000円~ |
|
| エコープロF2 富士メディカルサービス |
購入:要お問い合わせ レンタル:35,000円/月 |
コンベックス、リニア、フェーズドアレイ(セクター)3in1 |
| Aplio Air キャノンメディカルシステムズ |
1,133,000円(税込)[本体・5年保証] | リニア・コンベックス |
| ポケットエコー miruco CL5 日本シグマックス |
495,000円(税込)~ | コンベックス・リニア |
コンベックス対応のポータブルエコーを選ぶ際は、まず診察領域に合ったプローブ構成を検討します。腹部等の深部専門なら単一モデル、血管等の表在領域も診るなら切り替え可能なデュアルプローブ型が適しています。
次に、描写性能と支援機能の確認が不可欠です。解像度のほか、自動膀胱計測やドプラ機能、遠隔連携ツールなど、用途に必要な機能の有無は使い勝手に大きく影響します。
また、運用スタイルも比較ポイントです。専用モニターか手持ちの端末か、ワイヤレスか有線かといった仕様は、機動力や管理のしやすさを左右します。最後に、往診や救急での使用を想定し、防水性能や落下補償といった保証内容の充実度をチェックすることが、長期運用の鍵となります。
コンベックスプローブを備えたポータブルエコーは、広範な視野と深部への到達能力を活かし、主に以下の場面で活用されています。
肝臓、胆嚢、膵臓、腎臓などの深部臓器を観察する際に用いられます。腹痛や背部痛を訴える患者に対し、腹水、胆石、水腎症の有無などをその場で確認することが可能です。大型装置の移動が困難な病棟や往診において、触診を補完する視覚的な情報源として状況把握を支えます。
ベッドサイドでの膀胱内の尿量確認や残尿測定、および直腸内の便貯留の評価に活用されます。排尿・排便トラブルを抱える患者に対し、非侵襲的に体内状態を確認することで、不要な導尿の回避や適切な排便ケアの判断材料となります。AIによる自動容積計測機能を備えた機種は、定量的な評価ツールとして利用されています。
緊急性の高い現場において、迅速な判断のために用いられます。特に「FAST(外傷時超音波検査)」では、胸腔や腹腔内の出血の有無を短時間で確認する際に適しています。また、肺エコーによる胸水貯留の評価にも活用され、救急外来や災害現場などでのトリアージに寄与します。
訪問先などの限られた環境において、全身状態のモニタリングに活用されます。腹水の貯留状況や、下大静脈(IVC)の観察による体液管理の指標確認、あるいは浮腫の原因検索など、大型装置の持ち込みが困難な場所での迅速な状況把握を支えます。診察室以外の環境における、生活習慣の指導や処置の判断にも利用されています。
主に下大静脈(IVC)の径や虚脱度を観察し、脱水状態や心不全に伴う体液貯留の評価に活用されます。呼吸器領域では、コンベックスの広い視野を活かして肺野をスキャンし、胸水の有無や肺水腫の指標となるB-lineの確認を行います。これにより、呼吸困難を訴える患者の病態把握をサポートします。
コンベックス対応のポータブルエコーは、腹部、泌尿器、肺、下大静脈など、深部臓器や広範囲なスクリーニングを可能にするデバイスです。従来の大型装置にはない機動力を活かし、往診や救急などの現場での迅速な臨床判断をサポートします。
機種選定では、振動子の構成(コンベックスのみ、または複数内蔵のデュアル型)を診察範囲や利便性に合わせて選ぶのが一般的です。あわせて、画質や操作性、耐久性、サポート面、さらに必要に応じた自動計測機能などの付加価値も、用途に沿って比較してみてください。
日々の診察にポータブルエコーを取り入れることは、視覚的な情報に基づく的確な病態把握や処置の判断に寄与します。本記事を参考に、それぞれの診療環境に適したモデルを検討してください。