国内では数多くの介護ソフトが販売されてきましたが価格設定はさまざまです。コストを抑えたいというのが多くの施設の本音でしょう。しかし安さだけを求めると、せっかく導入しても買い替えを余儀なくされ、結果的に予算をオーバーしたりするかもしれません。
念頭に置いておかないといけないのは、機能の数と提供方法が価格に反映することです。機能やサービスなどのコストパフォーマンスも意識することで、本当に安い介護ソフトを見つけることができるでしょう。
そこで今回の記事では、価格のほかに、提供方法、対応可能なサービス、サポート体制なども比較対象としました。ぜひ、みなさまの施設に合った介護ソフト探しの一助としていただけると幸いです。
まずは、介護ソフトの種類によって価格設定がどのように変わるのか、パッケージ型とクラウド型に分けてご説明します。
パソコンに直接インストールして使うタイプのソフトをパッケージ型と言います。導入する際は、CD-ROMもしくはメーカーのホームページからのダウンロード作業が必要です。一度パソコンにインストールしてしまえば、ネット環境に左右されず利用できることが強みです。
パッケージ型の介護ソフトは、自社サーバを導入する必要性などからお金がかかる印象を持たれがちでした。しかし実際は、100万円を超えるソフトがある一方、数万円程度で済むようなソフトもあります。長期的に考えると運用コストが安く抑えられることも少なくありません。
パッケージ型のメリットは、データ情報を施設内で管理できるため、外部に情報が洩れるリスクが最低限です。機能も数も多いため、対応できるサービス形態も多岐に渡ります。ネット回線なしで利用できますので通信障害などの影響を受けません。
提供する企業は大手のことが多く、保守サービス等の充実も図られてきました。とはいえ、パソコンが急に故障するとデータがすべて消えてしまう可能性はあります。そのため、万が一のトラブルに備えて定期的にバックアップを取るなどの対策は必須です。
クラウド型とは、ソフトを提供している会社のストレージ内に個別の保存領域を借りてデータを保存するタイプです。インターネット上にデータを保存するため、インターネットに接続さえできればどこからでも利用できるでしょう。
一方クラウド型の介護ソフトは、自社サーバを導入する必要性がないため、初期費用がほとんどかかりません。初期費用が無料となるソフトが多く、月々の利用料金は1万円を切るプランもあります。
コストを抑えられることやどこからでもアクセスできることはクラウド型ならではのメリットと言えるでしょう。スマートフォンやタブレットなどモバイル端末からもアクセスできるので、訪問系の介護サービスにも適しています。
とはいえ、保存先がインターネット上であるため情報漏洩のリスクは避けられません。セキュリティ対策がしっかりしているソフト会社を選ぶとともに、IDやパスワードの管理などの社内教育を徹底することも必須です。
パッケージ型とクラウド型は、提供方法が全く異なるソフトであることから、料金形態にも違いが見られます。施設の規模や利用する端末の数や種類によっても価格が変動してくるでしょう。そのためソフト会社に見積もりを出してもらうことをおすすめします。
介護ソフトを導入する際、検討の対象となる費用として初期費用と月額料金が挙げられます。それに加えて、介護報酬の改定があったときにシステムをアップデートするための更新料も検討材料となるでしょう。
自社サーバの導入やシステムの構築などの初期費用が大きくなるのがパッケージ型の特徴です。月額料金については、システムの保守費用を請求されることが多いでしょう。保守費用の額は施設の規模やシステムの仕様によって変わってきます。
クラウド型は初期費用が無料で月額料金のみの支払いとなるケースが大部分です。ソフトのアップデートも提供元が無償で行ってくれます。安いクラウド型ソフトの注意点は、機能を増やすたびに費用がかかる点、そして運用サポートが有料である点です。
クラウド型よりもパッケージ型のほうが高額になる傾向は確かにあります。ただ、施設の規模や利用する機能の数などにより料金が変わるため、料金の相場は一概には言えません。複数のソフト会社に見積もりを依頼することで、料金の相場が見えてくるでしょう。
クラウド型かパッケージ型のどちらを選ぶのかで料金の相場が変わってきます。施設の規模、事業やサービスの内容、ソフトの用途、端末の台数などを踏まえて、料金の総額を見積もることができるでしょう。
予算に余裕がある大規模な施設は、利用環境の安定性を重視することから、パッケージ型を選ぶ傾向があります。施設の形態に合わせて柔軟にカスタマイズし、複数の事業所の情報を一元管理することで、結果的に事務コストが軽減できます。
小規模な施設ですと、できるだけコストを抑えたいというのが本音でしょう。クラウド型から選んで機能を厳選し、基本料金のみで利用している施設もあります。利用する機能が限定されているのであれば、期間の定めのない無償版を探すことも一案です。
パッケージ型は初期費用がかかる製品が多く、手が届かない印象を持たれる施設も多いです。ただ、初期費用がかかっても施設に合うシステムであれば、長期で利用すると費用対効果が高くなることも多々あります。
初期費用や月額料金はもちろんですが、サービス内容やサポート体制なども併せて比較してみてください。比較ポイントも記載しておきますので、参考の一助としていただけると幸いです。
楽すけは、介護サービスごとにライセンスを購入するパッケージ型のソフトです。導入するサービスの種類やオプションの数に応じて価格が変動しますので、必要最低限の費用で導入できるでしょう。
利用者が月々に支払う必要があるのが年間サポート料です。月額は契約しているライセンスの数によって変わります。年間サポート料の総額には上限が設けられていますので、ある程度の金額を見積もることが可能です。
介護保険法や報酬制度の改正があっても、機能の修正などのバージョンアップはソフト会社が無償で行います。そのため施設側が追加で費用を支払う必要はありません。
楽すけの比較ポイント
製品情報
提供形態 | パッケージ型 |
---|---|
初期費用 | サービス種類ごとのライセンス料(詳細は要問い合わせ) |
月額費用 | 保守サポート料:年間 30,000円~(税別)※月額換算 2,500円~ |
デモ(無料体験)の有無 | あり |
対象施設形態(対応サービス) | 訪問型サービス、通所型サービス、介護予防ケアマネジメント、その他の生活支援サービス |
サポート体制 | ヘルプデスクでの電話対応、「楽すけネット」での情報発信 |
ファーストケアは、おまとめプラン、月額プラン、買い切りプランの3つの支払い形態から施設の事情に合ったものを選べるパッケージ型のソフトです。
おまとめプランは、最初にまとめて支払うプランで、1年、3年、5年から契約期間を選べます。月額プランは文字通り決まった額を月々に支払うプランで、最低利用期間は3ヶ月です。一括購入型の買い切りプランにつきましては直接お問い合わせください。
ファーストケアの価格は、利用する介護サービスの種類、購入方法、そして運用タイプから決定されます。規模の小さい施設であれば、ひとつの介護サービスとパソコン1台分のライセンスの料金を支払うスタンダードタイプが適切でしょう。数人のスタッフが同時に使用するならネットワークタイプがおすすめです。
ファーストケアの比較ポイント
製品情報
提供形態 | クライアント/サーバー型 |
---|---|
初期費用 | おまとめプラン、買い切りプラン(詳細は要問い合わせ) |
月額費用 | 月額プランあり(詳細は要問い合わせ) |
デモ(無料体験)の有無 | あり |
対象施設形態(対応サービス) | 訪問系サービス、通所系サービス、施設サービス、地域密着型サービス、高齢者住宅サービス |
サポート体制 | ヘルプデスクにて介護保険業務経験のある専任のスタッフが対応 |
Quickけあ2は、スタンドアロン型、クライアントサーバ型、WAN型、レンタルサーバ型など、施設のニーズに即して構成をカスタマイズできるパッケージ型のソフトです。他のメーカーのソフトとも柔軟に連携できることもQuickけあ2の強みと言えるでしょう。
Quickけあ2には、介護ケア、送迎、ベッド、ホームウェアなど、介護サービスに不可欠な管理機能がすべて搭載されています。スタッフの勤務シフトやヘルパーさんの賃金を算出する機能があることも嬉しいポイントです。
パッケージ型のソフトではありますが、データをクラウドへ自動保存できる仕様ですので、データの消失リスクを最小限に抑えられるでしょう。サーバは東京や大阪などの選択式のため、大規模災害などのリスクにも備えられます。
Quickけあ2の比較ポイント
製品情報
提供形態 | パッケージ型 |
---|---|
初期費用 | 要問い合わせ |
月額費用 | 要問い合わせ |
デモ(無料体験)の有無 | あり(モニター版ダウンロード) |
対象施設形態(対応サービス) | 施設系サービス、訪問系サービス、通所系サービス、居宅系サービス |
サポート体制 | ヘルプデスクにてリモート対応(電話対応はなし) |
クラウド型の介護ソフトは、初期費用は無料、月額料金を支払うシステムが主流です。まとめて支払う必要がないため、予算に限りがある施設にとって導入しやすい提供形態と言えるでしょう。好きなタイミングでやめられるので、気軽に始められることも強みです。
ただし、クラウド型のソフトは基本料金を安く抑えられるものの、追加費用がかかる製品が目立ちました。製品を選定する際は、初期費用と月額料金だけではなく「その他費用形態」をチェックするようにしてみてください。
介舟ファミリーは、端末の台数、同時使用する人数、アカウント登録者数を好きなだけ増やせるクラウド型ソフトです。バージョンアップもソフト会社が行ってくれますので、施設側で作業する必要がありません。
料金プランが明瞭であることも介舟ファミリーの特徴です。初期費用は、ソフト会社のサポートを得る場合は50,000円(税別)、サポート無しで導入できる場合は20,000円となっています。月額費用は、居宅介護支援、簡易機能パック、標準機能パックのどれを選ぶのかにより変わります。
介舟ファミリーは導入後のサポートにも力を入れてきました。サポートセンターは非常につながりやすく、オペレーターの応答率は98%です。大きなシステム変更が生じたときには操作説明会が行われます。無料の勉強会も定期的に開催されていますので、興味のある方は利用してみてください。
介舟ファミリーの比較ポイント
製品情報
提供形態 | クラウド型 |
---|---|
初期費用 | サポートあり50,000円(税別)、サポート無し20,000円(税別) |
月額費用 | 5,000円~(サービス種別・利用サービス数により変動) |
デモ(無料体験)の有無 | あり(体験版、訪問デモンストレーション) |
対象施設形態(対応サービス) | 居宅系サービス、訪問系サービス、通所系サービス、入所系サービス、地域密着系サービス |
サポート体制 | データ移行サービス、初期操作説明・初回請求の訪問サポート、サポートセンターにおける電話対応(遠隔サポートあり) |
かんたん介護ソフトは月額 9,800 円で使えるクラウド型ソフトです。完全定額制で、利用するサービス数や利用者数に限りはありません。ただし、同時に接続できるパソコンの数は3台までとされています。
月額料金のなかに介護保険法や報酬制度の改正の際のバージョンアップ費用も含まれていますので、追加の費用は発生しません。介護保険はもちろん保険外サービスにも対応しています。幅広くサービスを提供している施設にとっても利便性が高いでしょう。
自治体が行っている移動支援の請求書を作成することも可能です。対応外の自治体であれば、ソフト会社が無料で仕様を変更してくれます。ソフト会社のホームページ上で、対応済みの自治体がまとめられていますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
かんたん介護ソフトの比較ポイント
製品情報
提供形態 | クラウド型 |
---|---|
初期費用 | 事務手数料18,000円 |
月額費用 | 9,800円(パソコン3台まで使用可能) |
デモ(無料体験)の有無 | あり(無料お試しセット) |
対象施設形態(対応サービス) | 訪問系サービス、通所系サービス、居宅サービス、入所系サービス、移動支援サービス |
サポート体制 | フリーダイヤルにて電話対応 |
トリケアトプスは、初期費用は必要なく、サービスの利用量に応じて月額料金が変化するクラウド型のソフトです。1人220円からの課金制ですが、上限が設定されていますので、大幅に予算オーバーする心配はありません。
介護保険法や報酬制度の改正があっても、システムの変更やバージョンアップはソフト会社が無料で行ってくれます。サポート費用もかかりませんので、ソフトの利用頻度がそれほど多くない施設にとっては費用対効果が高いでしょう。
低価格であるものの、音声による入力ができたりタブレットに対応していたりと、機能の幅が広いことが強みです。セキュリティ対策については、総務省が定めたガイドラインに即して整備されてきました。そのため情報漏洩やデータ改ざんなどのリスクも最小限です。
トリケアトプスの比較ポイント
製品情報
提供形態 | クラウド型 |
---|---|
初期費用 | 無し |
月額費用 | 1人220円(上限5500円)、1人440円(上限8800円)※対応サービスによる |
デモ(無料体験)の有無 | 無料体験(最大3ヶ月) |
対象施設形態(対応サービス) | 介護保険サービス、障がい福祉サービス |
サポート体制 | FAX、メール、フリーダイヤル、AIによるサポート、基本情報のデータ移行サポート |
ワイズマンは、5年間の使用権をまとめて支払うことで次回の更新日まで無料で使えるクラウド型のソフトです。5年間使用権パックには、システムの利用料金のほか、基本機能、保守、法改正対応、バージョンアップ、更新等の料金が含まれています。
ただし、初期導入費用およびライセンスを増やす場合の追加費用の支払いは必要です。また、設定料と操作説明料も有料となっています。操作説明料については、訪問回数や説明内容によって変わるため、施設内に詳しいスタッフがいたら最低限で済むでしょう。
初期導入費用や5年間使用権パックなどを合わせた総額は、施設の規模やニーズにより変わります。見積もりや無料体験を依頼できますので、ぜひ選定の検討材料に加えてみてください。
ワイズマンの比較ポイント
製品情報
提供形態 | クラウド型 |
---|---|
初期費用 | 初期導入費用、5年間使用権パック(詳細は要問合せ) |
月額費用 | 無し |
その他費用形態 | ライセンス追加費用 |
デモ(無料体験)の有無 | あり |
対象施設形態(対応サービス) | 居宅系サービス、訪問系サービス、入所系サービス、通所系サービス |
サポート体制 | お客様サポートサイト「カルガル」を利用可能 |
最近は、安い費用で導入できる介護ソフトが増えていますが、結果的に高くつくこともあります。安さを重視して導入したものの、施設の形態やニーズに合わずソフトを買い替えざるを得なくなることもあるでしょう。そこで、安い介護ソフトを選ぶ際の注意点を解説します。
介護ソフトのなかには、初期費用がなく月額料金も数千円程度から利用できる製品もあります。低価格の介護ソフトは、基本料金に含まれている機能に制約があることも少なくありません。機能をオプションで追加するたびに運用費用は高くなることを念頭に置いておきましょう。
また、問い合わせをしたりサポートを受けたりするたびに料金が請求されるケースもあります。お金を使いたくないからと自力で問題を解決しようとしたことで、施設の運営が滞ってしまっては意味がありません。
そうならないように、安い介護ソフトを選ぶのであれば必ず見積もりを依頼してください。おすすめの段取りは、見積もりを依頼する前に利用したい機能や施設の課題をリストアップしておくことです。そうすることにより、追加費用も含めて正確な金額を把握できます。
クラウド型の介護ソフトのなかには、数年分の契約を結ぶプランもあります。月額料金を抑えられることがメリットですが、施設のニーズと合致しなければ導入の効果は発揮されません。実際に使い始めたら相性が今一つということもあるので注意が必要です。
契約年数の縛りがある場合、こちら側の事情で契約を解除すると違約金の支払いを求められることが大部分です。また、契約年数の残金の支払いを求められることもあるでしょう。他の製品に乗り換えられず、費用対効果が低くなってしまっては意味がありません。
契約年数の縛りがある製品を選ぶなら、施設のニーズと合致しているのか、本当に費用対効果が高いのか、数年単位で判断することが大切です。契約年数の縛りがあるプランを検討する際は長めのスパンで費用等の見積もりを出してもらう必要があるでしょう。
安い介護ソフトの大部分は、あえて機能を最小限に抑えてオプション費用で利益を得ています。予算的にオプションの追加が難しい場合は、結局スタッフが手で対応するしかなくなります。そうなると、スタッフの業務を軽減するという本来の目標の達成は遠のいてしまうでしょう。
費用対効果が高くなって初めて介護ソフトを導入する意味が出てきます。業務効率の向上やコストカットに寄与できなければ、月々に支払っている料金も不要なコストになるだけです。
最終的に別の介護ソフトに切り替えることになったら、それまで費やした労力は無駄になってしまいます。施設にとって介護ソフトは運営をスムーズに行うための基幹ですので、単純な価格だけにとらわれず費用対効果を意識して選ぶ必要があるでしょう。
契約年数に縛りがある、機能が限定されていることで、費用を抑えられることは事実です。メーカーによっては無料体験プログラムを用意しています。本格導入する前に期間限定でお試し利用してみてもいいでしょう。
パッケージ型の介護ソフトについては、無料でデモを実施してもらうことが最善です。メーカーの担当スタッフが施設を訪問してデモをしてくれることもあります。直接操作方法の解説を直接受けられますので、初めてソフトを導入する施設にとっても心強いでしょう。
クラウド型の大部分は、期間限定の無償版をダウンロードできるようになっています。オンラインで操作方法を教えてもらえることもありますので、問い合わせてみるといいでしょう。施設との相性を確認したうえで導入するか否かを決定できます。
機能は限定されているものの期間の定めなく無料で使えるバージョンもあります。「介護ソフトってどんな感じだろう」「使いこなせるのか自信がない」「予算的に余裕がない」と思っている施設にとっては強い味方となるでしょう。
今回は、価格を抑えて購入できるおすすめソフトと、導入を決めるポイントをご紹介しました。介護ソフトにはパッケージ型とクラウド型がありますが、どちらのほうが安いのかは一概には言えません。
パッケージ型は費用がかかる印象がありますが、長期的に見るとコスパのいい製品も多いです。一方クラウド型は、初期費用を抑えられるものの追加費用がかかりがちです。施設の規模やニーズ、利用したいサービスの数などを踏まえて、最適のソフトを選ぶようにしましょう。
どちらの提供形態を選ぶにしても、3年もしくは5年のスパンで見積もりを依頼し、いちばん費用対効果が高いのはどの製品なのか見定めることが大切です。この記事が介護ソフトの導入を検討中のみなさまのお役に立てれば幸いです。