クリニックの窓口を支える医療事務スタッフ。その教育の重要性は分かっていても、いざ取り組むとなると難しいものです。日々の診療に追われる中で、まとまった教えの時間を確保するのは簡単ではありません。
患者さんへの言葉遣いや振る舞いに、もう少し配慮が欲しい。レセプトの算定漏れや返戻を減らして、経営を安定させたい。こうした切実な悩みがあっても、院内だけで指導しようとすると、つい角が立ってしまったり、伝えきれなかったりすることもあります。
そんなとき、外部の研修を一つの選択肢として考えてみてはいかがでしょうか。専門家の手を借りることは、スタッフがプロとしての自覚を持つきっかけにもなります。この記事では、クリニックに合う研修の選び方と、具体的なサービスについてまとめました。
本記事で紹介する医療事務研修について、それぞれの強みや実施スタイルを一覧にまとめました。「接遇を優先したい」「まずは動画で手軽に始めたい」など、貴院の課題や状況に合わせて比較検討する際の目安としてご活用ください。
>>>それぞれの医療事務研修はこの記事の中盤で紹介しています。
| 会社名 | 主な強み・特徴 | 実施スタイル |
|---|---|---|
メディカルタクト![]() |
自院のレセプトを教材にする超実践スタイル | オンライン研修 |
OASIS INNOVATION![]() |
精度調査に基づいた算定漏れ・返戻対策 | 講師派遣・オンライン研修 |
在宅医療事務協会![]() |
在宅医療特有の複雑な算定に完全特化 | オンライン研修・動画 |
日本教育クリエイト![]() |
接遇から実務まで網羅。eラーニングも充実 | 講師派遣・動画・オンライン研修 |
ソラスト![]() |
50年以上の実績。スマホで学べる手軽さ | 講師派遣・動画・オンライン研修 |
GLANZ![]() |
クリニック勤務25年の代表による現場力指導 | 講師派遣 |
医療接遇ホスピタリティ協会![]() |
ロールプレイ重視のアクションラーニング | 講師派遣 |
コンクレティオ![]() |
社労士連携。マニュアル作成や組織改善も | 講師派遣 |
研修では、机上の学習だけでなく、クリニックの日常で直面する困りごとに合わせた実践的な内容をお願いできます。スタッフが自信を持って患者さんと接し、正確に事務作業を進められるよう、外部の専門家がさまざまな形でサポートしてくれます。
クリニックの顔である受付では、患者さんに安心感を与える接遇マナーや、信頼を築くコミュニケーションを学べます。基本的な挨拶から、忙しい時の電話応対、ご意見をいただいた際の誠実な接し方まで、現場に即した練習が可能です。
同時に、少人数のチームが協力し合える環境づくりも相談できます。自分の仕事が院にとってどれほど大切かを知ることで、スタッフ一人ひとりにプロとしての自覚が芽生えます。外部の視点が入ることで、忙しい中でも情報共有を忘れず、お互いに助け合える心地よい職場づくりが進みます。
レセプト業務については、正確でスムーズに作業を進めるための具体的なコツを教わることができます。複雑な診療報酬ルールを整理し、ミスを防ぐためのチェックポイントを共有することで、返戻や査定への不安を解消していきます。
定期的な改定についても、自院に関係する部分を分かりやすく解説してもらえるため、新しいルールにも無理なく対応できるようになります。作業の進め方自体を見直すことで、月末の残業を減らしたり、算定漏れを防いで経営を安定させたりといった、実務に直結する手助けも受けられます。
研修の進め方にはいくつか種類があり、それぞれに良さや費用の違いがあります。クリニックの診療スケジュールや予算、学びたい内容に合わせて、無理のない形を選ぶのが一番です。
費用の目安:半日5〜10万円 / 1日10〜20万円(別途交通費)
講師が直接クリニックを訪問し、現場の様子を見ながら指導してくれる形です。受付の動線や実際の電話対応など、自院のルールに合わせたアドバイスがもらえるため、学んだことをその日のうちから仕事に活かせるのが魅力です。スタッフ全員で一度に同じ話を聞くことで、院内の意識をひとつにまとめたい場合に最適です。
決まった日時に、外部会場やZoom等のライブ配信を通じて受講するスタイルです。講師から直接話を聞けるため、その場ですぐに疑問を解消できるライブ感があります。この形式は、参加方法によってさらに2つに分かれます。
費用の目安:1人あたり数千円〜2万円程度
1名から申し込めるためコストを抑えやすく、特定のスタッフをピンポイントでスキルアップさせたい時に向いています。他院のスタッフと一緒に学ぶことで良い刺激を受け、視野を広げるきっかけにもなります。
費用の目安:1回3万円〜10万円程度
自院のレセプト診断結果や、実際の受付課題に合わせて内容をオーダーメイドで構成する形式です。講師が訪問しない分、派遣型よりもコストを抑えつつ、自院のルールや診療科特有の悩みに深く踏み込んだ直接指導が受けられます。「院内全体のスキルを底上げしたいが、講師を招く場所や時間の確保が難しい」というクリニックに適した選択肢です。
費用の目安:月額数千円〜(定額制または1講座単位)
あらかじめ用意された講義動画を、パソコンやスマートフォンを使って視聴する形です。診療の合間や、スタッフそれぞれの隙間時間に合わせて進められるため、日々の業務を止めずに無理なく学習を続けられます。何度でも繰り返し見直せるため、復習や新人の基礎学習としても活用しやすくなっています。
クリニックの運営において、外部の研修を検討する時期はいくつかあります。今の現場の状況と照らし合わせながら、参考にしてみてください。
院内での教育は、どうしても「診療の合間」に行うことになります。そのため、新しいことを教える時間が十分に取れなかったり、指導の内容がどうしても我流になってしまったりすることがあります。
また、長く同じメンバーで働いていると、仕事の進め方が固定化され、改善点が見えにくくなるマンネリ化も起こりがちです。教える側も教わる側も行き詰まりを感じたときは、外部の視点を取り入れることで、現場の空気を変えるきっかけになります。
「患者さんから受付の対応についてご意見をいただいた」「レセプトの返戻や査定が続いており、収益に影響が出ている」といった、具体的な課題が見えているときも研修が役立ちます。
接遇やレセプトの知識は、個人の感覚や経験に頼りすぎると、同じようなミスを繰り返してしまいがちです。専門の研修を通して、基本に立ち返った立ち振る舞いや、正しい算定ルールを学び直すことで、現場の不安を確かな安心感へと変えていくことができます。
新しく入ったスタッフには、できるだけ早い段階でクリニックの業務に馴染んでほしいものです。しかし、教育担当のスタッフも自分の業務で手一杯なことが多く、基礎をじっくり教えるのが難しい場合もあります。
最初に外部の研修で医療事務としての土台をしっかり作っておくことで、現場での実務習得もスムーズになります。教育体制が整っていることは、新しく入ったスタッフにとっても、安心して長く働き続けられる大きな支えとなります。
「接遇」や「レセプト」といった、クリニックが抱える具体的な悩みに応えてくれる研修サービスをご紹介します。それぞれの会社がどのような強みを持っているのか、自院の課題と照らし合わせながら参考にしてみてください。
正確な算定知識を身につけ、請求漏れや返戻を防ぐことで経営の安定を目指したいクリニックにおすすめのサービスです。実際のレセプト分析に基づいた指導や、専門性の高い分野に特化した研修など、実務に直結するサポートが受けられます。

自院で実際に発行したレセプトを教材として活用する、実戦的な研修スタイルが特徴です。一般的な教科書通りの知識ではなく、そのクリニックの診療内容に基づいた算定ルールを学ぶため、学んだ内容をそのまま日々の実務に反映させることができます。
多くのクリニックでレセプト請求代行を請け負ってきた実績があり、現場で発生しやすいミスや審査側の視点を踏まえた、具体的なアドバイスを得られます。
研修にあたっては、事前に院長と打ち合わせを行い、新人の育成やベテランの精度向上など、その時の課題に合わせたオーダーメイドのカリキュラムを構成。特定の人しかレセプト業務ができないといった属人化を防ぎ、事務部門全体で安定して業務を回せる体制づくりを支援します。単発の勉強会に加え、月1回の個別面談などを通じた継続的なコーチングプランも選択可能です。
メディカルタクトの医療事務研修に興味をお持ちの方は、【インタビュー】メディカルタクトの柳社長が見据える医療事務の未来もあわせてご覧ください。柳社長のこの業界に関する熱い想いを感じることができます。
メディカルタクトが提供するレセプト代行については、メディカルタクトのレセプト代行を徹底解説|料金形態や業務範囲などで詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

少人数の職員研修から大規模な講演まで対応可能な、日本全国への講師派遣を行っています。単に知識を詰め込むのではなく、それぞれのクリニックの実情に合わせた「オリジナルカリキュラム」を作成してくれるのが大きな強みです。
具体的には、レセプトの精度調査と組み合わせて、実際の査定対策や算定漏れ、増点対策の視点から具体的なカリキュラムを構築します。新人スタッフの基本スキル習得はもちろん、現場で即座に活用できる「返戻・査定をなくすための実学」を重視した教育を受けられます。
また、在宅医療の診療報酬請求や改正セミナーなど、専門性の高い分野についても実務に即した指導が受けられるため、確実なスキルアップを目指す現場に選ばれています。
OASIS INNOVATIONが提供する遠隔医療事務サービスについては、OASIS INNOVATIONの遠隔医療事務サービス「診療報酬請求事務集中センター」とは?で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

訪問診療や往診など、外来とは異なる専門知識が求められる在宅医療事務の育成に特化した団体です。独自の資格である在宅医療事務認定士の講座運営を通じて、複雑な在宅レセプトを正しく扱える人材の輩出を支援しています。
研修カリキュラムは、保険診療の基本から在宅特有の施設基準、つまずきやすい点数算定までを体系的に学べる構成になっています。
オンライン、通学、動画といった複数の受講スタイルが用意されており、スタッフの都合に合わせて学習を進めることが可能です。また、各クリニックの課題に合わせたオーダーメイドのレセプト教育も実施しており、現状のヒアリングに基づいた実践的な指導を通じて、質の高いレセプト業務を行える体制づくりを後押ししています。
特定の分野に偏らず、接遇から実務までトータルで底上げしたい、あるいはスタッフが隙間時間を利用して自分のペースで学習できる環境を整えたいクリニックにおすすめです。豊富なカリキュラムや、スマホ・PCで受講できる手軽な学習ツールが揃っています。

医療機関のニーズに合わせた専門研修を幅広く提供しており、接遇マナーからクレーム対応、ハラスメント防止、さらには最新の診療報酬改定に関わる実務まで網羅しています。
大きな特徴は、研修の実施形態が多彩な点です。講師が直接訪問する「講師派遣型」では、それぞれの現場の課題に沿ったプログラムを組むことができ、職員の意識統一を図るのに適しています。
また、医療事務の専門知識を動画で学べるeラーニング「サクラボ」も展開しており、医師事務作業補助者のスキルアップなど、実務に直結する専門的な教育も、日々の業務の合間に効率よく進めることが可能です。

1965年に日本初の医療事務教育を開始した歴史ある企業で、長年の実績に裏打ちされた質の高い教材とカリキュラムが強みです。
病院やクリニック向けには、講師を派遣する「集合研修型」だけでなく、スマホで手軽に学べる新しい学習サービス「テラススタジオ」など、ライフスタイルに合わせた多様なスタイルが用意されています。
研修内容は、医療現場に特化した接遇力向上研修や、短期集中型のプログラムなど、即戦力として役立つメニューが充実しています。また、技能認定振興協会(JSMA)が実施する資格試験に直結した講座が多く、学習の成果を公的な資格として形にできるため、スタッフのモチベーション向上や教育体制のアピールにも繋がります。
患者さんに選ばれる温かな雰囲気づくりや、スタッフ間の円滑な連携を目指したいクリニックにおすすめです。型通りのマナーにとどまらず、現場経験に基づいた立ち振る舞いや、チームの結束力を高めるための実践的なアプローチが受けられます。

現場経験25年の実績を持つ代表が、クリニックに特化したオーダーメイドの個別指導や院内研修を提供しています。医療事務をクリニックの顔として位置づけ、本や学校で教わる知識だけでは補えない現場力の向上を重視しているのが特徴です。
研修では、患者さんとの応対から保険請求の実務まで幅広くカバーし、スタッフが正しい知識と自信を持って働けるようサポートします。これにより、患者さんのリピート率向上や口コミの評価、さらにはスタッフの定着率アップといった、長期的な視点での現場の安定と増益を目指します。
新人教育にも力を入れており、それぞれのクリニックの状況に合わせた柔軟な指導を通じて、医療サービスの土台を支える人材の育成を支援しています。

医療と介護の分野に特化した研修やコンサルティングを展開しており、人材育成と組織構築の両面から現場をサポートしています。個々のスタッフのスキルアップだけでなく、職場環境の改善や制度の構築までを見据えた包括的なアプローチが特徴です。
研修メニューは非常に幅広く、新人から管理職までの階層別研修のほか、接遇、クレーム対応、コミュニケーション、業務改善といったテーマ別プログラムが充実しています。それぞれのクリニックが抱える具体的な問題に合わせて最適なオリジナルプログラムを作成しており、職場内の課題が明確な場合には、その解決に重点を置いた継続的な支援も行っています。
また、医療・介護業界を専門とする社会保険労務士事務所を併設しているため、各種マニュアルの作成や労務管理の視点を含めたアドバイスを受けられる点も強みです。

患者さんとの信頼と安心感を育むことを目的に、医療や介護の現場に即した接遇研修を提供しています。単にマナーの形を教えるだけでなく、患者さんの心に寄り添うホスピタリティを重視し、組織全体の活性化を目指しているのが特徴です。
研修は各医療機関の課題に合わせたオーダーメイド形式で実施され、座学だけでなくロールプレイや実地研修(OJT)、個別面談を組み合わせたアクションラーニング型を取り入れています。これにより、学んだ知識を具体的な行動へと繋げ、現場に定着させることが可能です。
また、アンガーマネジメントやハラスメント対策、チーム作りなど、人間関係を円滑にするためのプログラムも充実しています。継続しやすいよう、費用対効果に配慮した料金体系が整えられている点も、多くの施設に選ばれている理由の一つです。
研修サービスは数多くありますが、大切なのは「自分たちの今の状況」にぴったり合うものを選ぶことです。費用やカリキュラムの充実度だけでなく、次に挙げるような視点で検討してみると、失敗が少なくなります。
まずは、接遇の改善が必要なのか、それともレセプト業務のスキルアップが急務なのか、現場で今一番困っていることに目を向けてみましょう。あれもこれもと欲張らず、一つずつ課題をクリアしていく方が、スタッフの負担も少なく、効果も実感しやすくなります。
全員で足並みを揃えたいなら講師派遣、個人のペースを尊重するならオンラインや動画研修といったように、診療スケジュールに合わせてスタッフが無理なく参加できる形式を選びます。日々の業務を圧迫せず、学んだことを消化する余裕を持てる形が、一番継続しやすい選択となります。
少人数のスタッフが多岐にわたる業務を兼務するクリニックでは、独自の忙しさや工夫が存在します。その背景を汲み取った上でアドバイスをくれる講師であれば、スタッフも納得しやすく、教わった内容を素直に取り入れられるようになります。
外部の研修を導入する際、スタッフが「自分の仕事が否定されている」と感じてしまうと、せっかくの学びも浸透しにくくなります。現場をより良くしていくための、ちょっとした工夫をお伝えします。
研修を始める前に、ミスを指摘するためではなく、スタッフが今よりもっと楽に自信を持って働けるようになってほしい、という応援の気持ちを共有してみてください。「みんなの負担を減らしたい」というメッセージが伝われば、前向きに受講しやすくなります。
より実りある研修にするためには、講師に現場の様子を詳しく伝えておくのがコツです。「電話応対が重なると慌ててしまう」など、具体的な悩みに寄り添った内容であれば、スタッフも納得感を持って取り組めるようになります。
外部研修を検討する際によく寄せられる質問をまとめました。導入前の不安を解消するためのヒントにしてください。
A. 講師派遣型の場合は、休診日や診療前後の時間を活用するのが一般的です。また、最近では1回30分〜1時間程度の短時間オンライン研修や、各自の隙間時間で視聴できる動画研修(eラーニング)も増えています。現場の負担にならないスケジュールを提案してくれる会社も多いため、まずは相談してみることをおすすめします。
A. 「今のやり方がダメだから変える」という伝え方ではなく、「最新の診療報酬改定への対応力を高めるため」「他院の事例を知って、みんなの業務を楽にするため」といった前向きな目的を共有することが大切です。外部の専門家が「プロとして評価している」姿勢で接することで、ベテランの方も刺激を受け、自信を深めるきっかけになるケースも多くあります。
A. 接遇マナーなどは1回で意識が変わることもありますが、レセプトスキルなどは継続的な学習が効果的です。単発の研修だけでなく、月1回の定期フォローアップや、チャットでの相談窓口を設けているサービスを選ぶことで、学んだ内容を現場に定着させやすくなります。
A. 条件によりますが、厚生労働省の「人材開発支援助成金」などが活用できる場合があります。教育訓練の内容や時間などの要件を満たす必要があるため、検討される際は社会保険労務士や、助成金活用に詳しい研修会社へ事前に相談してみるのがスムーズです。
医療事務の教育は、一朝一夕にはいかない難しい課題です。院長先生や事務長様が一人で抱え込み、現場が疲弊してしまう前に、外部の研修という「新しい風」を上手に取り入れてみてください。
接遇のスキルが向上して患者さんからの信頼が増したり、レセプト業務が正確になって経営が安定したりすることは、結果としてスタッフ自身の安心感と自信につながります。大切なのは、今の自分たちのクリニックに足りないものを探すのではなく、より良い未来のために「プロの手助け」を借りるという前向きな姿勢です。
まずは、現場の小さな困りごとに耳を傾けるところから始めてみませんか。それぞれのクリニックに合った研修の形を見つけることで、スタッフ一人ひとりがより一層輝き、患者さんに選ばれる温かな場所へと育っていくはずです。