医療機関や介護施設では、施設内で調理をして食事を提供するのが一般的です。
しかし人員確保の難しさや、調理員によって料理のクオリティが変化してしまうなど、品質にバラつきが生じてしまうリスクがありました。
コロナ禍で、さらに人員の確保が課題となる中、いつでも同じ品質で食事提供が可能なセントラルキッチンに注目が集まっていることをご存じでしょうか。
今回は、医療機関や介護施設内で調理をおこなうのではなく、セントラルキッチンを介して食事提供をおこなう方式について解説いたします。
セントラルキッチンとは、具体的にどのようなものでしょうか?その仕組みや調理方法、配送方法の違いなど、詳しく解説していきます。
セントラルキッチンとは、飲食店や病院などにおいて、調理作業を1か所に集中させることで業務効率化や現場での調理工数の削減を図るための施設です。これまでは、外食チェーンやスーパーマーケットの惣菜製造などで活用されてきました。一般的には食事の調達や調理、冷却・冷凍までをセントラルキッチンでおこない、解凍から盛り付け・配膳を各施設でおこないます。
場合によっては食材の加工だけをおこなったり、盛り付けまでセントラルキッチンで完了し、自施設では配膳だけという方法をとることも可能です。近年は学校給食や病院、介護施設でも多く取り入れられるようになり、いつでも品質が安定した安全性の高い食事の提供を実現しています。
セントラルキッチンでの調理方法は主に4つあり、これらはそれぞれに特徴が異なります。 特に病院での食事提供では、厚生労働省の「院内調理ガイドライン」にて、クックチルまたはクックフリーズ製法を採用することを示しています。 そのほか、クックサーブ及び真空調理を取り入れる場合もありますので、1つ1つの調理法の違いについて説明していきましょう。
クックフリーズは、加熱調理した食材を30分以内に、-18℃まで急速冷凍して保存します。その後、提供時間に合わせて再加熱し、盛り付けてから提供する方法です。
クックチルは、加熱調理した食材を急速冷却し(冷却開始から90分以内に芯温3℃まで)、チルド状態で保存します。提供時間に合わせて再加熱と盛り付けをおこない、提供する方法です。
クックサーブは従来通りの調理方法で、調理や盛り付けの後、冷却などをすることなくすぐに提供する方法になります。
下処理が済んだ食材と調味料などをフィルム素材の専用容器に入れ、真空包装をしてから低温加熱にて調理をおこなう方法です。
調理方法別の配送方法の違いは数の通りです。
セントラルキッチンを導入することで、さまざまなメリットを得ることができます。それぞれのメリットについて、詳しく見ていきましょう。
従来通りの各施設内での調理の場合、設備や調理員によって味のバラつきなど品質の差が出やすくなります。この点セントラルキッチンは、調理を一度に大量におこなうことで味のバラつきをなくし、安定した品質を担保することが可能です。
また、配膳時間をしっかりと守ることができるので、患者さまからの評価を得ることにもつながります。
セントラルキッチンでは、1か所に調理を集中させることができたり外注ができるため、管理コストも含めて人件費を削減することができます。
また、通常の調理工程では配膳時間から逆算して職員を一定数配置しなければならず、職員の確保に課題を抱えている施設も多くありました。
この場合でも、セントラルキッチンを活用することで自施設では再加熱や盛り付け、配膳だけで良くなり、少ない職員数でも対応が可能となります。
セントラルキッチンでは、調理現場が1か所に限定されていることで、品質や安全管理がしやすくなります。調理方法も安全性を重視したものが採用されますので、確実な時間の管理や温度管理で衛生面の向上を図ることが可能です。
セントラルキッチンは、人手不足の医療機関や介護施設などでその課題を解決してくれる可能性を秘めたものです。しかし、導入の障壁となるデメリットもありますので、具体的に解説していきます。
1か所で調理した後に、各施設に食材を輸送するセントラルキッチンは、自施設で作り出来たてを提供する場合と比べて、鮮度が落ちる可能性があります。サラダなどの鮮度が重要な野菜は、自施設での調理を併用するなどメニューに応じて工夫する必要が出てくるでしょう。
鮮度についての対応策としては、クックチルやクックフリーズで急速冷却・冷凍をおこなうことで、劣化を最小限に抑えることが可能です。
セントラルキッチンでは鮮度を保つのが難しい場合がありますが、同時に食材によって味が落ちる可能性も考えられます。特にクックフリーズ方式では、冷凍する工程が入るために、食感を損なう場合もあるので注意が必要です。
作りたての食事とまったく同じ状態を再現することが難しいというのは、セントラルキッチンのデメリットであるといえるでしょう。
セントラルキッチンを導入する場合、2つのパターンがあります。 それぞれの特徴をまとめました。
自社でセントラルキッチンを立ち上げる場合、扱う食数に応じて規模は大きく変わるものの、当然ながら調理をする場所の確保が必要です。 そのほか調理設備や輸送手段の確保、マニュアルなどの作成など、さまざまな準備をしなければなりません。
セントラルキッチンを立ち上げる際は、導入費用が高額になる可能性があるため、ある程度の稼働数が見込まれる場合に適しています。
セントラルキッチンとは、調理作業を1か所に集中させることで、業務効率化や現場での調理工数の削減を図ることができます。 調理後の食材を急速冷却・冷凍することによって、食材の安全や品質を保ちながら各施設に輸送し、提供することが可能です。
衛生面や品質の向上、人件費の削減ができるというメリットがある一方で、冷却や冷凍をする過程で鮮度や味が落ちる可能性もあります。 セントラルキッチンを導入する際は、さまざまなシミュレーションをしながら、自施設の課題を解決できるような方法をお選びください。