令和8年CPAP療法の変更点|在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料など

更新日 2026.06.03
投稿者:豊田 裕史

令和8年度の診療報酬改定で、SAS(睡眠時無呼吸症候群)治療の評価基準が変わりました。今回の見直しで大きなポイントとなるのは、「在宅陽圧呼吸療法指導管理料の見直し」と、「持続陽圧呼吸療法充実管理体制加算の新設」の2点です。質の高い在宅持続陽圧呼吸療法を推進していくという目的のもと、これからは医療機関が患者さんの治療状況にどれだけ関わっているかが重視されるようになります。

これにより、医療機関の運用は大きく変わることになります。これまでは「月1回程度の定期受診時に使用状況を確認する運用」が一般的でしたが、これからはICTや遠隔モニタリングを使って、CPAP療法の継続性や治療の質を客観的に管理していく必要があるためです。実際に使う時間が短い患者さんへの算定制限が厳しくなる一方で、しっかりとした管理体制をつくっている医療機関を評価する加算も新しく作られました。

この記事では、これら2つの大きなポイントを軸にしながら、手前の診断ステップに関係する「終夜睡眠ポリグラフィーの見直し」も含めて全体像を整理しました。これからの改定内容を正しく理解し、医療機関がどのような準備を進めるべきか、厚生労働省の資料をもとに分かりやすく解説します。

目次

【はじめに】令和8年報酬改定におけるSAS治療の見直し

令和8年報酬改定の要点

令和8年度の診療報酬改定において、SAS(睡眠時無呼吸症候群)治療の評価基準が変更されました。今回の見直しにおける大きな論点は、「在宅陽圧呼吸療法指導管理料の見直し」と、「持続陽圧呼吸療法充実管理体制加算の新設」の2点です。

これらの見直しは、SASの標準的治療であるCPAP(持続陽圧呼吸療法)の管理体制を対象としています。これまでの機器の貸出体制への評価から、今後は医療機関による患者の治療状況への関与度合いが重視されるようになります。医療機関には、患者の治療状況をリアルタイムに把握し、必要に応じて適切な指導を行う管理体制が求められます。

令和8年報酬改定の背景

厚生労働省は「質の高い在宅持続陽圧呼吸療法の提供を推進する観点から」として、今回の改定を行いました。その背景には、CPAP療法における患者の治療継続状況や使用頻度をより厳密に評価する狙いがあります。

従来のCPAP療法では、医療機関が機器を貸し出し、月1回程度の定期受診時に使用状況を確認する運用が一般的でした。しかし、国がICTや遠隔モニタリングの活用を推進するのは、患者の治療離脱を防ぎ、実際の治療効果を確実に担保するという明確な目的があるためです。

出典:厚労省|令和8年度診療報酬改定 15. 医療技術の適切な評価

在宅陽圧呼吸療法指導管理料の見直し

在宅陽圧呼吸療法指導管理料の見直し

令和8年度の診療報酬改定において、在宅陽圧呼吸療法指導管理料2は「対象患者の拡大」と「算定要件の厳格化」の2軸で見直しが行われました。今回の改定の根底には、質の高い在宅持続陽圧呼吸療法の提供を推進するという目的があり、単に機器を貸し出す体制から、CPAP療法の質と継続性を厳格に管理する体制へと移行します。

対象患者の拡大(AHI基準の引き下げ)

今回の改定では、無呼吸低呼吸指数(AHI)の基準を引き下げることで、CPAP療法の対象患者が拡大されました。

具体的には、同管理料を算定するためのAHI基準が、従来の20以上(または40以上)から15以上(または30以上)へと緩和されました。これにより、比較的早期の段階にあるSAS(睡眠時無呼吸症候群)患者に対しても、保険適用での適切な治療を提供しやすくなります。

算定要件の厳格化(使用時間による制限)

対象患者が広がる一方で、実際の機器の使用時間が短い患者に対する算定要件は厳しくなりました。

具体的には、指導管理を実施する月の前月から数えて3ヶ月間、すべての月において1日平均使用時間が1時間未満であった場合は、当該指導管理料が算定できなくなります。これに伴い、入院中を除くすべての患者に対して、使用時間や着用状況、AHI等がモニタリング可能な機器を活用することが義務付けられました。医療機関には、機器を通じた正確な利用状況の把握と、それに応じた適切な指導が求められます。

持続陽圧呼吸療法充実管理体制加算の新設

持続陽圧呼吸療法充実管理体制加算の新設

前述した、対象患者ごとの算定基準の見直しとは異なり、今回の改定では医療機関全体の管理体制を評価する「持続陽圧呼吸療法充実管理体制加算(15点)」が新設されました。この加算は、通信機能等を活用して患者の使用状況をモニタリングし、適切な指導管理を行っている医療機関(施設)を評価するものです。算定にあたっては、全患者へのモニタリング体制と、医療機関全体での実績基準をクリアすることが求められます。

全患者へのモニタリングと記録の義務化

新加算の施設基準として、対象となるすべての外来患者に対する組織的なモニタリング体制の構築が盛り込まれました。

具体的には、モニタリング可能な機器を活用して定期的な管理を行うとともに、毎月の診療録(カルテ)にCPAP療法の1日平均使用時間を記載することが義務付けられます。これにより、従来のSDカードを介したデータ確認ではなく、通信機能付きCPAPを用いた自動かつ定期的な遠隔モニタリング体制の構築が必要となります。

医療機関全体における実績要件(コンプライアンス要件)

本加算の特徴は、患者個人の使用状況だけでなく、医療機関全体における患者の治療継続率が実績要件として問われる点にあります。

具体的には、直近3ヶ月以内の実績において、「1日使用時間が4時間以上の日が20日以上」である管理月数の割合が、医療機関全体の全患者の延べ管理月数のうち「4割以上」に達していなければなりません。この基準を維持し、かつ使用時間不足による算定制限を回避するためには、全患者の利用データを一元的に可視化し、利用が滞っている患者を早期に抽出・フォローできるデータ管理システムの導入が必要となります。

終夜睡眠ポリグラフィーの見直し

終夜睡眠ポリグラフィーの見直し

今回の改定では、CPAP療法の管理体制が刷新されると同時に、その手前の診断ステップである「終夜睡眠ポリグラフィー(PSG)」の評価基準にも見直しが入りました。この検査基準の変更は、前述した在宅陽圧呼吸療法指導管理料の変更や新加算の新設と、因果関係として深く連動しています。

診断基準の引き下げと対象患者の拡大

改定により、PSG検査によってSASと診断され、保険適用でCPAP療法へと進むための無呼吸低呼吸指数(AHI)の基準が引き下げられました。

これにより、比較的軽症な段階の患者であっても早期に発見され、CPAP療法の対象となる患者数が医療現場全体で増加することになります。検査という入口を広げることで、国は潜在的なSAS患者を適切な医療へと繋げる動線を強化した形です。

検査から遠隔管理にいたる一連の見直し

このPSG検査の見直しは、一連の治療管理の厳格化や遠隔モニタリングの推進へと直結します。検査基準の緩和によって対象患者が増えると、治療意欲の比較的低い患者の流入や、外来における医療機関側の管理負担の増大が懸念されるためです。

国が対象患者を増やす見直しと同時に、使用時間が短い患者への算定制限を設け、さらに組織的な遠隔モニタリング体制への加算をセットで導入したのは、増大する患者を効率的かつ確実に治療へ定着させるための受け皿を整備するという明確な目的があるためです。

【まとめ】令和8年報酬改定がもたらすSAS治療管理の要点

令和8年度の診療報酬改定におけるSAS治療の見直しは、医療機関に対して「個別患者への厳格な対応」と「組織全体での管理体制の構築」という、大きな2つの論点への対応を求めています。実務における具体的な対応は、主に以下の2点です。

まず、「在宅陽圧呼吸療法指導管理料の見直し」に付随する算定不可リスクへの対応です。直近3ヶ月間で1日平均使用時間が1時間未満の月がある場合は算定できなくなるため、入院中を除く全患者の利用状況を日常的に把握し、不使用患者へ迅速に指導を行う体制が必要となります。

次に、「持続陽圧呼吸療法充実管理体制加算の新設」に伴う組織的な実績管理です。この新加算を取得するには、全外来患者のモニタリングとカルテへの時間記載を行った上で、医療機関全体で「1日4時間以上・月20日以上」の使用を達成している割合を4割以上に維持しなければなりません。

また、今回の改定では「終夜睡眠ポリグラフィーの見直し」による基準緩和も行われており、今後はCPAP療法の対象患者自体の増加も予想されます。

総じて今回の改定は、単に機器を貸し出す運用から、遠隔モニタリング等のデータを活用して治療の継続性と質を客観的に管理する運用への完全な移行を示しています。医療機関には、増大する対象患者を視野に入れつつ、新しい施設基準や算定要件に合致した確実な管理運用の構築が求められます。

中小企業診断士
セカンドラボ株式会社 PR Solution Div.
URL:https://note.com/2ndlabo/n/n949eaa3e9d69

北海道大学を卒業後、医療機器の営業として6年間勤務。外科、整形外科、泌尿器科領域を中心に民間・国公立の病院を担当。2020年よりセカンドラボ株式会社に入社。医療福祉施設の課題解決プラットフォーム「2ndLabo」にて各種ITツール、医療機器の導入支援、クリニック開業支援に従事。

2ndLaboのサービスを通じて、これまで1,000件を超えるサービス導入支援・開業支援を担当。得意分野は、電子カルテ、介護ソフト、各種医療機器。

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