介護施設での電子帳簿保存法対応をわかりやすく解説

更新日 2024.01.22
投稿者:豊田 裕史

「介護施設で、電子帳簿保存法の改正に対応する方法やポイントが知りたい」
「介護施設でデータの電子保存をする場合、具体的な業務フローはどうしたら良いか」

電子帳簿保存法改正の宥恕措置終了が近づき、上記のように対応にお悩みの方も多いのではないでしょうか。

この記事では、電子帳簿保存法の基礎知識や、介護施設で対応する際の方法やポイント、具体的な業務フローをまとめてお伝えします。

この記事を読むことで、電子帳簿保存法の必須知識を得て、介護施設でのスムーズな対応が可能となるでしょう。

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電子帳簿保存法とは?

電子帳簿保存法とは、帳簿、領収書、請求書などの保存に関わる負担を軽減するために、紙ではなく電子データで保存することを認めた法律です。保存区分は下記の3つに分けられます。

  • 電子帳簿等保存
  • スキャナ保存
  • 電子取引データ保存

それぞれについて詳しく解説していきますので、ご確認ください。また、ここでは執筆時点での最新情報を記載していますが、電子帳簿保存法改正については緩和要件の追加や猶予措置など、変更点も多いので注意が必要です。国税庁ホームページで随時最新情報をご確認ください。

①電子帳簿等保存とは

電子帳簿等保存は、コンピューターで作成した決算書類(損益計算書や貸借対照表)、領収書、仕訳帳などを電子保存することです。これら書類を会計ソフトやコンピューターを用いて作成し、一定の要件を満たしている場合には、紙ベースではなく電子データでの保存が可能となっています。

②スキャナ保存とは

スキャナ保存は、紙の領収書や自分で作成した紙の書類をスキャンし、電子データとして保存することです。使用するスキャナは下記の要件を満たす必要があり、要件を満たせば、スキャナではなくスマートフォンやデジカメでスキャンしても問題ありません。

  • 解像度:200dpi以上による読み取りができること
  • 色調:カラー画像による読み取りができること

また、スキャナ保存する場合には、改ざん防止のための措置(タイムスタンプ付与、削除・変更履歴が残るシステムの使用)も必要となるため注意が必要です。

③電子取引データ保存とは

「電子取引によって受領した電子データは、紙ではなく電子データのまま保存する義務がある」と定められており、こちらは必ず対応が必要となります。

また、保存の際には以下の要件があるので注意が必要です。

  • 改ざん防止のための措置を取る(タイムスタンプ付与、履歴が残るシステムの使用、改ざん防止のための事務処理規定の作成)
  • 日付・金額・取引先で検索可能な状態にする(※2年前の売り上げが1,000万円以下の場合は不要)

次章で詳しく解説していきますのでご確認ください。

介護事業所の電子帳簿保存法の対応方法・ポイント

ここでは、介護事業所が電子帳簿保存法に対応するための方法やポイントについて解説していきます。前章では3つの電子保存について説明してきましたが、全てを電子保存する必要はありません。

①電子帳簿等保存、②スキャナ保存については、現行通りの紙保存でも対応が可能なためご安心ください。問題となるのは、③電子取引データ保存です。

電子取引データ保存制度について詳しく解説

この電子取引データ保存制度は今回の改正の中で最も影響が大きく、目玉制度と言えるでしょう。まず、電子取引とは、取引情報の授受を電磁的方式により行う取引を指します。

これまでは、電子メールに添付されていたデータなど、電子取引にあたるものを、印刷して紙で保存していた介護事業所も多いのではないでしょうか。

しかし、今後は電子取引データは、電子のまま保存することが義務化され、紙だけで保存しておくことは認められません。現在は宥恕措置が取られていますが、宥恕措置終了以降(2024年1月1日〜)に対応出来ていない場合、法令違反となるためご注意ください。

ただし、令和5年度税制改正大綱では「要件を全て満たした際には、電子取引の書面保存を認める猶予措置を講じる」との記載があります。

要件は下記の通りです。

  • 保存要件に従って保存することが難しい相当の理由がある
  • 所轄税務署長に相当の理由があると認められる
  • 税務調査時に要求されたデータのダウンロードの求めに応じる
  • 税務調査時に整然とした形式および明瞭な状態で出力された書面の提出または提出の求めに応じられる

2024年1月1日以降も、一定期間猶予措置が実施されますが、可能であれば早めに対応できるようにしておきましょう。

出典:令和5年度税制改正大綱

どんな書類が電子取引データ保存対象になる

では、どのような書類が対象になるのでしょうか。具体例を以下に示します。

  • 電子メールでやりとりした見積書、請求書、領収書、受領書
  • WEBサイトからダウンロードする見積書、請求書、領収書、受領書
  • クラウドサービスを使った電子請求書や領収書
  • ペーパレスFAXでやりとりした見積書、請求書、領収書、受領書
  • WEBサイトからダウンロードしたクレジットカード利用明細書
  • 金融機関のWeb通帳

まずは、自社の取引の中で電子取引を行っているものを洗い出しておき、どの書類を電子保存すべきか明確にすると良いでしょう。

電子帳簿保存法に対応するための業務フロー

ここでは、介護施設で電子帳簿保存法に対応するための業務フローを、それぞれ解説していきます。

①介護施設で電子帳簿等保存に対応するための業務フロー

電子帳簿等保存は任意のため、これまで通り紙ベースでの保存を続けていても問題はありません。ここでは、介護施設で帳簿などを電子保存する場合の業務フローをご紹介します。優良帳簿かそれ以外の帳簿かで対応が異なるため、それぞれご確認ください。

優良帳簿
  1. 要件を満たすシステムを準備する(訂正・削除の履歴が残る、システム概算書・仕様書・操作説明書を備え付ける、速やかに出力できるようにしておくなど)
  2. システムを用いて帳簿を作成する
  3. システムにデータを保存する
その他の帳簿
  1. コンピューターで帳簿を作成する
  2. ハードディスクやDVD、クラウドサービスなどにデータを保存する

②介護施設でスキャナ保存に対応するための業務フロー

スキャナ保存については任意のため、これまで通り紙ベースでの保存を続けていても問題はありません。ここでは、介護施設で紙の書類を電子保存する場合の業務フローをご紹介します。

  1. 紙で作成した書類や紙で受領した書類を、解像度や色の階調などの要件を満たせる機器でスキャンする(※要件を満たせばスマートフォンやデジカメを利用した保存も可能)
  2. 期間内に入力し、タイムスタンプの付与など、改ざん防止のための措置をとる
  3. 検索機能の確保などの要件を満たしたうえで電子保存を行う(※2年前の売り上げが1,000万円以下の場合は検索機能は不要)

なお、スキャナ保存は、重要書類と一般書類に分類されており、重要書類はより厳しい要件が求められます。重要書類については、業務フローをより細かく設定しておきましょう。

③介護施設で電子取引データ保存に対応するための業務フロー

電子取引データ保存については、一般企業と同様に介護施設においても必ず対応する必要があります。

詳しい業務フローは以下の通りです。

  1. 自施設の電子取引を把握する
  2. 電子取引データ保存に対応したシステムなどを準備する
  3. 以下のいずれかの改ざん防止措置の実施する
    • タイムスタンプの付与
    • タイムスタンプが付与されたデータの受け取り
    • 訂正・削除履歴が残るシステムを利用する
    • 改ざん防止のための事務処理規程の作成
  4. ディスプレイ・プリンターを備え付ける
  5. 検索機能の確保などの要件を満たした上で電子保存する(※2年前の売り上げが1,000万円以下の場合は検索機能は不要)

改ざん防止措置に用いるタイムスタンプは、導入費用やランニングコストがかかり、介護事業所にとって負担となってしまいます。改ざん防止措置の中では、事務処理規定の作成が費用負担もなく最も取り組みやすいでしょう。事務処理規定を作成する際には、国税庁のホームページにひな形が公開されているので、ぜひ活用してみてください。

電子帳簿保存法を破るとどんな罰則がある?

ここでは、電子帳簿保存法に違反した場合の罰則について説明します。

青色申告承認取消の恐れ

罰則のひとつとして、青色申告の承認取消の恐れが挙げられます。承認が取り消されると、最大65万円の特別控除が受けられなくなりますし、企業としての信頼も損なわれてしまうでしょう。ただし、国税庁が2021年7月に公表した資料には、「電子帳簿保存法に違反しても、直ちに青色申告の承認が取り消される訳ではない」との記載があります。税務調査における説明や提出する資料などにより、承認を取り消されない場合もありますが、期限までにしっかり準備しておきましょう。

出典:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】ー国税庁ー

会社法に基づく過料徴収の可能性

また、会社法に基づいた100万円以下の過料徴収も考えられる罰則のひとつです。会社法第976条には、100万円以下の「過料に処すべき行為」がまとめられており、帳簿・書類が規定に則った方法で記録・保存されていない場合も含まれています。

出典:会社法 | e-Gov法令検索

追徴課税や推計課税の恐れ

罰則として、追徴課税や推進課税を科される恐れもあります。追徴課税とは本来の納税額との差額を支払うこと、推計課税は税務調査に非協力的な納税者について適用されるものです。罰則を避けるためにも、早めの対応を心がけましょう。

まとめ

この記事では、電子帳簿保存法の基礎知識や、介護施設で電子帳簿保存法に対応するための方法やポイント、具体的な業務フローなどをまとめました。電子帳簿保存法の主な保存区分は3つに分けられており、全てを電子保存する必要はありません。3つのうち「電子取引データ保存」のみ電子保存が必須となるため、宥恕措置期限が終わるまでにしっかりと対応をしておきましょう。

介護施設でも重要事項説明書、介護計画書、ケアプランなど、書類の電子化が原則的に認められるようになり、デジタル化が進んできています。これを機に、帳簿類の電子化にも取り組んでみてはいかがでしょうか。

介護ソフトについては【2024年版】おすすめ介護ソフト29製品を徹底比較|選び方まででも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

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中小企業診断士
セカンドラボ株式会社 PR Solution Div.
URL:https://note.com/2ndlabo/n/n949eaa3e9d69

北海道大学を卒業後、医療機器の営業として6年間勤務。外科、整形外科、泌尿器科領域を中心に民間・国公立の病院を担当。2020年よりセカンドラボ株式会社に入社。医療福祉施設の課題解決プラットフォーム「2ndLabo」にて各種ITツール、医療機器の導入支援、クリニック開業支援に従事。

2ndLaboのサービスを通じて、これまで1,000件を超えるサービス導入支援・開業支援を担当。得意分野は、電子カルテ、介護ソフト、各種医療機器。


フリーランスWEBライター
URL:https://twitter.com/kakeru5152

元高校国語教師。3年ほど教育現場で働き、フリーランスWEBライターとして独立。様々なメディアで記事を制作。ディレクターとしても活動。個人でブログも運営しており、情報発信も行なっています。

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